可哀想じゃなきゃ抜けない? 不可怜就硬不起来?
潔への独占欲を拗らせ、夜な夜な潔を陵辱する妄想で抜いている凛。こんな暴力的な欲望が本当に恋心なのかと悶々としていると、夢の中で21歳と26歳の自分と遭遇し、未来の自分はどうやら潔と付き合っているらしいと知る。恋を成就させたい気持ちと、もし付き合ったら陵辱願望を潔にぶつけてしまうのではという罪悪感の間で揺れる凛だが、潔はそんなことは露知らず懐いてきて……。
因独占欲扭曲而夜夜幻想着凌辱洁来自渎的凛。正苦恼着这般暴力的欲望是否真是恋慕之情时,却在梦中遇见了 21 岁与 26 岁的自己,得知未来的自己似乎正与洁交往着。在渴望成就恋情与"若真交往了会不会将凌辱欲发泄在洁身上"的罪恶感间摇摆的凛,对此毫不知情的洁却主动亲近而来……
ひとり相撲する凛とピュアでかわいい潔を書けて楽しかったです。凛も潔も言語化が上手なので、映画デートは結構楽しくやれるんじゃないかと思います。
创作独自纠结的凛与纯真可爱的洁非常愉快。凛和洁都善于表达,想必电影约会能相当欢愉吧。
表紙お借りしました。→【illust/120816625】
封面图源→【illust/120816625】
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季節は夏に差し掛かり、気温はどんどん上がっていく。ブルーロックの窓から外を見ると、すぐ近くのアスファルトの上に何か赤い、布のようなものが落ちていた。白の差し色が入っているそれは、よく見たらカラーコーンだった。地熱で溶けてひしゃげたらしい。うげえと舌を出して、窓から離れた。外がそれほどまでに暑いとは知らなかった。つくづくブルーロックは、外界から遮断されている。
时值盛夏,气温不断攀升。从蓝色监狱的窗户向外望去,只见不远处沥青路面上落着块红色布料似的东西。那抹点缀其间的白色,细看才发现是交通锥。似乎被地热烤得融化变形了。我吐出舌头作呕状,连忙从窗边退开。没想到外面竟热到这般地步。蓝色监狱果真是与外界彻底隔绝的牢笼。
「生きる世界が違う」とは、こういう時に使う言葉かもしれない。若気の至りとしか言いようのない選民思想に浸る凛だったが、数時間後、潔らとともに数日分の荷物を持ってアスファルトの上に放り出されていた。潔がひしゃげるまであと何分だろう、と思った。
"活在截然不同的世界"——或许就是用来形容此刻的词汇。沉浸在唯有年少轻狂才能解释的精英主义中的凛,几小时后就和洁一起被扔在柏油路上,手里只拎着几天的行李。他暗自盘算着:距离洁被晒成人干还有几分钟?
急な気温の上昇に伴い、世間が大慌てでクーラーを動かし始めた。その影響で、ブルーロックで設備点検を担っている業者が繁忙期に入り、急な故障に即時対応できなくなったらしい。結果、フィジカルスタジオの空調とガス温水器がぶっ壊れたものの、修理が来るのは明後日の夜になってしまうとのことだ。
由于气温骤升,全社会都手忙脚乱地开起了空调。这导致负责蓝色监狱设备检修的承包商迎来业务高峰,无法及时处理突发故障。最终体能训练室的空调和燃气热水器双双罢工,可维修工要等到后天晚上才能来。
「才能の原石共よ。臭ぇから関東圏の奴らは家に帰って風呂に入れ。他のやつらは水風呂か、我慢しろ」
"天才原石们听着,关东圈的臭小子们赶紧滚回家洗澡。其他人要么冲冷水澡,要么忍着。"
熱いくらいなら我慢できたが、臭いと思われることは我慢ならない。男子高校生は繊細なのだ。自宅が関東圏にあるメンバーはそそくさと帰宅することになった。
高温尚能忍耐,但被当成臭烘烘的存在绝对无法容忍。男子高中生可是很敏感的。家住在关东圈的成员们立刻火速踏上了归途。
「残ったみんなはどうするんだろ?水風呂入るのかな?」
"剩下的人会怎么办呢?会去泡冷水浴吗?"
「馬狼は限界までトレーニングした後に水シャワー浴びて心頭滅却する予定らしい」
"听说马狼打算训练到极限后冲个冷水澡来清心寡欲"
「滝行じゃん」 "这不就是瀑布修行嘛"
「お嬢は日光が当たる箇所にビニールプール置いてあったかい風呂に入るらしい」
"大小姐好像在阳光能照到的地方放了充气泳池准备泡温水澡"
「手ぇこんでんね!」 "把手举起来!"
「國神に手伝ってもらうって言ってた」 "你说过要让国神帮忙的"
「手伝うかなあ今の國神。……手伝いそうだなあ」 "现在的国神会帮忙吗......感觉他会帮呢"
蜂楽と玲王の会話がセミの鳴き声に交じる。ふたりを尻目に、凛と潔は横並びになって送迎バスを待った。
蜂乐和玲王的对话混杂在蝉鸣声中。凛和洁并排站着等接送巴士,对那两人视若无睹。
「……オフになったな」 "……看来是断电了"
「……」 "……"
ブルーロックのオフは少ない。潔が凛の家に来るなんていつのことになるだろうと思ったが、こんな形で叶うとは。これが「天が味方している」という状況か。余計なお世話だ。
蓝色监狱很少停电。洁从没想过会以这种方式实现去凛家拜访的愿望。这就是所谓的"天助我也"吗?真是多管闲事。
「各自風呂入ったらどこかで集合して、凛の家行く?」
"大家洗完澡后找个地方集合,然后去凛家?"
「めんどくせえ。このまま俺んち来ればいいだろ」 “烦死了。直接来我家不就行了”
「で……でも、俺風呂入りたいんだけど……」 “可、可是我想洗澡……”
「うちで入ればいい」 “在我家洗不就得了”
潔が目をくるっと丸くしたあと、唇を尖らせる。 洁瞪圆了眼睛,随后撅起嘴唇。
「……凛ってさあ、なんか……俺に対しては、そういうとこあるよな」
"……凛啊,你对我……总是这样呢"
「は?なんだよ」 "哈?什么意思"
「だってお前、それ……や、なんでもない……」 "因为你那反应……啊、没什么……"
凛は一番合理的な案を出しただけなのに、この機転を褒めるどころかぽしょぽしょと文句を垂れるとは何事か。凛は潔の膨らんだ頬をつまもうとポケットから手を出して、逡巡してやめた。代わりに太ももをローキックする。
明明凛提出的才是最合理的方案,非但没夸他机灵反而嘟嘟囔囔抱怨个不停。凛从口袋里抽出手想掐洁鼓起的脸颊,犹豫片刻又作罢,转而用低踢扫向他的大腿。
「ぼさっとすんな。いくぞ」 "别发呆了。走吧"
潔はなにか言いたそうな顔をしていたが、無視した。
洁似乎想说什么,但我没理会。
一番気温が高くなる時間帯に最寄り駅についたせいで、凛も潔もドロドロに汗をかいていた。凛の家についてすぐ、遠慮する潔を無理矢理風呂場に押し込む。汗だくの体で室内を歩きたくない気持ちはあったが、それよりも自室を片付けたい気持ちが勝った。見られて恥ずかしいものはないが、それはそれである。凛の不在時も親はちゃんと掃除してくれているようで、ゴミ箱は空。助かった。クローゼットを探したところ、中学時代の部活着を見つけたのでそれを貸すことにした。
由于在最炎热的时段到达了最近的车站,凛和洁都汗流浃背。一到凛家,我就强行把推辞的洁塞进了浴室。虽然不想浑身大汗地在屋里走动,但更想先整理自己的房间。倒没什么见不得人的东西,但总归要收拾一下。父母似乎在我离家期间也认真打扫过,垃圾桶是空的。太好了。在衣柜里翻找时发现了初中时的社团运动服,就决定借给他穿。
「着替えおいとく。ドライヤーの横」 "换洗衣服放这了。在吹风机旁边"
「あ、ありがと!」 “啊、谢谢!”
風呂場の曇りガラス越しに潔の気配を感じる。ぼんやりとした肌色のかたまり。さっと視線を外して、凛は二階に戻った。
透过浴室的磨砂玻璃能感受到洁的存在。朦胧的肉色轮廓。凛慌忙移开视线,转身上了二楼。
風呂上がりの潔なんてブルーロックで何度か見たはずなのに、それが自分の服を着て自室にいるというだけでとんでもない威力だった。「お風呂ありがと」と言う潔に「ん」とだけ返してさっさと風呂場に向かう。すれ違いざま、潔からシャンプーの香りがして、自室のドアを閉めた瞬間に凛は片膝をついた。なにか、言葉にできない、とてつもない引力があった。
明明在蓝色监狱里见过好几次洁出浴的模样,但此刻他穿着自己的衣服待在卧室里,杀伤力竟如此惊人。面对道谢的洁,凛只含糊应了声“嗯”就快步走向浴室。擦肩而过时,洁身上飘来洗发水的香气,房门关上的瞬间凛单膝跪地。某种难以言喻的、惊人的吸引力席卷而来。
風呂上がりだからなんだ。俺のシャンプーの香りがするくらい、なんだってんだ。その程度の刺激で別に興奮なんてしないのに、なぜか軽く勃起していた。男子高校生とはそういう生きものなのだ。惚れた相手が部屋にいるだけで勃起するものだ。自分の浅はかな欲を見せつけられ自尊心を削られつつも、凛もシャワーで汗を流した。「凛、長いな〜」なんて怪しまれたくなかったので、自慰はしなかった。むしろ鎮めるために冷水を浴びた。心頭滅却。これならブルーロックにいても同じじゃねえかと思った。
不就是刚洗完澡吗。不过沾上了我的洗发水香味而已,有什么大不了的。这种程度的刺激本不该起反应,下体却不受控制地微微抬头。男高中生就是这种生物啊。光是暗恋对象待在房间里就会勃起。在自尊心被自己浅薄的欲望反复凌迟的同时,凛也用淋浴冲掉了汗水。“凛,洗好久啊~”为了避免被怀疑,他强忍着没有自慰。甚至用冷水浇身来平息冲动。心若冰清。转念一想,这和待在蓝色监狱时有什么区别。
部屋に戻ると、潔はベッドの縁に座ってテレビを見ていた。
回到房间时,洁正坐在床边看电视。
「凛」
潔が自分のとなりをぽんぽんと叩くが、凛の服を着て、凛のシャンプーの匂いをさせた潔と、凛のベッドにふたりで座るなんてハイリスクなシチュエーションを選ぶわけにはいかない。凛は「テレビから遠い」とクッションを尻に敷いて床に座った。潔も凛に倣って、クッションを持って隣に移動してくる。
洁啪啪地拍着自己身旁的位置,但穿着凛的衣服、散发着凛的洗发水香气的洁,再加上两人同坐在凛的床上——这种高风险场景实在不能选。凛以「离电视太远」为由,把坐垫垫在屁股下坐到了地上。洁也有样学样地拿着坐垫挪到他旁边。
「おい」 「喂」
「だってホラー見るんだろ?近くに凛いないと怖ぇし」
"你不是要看恐怖片吗?要是凛不在旁边我会害怕的"
頼るような言い方にぎゅっと唇をかみしめた。潔は頑固だ。「邪魔、どっかいけ」と言っても歯向かってくるだろう。これと決めたら引かない、面倒なやつ。だからこのまま映画を見るのも、触れられる距離に二時間近く座りっぱなしなのも、仕方ない。凛は股が見えないように膝を立てて座り、再生ボタンを押した。
听到这依赖般的语气,凛紧紧咬住了嘴唇。洁太顽固了。就算说"碍事,滚开"也肯定会顶撞回来。这个一旦决定就绝不退让的麻烦家伙。所以现在这样一起看电影也好,在触手可及的距离并排坐将近两小时也罢,都无可奈何。凛竖起膝盖挡住胯部,按下了播放键。
「ひ~っ……」 "呜哇......"
「……」 "......"
「うわ~まじむりまじむり」 "哇~真的不行真的不行"
「うるせえよお前」 "吵死了你"
「だって!だって!落ち着かなくて!」 "可是!可是!我根本冷静不下来啊!"
凛は、姉弟が夜な夜な超常現象に襲われるモキュメンタリ―ホラーを選んだ。本当はこの映画はアメリカで作られたものが本流であり、現在潔と見ているものは日本版の続編……番外編に近いものである。原作となるアメリカ版ではなく日本版を選んだのは、アメリカ版には男女カップルのそういうシーンがあるためだ。ふたりきりの部屋でそれはまずい。ウォッチリストに入れていた新作ではなく、これまで幾度となく見た映画を選んだのは、潔が騒いで集中できなくなるだろうことが想像できたから。あとこれも一応、シリーズものだった。
凛选择了一部姐弟俩夜夜遭遇超自然现象的伪纪录片式恐怖片。其实这部电影的美国原版才是正统,现在洁他们看的是日本翻拍的续集...更接近于番外篇。之所以没选美国原版而选了日本版,是因为美版里有男女情侣的那种镜头。两个人在房间里看那个可不妙。没选待看清单里的新片,而是挑了这部看过无数次的电影,是因为预想到洁肯定会闹腾得让人没法专心。况且这片子好歹也算个系列作品。
潔は案の上、大騒ぎした。超常現象という特性上、急に驚かせてくるシチュエーションが多い。主人公である弟は、夜な夜な超常現象に襲われる姉を守るため、姉の私室にカメラを設置する。画質の悪いカメラによる不穏な画角と暗い画面が恐怖心を撫でる。姉のベッドに置かれていた十字架がごとりと床に落ちたシーンで、潔は「ギャッ」と凛の背中に隠れた。
洁果然又大吵大闹起来。由于超自然现象的特性,经常会出现突然惊吓的场景。作为主人公的弟弟为了保护每晚遭受灵异现象袭击的姐姐,在姐姐的卧室安装了摄像头。画质粗糙的摄像头拍下的不安定构图与昏暗画面不断撩拨着恐惧神经。当姐姐床头的十字架"咕咚"一声掉落在地时,洁"呀"地躲到了凛的背后。
「燃えてる!十字架燃えてる!なんで!?」 "烧起来了!十字架烧起来了!为什么啊!?"
「ベッドの上で燃えたら火事になるからだろ」 "因为要是在床上烧起来会引发火灾吧"
「怨霊のくせにその配慮いる!?」 "区区怨灵还讲究这种体贴!?"
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら凛を盾にする潔を、不自然に思われない程度に眺めて、凛はテレビに視線を戻した。いつもよりも口数が多くなっている気がして、口を隠すように頬杖をついた。潔もひとしきり騒いで満足したのか、また凛の横に並ぶ。
凛一边假装看电视,一边用余光观察着把凛当挡箭牌大吵大闹的洁——刻意保持着不会显得不自然的距离感。他总觉得今天自己话比平时多,便用手支着脸颊遮住嘴角。洁似乎也闹腾够了,又乖乖坐回凛身边。
怯えながらも真剣な表情でテレビを見る潔。その横顔を盗み見る。
洁虽然害怕却仍认真盯着电视的侧脸。凛偷偷瞥向那抹剪影。
凛の父親は建築士だ。この家も父が作った。子ども部屋には朝一番の陽光が入るようにしたかったとのことで、部屋の東側には窓があり、朝日が差し込む設計になっている。その窓の前に、潔は座っている。シンプルだが深い色の窓枠が額縁のようで、きらきらと瞳を輝かせる潔が、絵画のように収まっている。
凛的父亲是建筑师。这栋房子也是父亲设计的。据说为了让儿童房能沐浴清晨第一缕阳光,特意在东墙开了窗户。此刻洁就坐在那扇窗前。简约而深邃的窗框如同画框,眼眸闪闪发亮的少年仿佛被镶嵌在晨光中的油画。
もし潔がこの部屋で一夜を明かしたら。後光のように朝日を背負って、寝ぼけ眼で「おはよう」と言う潔を夢想する。頭の双葉が朝日に照らされて、ぱやぱやと揺れる。それをつまもうと手を伸ばすと、頭を撫でられると勘違いした潔が凛の手のひらを待って、きゅうと目を瞑る。凛は……。
如果洁在这房间过夜的话。凛幻想着他背负朝霞般的晨光,揉着惺忪睡眼说"早安"的模样。发梢的双叶在朝阳中轻轻摇曳,当凛伸手想捏住那缕翘发时,误以为要摸头的洁会主动把脑袋凑近掌心,紧紧闭上眼睛。而凛......
「……なに?」 “……什么?”
五感が鋭いというのは伊達じゃないらしい。凛の視線に気づいたのか、潔がじとりと目を滴らせる。凛は反射的に、目線をテレビへ移す。
看来五感敏锐并非虚言。或许是察觉到了凛的视线,洁的双眼突然泛起湿润。凛条件反射般将目光移回电视屏幕。
「……ちゃんと映画見ろよ、凛」 “……好好看电影啊,凛”
「見てんだろ」 “我这不是在看吗”
「なんか、さっきからすげー俺の方見てない?」 "喂,从刚才开始你就一直死盯着我看吧?"
「見てない。自意識過剰」 "没看。你自我意识过剩"
「はあ〜!?」 "哈啊——!?"
潔が眉を寄せてぶーぶーと文句を言い出す。それらをまるっと無視しながら、凛は画面に集中するふりをする。潔の視線が凛とテレビを往復するのに満足しながら。
洁皱着眉头开始嘟嘟囔囔地抱怨。凛假装专注于电视画面,把这些话全当耳旁风。同时暗自享受着洁的视线在自己和电视之间来回游移的满足感。
星が見え始めていることに気づくな。夏の日は長い。19時と言えど、まだ外は明るい。だが真昼のような白い月が浮いていることに、潔の視力なら気づくだろう。赤くなった空を見た潔が「もうこんな時間?帰んなきゃ」と荷物をまとめるのを、引き留める方法も権利も、凛にはない。フィールドの上、ボールを介してだったら、どんなことでもできるのに。のこのこ部屋にまでやってきたこの男の頬の温もりを確かめるどころか、目を合わせることすら出来ないなんて。
注意到星星开始显现时,夏日依然漫长。虽说是晚上七点,窗外仍透着亮光。但若是洁的视力,想必能发现那轮白得刺眼的月亮正悬在空中。望着泛红天空的洁嘟囔着"都这个点了?得回去了"开始收拾行李,而凛既没有挽留的方法也没有这个权利。若是在球场上,通过足球明明什么都能做到。可如今这个大大咧咧闯进自己房间的男人,莫说确认他脸颊的温度,就连四目相对都做不到。
凛は頬杖をつきながら、手慰みに顎の皮膚をねじった。潔はそれからも小さくぶつくさ言っていた。
凛支着腮帮,百无聊赖地拧着下巴上的皮肤。洁还在旁边小声地碎碎念着。
映画を見終わった後、潔はよほど怖かったのか凛に文句を言うのに必死になって、窓の外が暗くなっていることには気づかなかった。「絶対夢に出る」「お風呂どーしよ」とうじうじする丸い後頭部を凛は黙って眺めた。
电影结束后,洁似乎被吓得不轻,只顾着拼命向凛抱怨,完全没注意到窗外早已暗了下来。"绝对会做噩梦的""洗澡怎么办啊"——凛默默注视着那颗因纠结而左右晃动的圆润后脑勺。
凛の母の帰宅に合わせて、潔は入れ替わるように帰っていった。凛が人を連れてくるのが初めてだったことから母は大層驚いており、「晩御飯食べていく?」「ごめんね、なんのお構いもできずに」と最後まで潔にまとわりついていた。
恰逢凛的母亲回家,洁便像交接班似的离开了。由于凛是第一次带人回来,母亲显得格外惊讶,"不留下来吃晚饭吗?""真是抱歉都没能好好招待",直到最后都围着洁打转。
「凛、お友達連れてくるなら先に言いなさい!」 "凛,要带朋友来的话先说一声啊!"
「別に友達じゃねーし」 "才不是什么朋友"
「凛!先輩なんでしょ!」 "凛!人家是学长吧!"
「先輩でもねーし」 "也不是什么学长"
「ああもう……ごめんなさいね潔くん」 "啊真是的……对不起啦洁君"
「大丈夫です!こいつのこういうところ、慣れてますんで!」
"没关系!这家伙这种地方,我已经习惯了!"
潔が凛を肘で小突く。 洁用手肘轻轻捅了捅凛。
「あら?潔くんその服……」 "哎呀?洁君这身衣服……"
「あ、すみません。凛……くんに借りました」 "啊,不好意思。这是向凛......君借的"
「凛が?」 "凛?"
「今度洗って返します」 "我洗好就还"
「いえぜんぜん気にしなくていいんだけど、凛が、自分の服を?人に……?」
"不不完全不用在意这个,问题是凛居然、把自己的衣服?借给别人......?"
母親と潔が話している光景はなんだか不思議だ。なんやかんやと会話するふたりを眺めていると、母親が目を丸くして凛と潔を交互に見る。潔はあいまいな笑顔で何度か会釈している。ふたりの戸惑いがよく分からずに首を傾げていると、潔が「じゃあ、お邪魔しました」と鞄を持ち上げた。
看着母亲和洁交谈的场景总觉得有些不可思议。当我望着他们有一搭没一搭地聊着时,母亲瞪圆眼睛在凛和洁之间来回打量。洁则挂着暧昧的笑容频频点头致意。正歪着头不解两人为何如此困惑时,洁突然拎起公文包说道:"那我们就先告辞了"。
「りーん、駅まで送って~」 "凛~送我去车站嘛"
「はあ?だいたい道分かんだろ」 "哈?你明明认得路吧"
「凛!!」 "凛!!"
母の圧に負け、凛もしぶしぶ靴を履いた。潔はなんだかニヤニヤしていて、ムカついたので凛も強めに小突いた。
在母亲的施压下,凛也不情不愿地穿上了鞋。洁不知为何一脸坏笑,看得凛火大,便用力戳了他一下。
風呂を済ませてストレッチをしていると、潔からクレームが届いた。
洗完澡正在做拉伸时,收到了洁的投诉。
『凛のせいで寝れねえんだけど』 「都怪凛害我睡不着」
『知るか』 「关我屁事」
『もう絶対ホラーとか見ねえから』 『我发誓再也不看恐怖片了』
『次はスリラーにするから別にいい』 『下次看惊悚片不就好了』
『だからそういうの見ないって言ってんじゃん!』 『所以我不是说了不看这种类型的嘛!』
早くも次を求める自分の浅ましさにため息をついて、凛はスマートフォンを充電コードに繋いだ。そのままスマートフォンを放り投げようとすると、画像が送られてきた。
凛对着自己这么快就想着看下一部的肤浅叹了口气,把智能手机连上充电线。正要把手机扔开时,突然收到了图片消息。
『つーかお前の肘鉄のせいで脇腹痛いんだけど』 话说你那一肘子顶得我侧腹好痛啊
自撮りだ。帰り際に凛が小突いた左脇腹を、わざとらしく悲し気な顔をした潔が指さしている。脇腹を見せるためか、半裸である。当然、乳首も映っている。大きな目、コミカルな表情、子どもじみた潔にお似合いの、ピンクベージュで、凛の唇で隠れてしまうほど小さい、かわいらしい乳首────。
这是张自拍。回家路上被凛撞到的左侧腹,被刻意摆出可怜表情的洁指着。为了展示侧腹伤势,他半裸着上身。理所当然地,乳头也入了镜。那双大眼睛,滑稽的表情,与孩子气的洁十分相配的粉米色乳头——小到几乎能被凛的嘴唇完全藏住,可爱极了的乳头——
凛はスマートフォンをぶん投げた。両手で頭を掻きむしった後、そのまま床に突っ伏した。床に落ちたスマートフォンが光る。潔からの通知だ。
凛把手机摔了出去。双手胡乱抓挠头发后,直接趴倒在地。掉在地上的手机屏幕亮起。是洁发来的消息。
『赤くなってない?』 是不是有点发红了?
「…………………知るかよ……………」 "…………………关我屁事……………"
眠れそうにない。 看样子是睡不着了。
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「脱げ」 "把衣服脱了"
「……」 "……"
「聞こえなかったか?脱げ」 "没听见吗?脱掉"
凛が繰り返すと、潔は凛から目を反らしてジャージを脱ぎ始めた。
凛重复道,洁别开视线开始脱下运动服。
ブルーロックTV配信のために、施設内は死角となる場所が少ない。カメラなんてサッカーコートだけでいいだろうに、「プロは常に見られていると思え、その環境に慣れろ」という絵心の思想と、収益のために未成年たちのプライベートを切り売りすることを辞さないサッカー協会の方針がマッチしてしまったようで、食堂やリラクゼーションスペースにも配信用カメラが設置されている。
为了蓝色监狱 TV 直播,设施内几乎没有死角。明明球场上有摄像机就够了,但"职业选手要时刻做好被注视的准备,必须适应这种环境"的绘心理念,与足协不惜牺牲未成年隐私来获取收益的方针不谋而合,连食堂和休闲区都装满了直播摄像头。
だが、そんな衆人環視の監獄内にも、プライバシーはある。思春期の少年たちにはどうしても、プライベートの時間が必要だ。そのために与えられているのが、精神的、肉体的リラクゼーションを目的とした仮眠室である。匿名で事前予約が必須となっており、入口も施錠できる。つまりは、オナニーのためにトイレを占拠するな、用意してやったからこの部屋でオナニーしろということだ。服装や食事だけでなく性まで指定されるとは、気色悪くて仕方ない。ブルーロックで自由なのはサッカーだけだ。
但在这种众目睽睽的监狱里,也存在着隐私空间。青春期的少年们无论如何都需要私人时间。为此特别设置了以精神放松和身体休憩为目的的假寐室。必须匿名预约才能使用,入口还能上锁。说白了就是"别占着厕所打飞机,专门给你们准备了自慰室"的意思。连服装饮食都要被管控就算了,现在连性事都要被安排,真是恶心透顶。在蓝色监狱里,唯一自由的只有足球。
ある日凛は、この部屋に入っていく潔を見かけた。あいつもそういうことすんのかよ、とげんなりしていると、潔は数秒で部屋から出て行った。催したらしい。凛は潔がトイレに入っていく背中を見守って、再度ドアの方を見た。
某天凛看见洁走进了这个房间。正想着"那家伙也会做这种事啊"而心生厌烦时,洁却只待了几秒就出来了。看来是突然来了感觉。凛目送着洁走向厕所的背影,再次将视线投向那扇门。
凛は部屋に入り、自分のスマートフォンを録画状態にして、部屋の隅に置きその場を去った。
凛走进房间,把自己的智能手机调成录像模式放在角落,随后离开了现场。
逡巡は数秒にも満たなかった。潔をぐちゃぐちゃにしたいという凛の欲望は、もはや手段を問わなかった。別に、暴力でも良かった。サッカーでぐちゃぐちゃにできなくなるのは困るから、こういう方法を取っただけだ。
犹豫的时间连几秒都不到。想要把洁彻底弄乱的欲望,已经让凛不在乎手段了。其实用暴力也行。只是考虑到不能再通过足球来摧毁他,才选择了这种方式。
数時間後に回収した凛のスマートフォンには、潔の自慰が記録されていた。後は動画の一場面をスクリーンショットして、「21時に同じ部屋に来い」と送り付けるだけで、潔は面白いように凛の言いなりになった。「脱げ」と言われれば脱いだし、「舐めろ」と言えば舐めた。
几小时后回收的凛的手机里,记录着洁自慰的画面。只需截取视频中的一幕,发送"21 点来同一个房间"的指令,洁就会像提线木偶般任凛摆布。"脱掉"就乖乖脱衣,"舔"就顺从地舔舐。
「俺にこんなことさせて、何が楽しいの」 "让我做这种事...你到底觉得哪里有趣"
周知と嫌悪をむき出しにした顔で潔は凛を責めた。そういう姿を見ると、答えを与えないまま、よりひどくしてやりたくなった。
洁用充满嫌恶的表情当面质问凛。看到这副模样,凛反而更想不作任何解释地变本加厉折磨他。
一糸まとわない姿で、潔が凛のもとへやってくる。凛は当然一枚も脱いでいない。ベッドに腰掛けた凛は、自分の前で立ち尽くす裸の潔を引き寄せて、遠慮なしに体を眺めた。潔は精一杯気にしてない風を装いながらも、小さく手が震えている。凛は潔の顔を眺めたまま舌を伸ばして、米粒のように小さな乳首をべろんと舐めた。
一丝不挂的洁来到凛面前。凛自然衣冠整齐。坐在床沿的凛将僵立在眼前的裸身洁拉近,肆无忌惮地打量这具躯体。洁虽然极力装作满不在乎,手指却微微颤抖着。凛凝视着洁的面容伸出舌头,将米粒般小巧的乳首"啵"地舔进嘴里。
「……っ」 "……呜"
潔が肩を竦める。凛は潔の両手首を掴んだまま、長い舌で潔の乳首をいたぶる。ピンクベージュの乳首が濡れてテラテラ光っている。こんな色じゃなけりゃここにあるなんてわからなくなりそうなほど小さな乳首のくせに、一丁前に勃起している。乳輪全体を口に入れて、飲み込むような動きで舌を動かす。
洁的肩膀瑟缩了一下。凛仍然抓着洁的双腕,用长长的舌头玩弄着他的乳头。粉米色的乳头被舔得湿漉漉地泛着水光。明明小得几乎让人怀疑是否真实存在,此刻却精神抖擞地挺立着。凛将整个乳晕含入口中,吞咽般蠕动着舌头。
「も、やめろ……!」 "别、别这样……!"
「あ?」 "嗯?"
「お、お前、おかしい。俺のこと盗撮して、脱がせて、乳首とか舐めて……!なんなの?マジでこれ以上は絵心さんに言うから」
"你、你太奇怪了。偷拍我、脱我衣服、还舔乳头……!到底想干嘛?再这样我真的要告诉绘心小姐了"
潔が凛の手を振り払って後ずさる。ドアの方へ駆け寄りながら脱いだ服に手を伸ばしたので、その手を叩き落としてベッドに押し倒した。
洁甩开凛的手往后退去。他一边朝门口跑去一边伸手去抓脱下的衣服,却被凛打落手臂按倒在床上。
「なんて言うんだよ。オナニー部屋でシコってたことがバレて虐められてるとでも?」
"你打算怎么说?说在自慰房打飞机被发现后被人欺负了?"
「はあ!?別に……っそんなんどうでもいいだろ!」 "哈!?才不是……这种事根本无所谓吧!"
「ああ、どうでもいい。いじめでも、オナニーでも、レイプでも。お前が俺の言いなりっていう事実さえあれば」
"啊,无所谓了。欺凌也好,自慰也好,强奸也好。只要你还得听我话这个事实存在就行"
潔が凛を睨む。ベッドの上で、裸で、凛に押し倒されている。こんな状況でよくも生意気な顔ができるなと思う。
洁瞪着凛。在床上,赤裸着,被凛压倒在身下。这种状况下居然还能摆出这么嚣张的表情。
「俺に犯されてからオナニーすんの怖えって絵心に言えよ」
"有种去跟绘心说你害怕被我上完后再自慰啊"
「……っ」 "……"
「知らねえうちに撮られてたのがトラウマでオナニーも満足にできなくなったから、こうやって俺に抱かれるときしか射精できないって、報告しろよ。無理矢理与えられる快楽にしか没頭できなくて困ってるって、せいぜい訴えろよ」
"因为不知不觉被偷拍成了心理阴影,现在连自慰都没法好好享受,只有被我上的时候才能射出来——这话你倒是去报告啊。说自己沉迷于被迫给予的快感很困扰——尽管去告状啊"
「……お前、マジ、殺す……!」 "......你这混蛋...我绝对要杀了你......!"
「そうやってずっと吠えてろ」 "你就继续这样吠叫吧"
凛がローションのキャップを外す姿を見ながら、潔は瞳に涙を浮かべていた。いい気味だ、と凛は思った。
看着凛拧开润滑液的瓶盖,洁的眼中泛起了泪光。活该——凛在心里冷笑道。
***
「で、次はどこ行くって?」 "那接下来要去哪儿?"
「……プール」 "……游泳池"
「「…………プール……」」 "「…………游泳池……」"
21歳は眉根を寄せた。 21 岁的他皱起了眉头。
26歳は「悪くない」という顔をした。 26 岁的男人露出了"还不错"的表情。
16歳の凛にしてみれば、両方キモい。 在 16 岁的凛看来,两个人都很恶心。
棚からぼた餅的な流れで潔の乳首を見たあと、どうにもこうにも眠れなかった凛は、結局いつも通り潔で抜いた。自慰のあとはよく眠れる。やっと気づいたことだが、潔でオナニーして眠るとこのおかしな空間に飛ばされるらしい。今後は潔で抜いたとしても眠らないようにしようと思う。理由は、年上の自分がうざいからである。
自从在机缘巧合下目睹了洁的乳头后,辗转难眠的凛最终还是像往常一样想着洁自慰了。发泄过后总能睡得很好。但直到现在他才发现,每次想着洁自慰入睡后似乎就会被传送到这个诡异空间。他暗自决定今后就算想着洁发泄也绝对不睡觉——理由很简单,因为年长的自己实在太烦人了。
「分かってるだろうな」 “你心里有数吧”
「分かんねーよ」 “有个屁数”
「写真撮ってこい」 “去给我拍照片来”
「死ね」 “去死”
「混んでる時期に行くな。プライベートプールとか行け」
"旺季别去。去私人泳池之类的吧"
「無理だろ死ね」 "办不到啊去死"
「ちっせーとこなら400万とかでレンタルできたと思う」
"小点的地方四百万左右应该能租到"
「高校生が一日で使う額じゃねえだろ死ね」 "这哪是高中生一天能花的钱啊去死"
いくら2億円超の年俸が約束されていると言っても、凛の金銭感覚は一般家庭のそれだ。どうのこうのと話す大人ふたりを凛は睨む。
即便年薪超过两亿日元,凛的金钱观仍与普通家庭无异。他瞪视着两个正在讨价还价的大人。
「つーかなんでプールなんだよ」 "话说为什么非得是游泳池啊"
「あちーから水浴びたいって、潔が」 "因为洁说'天气太热了想玩水'"
ホラー映画がそんなに怖かったのか、「早く記憶を塗り替えたい」「絶対におばけがいなそうな、明るくて楽しいところに行きたい」と潔が提案してきた。ブルーロックのガス温水器はどうせ明後日まで壊れている。自撮りを送られたあと、「トレーニングがてら遊びにいこう」と連絡が入り、なぜ次から次へと潔と会う予定が入るのか困惑している間に、「暑いし、冷たいとこがいい」と追撃も来た。断る理由はなかったが、ここでホイホイと受けてしまっては自分の好意がバレてしまうのではないかと凛は躊躇した。だがその直後、「海かプールでどう?」と連絡が来て、反射的に「わかった」と返事した。水着の魔力に負けた。フィールド外では、凛は潔に負け続けている。
或许是恐怖片实在太吓人,洁提出"想快点覆盖掉这段记忆""一定要去没有鬼怪的明亮快乐地方"。蓝色监狱的燃气热水器反正后天之前都修不好。收到自拍后,"就当训练顺便去玩吧"的消息发来,正当凛困惑为何与洁的约会接二连三时,又遭到"天这么热想去凉快地方"的追击。虽然找不到拒绝的理由,但凛犹豫着若轻易答应会暴露自己的心意。然而紧接着收到"去海边还是游泳池?"的讯息,他条件反射回复"知道了"——终究败给了泳装的魔力。在球场之外,凛对洁总是节节败退。
「海は?」 "海边呢?"
「向こうの親からNGが出た」 "对方家长不同意"
海なし県・埼玉に住む潔家にとっては、海は非日常のものらしい。「高校生ふたりで海は危ない」と止められたそうだ。結果的にふたりの家から行きやすい場所に、CMで聞いたことのある複合プール施設があったのでそこにした。
对于住在内陆县埼玉的洁家来说,海边似乎是个遥不可及的地方。据说因为"两个高中生单独去海边太危险"而被拦了下来。最终他们选择了离家较近的场所——某家在广告里见过的综合泳池设施。
「プールとか、見られるだろ」と21歳の凛。 "游泳池什么的,会被看到的吧"21 岁的凛嘟囔道。
「あいつの半裸が知らねーやつに見られるんだぞ。貸切にしろ」
"那家伙的半裸身子要被陌生人看到了。给我包场。"
「別にいいだろ、貸し切らなくても」と26歳の凛。 "无所谓吧,不包场也行。"26 岁的凛说道。
「見られたところで俺の世一だ。見せびらかせばいい」
"被人看到又怎样,老子可是世界第一。正好炫耀炫耀。"
「嫌だ。減る」 "不要。会掉价的。"
「何が減る?」 "少了什么?"
「俺が見る分」 "我看的那份"
「また満たせばいい」 "再填满就行了"
「はあ?」 "哈啊?"
21歳が26歳を睨む。どうやら21歳から26歳の間の五年間にも、なにか心境の変化があるらしい。
21 岁青年瞪着 26 岁的男人。看来在 21 岁到 26 岁这五年间,心境似乎也发生了某种变化。
「誰もが振り返る魅力的な男が、夜は俺の下でよがってる。気分いいだろ」
"那个让所有人回头的魅力男人,晚上却在我身下呻吟。很爽吧?"
「意味わかんねー。自分のもんがじろじろ見られるとか、普通に不快」
"完全听不懂。自己的东西被人盯着看,正常都会觉得不爽吧"
「……まあ、"まだ"、そうかもな」 "……也是,'现在'或许确实如此"
意味ありげに視線をずらす26歳に、21歳が「あ?」と肩を怒らせた。凛(16)は、こいつらって煽んねえと会話もできねえのかな、人間未満だなと思っていた。
面对 26 岁男人意味深长移开视线的举动,21 岁青年「哈?」地耸起肩膀表示不满。凛(16 岁)心想这群家伙不互相挑衅就聊不下去吗,简直连人类都算不上。
「どう考えても、わざわざモブどもに見せてやる必要はないだろ。あいつは俺だけ見てればいい。俺も同じだ。あいつだけ見ていればいい。他の奴らの存在は不快でしかない」
「怎么想都没必要特意给路人甲乙丙看吧。那家伙只要看着我就行。我也一样。只要看着那家伙就够了。其他人的存在只会让人不快」
「0か1しかない状態じゃ何も発展しない。ふたりきりじゃ出来ねえことがある」
「只有 0 和 1 的状态下什么都无法发展。有些事情是仅靠两个人做不到的」
「ふたりだけじゃ出来ないことに興味ねえよ。なんの問題もない」
「我对只有两个人做不到的事没兴趣。这根本不成问题」
「問題はある。お前、"世一"って言いなれてねえだろ。付き合って数年経つくせに」
"有问题。你根本不习惯叫'世一'对吧?明明都交往好几年了。"
21歳が目を吊り上げる。凛(16)は、なんでそうやって年数を濁すんだと歯ぎしりした。付き合った年数が分かれば逆算できるのに!いったい俺はいつ潔と付き合い始めんだよ!?
21 岁的男人吊起眼角。凛(16 岁)气得直磨牙——为什么要这样含糊其辞地说年数啊!要是知道交往年数就能倒推出来了!我到底是从什么时候开始和洁交往的啊!?
「ふたりでいるとき、『おい』とか『なあ』って呼んでるな」
"两个人独处的时候,你总是叫'喂'或者'我说'吧。"
「……だったらなんだよ。ふたりしかいねえんだからいいだろ」
"……那又怎样。反正只有我们两个人,有什么关系。"
「ふたりしかいねえから名前で呼ばないんだ。他人がいたら、名前で呼ぶ。人ごみの中、世一が遠くに行ったらなんて呼び止める?」
「就咱俩的时候才不叫名字。有外人在场,就会叫名字。要是在人群里,世一走得老远,你该怎么喊住他?」
「俺の声だけであいつは振り向く」 「只要听见我的声音,那家伙就会回头」
「最初はな。そのうち、遊ばれ始める。変わらねえ男には……刺激のないやつには、あっさり愛想をつかす。飽き性なんだ」
「刚开始是这样。等玩腻了就开始变卦。对一成不变的男人……对毫无新鲜感的家伙,转眼就会失去兴趣。他可是个喜新厌旧的主」
26歳が肩を竦める。潔に飽きられる?考えたこともない言葉に凛(16)は「はあ?」とつい漏らした。凛に人生を変えられた潔が凛に飽きるなど、あるはずがない。見当違いのことを話しているにも関わらず、26歳の自分からは、年の功ともいえる説得力を感じる。
26 岁的男人耸了耸肩。被洁干脆地厌倦?凛(16 岁)不禁脱口而出「哈啊?」——这种可能性根本不存在。被凛彻底改变人生的洁,怎么可能对凛感到厌倦。虽然对方明显在胡扯,但从 26 岁的自己口中说出来,竟带着岁月沉淀般的说服力。
「まだお前たちは、オンリーワンであることが最高だと思ってる。でもそのうち、その特別感に慣れる。オンリーワンよりナンバーワンだって、教えてやりたくなんだよ」
"你们现在还觉得独一无二就是最好的。但很快你们就会习惯这种特殊感。到时候我非得告诉你们,比起独一无二,成为第一才更重要"
そのために便利なのがモブ共だ、と26歳の凛は言葉を締めた。つまり味変ということか?ラーメンにおける胡椒とかラー油みたいなことか?慣れない話題に首を傾げながらも16歳が理解しようとしていると、21歳が低く背筋を曲げる。
26 岁的凛用这句话作为总结——所谓"便利的群众"就是这个意思吧?就像拉面里的胡椒或辣油那样的调味品?16 岁的少年歪着头努力理解这个陌生话题时,21 岁的那位突然弓起背脊。
「黙って聞いてりゃベラベラと、喜色悪いこと言いやがって……」
"安静听着就滔滔不绝地说些恶心人的话......"
距離を置きたくなるくらい低い声が聞こえた。凛(16)は、兄貴が怒ったときに似てんな……と客観的に思った。
那压低到令人想保持距离的声音传来。凛(16 岁)客观地想着:真像大哥生气时的样子啊......
「なんでわざわざモブに与えるような真似しねえといけねえんだ、あ?」
"干嘛非得装模作样给路人看啊?"
「与えるわけねえだろ。見せびらかすだけだ。混んでるビーチに行って、海パン着せて放置する。そのうちナンパされるから、世一が困り始めた頃合いにかっさらう」
"谁说要给了?就是显摆而已。带到人多的海滩,套上泳裤晾着。等被搭讪得差不多,趁世界第一开始犯难的时候直接掳走"
「我が物顔でベタベタ触られたらどうすんだよ」 "要是被那家伙肆无忌惮地乱摸怎么办"
「許すわけねえだろ。あそこまで育てたのに」 "怎么可能允许。那可是我一手养大的"
「だからそのリスクを最初から回避してんだろ、俺は」
"所以我从一开始就在规避这个风险啊"
「ローリスクローリターンだ。オッズの低さに世一は飽きる」
"低风险低回报。世界第一可受不了这么低的赔率"
「お前が飽きられる程度のクソつまんねえ男なだけだろ」
"你不过就是个无聊到让人生厌的烂男人罢了"
年上ふたりが揉め始めた。面倒な気配がしたので、凛はさっさと目をつぶってここから退散することにした。
年长的两人开始争执起来。感受到麻烦的气息,凛迅速闭上眼睛选择逃离现场。
***
容赦ない日差しから逃げるようにして、潔がプールに飛び込んだ。半日レンタルで1500円の浮き輪にはひまわりが描かれていて、潔の笑顔に花を添える。
为了躲避毒辣的阳光,洁纵身跳进了泳池。那个租金半天 1500 日元的泳圈上画着向日葵图案,为洁的笑容更添光彩。
「走んな、転ぶ」 “别跑,会摔倒的”
「転ばねえって。凛も来いよ!冷たいよ!」 “才不会摔呢!凛也快来!水可凉快了!”
浮き輪に捕まって足を浮かせる潔がおいでおいでと手を振る。胸筋が浮き輪に乗っかって柔らかく潰れるのを見てしまい、ぎぎぎと首を逸らして耐えた。
抓着泳圈漂浮的洁挥着手示意"过来过来"。瞥见他胸肌压在泳圈上柔软变形的模样,我嘎吱一声别过脸强忍冲动。
夏も盛りで、プールにはどこもかしこも人がいる。小学校が夏休みに入ったのかもしれない。空に高く伸びる子どもの笑い声に、浮き輪に顔を乗せてリラックスした潔が「盛り上がってんなー」と呑気に感想を言う。重たい前髪の一部が水に浸って、蛍光色の海パンともにゆらゆら揺れていた。
正值盛夏,泳池里到处人头攒动。或许是小学生放暑假的缘故。听着高空传来的孩童笑声,把脸搁在泳圈上放松的洁悠哉感叹"真热闹啊"。他沉重的刘海末梢浸在水里,与荧光色泳裤一同随波荡漾。
「いやー、プール正解。すげえ気持ちー」 "果然来泳池是对的。超级舒服——"
人混みは嫌いだが、その意見には賛成である。真夏の殺人的な太陽の下にいるのに暑さを感じない。日差しに照らされた肌がプールの水で冷やされて、ずっとこの中にいられる気がする。凛も潔に倣って、浮き輪に捕まって足を浮かせた。
虽然讨厌人群,但对此观点深表赞同。置身盛夏毒辣阳光下竟不觉炎热。被日光灼烤的肌肤经池水冷却,让人想永远泡在这里。凛也学着洁的样子抓住泳圈浮起双腿。
「!?」 "!?"
「もががが!?」 "呜哇哇!?"
ふたり分のアスリートの体重を支えるには力不足だったようで、浮き輪はふたりを巻き込んで転覆した。あっという間に頭までびしょ濡れになる。
看来泳圈承受不住两位运动员的体重,带着两人一起翻了个底朝天。转眼间连头发都湿透了。
「しくった……」 "搞砸了……"
「あはは!気持ちいいじゃん!えいっ」 "啊哈哈!超舒服的对吧!看招!"
潔が凛に向かって水を弾く。凛も負けじと水をぶっかける。潔は仕返しとばかりに更に水をかける。何度も繰り返してばっしゃばっしゃと水面を荒らしていると、ライフセーバーに笛を鳴らされた。
洁朝着凛弹水花。凛也不甘示弱地泼水回击。洁立刻加倍奉还。两人你来我往地拍打着水面,水花四溅,直到救生员吹响了哨子。
「お兄さんたち!あんまり水を立てないで!」 "两位小哥!请不要剧烈玩水!"
「あーっ、ごめんなさい!」 "啊——对不起!"
「仲いいのもほどほどにね!」 "关系好也要适可而止啊!"
商業プールの監視員を兼ねているだけあって、注意すら爽やかだ。「仲良くねえよ」と反論する間もなく、潔は「先着一名!」といち早く浮き輪に捕まってまた足を浮かせた。
不愧是兼任商业泳池监督员,连提醒都这么清爽。"谁跟他关系好啊"——还没等洁反驳出声,对方就抢先抓住泳圈喊了句"先到先得一名!",再次让双脚离开了池底。
「りーん、引っ張ってぇ」 "凛~拉我嘛~"
「自分で歩け」 "自己走"
「こっから深ぇんだもん」 "从这里开始就很深了"
潔の指さす先には「この先水深1.6メートル」の文字。
洁所指的方向写着"前方水深 1.6 米"的字样。
「お前ここ入れねえだろ」 "你这儿进不去的吧"
「なんで?」 "为什么?"
凛は「危険!子どもの進入禁止!」と書かれた立て札を指さした。
凛指着写有"危险!儿童禁止入内!"的告示牌。
「……はあ〜!?」 "……哈啊~!?"
「保護者同伴ならいいらしい。良かったな」 "好像有监护人陪同就可以。太好了呢"
「ちょっ……むしろ俺が保護者だろ!?俺いっこ上!俺先輩!」
"等……明明我才是监护人吧!?我比你大一岁!我是前辈!"
ぎゃいぎゃい騒ぐ潔にまた水をぶっかける。水面に反射した太陽が眩しかったので、凛は潔ごと浮き輪を引っ張って影に入った。洞穴の中を通るような構造だ。ところどころから小さな滝のように水が降り注ぐ。凛は滝に向かっていって、潔もろとも水を浴びる。計三箇所、すべての滝を浴びて潔を水浸しにする。三回目の直前、潔が「もういいって!」と騒いだので、凛に浮き輪の舵を任せるとどうなるかを思い知らせるために、長めに滝の中で佇んだ。涼しい。
我又往吵吵嚷嚷的洁身上泼水。水面反射的阳光太刺眼,凛干脆连人带泳圈把洁拖到阴影处。这构造像是穿过洞穴一般,各处都有小瀑布般的水流倾泻而下。凛朝着瀑布走去,连带着洁一起淋水。总共三处,把所有瀑布都淋遍让洁浑身湿透。在第三次之前,洁嚷嚷着"已经够啦!",为了让他明白把泳圈方向交给凛会有什么下场,特意在瀑布下多站了会儿。真凉快。
「うぎゃー!」 "呜哇——!"
「フー……」 "呼……"
「なあこれ滝行じゃねえから!出ろバカ!」 "喂这又不是瀑布修行!快出去笨蛋!"
潔が浮き輪を乗り越えて、凛の首に巻き付いた。潔の腕が凛の肩に乗る。背中にぴったりと潔の上半身が張り付き、凛の心臓が一度止まった。濡れた体はそれでも温かく、お互いの肌で温められた水がぬるくふたりの肌を摩擦する。凛は昨夜のことを思い出した。潔から唐突に送られてきた半裸の自撮り。噛まれて赤くなった乳首を唾液まみれにする想像をして抜きまくった。情けないことに、念のため3枚保存した上お気に入り登録したことも。
洁跨过游泳圈,将手臂缠绕在凛的脖子上。洁的手腕搭在凛的肩头,整个上半身紧贴着他的后背,让凛的心脏瞬间停跳。尽管浑身湿透,彼此的体温却让肌肤间的水变得温热,在两人身体摩擦间逐渐升温。凛突然想起昨晚——洁突然发来的半裸自拍。他幻想着被咬得泛红的乳尖沾满唾液的模样自渎了无数次。更丢人的是,他不仅保存了三张备份,还特意设为收藏。
「……!!」 "……!!"
「?どした、凛……わぁっ!」 "?怎么了凛......哇啊!"
凛はとっさに、潔を背負ったまま腕をつかんで、自分ごと沈んだ。息が止まるまで頭を冷やさねば、と思った。息が止まる前に潔が暴れだしたので、腕は離してやった。
凛猛然拽着背上的洁一同沉入水中。他必须让头脑冷静到窒息为止。但在窒息前洁就开始挣扎,他只好松开了手臂。
「げっほ!ゴホッ!何すんだ!殺す気か!?」 “咳咳!咳!你干什么!想杀人吗!?”
「こっちのセリフだクソ野郎……」 “这话该我说吧混蛋……”
「いやこっちのセリフだわバカ野郎!」 “不,这话该我说吧白痴!”
ふたりでむせながら道沿いに進むと、いつの間にか流れるプールに合流していた。浮き輪に横抱きにされるような体勢で、男女が波に運ばれている。子どもの遊泳禁止エリアだからか大人しかいない。大学生だろうか。
两人边呛咳边沿路前行,不知不觉竟汇入了漂流池的流水道。只见男女们以被泳圈横抱的姿势随波逐流。或许是儿童禁泳区的关系,池里全是成年人。看起来像是大学生。
浮き輪を引っ張る凛の腕に、潔が暇つぶしのように水をかける。「水鉄砲のやり方知ってる?」と聞いてきたので、「なめんな」とまあまあの水圧で頭にぶっかけてやった。手慰みに遊びつつ流されているうちに、だんだんと水深が浅くなっていく。今、0.9メートルだ。
凛拽着游泳圈的手臂上,洁像打发时间似的往他手上泼水。"知道水枪怎么玩吗?"听到这问题,凛回了句"少瞧不起人",就用中等水压往对方头上滋去。两人嬉闹着随波逐流时,水位渐渐变浅。现在水深 0.9 米。
まずい。凛は下半身に目を向ける。まだギンギンに勃起している。半裸でくっついてきた潔のせいだ。風呂上がりのピュアな姿、突然のエロい自撮り、必殺技のようなバックハグ。他の男にも同じことをしているかもしれないと思うと腸が煮えくり返る。
不妙。凛低头看向自己下半身。那里依然精神抖擞地挺立着。都怪半裸着贴过来的洁。刚出浴的纯真模样、突如其来的色气自拍、必杀技般的背后拥抱。想到他可能也对其他男人这样,凛的肠子都快气打结了。
思えばずっとそうだ。凛にまとわりついてヨガまで真似してきたストーカー気質なところ、分不相応にも「ライバルだ」と真っ向から宣言してきた生意気さ。バスで隣に座って映画をおねだりする厚かましい性格。ポテトを齧りながらファミレスに居座った二時間。「凛の家のテレビなら呪われてもいい」なんて言う失礼なところ。ベッドに座る無防備さ。構いだがりのくせに「りん~」なんて言ってくる、甘えん坊なところ。
仔细想来一直如此。死缠烂打跟着凛连瑜伽都要模仿的跟踪狂特质,不自量力宣称"我们是竞争对手"的狂妄。在公交车上挨着坐讨要电影看的厚脸皮。在家庭餐厅啃着薯条赖着不走的两个小时。"要是凛家的电视就算被诅咒也没关系"这种失礼发言。毫无防备坐在床上的姿态。明明爱管闲事却用"小凛~"这种撒娇语气。
高校二年生にもなってこんな振る舞いができるということは、これがずっと許されてきたということだ。この男はこの16年間、この怒涛のかわいげだけで世間を渡り歩いていたに違いない。つまり、誰にでもやっている。俺だけじゃない。そういうところがムカつく。凛は自分の性欲と潔の振る舞いに振り回されててんてこまいになっているのに、潔はこれが自然体なのだ。
都高二了还能做出这些举动,说明这些行为一直被纵容着。这家伙肯定靠着这波汹涌的可爱劲头在社会上混了十六年。也就是说,他对谁都这样。不是只对我。这种地方最让人火大。凛被自己的性欲和洁的举动耍得团团转,洁却觉得这一切理所当然。
ひとりよがりだ。凛ばかりが。 真是自以为是。只有凛一个人这样。
焦りと苛立ちを誤魔化すために、深く息を吐いて周りに目を向けた。太陽光が水面に反射して眩しい。目を細めていると、潔が「何見てんの」と凛の視線の先に目を向ける。
为了掩饰焦躁与不耐,他深深吐了口气环顾四周。阳光在水面反射得刺眼。正当他眯起眼睛时,洁顺着凛的视线方向问道:"在看什么?"
「なにも」 "没什么"
凛は浮き輪に軽く捕まって、体の力を抜いてけのびする。これで股間は見えないだろう。
凛轻轻抓住泳圈,放松身体开始漂浮。这样应该就看不见胯下了吧。
「交代しろ。散々引っ張ってやったろ。俺は馬じゃねーぞ」
"换人。我都陪你跑这么久了。我又不是马。"
「にしては馬場すげー悪かったけどね……てか、なに急に」
"不过你这马场可真够烂的......话说,突然怎么了?"
「なんでも」 "没什么"
勃起を誤魔化すためなんて言えるか。立ち上がった潔の背中に水が伝うのが見えて、これはこれでまずいなと思っていると、潔が「あ」と思いついたように口を開く。凛に顔を近づけて、耳元で囁く。
总不能说是为了掩饰勃起吧。看着站起身的洁背上滑落的水珠,正想着这样也很不妙时,洁突然"啊"地灵光一闪凑近凛的耳边低语。
「もしかして、勃っちゃった?」 “该不会…你硬了吧?”
心臓が強めに止まった。 心脏猛地停跳了一拍。
「水着のおねーさんめちゃくちゃいるもんなー。凛も意外とスケベなんだな」
“毕竟泳装美女到处都是嘛~没想到凛也意外地好色呢”
「ちげえよ!!!!!」 “才不是啊!!!!!”
プールの波が割れるほどの大声が出た。周りにいた何組かがなんだなんだと振り返る。
泳池的水花被这声大吼震得四溅。周围几对情侣纷纷回头张望。
「そんな力いっぱい否定しなくてもいいのに。いいんじゃん?健全で」
"不用这么用力否认啦。很正常不是吗?多健康啊"
「だからちげえって言ってんだろ人の話聞けこのボンクラ目ぇついてんのか」
"所以老子说了不是啊你他妈耳朵聋了还是眼睛瞎了"
「そうやって焦るのがより怪し〜」 "越是这么着急就越可疑呢~"
潔が顔を傾けて、凛の股間を確認しようとする。勃起してるのは事実だ。ただ原因がちがう。どちらにせよまずい。凛は「水面光っててよく見えねー」と嘯く潔の頭をチョップした。
洁歪着头,想要确认凛的下身状况。勃起是事实,只是原因不同。无论如何都很不妙。凛对着嘟囔"水面反光看不清啦"的洁就是一记手刀。
「いだ!」 "好痛!"
「お前いい加減にしろ」 "你给我适可而止"
心臓が痛い。なんとかいつも通りの顔を作ると、潔がムッとした顔で凛を睨む。
心脏隐隐作痛。凛强撑着摆出平常表情时,洁正用恼怒的眼神瞪着他。
「なんだよムキになっちゃって。勃ってねえなら追いかけてこいよ!」
“干嘛这么较真啊。要是没硬起来就追上来啊!”
潔はプールのヘリに手をかけて陸に上がる。凛と浮き輪を置いて去っていく後ろ姿を、凛は震えながら見つめた。
洁把手搭在泳池边缘上了岸。凛颤抖着目送他放下泳圈离去的背影。
「遅くね?」 “太慢了吧?”
「お前がうろちょろするからだろ」 “还不是因为你到处乱晃”
潔の問題発言のせいで勃起を鎮めるのに時間がかかって、すぐに追えなかった。やきもきしている間に潔は姿をくらました。プールで冷えた体は熱気を纏い、すでに汗をかいている。
因为洁那番出格发言,我花了好些时间才平复勃起状态,没能立刻追上去。正焦躁间,洁的身影已消失不见。被泳池凉透的身体此刻裹着热气,早已渗出汗来。
潔は園内の、ドーム状の日よけの中にいた。大岩をイメージしているのか、中がくりぬかれている。流れるプールからすこし離れており人通りはない。子どもの甲高い声だけが遠く聞こえる。
洁正在园区内穹顶状的遮阳棚里。那造型像是块被凿空的巨岩,与漂流池稍有距离,不见人影。只有孩童的尖叫声远远传来。
「やっぱ勃ってたんじゃん」 "果然还是勃起了吧"
「だから違ぇって言ってんだろ、セクハラすんな」 "都说了不是啊混蛋,别性骚扰我行不行"
凛は潔に水を渡す。すぐそばの自販機で買った、飲みさしだ。潔は喉を鳴らして飲み始め、あっという間に飲み干す。喉が渇いていたならもう一本買ってやろうか。自販機の方に目を向けると、潔が口を開いた。
凛干脆利落地把水递了过去。这是从旁边自动贩卖机买来的,已经喝过几口的饮料。洁喉咙滚动着开始喝起来,转眼间就一饮而尽。要是他还口渴的话,要不要再买一瓶呢。正当凛把视线转向自动贩卖机时,洁开口了。
「……俺といるんだから……」 "......既然你现在是和我在一起......"
「あ?」 "啊?"
「俺といるんだから、よそ見すんなよ。つまんねーよ」
"既然和我在一起就别东张西望。真没劲"
「してねえ」 "没看过别人"
「……」 "……"
「俺がいつお前以外を見た?」 "我什么时候看过除你以外的人?"
サッカーでもそれ以外でも、同じことである。潔にばかり心を動かされて、未来の自分に邂逅するほどおかしくさせられている。それなのに「よそ見すんな」とは、どれほどアホなのか。鈍感さも行き過ぎると罪だ。ただでさえ余罪が多い男なのに、この期に及んで新しい罪を犯すとは。極刑である。呆れた気持ちで潔を見下ろすと、返答が予想外だったのか、潔が言葉に詰まる。
无论是在足球还是其他事情上,情况都如出一辙。他总是被洁世一牵动心神,甚至可笑到仿佛遇见了未来的自己。明明如此,却还要说"不准看别处",简直愚蠢透顶。迟钝到这种地步简直是一种罪过。明明已是劣迹斑斑的男人,事到如今还要犯下新罪。罪无可赦。用无奈的眼神俯视着洁世一时,对方似乎没料到会得到这样的回答,一时语塞。
「……俺以外、見てないの?」 "……除了我以外,你没在看别人吧?"
「見てねえだろ。他になに見んだ。水か?」 "当然没看啊。还能看什么?水吗?"
ここは海じゃないので、砂浜もなけりゃトンビもいない。鎌倉の海を見なれた凛からすると、極彩色の園内は眩しすぎる。添加物まみれの施設と太陽の照り返しから目を逸らした先にはオーガニックな潔がいて、凛は釘付けになる。何度目を逸らしても、結局潔を見てしまう。
这里并非海边,既没有沙滩也不见盘旋的海鸥。对于看惯镰仓海景的凛而言,游乐园里绚烂的色彩实在太过刺眼。当他将视线从满是人工设施的园区与刺目的阳光反射中移开时,映入眼帘的是天然去雕饰的洁——凛的目光就此凝固。无论尝试移开视线多少次,最终总会回到洁身上。
事実を伝えたのに潔が話し出さないので、凛も潔の横に腰を下ろした。濡れた床が気持ち悪いが、ひんやりした壁が心を落ち着かせてくれる。日陰だったので、潔の言葉を待ってやる気分になった。
明明已经告知了真相,洁却依然沉默不语。凛索性在洁身旁坐下。潮湿的地板触感令人不适,但沁凉的墙面让心绪逐渐平静。置身阴凉处等待洁开口的间隙,他竟生出了几分耐心。
「俺、家族三人で50ギガ使えるプランなの」 "我家三个人共享 50G 流量套餐"
「なんの話だよ」 "你在说什么啊"
「通信料の話。フィジカルスタジオってWi-Fi弱いだろ?映画見てる時たまに5Gになってるみたいで。先月俺だけで42ギガ使ってたらしくて、昨日怒られた」
"就是流量的事。物理工作室那边 Wi-Fi 信号很差对吧?看电影的时候经常会切换到 5G 网络。上个月好像光我一个人就用了 42G,昨天被骂了"
妥当な説教である。まさかと思うが、家族相手にもこのかわいげで丸め込んでいるのか。とんでもない男だ。
这顿教训合情合理。该不会连对家人也用这副可怜相蒙混过关吧。真是个不得了的家伙。
「でも俺、まだ凛と、ブルーロックで映画見るつもり。だって、映画見てたら……凛、話してくれるだろ」
"但我还打算和凛一起去看《蓝色监狱》的电影。因为看电影的时候...凛会跟我说话的吧"
「……?」 "......?"
「俺、いっつも理由探してんだよ。凛に話しかける理由。お前は……ぜんぜん、分かんないかもだけど……」
"我总是在找理由啊。和凛搭话的理由。你可能...完全不会明白吧......"
「……なんの話だよ」 "......你在说什么啊"
潔の意図が読めない。潔は体育座りのまま、体を小さくして足下を見ている。むき出しのうなじに水滴が伝う。子どもの声と共に風が吹いて、凛の前髪を散らした。潔の声が、風に乗る。
我读不懂洁的意图。洁依旧抱着膝盖蜷缩着身子,低头盯着地面。裸露的后颈滑落水珠。孩童的嬉闹声随风飘来,吹散了凛的刘海。洁的话语乘着风传来。
「……告白は……、……三回目のデートでしろって……いう、話……」
"......告白要......等到......第三次约会才行......有这样的......说法......"
「…………は?」 "......哈?"
潔の声は水滴が地面に落ちる音よりも小さかったが、それでも響いた。凛は瞬きも忘れて潔を見た。潔は相変わらず、下を見ていた。
洁的声音比水珠坠地的声响还要微弱,却依然清晰可闻。凛忘记了眨眼,直直望着洁。洁始终没有抬头。
理解に時間がかかる。告白?デート?三回目……?潔はこのプール遊びを、三回目のデートだと思っているのか?一回目と二回目なんだよ。待った、二回目は昨日凛の家に来たことだとして、もしかして池袋で微妙な映画を見たあの日を一回目だと思っているのか。……だとしたら、ブルーロックでランニングしながら映画見たことはデートに加算されてねえのかよ。というかそもそも、凛と出かけることをデートだと思っているのか?
理解这件事需要时间。告白?约会?第三次……?洁难道把这次泳池玩耍当成第三次约会了?明明第一次和第二次都还没算清楚。等等,如果昨天去凛家算第二次的话,难道他把在池袋看那部微妙电影那天当作第一次?……要这么说的话,在蓝色监狱边跑步边看电影那次根本就没被算进约会次数里啊。话说回来,他该不会把和凛出门都当成约会了吧?
いや、デートの回数については今は主題じゃない。告白……?
不,现在问题的重点不是约会次数。告白……?
凛は昨夜の夢で、いつ潔と付き合い始めるのか分からず歯ぎしりしたことを思い出した。まさか、今なのか?
凛想起昨晚在梦里因为不知道什么时候开始和洁交往而咬牙切齿的事。该不会,就是现在?
「嫌なら、気持ち悪いなら……そう言ってくれていいし、映画見よってもう言わない」
「如果你觉得讨厌、觉得恶心……直接说出来就好,我以后也不会再提看电影的事了」
潔の声がどんどん沈んでいく。状況を処理できずに固まった凛に対して、ネガティブな印象を抱いたらしい。
洁的声音越来越低沉。面对僵在原地无法处理状况的凛,他似乎产生了负面印象。
「今までどおり、ただのライバルでいる」 "像以前那样,就当普通对手相处"
潔の呼吸が不自然に乱れる。焦った凛は、咄嗟に潔に向き直る。
洁的呼吸突然变得紊乱。慌了神的凛急忙转身面对他。
「んなこと一ミリも言ってねえだろ」 "老子半句话都没说过这种屁话"
勢いあまって、髪が混ざり合う距離まで近づいてしまった。急な凛の気配に驚いたのか、潔が顔を上げる。瞳が赤く潤んで、目じりに溜まっている。虹彩をくゆらすそれは、瞬きと共に粒になった。凛はそれが頬へ落ちる前に、涙になる前に指で拭う。潔はぎゅうと目をつぶって、ぱちぱちと瞬いた。
一时冲动之下,两人靠近到发丝交缠的距离。或许是被突然贴近的凛吓到,洁猛地抬起头。他的眼眸泛着湿润的红色,眼角蓄着水光。那在虹膜上摇曳的液体,随着眨眼凝成水珠。凛赶在它滑落脸颊之前,在它化作泪水之前用指尖拭去。洁紧紧闭上眼睛,睫毛像蝶翼般急促颤动。
「……一ミリってなんだよ、こういう時、普通は『一言も』って言わない?」
"……一毫米算什么啊,这种时候正常人都会说'一个字都不许说'才对吧?"
「なんでもいい、言い方なんて」 "怎样都好,说法根本不重要"
雑に切り捨てた凛に、潔は「そうかも」とあっさり納得する。
面对凛粗暴的打断,洁却干脆地接受了:"说得也是呢"
「嫌じゃない?」 "不讨厌吗?"
「……嫌じゃない」 "……不讨厌"
「……そうなんだ」 "……这样啊"
こんな一言で、凛の気持ちの何が伝わるのか。「嫌じゃない」なんて、それだけでは表しようがないのに。だが凛は、言葉にできない。少し体を傾けるだけで触れられそうな距離に、潔がいるのに。そこまで思って、「バカか」と舌打ちした。
仅凭这样一句话,又能传达出凛怎样的心意呢。"不讨厌"这种话,单凭这个根本无从表达。但凛却无法用言语说出口。明明洁就在稍稍倾身就能触碰到的距离。想到这里,他咂舌自嘲"真是笨蛋"。
想っていても触れられない?家に呼んでも目も合わせられない?隣にいても声をかけられない?ちがう、全部しなかったんだ。「分からない」「浅ましい」と理由をつけて、凛は何も動かなかった。
想着却触碰不到?邀到家里却不敢对视?近在身旁却开不了口?不,是根本什么都没做。用"不明白""太卑鄙"当借口,凛始终无动于衷。
分からないことが悪いんじゃない。それを免罪符にして、与えられるときめきを享受するだけに甘んじる怠惰さこそが悪い。「デート」と呼ばれたあれこれも、関係を変える一言も、全部潔が主導で、凛はただ待つだけ。負担をかけたはずだ。現に潔は瞳に涙を浮かべて、声を震わせている。「デート」の度に、凛は潔にばかりコストを払わせていた。
不明白并非过错。错的是把无知当免罪符,甘于被动享受他人给予的心动这种怠惰。那些被称为"约会"的种种,那些改变关系的告白,全由洁主导,凛只是等待。这必然造成了负担。此刻洁的眼中正噙着泪水,声音发颤。每次"约会",凛都让洁独自承担所有成本。
そんなの、陵辱願望だの恋心だの以前に、凛らしくない。自分たちは、対等であるべきだ。
这根本与凌辱癖或恋慕无关,纯粹不像凛的作风。他们本该是平等的。
何分そうしていたのか分からない。陽光で熱された体が冷え切ったころ、潔がぶるっと身震いしたので、「外出るぞ」と促した。潔が気まずそうにもぞもぞしていたので、腕を掴んで屋外へ引っ張り出す。あれこれと考えることが多すぎてすぐにプールを楽しむ気にもなれず、プールサイドの屋台でたこ焼きやホットドックを食べた。
不知僵持了多久。当被阳光灼热的身体彻底冷却时,洁突然打了个寒颤,凛便催促道"出去吧"。见洁尴尬地扭捏着,干脆抓住他手腕拽到室外。思绪纷乱得根本无心享受泳池,最后只在池边小摊吃了章鱼烧和热狗。
「うまっ。そっちは?」 "好吃。你那边的呢?"
「うまい」 "好吃"
「一個ちょうだい」 "给我一个"
「タコなくていいなら」 "不要章鱼的话可以给你"
「なんでだよ。逆に手間だろ。主役もくれよ」 "为什么啊。这样反而更麻烦吧。把主角位置让给我啦"
軽口の温度感はいつもどおりだ。だがなんとなく、目が合わない。あの大きな瞳が凛を射抜いていないと、ぜんぜん物足りない。凛は潔のホットドックを奪ってかじりつく。
开玩笑的语气还是一如既往。但总觉得,他的视线在躲闪。当那双大眼睛不再直勾勾盯着凛看时,总觉得缺了点什么。凛抢过洁的热狗咬了一大口。
「あっ?あーー!」 "啊?喂——!"
「うまい」 "好吃"
「お前ひとくちで半分食ったの!?500円もしたのに!味わえバカ!」
"你一口就吃掉了一半?!这可是要 500 日元啊!给我好好品尝啊笨蛋!"
「もっとマスタードかけろ」 "再多加点芥末酱"
「まさかさらに食うつもり!?味わうなバカ!」 "你该不会还想继续吃吧!?别光顾着吃啊笨蛋!"
潔の調子が戻ってきた。凛はゴミを捨てて立ち上がる。「スライダー行くぞ」と声をかけると、潔はやっと凛の目を見た。
洁的状态终于恢复了。凛扔掉垃圾站起身来。"去玩滑梯吧"他招呼道,洁这才终于抬眼看向凛。
凛は目につくすべての施設に挑んだ。極彩色で眩しいだの人が多すぎるだの文句を言っていられなかった。
凛挑战了所有显眼的游乐设施。他根本没空抱怨那些色彩过于艳丽刺眼或是人潮拥挤之类的事。
まず、超スピードを売りにしたスライダーに向かった。縦に連結したふたり用の浮き輪に乗った時、無防備に開脚した潔を見てしまい、また勃起の心配をした。公開したばかりだというブーメラン型の巨大なスライダーでは、ふたりの体重差が遠心力で加算されたのか、大きく曲がる瞬間にちょっと潔が浮いた。まん丸になった潔の目が見ものだった。日差しが強くなってきた午後には、浮き輪を日よけにしてソフトクリームとかき氷を食べた。気温に負けてアイスは3分でドロドロに溶けた。かき氷が溶けて色付き砂糖水と化したものをふたりで飲んで、次は水上アスレチックへ。浮力を利用したアスレチックで凛が身長・体重制限に引っかかり、潔は「デカけりゃいいってわけじゃないんだ」と感心していた。フリーフォールのスライダーが空いていたので5周したあと、目が回ると訴えた潔を休ませるため、また流れるプールに行った。もう凛は滝には挑まなかったし、潔も脱走せず、凛の横で時折笑った。
他首先冲向以超高速为卖点的滑水道。当两人共乘的串联泳圈开始下滑时,凛无意间瞥见毫无防备张开双腿的洁,又开始担心自己会勃起。在号称刚开放不久的巨型回旋镖滑道上,或许是两人体重差在离心力作用下叠加,急转弯时洁差点被甩飞出去——那双瞪得滚圆的眼睛堪称绝景。午后阳光渐烈时,他们用泳圈当遮阳伞,吃着软冰淇淋和刨冰。高温让冰淇淋三分钟就化成了黏稠的奶浆,刨冰融化成彩色糖水后也被两人分着喝光。接着转战水上闯关项目,利用浮力的设施却因凛的身高体重超标无法体验,洁感慨道"原来不是个子大就占便宜啊"。趁着自由落体滑道没人连玩五轮后,凛带着喊头晕的洁去漂流河休息。这次凛没再挑战瀑布,洁也没逃跑,偶尔还会在凛身旁轻笑。
*
プールからすぐのシャトルバスが、潔の家近くの主要駅まで走るらしい。凛はバスよりも快速特急に乗る方が安くて速いので、そちらに乗ることにした。もっと一緒にいたいなんて、言葉にできるふたりではない。
泳池边的接驳车似乎能直达洁家附近的主干车站。但凛发现坐快速特急比巴士更便宜快捷,便决定改乘电车。他们都不是会把"想再多待会儿"这种话说出口的类型。
バスは15分後に発信する。イカ焼きの屋台を見て「うまそー」と言う潔に、「晩飯あんだろ」と水を差す。本題を切り出す勇気を持てないまま、西日を避けるように木の陰に隠れた。
巴士还有十五分钟发车。看到烤鱿鱼摊位的洁嘟囔着"好香啊",凛泼冷水道"你晚饭有着落吧"。始终鼓不起勇气切入正题的两人,像躲避西晒般躲进了树荫里。
「すげー日焼けしたかも。皮むけるかなあ。凛は?」 「可能晒得太厉害了。会不会脱皮啊?凛你呢?」
「赤くなって終わるタイプ」 「我是晒红就结束的类型」
「へえ。冴も結構白いもんね」 「嘿。冴你也挺白的嘛」
「兄貴は割とスキンケアしてる」 「老哥平时还挺注重皮肤护理的」
「え、そうなの?俺もやった方がいいのかな……」 "诶,真的吗?那我也该试试看吗……"
こんな話、ブルーロックの中でもできる。じれったさに苛立っていると、潔がスマートフォンの時計を確認して、「そろそろ行くわ」と呟いた。この後潔がなんて言うか、手に取るように分かる。今日はありがとう楽しかった、俺変なこと言っちゃったけど、これからも普通に話してくれると助かる……。
这样的对话,在蓝色监狱里也能进行。正当凛被焦躁感折磨时,洁确认了手机时间,低声说"差不多该走了"。之后洁会说什么话,简直可以预见。今天谢谢你我玩得很开心,虽然我说了些奇怪的话,但以后还能正常交流的话就太好了......
そんなありきたりな言葉で今日を終わらせてたまるか。凛は潔の言葉を遮る。
怎么能用这种老套台词结束今天。凛打断了洁的话语。
「U-20W杯が終わったら、多分俺たちはそれぞれ別の国に行く」
"U-20 世界杯结束后,我们大概会各自前往不同的国家"
「う、うん」 "嗯、嗯"
「きっとすぐに、会わなくなる。プロ一年目なんて、多分生きぬくだけで精いっぱいだ。顔や名前を思い出しても、連絡をとったりしない。試合以外で会うのは、三年後とかかもな」
"肯定很快就会不再见面了。职业选手第一年,光是生存下去大概就竭尽全力了吧。就算想起对方的脸和名字,也不会联系。除了比赛之外再见面,可能要等到三年后了"
「……うん」 "……嗯"
「でも、付き合うだろ」 "不过还是会交往的吧"
高い空に、プールの営業終了を伝えるアナウンスが響く。鎌倉にはない作られた極彩色の水辺で、潔は凛の知らない顔を、心を見せてくれた。きっと誰も知らないだろう潔の涙は、凛の頭をシンプルにさせた。
高空中回荡着宣告泳池营业结束的广播。在这座镰仓所没有的人工打造的艳丽水边,洁向凛展露了不为人知的面容与真心。那想必无人知晓的洁的泪水,让凛的头脑变得异常清明。
凛の破壊衝動が恋愛にも適応されるのは事実だ。そのせいで、夜な夜な潔に無体を強いる妄想で抜いている。誰からも愛されて守られてきた潔に、それを向けてはいけないこともわかっている。
凛的破坏欲确实也会投射到恋爱中。正因如此,他夜夜都靠着对洁施暴的妄想自渎。明明清楚不该将这种冲动指向那个被众人宠爱守护的洁。
でも元を辿れば、凛が求めたのは、自分の知らない潔の姿だ。凛しか知らない潔の姿を、凛だけのものにする。凛の妄想の中の、レイプへの恐怖で怯える姿や屈辱で歪む顔は、今日潔が見せた泣き顔と同じように誰も知らない。全部全部、凛だけのもの。
但追根究底,凛渴望的正是无人知晓的洁的模样。要把只有凛才见过的洁的姿态,变成独属于凛的东西。无论是幻想中因强暴恐惧而颤抖的身影,还是因屈辱而扭曲的面容,都和今天洁展现的泪颜一样不为世人所知。全部全部,都只属于凛。
だったらもう、理性じゃなくて心に従う。恋は心でするものだ。
既然如此,就别再遵循理性而该顺从本心。恋爱本就该随心而动。
「すぐ遠距離になる。それらしい『お付き合い』なんてできねー。それでもいい。お前もそう思ったから、ああ言ったんじゃねえのかよ」
“马上就要异地恋了。那种像模像样的‘交往’根本做不到。即便如此也无所谓。你也是这么想的,才会说出那种话的吧?”
潔は凛を見つめて、「うん」と返事する。 洁凝视着凛,轻声应道:“嗯。”
「じゃあ、いいだろ」 “那就这样吧。”
凛はふと思い立って、潔の右手を掴んだ。熱い。汗をかいている。感触を確かめるように触っていると、潔は凛の手を握り返してきた。
凛突然心血来潮,抓住了洁的右手。好烫。掌心渗着汗。正当他细细摩挲着确认触感时,洁反手握住了凛的手。
「……なんでオッケーしてくれんの?」 "……为什么不肯答应我?"
「お前も知らないお前の面を見たいと思ったから」 "因为我想看看连你自己都不了解的那一面"
お前が好きだから、と言い切るには足りなかった。まだ凛とて恋を知り始めたばかりだ。自分が潔に抱えるものがただの独占欲なのか、破壊願望なのか、恋心か、測りかねている。
要说"因为我喜欢你"还太过轻率。凛毕竟才初尝情滋味。他分不清自己心中翻涌的究竟是占有欲、破坏欲,还是真正的恋慕之情。
「なにそれ、ロマンチックじゃん」 "什么嘛,这不是挺浪漫的"
「はあ?普通のことだろ。理由なきゃ付き合わねーよ」
"哈?这不是理所当然的吗。没有理由的话谁要交往啊"
「うん……うん、付き合お。凛」 "嗯……嗯,我们交往吧。凛"
触り合っているうちに、潔の手から力が抜けていく。風が潔の髪をいたずらに巻き上げて、うつむきがちだった潔と目が合った。
在相互触碰的过程中,洁手上的力道渐渐松懈。微风顽皮地卷起洁的发丝,我与原本低着头的洁四目相对。
「……ぎゅってしていい?」 "……可以抱紧你吗?"
一歩ずつ近づいて身を寄せた潔を、なるべく静かに抱きしめた。こんな風に人に触れる日が来るなんて考えてもみなかった。潔といると、自分も知らない自分が出てくる。
我尽量安静地抱住一步步靠近依偎过来的洁。从没想过自己会有这样触碰他人的一天。和洁在一起时,总会遇见连自己都不了解的另一个我。
「凛、あったか」 "凛,好暖和"
「熱ぃかよ」 "发烧了吗"
「うん。でも別に熱いくらい、どうでもいーし」 "嗯。不过就算有点发热也无所谓啦"
腕の中の潔が凛を見上げて、ふんにゃりと笑う。柔らかくというより、溶けるように。お前、そんな顔もすんのかよ。知らなかった。拳ふたつ分の距離を置いて、潔が囁く。
怀中的洁抬眼望着凛,软绵绵地笑了。与其说是柔软,更像是要融化一般。你这家伙,原来也会露出这种表情啊。凛不知道。保持着两拳距离,洁轻声低语。
「俺、ずっとこうして欲しかった……」 "我一直...都想要这样..."
潔の言葉が耳に届いた瞬間、凛の心臓がぎゅうと縮んで、一気に膨らんだ。凛の鎖骨に頬を寄せる潔の、無防備にとろけた横顔。触れた体。甘い声。
洁的话语传入耳中的瞬间,凛的心脏猛地收缩,又急剧膨胀。洁将脸颊贴在凛的锁骨上,毫无防备地融化的侧脸。相触的身体。甜美的声音。
もう全部、凛のもの。 这一切,全都属于凛了。
我慢できない。 忍不住了。
自分を制御できないまま、凛は潔の二の腕をつかんでさらに体を寄せる。己を見上げて「えっえっ」と混乱する潔にかまわず、顔を傾けて唇を近づける……。
无法控制自己的凛抓住洁的手臂,将身体更贴近对方。不顾洁仰望着自己发出"诶、诶"的困惑声,偏过脸就要凑近双唇……
「ま、待って!」 「等、等一下!」
ばちん。潔が両手で凛の口元を押さえて、自分から遠ざけた。凛の心臓はその瞬間に止まって、ぎゅっとしぼんだ。
啪。洁用双手捂住凛的嘴,把他推远。凛的心脏在那一瞬间停滞,紧紧缩成一团。
付き合いたての恋人に、キスを断られた。 刚交往的恋人,拒绝了我的吻。
「…………」
ショックで言葉が出てこない。 震惊得说不出话来。
「ご、ごめ……でも、凛とキスとか、む、無理……」 「对、对不起……但是,和凛接吻什么的,实、实在做不到……」
「……そんなに嫌かよ」 "……就这么讨厌吗"
「嫌なわけじゃ……!ただ、あぅ……その、俺ぇ……」
"不是讨厌……!只是,啊呜……那个,我……"
抱きしめられたままの潔がもぞもぞと身をよじる。数秒の沈黙。
被紧紧抱住的洁扭动着身子挣扎。数秒的沉默。
「なんか、もう……ぎゅってしてるだけで、いっぱいいっぱい……かも……」
"总觉得,光是……被这样用力抱着,就已经……快要受不了了……"
真っ赤になった顔を手や腕で隠しながら、潔は「しにそう……」と呟いた。
洁用手臂遮住通红的脸,小声嘟囔着"要死了..."。
死にそうなのはこっちだ。一挙一動で俺の心臓を止めたり動かしたりしやがって。たまらなくなってぎゅうぎゅうに抱きしめる。肺を潰すほどに抱きしめて、ふわふわの髪に指を通した。筋肉のついた背中を撫でて、肩甲骨をなぞって引き寄せる。潔が凛の服をきゅっと掴んだ。なんでそんな遠慮がちなんだ、もっと強く掴めよとムカついて、凛はかわりと言わんばかりに、更に力を強めた。
要死的是我才对吧。你的一举一动都在让我的心脏骤停又狂跳啊。我忍不住紧紧抱住他,用力到几乎要压碎他的肺,手指穿过他蓬松的发丝。抚摸着那肌肉结实的后背,沿着肩胛骨的线条将他拉得更近。洁紧紧攥住了凛的衣角。为什么这么畏畏缩缩的,倒是抓得更用力些啊——凛烦躁地想着,仿佛在代替对方般加重了力道。
手ぇ繋ぎたい。水かきを指でなぞって、恋人繋ぎしたい。つーかやっぱ、キスしてえ。頬とかデコでもダメなのかよ。潔に聞けば、「おでことかならいいよ」とでも言うだろうか?でもそんなことどうやって聞けっつーんだ。「ほっぺならキスしていいか?」って?無理に決まってんだろクソ。童貞だこちとら。
好想牵手。想用指尖描摹指间的蹼状连接,像恋人那样十指相扣。不对果然还是...好想接吻。亲脸颊或额头也不行吗?要是问洁的话,他大概会说"额头的话可以哦"?但这种话到底该怎么开口啊。"可以亲脸颊吗?"——怎么可能问得出口啊混蛋。我们可是处男啊。
「……ゆっくりしてくんね?そういう……恋人っぽいのは」
"......能不能慢慢来?那种...恋人之间的事"
「……いっつも年上風吹かせるくせに」 "……明明总爱摆出一副年长者的架子"
「だって頼りがいあるって思われたかったんだもん」 "因为我想让你觉得我靠得住嘛"
「『だもん』とか言うやつに頼りがいなんて求めてねーよ」
"会说什么'嘛'的家伙根本指望不上啊"
「……ごめん、凛はビビんないから、待たせるよな……」
"……抱歉,凛不会害怕的,让你久等了吧……"
「……別に、いい」 "……无所谓,就这样吧"
体を離そうとする遠慮がちな潔を再度強く抱きしめる。
我再次用力抱紧了正犹豫着想要抽身的洁。
「お前は……ただ、楽しそうにしてれば、なんでもいい」
"你只要……看起来开心就好,怎样都行"
こんなこと、今まで考えたこともなかったのに。でもこんな局面で嘘が言えるほど、凛は器用じゃない。
明明从未考虑过这种事。但在这种局面下,凛实在不擅长说谎。
「……凛〜……」 "……凛~……"
「んだよ」 "干嘛啦"
「ね、りん……」 "呐,凛……"
吐息混じりの呼びかけに耐えられない。 夹杂着喘息声的呼唤让人难以招架。
「……なんだ」 “……怎么了”
「…………好きだよ、凛」 “…………我喜欢你,凛”
「…………」 “…………”
「好き……」 “喜欢……”
肺の中の空気を全部絞り出すようなため息が出た。腕の中にいる、「彼氏」の称号を与えられたばかりの男を、苦しくなるほど強く抱きしめた。
我长叹一口气,仿佛要把肺里所有空气都挤出来似的。把刚获得"男友"头衔的男人紧紧搂在怀里,紧到让他几乎喘不过气。
これでキスしちゃ駄目とか嘘だろ、と凛は思った。 "这种时候还不让接吻肯定是骗人的吧",凛这么想着。
***
潔をバス停まで見送って、凛はのそのそ帰宅した。窓側の席に座る潔が手を振ったので、凛も振った。発進したバスが曲がり角に差し掛かって見えなくなっても、凛はバス停前にいた。
把洁送到公交站后,凛慢吞吞地往家走。坐在靠窗座位的洁挥手告别,凛也挥手回应。直到启动的公交车转过街角消失不见,凛依然站在原地没有离开。
最寄り駅に着いたころ、潔からトークアプリの通知が届いた。いつの間に撮ったのか、まあまあな枚数の写真がある。また通信料食って親に叱られるぞ、と思いつつ、部屋に戻った凛は一枚一枚それを追った。凛の後ろ姿ばかりだ。いつ撮られたのか。
快到最近的车站时,洁发来了聊天软件的通知。不知何时拍下的,数量相当可观的照片。虽然想着"又要浪费流量被父母骂了",回到房间的凛还是一张张翻看起来。全是凛的背影。到底是什么时候拍的呢?
自分の写真に興味はない。さっさとスクロールしていると、プールに入る直前に、ふたりで撮った写真が写った。
他对自己的照片毫无兴趣。正快速滑动屏幕时,突然出现了两人在进入泳池前拍的合照。
昨夜までは、いや、プールで浮き輪を引っ張っていた時は、家に帰ったらいつもの通り、潔を泣かせて犯し抜く想像をしようと思っていた。夕立の中、力づくで家に連れ込んでレイプ。架空の彼氏から寝取る。自慰の動画をネタに脅す。想像だけなら手慣れたものだ。思春期の性欲を甘く見てはいけない。たとえ惚れた相手であっても、想像上ならいくらでも非情になれるのが男という生きものだ。
直到昨晚——不,在泳池里拽着泳圈的时候,他还盘算着回家后要像往常一样,把洁弄哭后侵犯到高潮。在骤雨中强行拖回家强奸,从虚构的男友手中横刀夺爱,用自慰视频作为要挟。对于幻想早已轻车熟路。千万别小看青春期的性欲。即便是心仪的对象,在想象中也能冷酷无情——这就是雄性生物的本性。
だけれど。 可是。
ぎゅってしてるだけで、いっぱいいっぱいかも。 光是紧紧相拥,就让我快要承受不住了。
見たこともないほど顔を赤らめた潔の潤んだ瞳。塩素の香りがする丸い頭。思っていたよりもがっしりした体つきは、それでも凛よりずっと小さい。左手で抱き寄せた肩なんて、凛の手のひらだけで覆えてしまえそうだった。
洁涨红着脸的程度前所未见,湿润的眼眸。带着氯气味的圆脑袋。比想象中更结实的体格,即便如此还是比凛小得多。用左手揽住的肩膀,似乎光用凛的掌心就能完全覆盖。
画面には、はしゃいだ潔が勝手に撮ったふたりの自撮りが映る。プールが楽しみだと走り出した潔の、邪気のない満面の笑みを指でなぞる。
画面上显示着兴奋的洁擅自拍下的两人自拍。凛用手指轻抚着说"好期待去泳池"就飞奔出去的洁,那毫无邪念的灿烂笑容。
無垢で恥ずかしがり屋で甘え上手な、最初で最後の凛の恋人。「凛が好き」と言ったくちびるには、彼氏の凛とてまだ触れられないらしい。キスなんていう恋人らしい行為に、潔の心が追いついていないから。
天真无邪、容易害羞又擅长撒娇的,凛第一个也是最后一个恋人。"最喜欢凛了"——说出这句话的嘴唇,似乎连作为男友的凛都还没能触碰。因为接吻这类恋人般的行为,洁的内心还没能跟上节奏。
凛はそのまま、スマートフォンを伏せた。 凛直接把手机反扣在桌上。
可哀想なのじゃ抜けない! 不可怜就硬不起来!
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