人魚は泡になることにした 人鱼决定化作泡沫
カイザーに片想いする潔とそれを見守る凛の話です。 这是关于暗恋凯撒的洁与默默守护他的凛的故事。
最終的に凛潔になりますが、途中までカイザー←潔で話が進みます。
故事最终会发展为凛洁,但前期剧情将以恺撒←洁的互动展开。
・カイザーは潔に友情しか抱いていません。また、途中でモブ女性と結婚します。なのでカイ.潔本命の方はキツイかもしれません。(カイザーは名前しか登場しません)
・凯撒对阿洁只抱有纯粹的友情。此外,中途还会与路人女性结婚。所以凯洁 CP 党可能会感到虐心。(凯撒仅以名字形式登场)
・凛が同性愛者かつ、過去に潔以外の男性を抱いたことがある設定です。
・设定中凛是同性恋者,且过去曾与除洁以外的男性发生过关系。
・最後の凛ちゃんのセリフがどういう意味か分からないという方がいらっしゃったら教えてください。書き直します。
・如果有读者不明白凛酱最后那句话的含义,请告诉我。我会重写。
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気が付いた時から、俺の性的指向は同性だった。 从意识到的那一刻起,我的性取向就是同性。
見るからにか弱そうな女の身体を組み敷くよりも、潰しがいのありそうな頑丈な男の身体をぐちゃぐちゃにする想像の方が興奮した。それが性欲なのか、破壊欲なのかは自分でもよく分からなかったが。
比起压制看似柔弱的女性躯体,幻想中摧毁那些结实得值得一毁的男性身体更令我兴奋。那究竟是性欲还是破坏欲,连我自己也说不清。
プロになって当たり前のように女からの誘いは増えたが、同じくらい男からの誘いも増えた。どうやら同士には分かるらしい。俺のセクシャリティが。
成为职业选手后,来自女性的邀约理所当然地增多了,但来自男性的邀约也同样激增。看来同类之间果然心照不宣——对我的性取向。
スキャンダルになるのはごめんだったし、惚れた腫れたなどと言われるのも面倒だったので、後腐れなさそうな、面倒臭くなさそうな奴にだけ手を出した。そうやって自分なりに厳選して手を出した数人ですら、数回抱けばこんなもんかとなるだけではなく、段々と相手が恋人ヅラしてくるのに苛立った。そうなると俺は相手の連絡先をブロックして関係を絶った。「今までありがとう」なんて送るわけもなく、ある日いきなり音信不通にした。元々自分の家の住所や電話番号すら相手には教えていないので、メッセージアプリさえブロックすれば良いので簡単だった。
我可不想闹出什么绯闻,被人说三道四地议论"爱上啦""迷恋啦"之类的也太麻烦,所以只对那些看起来不会纠缠、不会惹来麻烦的家伙出手。即便如此精挑细选过的寥寥几人,睡过几次后也不过是"也就这样",更让我烦躁的是对方渐渐摆出恋人架势。这种时候我就会直接拉黑联系方式断绝往来。当然不会发什么"感谢至今的陪伴",而是某天突然人间蒸发。反正我连自家地址和电话都没告诉过对方,只要把社交软件拉黑就轻松搞定。
オフシーズン。日本代表のメンバーを集めたパーティとやらに呼ばれた。気が進まなかったが、代表に選ばれた奴らは全員出席するようにお達しが出ていたので、仕方なく顔を出した。何組かテーブルが分かれていて、久しぶりの顔見知りとの再会に、ブルーロックにいた頃を思い出して少しだけ高揚した。やはりセックスよりサッカーの方が興奮する、と思った。
休赛期。被叫去参加什么日本代表队的聚会。虽然提不起劲,但上头要求所有入选队员必须出席,只好露个脸。会场分了几组餐桌,和久违的熟面孔重逢时,不禁回想起蓝色监狱时期的往事,稍微兴奋了起来。果然足球比性爱更让人热血沸腾啊。
飯を食って、何人かのお偉いさんに挨拶して、飯を食って、酒も少しだけ飲んだ。途中、用を足しに席を立ち、人気の少ない廊下を歩いていると、後ろから足音が聞こえた。
吃过饭,向几位大人物问好,再吃些东西,稍微喝了点酒。中途离席去洗手间,走在人迹稀少的走廊时,身后传来了脚步声。
「……糸師さん!」 "......糸师先生!"
呼ばれて振り返ると、知った顔が立っていた。知った顔、とは言うが、日本代表のチームスタッフの一人であり、過去に何度か夜を共にしたことがある相手だった。初めて出会った時は、軽いアルバイトのような仕事しかしていなかったはずだったが、いつの間にか正式なチームスタッフとなっていた。面倒クセェことになったな、と思う。
听到呼唤回头时,站着一张熟悉的面孔。虽说熟悉,也不过是日本代表队的随行人员之一,曾与我共度过几个夜晚的对象。初次相遇时明明还只是个打零工的临时工,不知不觉竟转正成了正式员工。真是摊上麻烦事了,我心想。
「……久しぶり」 "……好久不见"
男は照れたような顔をして俺を見た。その期待感に満ち溢れた表情にうんざりした。
男人用带着羞涩的表情望向我。那张写满期待的脸让我心生厌烦。
ひとつ舌打ちをして、くるりとその男に背を向ける。 我咂了下舌,猛地转身背对着他。
「ま、待って!……元気してた?俺、凛くんと別れた後も、凛くんの試合とかはいつも観てて……」
“等、等一下!……你还好吗?我和凛君分开后,一直都有关注凛君的比赛……”
別れた、ってなんだ。そもそも付き合った覚えもねぇ、と思ったが黙っていた。男は俺に追いつき、横を小走りで並走する。
分开?开什么玩笑。我根本不记得我们交往过,但我保持了沉默。男人追上我,小跑着与我并肩而行。
「……今日、この後、予定ある?予定って言うのはつまり今夜の相手ってことだけど。より戻したいなんてワガママ言わないから、今夜だけでも一緒にいれないかなと思って!」
“……今天之后有安排吗?我说的安排其实就是指今晚的伴儿。我不会任性地说要复合什么的,就今晚,能不能陪我一下?”
男は焦ったような顔をしてペラペラと喋った。要するに一晩だけで良いから相手をしてくれないか、といったところらしい。
男人一脸焦急地喋喋不休。说白了就是想让我陪他一晚,仅此而已。
縋り付くように腕を掴まれたので反射的に振り解く。聞き分けの良いわきまえた奴だと思ってたのに、と理不尽な気持ちになった。怒鳴りつけて追い返してしまおうか、と思っていると目の前のトイレのドアが開いた。
被人死死拽住手腕,我条件反射地甩开。明明以为是个识趣懂分寸的家伙——这种不讲理的想法涌上心头。正想厉声呵斥赶他走时,眼前的厕所门突然开了。
「え?なんかトイレの中にまで声が響いてたんだけど。……なに?修羅場?」
"咦?刚才连厕所里都听见吵闹声……怎么了?修罗场?"
顔を出した男は、この場に似つかわしくない呑気な顔で言った。俺の横に立っていた男の身体がびくりと震えるのが横目で見えた。
探出头的男人带着与现场氛围极不相称的悠闲表情说道。余光瞥见站在我身旁的男人身体猛地一颤。
潔は手をハンカチで拭きながら、俺と、その横にいる男を見比べる。俺は苛立ちマックスで吐き捨てた。
洁一边用手帕擦手,一边来回打量我和身旁的男人。我烦躁到极点地啐了一口。
「……うせろ」 “……滚开”
「ごめんって。でも、俺トイレ行ってただけで。どっちかって言うと、お前らが大声で喋ってるせい――」
“抱歉啊。不过我只是去上了个厕所。要我说,明明是你们大声喧哗才——”
「ちげぇよ、お前じゃねぇ。コイツに言ってる」 “搞错了,不是说你。是在跟这家伙讲”
俺は横の男を見下ろして言った。男は俺と潔の顔を見て、顔を真っ赤にして逃げて行った。
我俯视着身旁的男人说道。那男人看了看我和洁的脸,涨红着脸逃走了。
「あーあ。可哀想に……」 「唉……真可怜啊……」
潔は「1ミリもそんなこと思ってねぇだろ」って口調で言った。コイツはたまに薄情な時がある。
阿洁用「你压根没这么想吧」的语气说道。这家伙偶尔会显得特别薄情。
俺は潔を押し除けてトイレに入った。潔も俺と行き違いでトイレを出ようとして立ち止まり、言いにくそうに言った。
我推开阿洁冲进厕所。阿洁和我擦肩而过时停下脚步,欲言又止地开口:
「……凛って、その、女の人より男が好きな感じ?」 「……凛,那个,你是不是比起女生更喜欢男生?」
マジでデリカシーとかゼロだなと思った。無神経さすら感じるメンタルの強さは相変わらずらしい。
真是毫无分寸感啊。这种近乎迟钝的心理素质倒是一如既往。
「……だったらなんだよ」 "……那又怎样"
「あー、いや。ごめん。詮索するようなこと言って」 "啊,不。抱歉。说了些刨根问底的话"
便器の前に立って潔の方を見る。潔がトイレのドアを開けっぱなしなせいで、俺は用が足せない。早くそのドアを閉めるか、外に出て行くかしろ、と言おうと口を開いたら、潔がこちらを見ずに言った。
站在马桶前瞪着洁。因为这家伙把厕所门大敞着,害我没法方便。正想开口让他要么赶紧关门要么滚出去时,洁头也不回地说了句话。
「――俺もそうだから」 "——我也是这样"
「は?」 "哈?"
潔はそう言い捨ててトイレから出て行った。ドアがパタンと閉まる。
洁丢下这句话就离开了洗手间。门"啪嗒"一声关上了。
「は?」 "哈?"
俺は誰もいないトイレの中でもう一度呟いた。――俺もそうだから?
我在空无一人的厕所里再次低语。——我也是这样吗?
先ほどまであった尿意は、すっかりどこかへ行ってしまっていた。
方才还存在的尿意,此刻已完全消失无踪。
その後、会場に戻ると、潔も普通にその場にいた。というか同じテーブルなので嫌でも目につく。潔はチラリともこちらを見ずに横のおかっぱと盛り上がっていた。それに苛立った。
回到会场后,洁也若无其事地坐在那里。准确说是同个餐桌,想不注意到都难。洁连瞥都没瞥我一眼,只顾和旁边那个短发女生谈笑风生。这让我莫名火大。
さっきまではパーティの途中でこっそり帰ってしまおうと思っていたはずだったのに、なんとなく最後まで残ってしまい、締めの挨拶まで聞き終わったところで潔の首根っこを掴んだ。
明明之前还打算中途偷偷溜走,结果不知怎的竟留到了最后。听完结束致辞的瞬间,我一把揪住了洁的后颈。
「……こっち来い」 "……过来"
潔は俺の顔を見て苦笑し、横にいたおかっぱは「えー?何?凛ちゃんと潔、飲み行くの?俺も行きたーい」などと言っていたがそれは完全に無視をした。
洁看着我的脸苦笑了一下,旁边那个短发女生还在嚷嚷"诶——?什么?凛酱要和洁去喝酒吗?我也要去——",但被我们彻底无视了。
出口に向かう人波をかき分けて、食事会場になったホテルの最上階のバーに向かった。バーに誰かサッカー関係者がいたら別の場所に移動しようと思っていたが、そこは割と閑散としていたので隅っこの人目につかなさそうなカウンター席に並んで座った。
我们拨开涌向出口的人潮,前往作为聚餐场地的酒店顶楼酒吧。原本想着要是有足球界相关人士在场就换地方,但那里相当冷清,于是我们在角落不起眼的吧台并肩坐下。
「……そんな怖い顔しなくても誰にも言わないって」 "……不用摆出那么可怕的表情啦,我不会告诉任何人的"
潔は席に着くなりそう言った。 洁一坐下就说了这样的话。
俺は酒はもう十分だったのでノンアルのカクテルを頼んだ。潔は「なんかさっぱりしたのが飲みたい。ミントが入ってるやつが良いな」などと言い、バーテンと話しながら最終的にミントがどっさり入ったカクテルを頼んでいた。
我已经喝够了酒,所以点了无酒精的鸡尾酒。洁说着"想喝点清爽的,带薄荷的那种不错",一边和调酒师聊天,最后点了一杯放了大量薄荷的鸡尾酒。
「……でも凛があの人と付き合ってたなんて意外だわ」
"......不过凛居然和那个人交往过,真是意外呢"
空気を読んだバーテンがどこかに行き、二人っきりになったタイミングで潔がぽつりと言った。俺は即座に否定した。
善解人意的调酒师不知去了哪里,趁着只剩我们两个人的时候,洁突然冒出这句话。我立刻否认了。
「付き合ってない」 “我们没在交往”
「じゃあ、あの会話はなんだよ」 “那之前的对话算什么”
「向こうが勝手に勘違いした」 “是对方自己误会了”
「……凛らしいな」 “……真像凛的作风”
潔が喋る度に微かに爽やかなミントの香りが香ってくる。
每当洁说话时,都会飘来一丝清爽的薄荷香气。
いまコイツの舌を舐めたらミントの味がするに違いないと思った。
此刻我确信,如果舔舐这家伙的舌头,必定会尝到薄荷的味道。
「……お前は相手がいんのか」 "……你这家伙有交往对象吗"
――俺もそうだから。 ——因为我也一样。
先ほどトイレで聞いたコイツのセリフが頭から離れない。潔は緑のカクテルを飲みながら「んー」と言った。
刚才在厕所听到的这家伙的话在脑海里挥之不去。阿洁边喝着绿色鸡尾酒边发出"嗯——"的声音。
「恋人はいないけど」 "虽然没有恋人"
潔は唇を噛み締める。 阿洁紧紧咬住嘴唇。
「……俺、さっきのパーティでだいぶ飲んじゃったから、いま酔っ払ってて」
"......我刚才在派对上喝太多了,现在有点醉了"
「は?」 “哈?”
「だから酔っ払いの戯言だと思って聞いて欲しいんだけど」
“所以希望你能当这是醉鬼的胡话听听就好”
「……」 “……”
「俺、別に元々男が好きって自覚してたわけじゃなくて。気付いたのは最近つーか。最近色々あって……」
“我啊,原本也没意识到自己喜欢男人。发现这事是最近…不对,应该说最近发生了很多事……”
つまり、最近コイツに性的嗜好を気付かせた相手がいるということか。俺はすぐに察しがついた。
也就是说,最近有人让他意识到了自己的性取向。我立刻就明白了。
「……青薔薇か」 "……是蓝玫瑰吗?"
俺がそう言うと、潔の頬に赤みが差した。 我这么一说,洁的脸颊泛起了红晕。
コイツとミヒャエル・カイザーはいま同じチームにいる。ブルーロックにいた頃の二人が何やら険悪なムードを漂わせているのは他のチームにいた俺でも気付いたが、最近はそうでもないらしい。ネットニュースで青薔薇とコイツの名前が同時に載っているのを度々見たことがある。
这家伙现在和米歇尔·凯撒在同一个队伍。虽然他们在蓝色监狱时期关系似乎很紧张,连我这个其他队伍的人都察觉到了,但最近好像不是这样。我经常在网络新闻上看到蓝玫瑰和这家伙的名字同时出现。
コイツのいまの反応を見るに、俺の想像以上に仲良くやっているらしい。
看这家伙现在的反应,似乎比我想象中相处得还要融洽。
「あの、マジでこのことは他言無用にして欲しいんだけど。カイザーにも迷惑が掛かるし」
"那个,这件事真的希望你能保密。会给凯撒也带来麻烦的"
「俺がそんな口が軽そうに見えるか」 "我看上去像是那种大嘴巴的人吗"
「ううん。見えない。だから凛にだけ。このことを喋ったのは」
"不。不像。所以才只告诉了凛。这件事"
お前だけだよ、と繰り返して潔が俺の顔を見る。人たらし、という言葉が頭をよぎった。昔からこういう奴だった。
只有你啊,洁反复说着看向我的脸。脑海中闪过"情场老手"这个词。他从小就是这种人。
その後、潔がポツポツ喋った内容によると、ドイツに渡って数年。青薔薇とは二人っきりで飲みに行くほどには親密になったらしい。
后来根据洁断断续续的讲述,去德国几年后。他和蓝蔷薇已经亲密到会两个人单独去喝酒的程度了。
親しくなったらカイザーは、真面目で勤勉で努力家だった。サッカーについての見解も意気投合するものが多く、一緒にいるのが楽しかった、と潔は恋する乙女のような顔で言った。
熟悉之后才发现凯撒是个认真勤奋又努力的人。关于足球的见解也有很多共鸣,和他在一起很开心,洁说着露出了恋爱少女般的表情。
「んで、カイザーの家で飲んだり、そのまま流れで泊まったりすることが多くなってさ。お酒を飲むと距離とか近くなって、ボディタッチも増えたりして。……俺、それまで男になんて興味ないって思ってたけど、アイツの顔、すげぇ綺麗だし、サッカー中の真剣な顔とかも見てるからそれも重なって」
"然后呢,就经常在凯撒家喝酒,顺势留宿的情况也变多了。喝了酒之后距离感就拉近了,身体接触也增加了。......我本来以为自己根本不会对男人感兴趣,但那家伙的脸实在太漂亮了,再加上看他踢球时认真的表情......"
「……惚れたか」 “……你爱上他了?”
俺が言うと、潔は片手で顔を覆った。「ヤベェ、恥ずかしい」なんて呻いている。俺は内心舌打ちが止まらなかった。なぜ、俺はコイツの恋愛相談になんかに乗っているのか。
我刚说完,洁就用手捂住脸。“糟糕,好羞耻”地呻吟着。我内心忍不住咂舌。为什么我要陪这家伙讨论恋爱问题啊。
「でもさ。カイザーは違うんだよ。俺とは違う。……分かるだろ?だから彼女がいるのも知ってて」
“但是啊。凯撒不一样。和我完全不同。……你懂的吧?所以就算知道他有女朋友”
俺はイライラと片足を揺らしながら言った。 我烦躁地晃着一条腿说道。
「で?結局テメェは何が言いたいんだ?青薔薇とどうにかなりてぇから俺に協力しろとかそんなんか?」
"所以?你到底想说什么?是想让我帮你搞定蓝玫瑰那档子事吗?"
俺がそう言うと、潔は顔を上げた。目をぱちくりした後に、半笑いになる。
听我这么说,洁抬起头来。眨了眨眼睛后,露出似笑非笑的表情。
「いや無理だろ。凛が何をどうしたら俺とカイザーの仲が深まるんだよ。そんな気の利いたアシストとか出来ねぇだろ、お前」
"别开玩笑了。凛无论做什么都不可能加深我和凯撒的关系吧。你这种榆木脑袋怎么可能想出什么妙招"
「殺す」 "杀了你"
「まあまあ。元々そんなの凛には求めてねぇってこと。話を聞いてくれるだけでだいぶ楽になったし。こんな話、誰にも出来ねぇじゃん。引かれたら傷付くし。……どっかからカイザーにバレたりしたら、きっと今までみたいな距離感じゃいられなくなるし」
"好啦好啦。我本来就没指望凛能理解这种事。光是能听我说说就已经轻松多了。这种话题,根本没法跟别人讲吧?要是被疏远的话会受伤的......要是被凯撒从哪儿打听到的话,肯定没法再像现在这样保持距离了。"
そう言って目が歪んだので、一瞬目の前の男が泣くかと思った。ただ、緩んだ瞳は瞬きをした次の瞬間にはいつも通りの生意気そうな目に戻っていた。
他说这话时眼角扭曲了一瞬,让我以为眼前的男人要哭出来。但那双松弛的眼睛在眨了下眼后,立刻又变回了平时那副桀骜不驯的模样。
「……お前本当にあの潔世一かよ」 "......你真的是那个洁世一吗"
俺はそう言っていた。こんな潔を俺は知らない。ブルーロック時代のコイツはこんなに軟弱じゃなかった。こんな風に酒を飲みながらぐだぐだと管を巻いている姿が心底信じられない。潔がこちらを向いて笑った。
我忍不住这样说道。这样的洁我从未见过。蓝色监狱时期的他可没这么脆弱。实在难以相信他会像这样边喝酒边絮絮叨叨发牢骚。洁转向我露出笑容。
「あの潔世一だよ。失望したろ」 "那可是洁世一啊。很失望吧"
俺は何も言えなかった。 我什么也说不出来。
日課のヨガ中。その静寂を切り裂くようにスマホのバイブが鳴った。シカトしようかと思ったが、こんな時間に俺の電話を鳴らす奴は一人しか思い浮かばず、俺は舌打ちをして立ち上がった。
正在做每日例行的瑜伽。手机震动声突然划破寂静。本想装作没听见,但这个时间点会给我打电话的只有一个人,我咂了下舌站起身来。
隅のデスクの上に置いていたスマホを手に取る。そこには案の定『潔世一』と名前が表示されていた。
拿起放在角落桌上的手机。屏幕上果然显示着"洁世一"的名字。
「……」
画面をタップして耳に当てる。何も言わずにいると、向こう側から声を押し殺しているような吐息が聞こえた。
轻触屏幕将手机贴在耳边。保持沉默时,能听见对面传来压抑着呜咽的呼吸声。
「泣いてんのか」 「在哭吗」
そう聞くと、ふふっという小さな笑い声が聞こえた。 这么一问,便听见对面传来噗嗤的轻笑。
『……泣いてない』 『……我没哭』
その言葉が嘘か本当かは俺には分からない。俺はため息を吐きながらベッドに座った。
这句话是真是假我也无从知晓。我叹了口气坐在床边。
「何があった」 「发生什么了」
『別に。大したことじゃねー』 『没什么。不是什么大不了的事』
「青薔薇の彼女でも紹介されたか」 “她是不是也上了《青蔷薇》的专访?”
そう言うと潔は沈黙した。当たらずとも遠からずといったところか。根気強く潔が話し出すのを待っていると、しばらくして潔はようやく口を割った。
说完这句话后,洁陷入了沉默。虽不中亦不远矣。我耐心等待着洁开口,过了好一会儿,他终于打破了沉默。
『……紹介とかじゃなくてたまたま会ったつーか』 “……不是什么专访,就是偶然遇见的啦。”
「どこで」 “在哪儿?”
『アイツの家で』 『在他家』
そんなとこ行くなよもう、と俺は何度目かの舌打ちが出た。アホだろコイツ。サッカーで結果を残している三十目前の男なら、女の一人や二人家に連れ込むことなんてザラにあるだろう。
"别再去那种地方了"——我第无数次咂舌道。这家伙真是蠢透了。一个在足球界有所成就、年近三十的男人,带一两个女人回家这种事再平常不过了吧。
コイツの面倒臭いところは、青薔薇が異性愛者であること、自分は全く恋愛相手としては眼中に入っていないこと、そして青薔薇がそれなりに異性との恋愛に意欲的なのを知っている上で、それでもアイツの側にいたがるところだ。もう諦めろ、諦めるのが無理でも少し距離を取れ、どうせ傷付くだけなのに、と何度言ったか分からない。我ながら人生でこんなアドバイスを人に口にすることがあるとは思わなかった。心底アホらしいし虫唾も走る。
这家伙最麻烦的地方在于:青蔷薇是个异性恋,自己完全不在他的恋爱考虑范围内,而且明知青蔷薇对异性恋爱相当积极,却还是执意要待在他身边。我都记不清说过多少次"放弃吧,就算做不到也该保持距离,反正只会受伤"。真没想到自己这辈子还会给人这种建议。简直蠢到极点,让人反胃。
『今日、練習終わりにカイザーから"家でワインが冷えてるから飲みに来るか"って言われてさ。まあそんな風に急に誘われるのは珍しくなかったから普通にOKしてアイツの家に行ったんだよ。で、飲み始めてしばらくしたら家のチャイムが鳴ってさ。玄関に女の子が"サプラーイズ"つって立ってた。カイザーに聞いたら、今日は元々その子と約束してたけど、仕事を理由にリスケされたから代わりに俺を誘ったんだってさ。で、その子は玄関でカイザーの首にしがみつきながら"予想外に早く仕事が終わったからサプライズで来ちゃった"ってさ。カイザーはめちゃくちゃ申し訳なさそうな顔してたけど、明らかに俺よりその子と飲みたいって雰囲気出してたから、空気読んで家に帰ってきたところ』
"今天训练结束后,凯撒突然说'家里冰着葡萄酒,要不要来喝'。这种临时邀约也不算稀奇,我就正常答应去他家了。喝了一会儿门铃突然响了,门口站着个女孩说是'惊喜'。问凯撒才知道,他原本和那姑娘有约,借口工作改期才临时叫我去。结果那姑娘搂着凯撒脖子说'工作意外提前结束就来惊喜拜访了'。虽然凯撒装得很抱歉,但明显更想和她独处,我就识相地回来了"
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潔はタガが外れたようにペラペラと喋り、喋り終わるとピッタリと黙った。
洁像打开了话匣子般滔滔不绝地说着,说完后立刻紧紧闭上了嘴。
「……それで?」 "……然后呢?"
『……それで。今、世界一惨めな気分になってる』 ……然后。现在,我感觉自己是世界上最悲惨的人
くだらねぇと思う。心底くだらない。そんなんで惨めな気持ちになってる暇があればヨガのひとつでもしてメンタルを鍛えろと言いたい。
真是无聊透顶。打心底觉得无聊。想对他说有功夫为这种事感到悲惨,不如去做个瑜伽锻炼下心理素质。
俺は舌打ちをして仕方なく言った。 我不耐烦地咂舌,不情不愿地说道。
「お前は今からバスルームに行け」 "你现在立刻给我去浴室"
『……バスルーム?』 ……浴室?
「いいからすぐ行け。今すぐにだ」 "少废话赶紧去。现在立刻马上"
有無を言わせない声色を出すと、スマホの向こう側から足音が聞こえてきた。潔は大人しくバスルームに向かったようだ。
不容置疑的语气一出,手机那头便传来脚步声。看来洁老老实实往浴室走去了。
「お前の家、バスタブがあるつったろ。それに今すぐ湯を溜めろ」
"你家不是有浴缸吗?现在立刻给我放水"
『……分かった』 「……知道了」
潔はスマホをどこか棚の上にでも置いたのだろう。音が遠ざかる。何かがぶつかる音や水音から察するに潔は俺の言いつけ通り、バスタブを洗って水を溜め始めたようだ。
洁大概把手机搁在某个架子上了。声音逐渐远去。从物件碰撞声和水流声来判断,洁正按我的吩咐清洗浴缸开始蓄水。
『お湯入れた』 『热水放好了』
「じゃあバスルームを出ろ。次はキッチンに行け」 「那就离开浴室。接下来去厨房」
『キッチン……?』 『厨房……?』
「冷蔵庫を開けろ。すぐに食えそうなもんはあるか」 「打开冰箱。看看有没有能立刻吃的东西」
「……チーズならある。あとソーセージとか。明日のパンとか』
“……奶酪倒是有。还有香肠之类的。明天的面包也有。”
「それを出せ。ソーセージはフライパンに突っ込め。卵もあるか」
“把那些拿出来。香肠扔平底锅里。鸡蛋有吗?”
『あるよ』 ‘有的哦’
「それはソーセージの横で焼け。酒は?」 “放香肠旁边一起煎。酒呢?”
『ワインがある。カイザーがさっきお詫びの印にくれたやつ』
“有瓶葡萄酒。是凯撒刚才为表歉意送的。”
「それは流しにでも捨てとけ。他にビールの缶くらいあるだろ」
“那玩意儿倒进下水道冲走。不是还有罐装啤酒吗?”
『あるよ。開けようかな』 “有的。要开吗?”
「風呂の前に飲むな馬鹿。ビールは風呂上がりに飲め。とりあえず、飯食って、風呂入って、その後にビールを1杯だけ飲んで寝ろ。明日の朝は5時に起きて外を走れ。朝日を浴びろ。分かったな?」
“泡澡前别喝蠢货。啤酒等泡完澡再喝。先吃饭、泡澡,之后只准喝一杯啤酒就睡觉。明早五点起床去外面跑步。给我晒朝阳。听明白没?”
そう言うと、潔はふふっと笑った。さっきよりかは声に張りがある気がする。
洁这么说着,轻轻笑了。感觉声音比刚才有精神了些。
『ありがとな。凛』 谢啦,凛
「もう二度とこんなくだらねぇ内容で電話を掛けてくんな」
"下次别再为这种无聊事打电话了"
『うん。分かってる。ごめんな。……おやすみ』 嗯。知道了。抱歉......晚安
一拍置いた後、通話は切れた。俺はスマホをベッドの上に放り投げた。
沉默片刻后,通话被挂断了。我把手机扔在了床上。
潔がこんな腑抜けた男になってしまったのが俺は心底許せなかった。こんな風にしてしまった青薔薇にも腹が立つ。今は潔の顔も見たくないし声すらも聞きたくない。
我打心底无法原谅洁变成这副窝囊废的模样。对把他变成这样的青蔷薇也火冒三丈。现在既不想看到洁的脸,连他的声音都不愿听见。
リビングに行き、テレビをつける。ヨガの後はそのまま寝てしまおうと思っていたのに胸の辺りがムカムカして眠れそうにない。俺は配信されているサッカーのアーカイブを漁った。適当なタイトルをクリックする。
走到客厅打开电视。明明练完瑜伽就该直接睡觉的,胸口却堵得慌根本睡不着。我翻找着足球比赛的直播回放,随手点开一个标题。
しばらくテレビに映る映像を見ながら無心でボールを追いかけていると、徐々に心が落ち着いてきた。
盯着电视画面放空大脑追着球跑了一会儿,心情才渐渐平静下来。
7年。と、その数字が頭に浮かんだ。 七年。这个数字浮现在脑海中。
潔がミヒャエル・カイザーに恋をしていると知ってからもう既に7年が経っていた。そのうち目を覚ますだろうと思ったアイツは、俺の予想に反して、いつまでも王子様に恋をしていた。よそ見もせずに、愚直なまでに真っ直ぐに。
自从知道洁迷恋米歇尔·凯撒以来,已经过去七年了。原以为那家伙迟早会醒悟,可出乎我意料的是,他对王子的痴恋始终未变。目不斜视,固执得近乎愚钝地一往情深。
ボールがゴールネットを揺らす。通常なら興奮した観客の声や解説の声が聞こえるところだが、今は無音で見ているので俺の耳には何も届かない。ゴールシーンがさまざまな角度から何度も繰り返し映される。そしてその中央でもみくちゃにされる潔。地面に倒された潔に手を伸ばして身体を抱き起こすミヒャエル・カイザー。二人は見つめ合い興奮した様子で何かを喋っている。
足球撞进球网。往常此刻本该响起观众沸腾的解说声,但此刻静音观看的屏幕传不来任何声响。进球画面从各个角度反复播放。镜头中央是被对手团团围住的洁。米歇尔·凯撒向倒地不起的洁伸出手,将他整个人拉起来。两人四目相对,激动地说着什么。
声も聞きたくない、顔も見たくない、と思っていたのにも関わらず、俺が無意識のうちに選んでいたのは数日前の潔が出場していた試合映像だった。
明明不想听声音也不愿看那张脸,可无意识间调出的,竟是几天前洁参赛的比赛录像。
オフシーズン。16時間ほど飛行機の中に閉じ込められ、その後はデカいキャリーケースを引っ張りながら電車を乗り継いで実家に帰宅した時には、流石に試合で90分走り回った時より疲れていた。部屋にキャリーケースを運び込み、荷解きをして風呂に入って飯を食う。まだ22時過ぎだったがもう寝てしまおうか、と思っているとリビングで流しっぱなしだったテレビから聞き慣れた名前が聞こえた。
淡季时分。在飞机上被困了约 16 个小时,之后又拖着巨大的行李箱辗转电车回到老家时,疲惫感甚至超过了在球场上奔跑了 90 分钟的比赛。把行李箱搬进房间,收拾完行李洗完澡吃完饭。虽然刚过 22 点,正想着要不要直接睡觉时,从客厅里一直开着的电视中传来了熟悉的名字。
『ドイツのバスタードミュンヘン所属のミヒャエル・カイザー選手が交際中の女性との結婚を発表しました』
德国拜仁慕尼黑俱乐部的米夏埃尔·凯泽选手宣布将与交往中的女性结婚
「……は?」 "......哈?"
母親が「あらまあ。この子、知ってるわ」なんて呑気な声を出しているのが遠くから聞こえる。俺はダイニングテーブルから立ち上がり、そのまま2階の自室へと向かった。スマホは家に着いた時にベッドの上に放り投げたっきり触っていなかった。アイツから死ぬほど着信が入ってんじゃねぇか、なんて俺の予想に反して、スマホ画面には何の通知も表示されていなかった。
远处传来母亲悠闲的声音:"哎呀哎呀,这孩子你认识吧"。我从餐桌起身,径直走向二楼的卧室。手机到家时就扔在床上一直没碰。本以为那家伙会疯狂打来电话,出乎意料的是,手机屏幕上没有任何通知显示。
「……は?」 “……哈?”
流石に日本のニュースで流れている時点で潔がこの情報を知らないわけがない。報道される前に個人的にミヒャエル・カイザーから報告があったりしてもおかしくはない。それなのに潔が俺に泣きついてきていない。おかしい、と思いながら俺は通話ボタンをタップした。
按理说既然日本新闻都在播报了,洁不可能不知道这个消息。在媒体报道之前,米歇尔·凯撒私下向他汇报过也不奇怪。但洁至今都没来找我哭诉。正觉得不对劲时,我按下了通话键。
呼び出し音は数回鳴るが、潔は電話に出なかった。一昨日、潔のSNSを見た時は、日本に帰国してブルーロック時代の面々と食事をしたという更新があったはずだ。あの時にはもう青薔薇の結婚のことは知っていたのだろうか。
呼叫铃响了数次,洁始终没有接听。前天查看洁的社交账号时,他还更新了回国后和蓝色监狱时期伙伴聚餐的动态。那时候他应该已经知道蓝玫瑰结婚的消息了吧。
俺は1階に降りると、親の車の鍵を借りた。「今から出掛ける。明日まで車を借りる」と言って玄関に向かうと、後ろから「運転は気を付けるのよ!」なんていう母親の声が聞こえた。
我下楼向父母借了车钥匙。“现在要出门,明天还车。”刚走向玄关,就听见母亲在身后叮嘱:“开车小心点!”
潔の実家は埼玉だったはずだ。今、実家にいないにしても東京にいる可能性は高い。無計画にそっち方面に車を走らせる。
洁的老家应该在埼玉。就算现在不在老家,待在东京的可能性也很高。我毫无计划地朝那个方向驱车驶去。
走らせながらスマホをスピーカーにして電話を掛け続けていると、何度目かでようやく潔と繋がった。
我一边开车一边用手机扬声器持续拨打电话,终于在不知第几次尝试时联系上了洁。
『え?なに?緊急事態?』 咦?怎么了?发生紧急情况了?
電話に出た潔の声は俺の想像以上に呑気な調子で、それにひとまずホッとした。
电话那头洁的声音比我想象中还要悠闲,这让我暂时松了口气。
「今お前どこにいるんだ」 "你现在在哪儿?"
『え?日本だけど』 诶?在日本啊
「日本なのは分かってんだよ。埼玉か東京か」 "我知道在日本。是埼玉还是东京?"
『埼玉。実家にいる。ご飯食べた後に寝落ちしてたわ』
埼玉。在老家。吃完饭不小心睡着了
「実家の住所送れ。今から行く」 "把老家地址发来。我现在过去"
そう言うと、潔は沈黙した。数秒経ってようやく『あー』という声が聞こえる。
说完这句话,洁陷入了沉默。过了几秒才听见他"啊——"地应了一声。
『もしかしてカイザーのアレ発表された?今日だったのか……』
难道说凯撒的那个公告发布了?原来是今天啊......
やはり潔はあらかじめ知っていたらしい。まあそうだろうな、と思う。コイツと青薔薇はただのチームメイト以上に親交を深めていたようだから。もしかしたら、コイツとミヒャエル・カイザーとその婚約者3人での地獄の食事会、なんてのも開催されていたのかもしれない。俺の知らないところで。
看来洁果然事先知情。不过这也正常,毕竟这家伙和蓝玫瑰的交情早就超越了普通队友范畴。说不定他们仨——这家伙、米歇尔·凯撒还有那位未婚妻,早就私下举办过什么地狱般的三人聚餐呢。在我不知道的时候。
アイツの家で女と鉢合わせした、なんてどうでも良い内容で泣きついて電話掛けてくるくせに、一番ヤバそうな事態の時に黙っているコイツも訳がわからない。潔が柔らかい声で言う。
那家伙在自己家里撞见女人这种破事都要哭着打电话来诉苦,偏偏在最要命的时候反而闷不吭声,真是搞不懂他。洁用温柔的声线说道。
『それで凛はこんな時間に鎌倉から埼玉まで車飛ばして来てくれんの?優しいな』
所以凛要在这个点从镰仓飙车到埼玉来?真体贴呢
「必要ねぇなら帰る」 "不需要的话我就回去了"
『いや、必要。じゃあ住所送るわ。安全運転でな。着く時間分かったら教えて』
不,需要。那我发地址给你。注意安全驾驶。到了告诉我时间
そう言ってスマホの通話が切れた。しばらくして住所も送られてきたのでそれをナビに入れた。アイツの実家まではあと2時間近く掛かるらしい。到着する頃には日付が変わっているかもしれない。それでも俺は車を引き返す気にはなれないのだった。
说完这句话,手机通话就中断了。没过多久地址也发过来了,我便把地址输入导航。到他老家似乎还要将近两小时车程,等抵达时可能都过了午夜。即便如此,我依然没有调转车头的念头。
日付が変わって少しした頃、潔の実家の前に着いた。潔は家の前に立っていた。
日期刚变更不久,我到达了洁的老家门前。洁正站在屋外等候。
「やほ。久しぶり……って感じもしねぇけど」 "哟。好久不见……虽然也没这种感觉啦"
助手席に乗り込んで潔は言った。いつもと変わりない飄々とした表情だった。
钻进副驾驶座时,洁这么说道。依旧是那副熟悉的云淡风轻表情。
「……どこか行きてぇとこあるか。ここら辺は来たことがない」
"……这附近有什么想去的地方吗?我还是第一次来这一带"
「だよなー。と思ってさっきから調べてたんだけど、こんな夜中に行くとかなんてないのよ。この辺も」
"就是啊~我刚才查了半天,这大半夜的根本没地方可去。这一带也是"
そう言って笑う。俺は黙って車を発車させた。取り敢えず高速方面へと向かう。
他笑着这么说道。我沉默地发动了车子,暂且先往高速公路方向开去。
「こういう時って大抵海の方へ行くよな。海で朝日でも見ながら語り合う?」
"这种时候通常都会去海边吧?要不要去海边看日出聊聊天?"
流れていくオレンジの街灯を見送りながら潔が言う。俺は首を振った。
凝视着流动的橙色路灯,洁说道。我摇了摇头。
「やめろ。虫唾が走る。今から行くのは山だ山」 "别说了。恶心死了。现在要去的是山啊山"
「山ー?何があんの?」 "山?那里有什么?"
「知らねぇ。朝イチで開いてる牧場でも検索しとけ」 "不知道。你不如搜搜早上开门的牧场吧"
「あ、良いな。俺、牧場のソフトクリーム好きなんだよな。味が濃厚でさ。……そういえば子供の頃に行った牧場にまた行きたいかも。景色が良くてソフトクリームがめちゃくちゃ美味しくて搾乳体験とかも出来たんだよなぁ。凛は乳搾りやったことある?あれってさー……」
"啊,真不错。我特别喜欢牧场卖的软冰淇淋,味道特别浓郁……说起来,小时候去过的那个牧场还真想再去一次。风景好,软冰淇淋超级美味,还能体验挤牛奶什么的。凛你挤过牛奶吗?那个啊——"
潔はどうでもいいネタはペラペラと話すくせに、核心には触れてこない。まあ話したところで、と言う気持ちは分かった。コイツがいくらぐちぐち言おうとも、ミヒャエル・カイザーがどこぞの女と結婚するのは変わらない。コイツには止めようがない。
阿洁总是滔滔不绝地说些无关紧要的话题,却绝口不提核心问题。不过我也明白,就算说了又能怎样。任凭这家伙再怎么絮叨,米迦勒·凯撒要和哪个女人结婚都不会改变。这家伙根本无力阻止。
その後は、潔がポツポツと当たり障りのないことを話す以外は無言で車を走らせた。途中、コンビニでコーヒーを買って更に車を走らせた。行き先はさっき潔が調べた那須の牧場だった。
之后的时间里,除了阿洁偶尔说些不痛不痒的闲话,我们都沉默地驱车前行。中途在便利店买了咖啡,继续赶路。目的地就是刚才阿洁查好的那须牧场。
「ってか、凛、眠くねぇの?どこかで仮眠しない?」 "话说凛,你不困吗?要不要找个地方眯会儿?"
深夜2時を回ろうかというところで潔が言った。俺がどうどういうより、自分が眠くなってきたのだろう。
时针即将指向凌晨两点时,洁突然开口。与其说是担心我,不如说是他自己开始犯困了。
「SAに入るか」 "要不去 SA(服务区)?"
「ってか、普通にベッドで寝たい。俺は」 "话说啊,我想正常在床上睡。我。"
「こんな夜中から泊まれるホテルがあるかよ」 "这种深更半夜哪还有能入住的酒店啊"
「高速道路沿いにあるお城って何時からでも泊まれるんじゃねぇの?俺、行ったことねぇけど」
"高速路旁边的城堡不是随时都能住的吗?虽然我没去过。"
そう言って潔が指差した先を見て俺はギョッとした。潔が指差していたのは、不自然なまでにピンクのライトで煌々と照らされた建物だったからだ。
听洁这么说着指向远处时,我猛地一惊。因为他所指的是一座被粉红色灯光刻意照得通明的建筑。
「……ラブホだぞアレ」 "......那是情人旅馆啊"
いくら7年も同性に片思いをして童貞を貫いているコイツでもその知識がないわけがないだろうと思うが、万が一……と確認する。潔は相変わらずなんてことない顔をして言う。
就算是对同性单恋七年还保持着童贞的这家伙,总不至于连这种常识都没有吧——虽然这么想着,但为防万一还是确认了下。洁依旧面不改色地说道。
「知ってるって。でもああいう所なら今からでも泊まれるんじゃねぇの?」
"我知道啦。不过那种地方现在应该还能住吧?"
何で俺に聞くんだよテメェは、と思う。 你问我干嘛啊混蛋,我心想。
「……泊まれる」 "……能住"
「んじゃ行こうぜ。ちなみに男同士でもOK?」 "那走吧。顺便问下两个男的也能住?"
「ホテルによる」 "看酒店情况吧"
「そっかー。まあ行ってみてダメだったら違うとこ当たるか」
"这样啊。那先去试试,不行的话再换别家好了"
コイツ、もしかして俺もコイツと同族だということを忘れていないだろうか。アホだから忘れているのかもしれない。俺はため息を吐いて、目の前に現れた高速の出口へとハンドルを切った。
这家伙该不会忘了我也是他的同类吧。说不定因为太蠢所以真忘了。我叹了口气,转动方向盘驶向眼前出现的高速出口。
気が進まないながらも高速を降りると、狙ったかのようにすぐ目の前にラブホが現れた。潔が見逃すはずもなく「お、あそこにしようぜ」なんて言うので渋々『ホテル人魚姫』というチンケな名前の建物に入った。
虽然百般不情愿,但刚下高速就仿佛被算计好似的,眼前立刻出现一家情人旅馆。洁当然不会放过这个机会,说着"哟,就那家吧",我们只好不情不愿地走进那栋挂着"人鱼公主酒店"这种俗气招牌的建筑。
どうやらこのホテルは名前の通りに海がモチーフらしく、受付の時点からテーマパークのような装飾で飾られていた。
看来这家酒店确实如名字所示以海洋为主题,从大堂开始就布满了游乐园般的装饰。
「すげー。山ん中なのに海だ」 "哇靠,山里居然搞海洋风"
呑気に感動している馬鹿を放って受付へ向かう。受付は無人だったので男同士でもすんなり部屋を借りれた。先ほどまでは全く疲れていないと思っていたが、いざ「今から眠れるかも」という状況になると、今更車に戻ってまたどこかへと車を走らせる体力はなくなっていた。
我撇下那个悠闲感叹的笨蛋走向前台。由于无人值守,两个男人很顺利地就租到了房间。虽然刚才还完全不觉得累,但一旦进入"现在或许能睡会儿"的状态,就实在没力气再回车上去别处了。
どうか部屋の中はまだまともでありますように、という俺の願いも虚しく、鍵を開けて入った先、部屋の中央にデンと置かれたベッドは貝殻の形をしていた。
但愿房间里还能正常点——我的祈祷落空了。打开房门后,只见房间中央赫然摆着一张贝壳形状的床。
壁一面は真っ青で、床は砂浜柄のカーペットが敷き詰められていて、天井は青空だった。ベッドの向かいの壁にはデカい水槽があって中に魚が泳いでいる。
整面墙都是蔚蓝色的,地板上铺着沙滩花纹的地毯,天花板则是一片蓝天。床对面的墙上有个巨大的水槽,里面游着鱼。
「うわー。良いところじゃん」 "哇——这地方不错嘛"
潔が言う。嘘だろ、と思ったが俺は黙って荷物を下ろして取り敢えずバスルームに向かった。洗面所にある歯ブラシを引っ掴み歯を磨く。部屋の中から潔の「お魚いっぱいいるー」なんていうはしゃいだ声が聞こえた。歯磨きを終えて部屋の中に戻ると、潔は一瞬だけ俺の目を真正面から見た。ぐらっと身体から何かが湧き立ちそうになるのを抑えてベッドに向かう。
洁说道。我心想这怎么可能,却沉默着放下行李,先走向浴室。抓起洗漱台上的牙刷开始刷牙。房间里传来洁兴奋的声音"好多鱼啊——"。刷完牙回到房间时,洁从正前方直视了我的眼睛一瞬。我强忍着体内翻涌而起的某种冲动,径直走向床铺。
「俺は寝る。テメェもはしゃいでねぇでとっとと寝ろ」
"我睡了。你也别闹腾了赶紧睡"
変な気持ちになる前に寝てしまうのが正解だと分かったのでベッドに腰掛ける。風呂は家を出る前に入っていたし、ホテルの備品のバスローブに着替えるのもダルい。靴下だけ脱いで俺はベッドに横になった。
在意识到"赶在奇怪情绪涌现前入睡才是正解"后,我坐到了床边。反正离家前已经洗过澡,也懒得再换上酒店准备的浴袍。只脱掉袜子就躺上了床。
「え、もう寝んの?遊ばねぇの?」 "诶?这就睡啦?不玩会儿吗?"
「なにで」 "玩什么"
「カラオケ」 "唱 K"
「するわけねぇだろ死ね」 "去死吧怎么可能"
無理やり眠ろうと目を瞑る。潔は薄暗い部屋の中で何やらパタパタと歩き回っていた。洗面所で水音がしたので顔を洗ったか歯磨きでもしたのかもしれない。先ほどまで怠くて仕方がなかったのに、潔の様子が気になって、睡魔はどこかへ行ってしまった。
我强迫自己闭眼入睡。洁在昏暗的房间里啪嗒啪嗒来回走动。洗手间传来水声,可能是去洗脸或刷牙了。明明刚才还困得要命,却因为在意洁的动静,睡意全消。
しばらくして妙なほどに静かになったので俺は上半身を起こした。潔はベッドに腰を掛けて水槽を眺めていた。
过了片刻,屋里安静得反常,我便支起身子。只见洁坐在床边凝视着水族箱。
「カイザーの奥さんにさ、俺、何回か会ったことあるんだよ」
"凯撒的老婆啊...我见过好几次呢"
潔は水槽から目を離さずに言った。水槽の青白い電気が潔の顔を照らしていた。
洁目不转睛地盯着水槽说道。水槽苍白的灯光映照着他的脸庞。
「アイツ、家庭環境が複雑らしくて。結婚はしねぇ、子供はいらねぇってずっと言ってたのに、いまの奥さんに出会ったらころっと意見変えちゃってさ。……まあそれくらい素敵な人だったんだけど。美人で頭が良くて愛情深い」
"那家伙啊,听说家庭环境挺复杂的。明明一直嚷嚷着不结婚不要孩子,遇到现在的太太后立马就改主意了。......不过那位确实是个特别好的人。又漂亮又聪明还温柔体贴"
「……アイツも所詮、そこら辺を歩いてる男と一緒なんだよ」
"......说到底那家伙也不过是个随处可见的普通男人罢了"
なんと声をかければ良いのか分からず、絞り出した言葉がそれだった。潔は「分かってるよ」とばかりにふふっと笑った。
不知该如何接话,最终挤出来的竟是这么一句。洁仿佛在说"我懂"似的轻轻笑了笑。
「カイザーに片思いして7年経つんだよ。俺。長いよなー。その間、一回もチャンスなんてなかった。なのに7年。諦め悪過ぎんだろ」
“我单恋凯撒已经七年了。真是够久的啊。这期间一次机会都没有过。可我还是坚持了七年。真是死不悔改啊。”
まあ、そんだけカイザーがいい男だったってことだけど。潔がそう言うので、俺は堪らずに潔の肩に手を置いた。会って数時間、コイツが妙に飄々としているのが気になったが、もうそれは散々泣き尽くした後だからだと気付いた。コイツはきっともう随分前に、涙が枯れるまで一人でミヒャエル・カイザーのことを思って泣いていたのだろう。俺には一言も言わずに。
不过这也说明凯撒确实是个好男人吧。听洁这么一说,我忍不住把手搭在他肩上。虽然见面才几个小时,但总觉得这家伙异常洒脱,现在才明白那是因为他已经哭够了。这家伙肯定早在很久以前,就一个人为米夏埃尔·凯撒哭到眼泪流干了吧。却对我只字未提。
「慰めてくれてありがとな。凛。7年間の俺のクソ不毛な片思いに嫌気がさしてたのはお前の方だよな」
“谢谢你安慰我,凛。其实对我这七年毫无结果的单恋感到厌烦的人是你才对吧。”
「……ようやく気がついたか」 “……你终于发现了啊”
「ごめんて。でも凛のおかげで7年もカイザーと一緒にいれたわ。いっぱい思い出作れたし。それで満足することにする」
“对不起。但多亏了凛,让我能和凯撒共度了七年时光。创造了那么多回忆...我决定就此满足。”
俺は潔をベッドに引き摺り込んだ。布団をめくり身体の上にかけてやり、枕を頭のまわりに敷き詰めてやる。これで眠れるはずだと思った。潔は枕に顔半分を埋めながら笑った。
我把洁拖到床上。掀开被子盖住他的身体,又在他脑袋周围塞满枕头。这样总该能睡着了吧。洁把半张脸埋进枕头里笑了。
「凛、優し過ぎんだろ。鎌倉から2時間掛けて迎えに来てくれるし。お前本当に糸師凛?偽物じゃね?」
“凛也太温柔了吧。特地从镰仓花两小时来接我。你真是糸师凛?该不会是冒牌货?”
「……7年間そうだったろうが」 “...这七年不都是这样么”
「確かに。……今日だけじゃなくて凛は7年間ずっと優しかった」
"确实呢……不只是今天,凛这七年来一直都很温柔"
潔は急に眠くなったのか、ぼんやりとした口調で言った。放っておいたらそのうち眠るだろう。だからこそ、今、言いたくなった。
洁突然像是困了似的,用恍惚的语气说道。放任不管的话,他大概很快就会睡着吧。正因如此,现在才更想说出来。
聞こえなかったら聞こえなかったで、それで良いと思った。
就算没听见也无所谓——他这样想着。
「なんでか分かるか」 "知道是为什么吗"
そう言って潔の頬を撫でる。なんとなく痩せたような気もするし、気のせいのような気もする。
说着,我轻抚阿洁的脸颊。总觉得他好像瘦了些,又或许只是我的错觉。
潔の目が俺を見つめる。しばらく見つめ合っているうちに、寝惚けて閉じ掛けていた潔の目が徐々に大きく見開かれた。
阿洁的目光凝视着我。在对视的过程中,他那双因睡意而半阖的眼睛逐渐睁大。
「……え?マジ?」 "......诶?真的假的?"
「……7年間、本当に不毛だった。何回テメェの連絡先をブロックしようと思ったかお前に分かるか」
"......这七年,真是荒废透了。你知道我有多少次想拉黑你的联系方式吗"
「あ、いや、え?」 "啊,不,呃?"
「何でこの俺が、7年間も根気強くテメェの不毛な恋愛に付き合ってやったか、お前に分かるか」
"你知道为什么老子能耐心陪你谈这场七年无果的恋爱吗?"
繰り返すと、潔の頬が徐々に赤くなった。目が覚めたようだ。俺はそれを見て胸がすくような気持ちになった。満足したので潔に背を向けてベッドに横になる。反対に潔は上半身を起こした。
重复这句话时,阿洁的脸颊渐渐泛红。他像是突然清醒过来。我看着这副模样,胸口涌起一阵畅快感。心满意足地背对着阿洁躺上床。相反地,阿洁却支起了上半身。
「寝る」 "睡觉"
「この状態で!?嘘だろ!」 "就现在这样!?开玩笑的吧!"
「今日何時間運転したと思うんだ。少しは寝かせろ」 "你知道我今天开了多少小时车吗?让我睡会儿"
「ええー……」 "诶——……"
無理やり目を瞑っても眠気は訪れなかった。当たり前だ。
就算强迫自己闭眼也毫无睡意。这是当然的。
潔は俺を起こすことも出来ずに何やら後ろで「嘘だろ……」だの「気付かなかった」だと言っていたが、そのうち俺の背中に触れながら言った。
洁没能叫醒我,只是在背后嘟囔着"不会吧……"、"居然没发现"之类的话,过了一会儿才边碰我的背边开口。
「……なぁ、凛。背中にくっついて寝ても良い?」 "……喂,凛。我能贴着你的背睡吗?"
調子のいいこった、と思う。さっきまで全く俺の気持ちに気付いてなかったくせに。ただ、それでも「嬉しい」と思ってしまう自分もいた。
真是个得寸进尺的家伙,明明刚才完全没察觉到我的心意。但即便如此,心里还是涌起"好开心"的念头。
「……好きにしろ」 "……随你便"
「うん」 “嗯”
背中に人肌が触れる。腹に潔の腕が回った。 后背传来肌肤的触感。洁的手臂环上了我的腰腹。
「ヤバい。この体勢だとすぐ眠れそう。人に抱きつくのって気持ち良いんだな」
“糟了。这个姿势感觉马上就能睡着。原来抱着人这么舒服啊”
呑気な声が聞こえたかと思うと、それはすぐ寝息となった。しばらくその体勢で寝息を聞いていたが、そっと腕を持ち上げて寝返りを打つ。正面に間抜け面が見えた。
刚听见他悠闲的声音,转眼就化作了均匀的呼吸。我维持着这个姿势听了一会儿他的鼻息,轻轻抬起他的手臂翻身。正对上一张傻乎乎的睡脸。
部屋の電気を消しても水槽の電気は消えないので、部屋は薄らと青く染まっている。コポコポとエアーの音が響き、水槽の水が揺れるのに合わせて、部屋の影も揺れた。
即使关掉房间的灯,鱼缸的灯依然亮着,整个房间被染上淡淡的蓝色。气泡声咕嘟作响,随着水缸里水波的晃动,房间的影子也跟着摇曳起来。
まるで潔と二人で海の中にいるようだった。 简直就像和洁两个人置身海底一般。
飛行機の到着まであと10分あった。俺は到着口の見えるベンチに座っていた。到着口から断続的に吐き出される人を眺めていると横から声を掛けられた。
距离飞机抵达还有十分钟。我坐在能看见出口的长椅上。正望着闸口间断吐出的人流时,身旁突然有人搭话。
「リン・イトシ?」 "林·俊?"
声を掛けてきたのは老夫だった。小さく頷くと、男は興奮したスペイン語で一気に喋り始めた。
叫住我的是个老爷子。我微微点头后,他便用兴奋的西班牙语滔滔不绝地说了起来。
スペインに住むようになって1年経ち、多少スペイン語にも慣れてきたが、やはり現地の人間のペラペラと捲し立てるような言葉を聞き取るのは苦労する。なんとか聞き取れた断片を繋ぎ合わせると、おそらくこの老夫は俺の所属するチームの長年のファンで、昨年の俺の活躍に満足している、今年から加入するヨイチ・イサギとの連携も楽しみだ、というようなことを言っているのが分かった。
在西班牙定居已有一年,虽然对西班牙语多少有些习惯了,但听当地人连珠炮般的快速讲话还是很吃力。把勉强听懂的片段拼凑起来,大概明白这位老爷子是我们球队的多年老球迷,对我去年的表现很满意,也很期待我和今年新加入的与仪伊佐木的配合。
老夫は、自分の言いたいことを言い切って満足したのか、しばらくしてニコニコと笑いながら去って行った。
老爷子似乎把想说的话都说痛快了,没过多久就笑眯眯地离开了。
なんだか気疲れのようなものを感じて時計を見ると、あっという間に15分ほど経っていたようだ。慌てて到着口に目を移すと、少し離れたところに俺の待ち人が立っていた。
不知为何感到一阵心累,看了看表才发现转眼已过去十五分钟。慌忙将视线转向到达口,只见稍远处站着我要等的人。
「……いたんなら声掛けろ」 "……既然来了就打个招呼啊"
「邪魔しちゃ悪いかなと思って」 "我怕打扰到你们"
潔はこちらに近づいてくる。俺はベンチから立ち上がり、潔の荷物を奪った。
阿洁朝我这边走来。我从长椅上站起身,一把抢过他的行李。
「さっきの人、誰だったの?お前の昔のセフレ?」 "刚才那人是谁?你以前的炮友?"
歩き出しながら潔が言う。俺はその背中を殴った。 洁一边迈步一边说道。我朝着他的后背挥了一拳。
「死ね。んなわけねぇだろ。ジジイだったろうが。それに人をヤリチンみてぇに言うな」
"去死。怎么可能啊。那老头都快入土了吧。还有别用'种马'这种词形容人"
「ヤリチンだったでしょーが」 "你明明就是种马嘛"
「……もうしばらくそんなことしてねぇよ」 "......我已经很久没干那种事了"
プイと潔に顔を背けて歩き出す。潔はふふっと笑いながら言う。
我赌气地别过脸快步走开。洁轻笑着在后面说道。
「知ってるよ。凛はもう俺に夢中だもんな」 "我知道啦。凛已经彻底迷上我了嘛"
「それ以上妙なことを喋ったらここに置いていく」 "再说这种莫名其妙的话就把你丢在这里"
「ごめんて!」 "对不起啦!"
妙に浮かれポンチな潔を放って駐車場に向かう。キャリーケースはトランクにしまい、俺は運転席、潔は助手席に座った。
莫名兴奋的洁被我扔在一边,径直走向停车场。将行李箱塞进后备箱后,我坐上驾驶座,洁则坐进了副驾驶。
シートベルトを締めて出発する、というところで潔が俺の腕を掴んだ。
正当我系好安全带准备出发时,洁突然抓住了我的手腕。
「ちょっと待って」 "等一下"
なんだ、と思って顔を上げると、予想以上の近さに潔の顔があった。そして身構える間もなく顔が近づき、ちゅっと可愛らしい音がした後に離れていった。
"怎么了?"我刚抬头就撞见近在咫尺的洁的脸庞。还没来得及反应,那张脸就凑得更近,随着"啾"的一声可爱轻响又迅速退开。
「へへっ、久しぶりに会ったから」 "嘿嘿,好久不见啦"
恥ずかしそうに照れる顔に何も言えなくなる。潔がこんな顔を俺に向けるなんて、ちょっと前までは考えられなかったことだ。
看着他害羞泛红的脸庞,我一时语塞。阿洁居然会对我露出这种表情,这在不久前简直难以想象。
こちらの反応を窺うように見ている潔の頬に手を伸ばす。今度はこちらから唇を合わせると、その目は嬉しそうに弧を描いた。
我伸手轻抚阿洁试探我反应的脸颊。当我主动吻上去时,他的眼睛弯成了开心的月牙。
「……誰か見てるかも」 "......说不定有人在看呢"
唇が離れた瞬間に潔が囁く。それでももう一度、と顔を近づけると拒否されることはない。わずかに開いた唇に舌を捩じ込むと、潔の頬に乗せていた俺の手を潔の手が握った。俺も潔の手を握り返す。受け入れられる、ということに安堵する。
当双唇分离的瞬间,洁轻声低语。即便如此,当我再次凑近脸庞时也未被拒绝。将舌尖探入那微启的唇缝,洁的手覆上了我原本轻抚他脸颊的手掌。我也回握住他的手。被接纳的事实让我感到安心。
「……早く二人っきりになりたい」 "……真想快点独处"
何度か舌を絡めあった後に潔が言った。俺は頷いてゆっくりと潔から身体を離した。車のエンジンを掛ける。車を発車させると、潔は窓の外を見ながら言った。
几番唇舌交缠后洁这样说道。我点点头缓缓从他身上离开。发动汽车引擎。车辆起步时,洁望着窗外说道。
「チームの練習って来週からだよな。それまでボール蹴れるところある?」
"下周才开始队内训练吧?这之前有能踢球的地方吗?"
さっきまでうっとりとした顔をしていたのに、もう頭を切り替えたらしい。相変わらず情緒もクソもねぇな、と思った。
刚才还一脸陶醉的样子,转眼间就切换了状态。我心想这家伙果然还是没心没肺啊。
「練習場借りたらいいだろうが」 "去租个练习场不就行了"
「良いのかなー。凛にくっついて行けば大丈夫かな」 "真的可以吗——跟着凛去就没问题吧"
「知らね。ダメとは言わねぇだろ」 "谁知道呢。又没人会拦着你"
「早く練習したいな。お前に失望されないようにしたい」
“真想快点开始练习啊。不想让你失望”
何だそれ、と思う。どういう理由なんだ。 这是什么理由啊,他心想。
「……今更お前に失望しようがねぇよ」 “……事到如今我怎么可能对你失望”
コイツとブルーロックで出会ってからもう10年以上経つ。何を今更、という気持ちの方が強い。
和这家伙在蓝色监狱相遇已是十多年前的事了。现在说这些未免太晚——这种想法反而更强烈。
潔はふふっと笑いながらこっちを見た。 洁轻声笑着看向这边。
「だよなー。俺ってこの数年、凛を死ぬほど失望させてきたよな」
"是啊。这几年我让凛失望透顶了吧"
「自覚があったのか」 "原来你有自知之明啊"
「うん。だから、これから恋人として頑張るな」 "嗯。所以今后要以恋人的身份好好努力"
小生意気なことを言ったかと思えば、不意に殊勝なことを言ったりする。コイツが妙な素直さを発揮する度に、俺はアホみたいに動揺してしまう。
上一秒还在说着狂妄自大的话,下一秒突然就冒出些懂事得不像样的发言。每次这家伙莫名其妙展现出坦率的一面,我都会像个傻子一样动摇不已。
「……テメェの良い面も悪い面もダサい面も女々しい面も嫌というほど知ってんだよ。今更嫌いになりようがねぇだろ」
"......你好的坏的土气的娘们唧唧的那面我全都见识够了。事到如今怎么可能还讨厌得起来啊"
そう言うと、潔は「そっかー」と笑った。 听我这么说,洁笑着回了句"这样啊"。
「さすが片思い歴7年の男……」 "不愧是单恋七年的男人......"
「やっぱ死ねよ。調子に乗んな」 “果然还是去死吧。别太得意忘形了”
「凛に『7年間も片思いする価値のない男だった』ってガッカリされないようにしたいんだよ俺は」
“我不想让凛觉得‘原来是个不值得暗恋七年的男人’而失望啊”
俺はふん、と鼻を鳴らした。アホはアホなりにまだマシな結論に着地したらしい。
我哼了一声。看来这白痴虽然蠢,好歹得出了还算像样的结论。
「……取り敢えず、張り切り過ぎて怪我だけはすんなよ」
“……总之,别太拼命搞得自己受伤就行”
そう言うと、潔は嬉しそうに笑った。 洁这么说着,露出了开心的笑容。
それに、と俺は思った。潔は助手席で楽しそうに一人でペラペラ喋っている。そんな姿を横目で見ながら――7年どころじゃねぇよ、と思ったことはコイツがまた調子に乗りそうなので言わないでおくことにした。
而且,我心想。洁在副驾驶座上兴高采烈地一个人喋喋不休。用余光瞥见这副模样——我暗自决定不说"何止七年啊"这种话,免得这家伙又得意忘形。
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