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可哀想じゃなきゃ抜けない?/にのまえ的小说

可哀想じゃなきゃ抜けない?  不可怜就硬不起来?

38,224字1小时16分钟

潔への独占欲を拗らせ、夜な夜な潔を陵辱する妄想で抜いている凛。こんな暴力的な欲望が本当に恋心なのかと悶々としていると、夢の中で21歳と26歳の自分と遭遇し、未来の自分はどうやら潔と付き合っているらしいと知る。恋を成就させたい気持ちと、もし付き合ったら陵辱願望を潔にぶつけてしまうのではという罪悪感の間で揺れる凛だが、潔はそんなことは露知らず懐いてきて……。
对洁的独占欲扭曲膨胀,夜夜幻想着凌辱洁来自渎的凛。正苦恼着这种暴力的欲望是否算真正的爱意时,他在梦中遇见了 21 岁和 26 岁的自己,发现未来的自己似乎正和洁交往着。在渴望实现恋情与"如果交往后会不会把凌辱欲望发泄在洁身上"的罪恶感间摇摆不定的凛,浑然不知的洁却主动亲近过来……

ひとり相撲する凛とピュアでかわいい潔を書けて楽しかったです。凛も潔も言語化が上手なので、映画デートは結構楽しくやれるんじゃないかと思います。
创作着独自纠结的凛和纯真可爱的洁非常愉快。凛和洁都很擅长语言表达,感觉他们电影约会应该能玩得很开心。


表紙お借りしました。→【illust/120816625
封面图源→【illust/120816625】

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 雨は嫌いじゃない。雨足が強くなればなるほど俯いて歩く理由が生まれる。すれ違う人間の目線を避ける理由を欲する日くらい、凛にだってある。
我并不讨厌雨天。雨势越猛,就越有理由低头前行。就连凛这样的女孩,偶尔也会需要避开路人视线的借口。

 雨はもはや嵐と呼べるほど強い。機関銃のような音を立てて窓に落ちる雨粒が、潔の悲鳴をかき消してくれる。
雨势已猛到堪称暴风雨的程度。机枪般密集的雨点砸在窗玻璃上,恰好掩盖了洁的悲鸣。

「やだっ……!離せ!やめろ!」  「不要……!放开我!住手!」
「黙れ」  「闭嘴」
「触んな!」  「别碰我!」
「黙れ!」  「闭嘴!」
 床に押し倒した潔の頬を平手打ちして、雨で透けたシャツを引き裂いた。殴られた衝撃で潔は固まっている。「なに、」と弱々しく震える声。体格で遅れをとる相手にマウントを取られて殴られた。その恐怖に気づき始めている。怯える潔と目を合わせるのが嫌で、凛は反対側の頬も叩いた。その反動で潔が勢いよく床に伏せる。右頬を手のひらで抑えながら、潔が浅く呼吸を繰り返す。
我将洁推倒在床上,扇了他一耳光,又撕开被雨水浸透的衬衫。挨打的冲击让洁浑身僵硬。"干什..."他发出微弱颤抖的声音。这个体格处于劣势的家伙被骑在身上殴打,正逐渐意识到恐惧。凛不愿对上洁惊恐的眼神,反手又扇了他另一侧脸颊。反作用力让洁猛地趴倒在床单上。洁用掌心压着红肿的右脸,呼吸变得短促而紊乱。

「なんで、やめろよ、怖えって……凛、」  "为什么...住手啊...好可怕...凛..."
「黙れっつったのが聞こえねえのか」  "叫你闭嘴是听不懂人话吗"
 胸ぐらを掴んで雑に揺さぶる。雨で濡れた髪が小さなおでこや日焼けした頬に張り付く。殴られて赤く腫れた右頬に舌を這わせると、潔が痛みで目をぎゅっとつぶった。爪がひっかかったのか、頬からは少し血の味がする。
 我粗暴地揪住他前襟摇晃。被雨水打湿的刘海黏在小麦色的额头和脸颊上。当舌尖舔过红肿的右脸时,洁因疼痛紧紧闭起眼睛。或许是指甲划破了皮肤,脸颊渗出了些许血腥味。

 お優しい両親に大切に育てられ、殴られたことなどないのだろう。潔は凛の暴力が怖いのか、握った拳をちらつかせるだけでびくりと肩を竦めた。その姿が凛の嗜虐心を煽るとなぜ分からない?隙だらけの姿を見せれば、裸に剥くくらい凛にはなんてことない。アナルに指を突き立てれば、潔の顔はあっという間に青ざめる。ひきつるような呼吸と共に「助けて」と声が漏れる。外部の救いを求めている。
被温柔的父母精心呵护着长大,恐怕连挨打的滋味都没尝过吧。洁似乎很惧怕凛的暴力,光是看到对方晃动的拳头就吓得肩膀一颤。他难道不明白这种模样只会助长凛的施虐欲吗?既然主动露出破绽,对凛而言剥光衣服简直易如反掌。当手指侵入后穴时,洁的脸色瞬间惨白。伴随着痉挛般的呼吸,漏出"救命"的呜咽。竟还妄想向外寻求救赎。

「誰が助けに来んだよ、お前のことなんて」  "谁会来救你这种货色啊"
 凛は最低限解した潔のアナルに自分の怒杭を押し当てる。目を見開いてかたかたと震える潔に構わず腰を奥へ進める。狭すぎる隘路に凛の怒張はそう易々と入らない。食い破るような挿入と共に落雷。潔の絶叫を雷がかき消す。
凛将怒张的凶器抵在勉强松开的穴口。无视洁瞪大眼睛的颤抖,腰身径直向深处挺进。过于狭窄的甬道难以容纳这般怒涨,伴随着撕裂般的侵入,惊雷炸响。洁的惨叫被雷声彻底吞没。

「オナホ野郎」  "你这人形飞机杯"
 潔の涙が頬を伝う。それすら舐め取って、凛は律動を開始した。
洁的泪水顺着脸颊滑落。凛甚至舔去了那些泪珠,随即开始了律动。

 *

「……っう、く……」  「……呜、嗯……」
 凛はびくっと体を跳ねさせて、手のひらに精液を吐き出した。深く呼吸を吐き出した後ティッシュで拭き取り、握りつぶしてゴミ箱に投げ入れた。そのままベッドへ仰向けに転がって目を瞑る。
 凛的身体猛地一颤,在手心射出了精液。深深呼出一口气后,他用纸巾擦拭干净,揉成一团扔进垃圾桶。就这样仰面倒在床上,闭上了眼睛。

 当然、妄想である。凛は潔と夕立に降られたことは無いし、潔を家に呼んだこともない。性行為に至るような関係性を築けてもいないくせに、暴言を吐いたことだけはあるという有様である。
 当然,这只是妄想。凛既没有和洁在骤雨中相遇过,也从未邀请洁来过自己家。明明连发生性行为程度的亲密关系都未曾建立,却只有恶语相向是确有其事。

 
 この数カ月間、凛は、潔をレイプすることばかり考えている。
这几个月来,凛满脑子只想着要强暴洁。

 潔に出会ったばかりの頃、凛は潔のことなんてなんとも思っていなかった。モブ、サブキャラ、路傍の石、有象無象の脇役人形。ところが、二次選考で目を惹かれて、適正試験でほんの少し心を許してしまった。心を許した分、迎えたU-20戦で手酷くしっぺ返しを食らった。それ以来、凛は潔のことを考えて、潔に勝つことだけを考えてトレーニングを積んできた。
初遇洁时,凛根本没把他放在眼里。不过是个路人甲、配角、路边石子、芸芸众生的龙套人偶。然而在二次选拔时被吸引,适应性测试中又稍稍卸下心防。正因为这份松懈,在 U-20 比赛中遭到了惨痛报复。自那以后,凛满脑子都是洁,只为战胜洁而拼命训练。

 
 必ず殺すと心に決めて迎えた、新英雄対戦での対ドイツ戦。見違えるように進化した潔に、凛は目を奪われた。
怀着必杀决心迎战的新英雄大战德国队一役。面对判若两人的进化版洁,凛看得目不转睛。

 ドイツの強豪・バスタードミュンヘンの若きエース、ミヒャエル・カイザーと渡り合い、台風の目のように戦場をかき乱す潔の姿に血が湧いた。ほんの少し目を離しただけでどんどん進化する男。蛇が脱皮の度に体を大きくしていくように、潔も次々生まれ変わっては、強くなっていた。
当洁与德国豪门巴斯塔德慕尼黑的新锐王牌米歇尔·凯撒交锋,如台风眼般搅乱战场的英姿让凛热血沸腾。稍不留神就飞速进化的男人。就像蛇每次蜕皮都会长大,洁也在不断蜕变中愈发强大。

 潔は美しかった。あたり一面をギラギラと照らす、赤道沿いに昇る暴力的な太陽のようだった。それは寒さに凍える旅人を温めて前に進ませる優しいものではなく、水不足に喘ぐ村人を殺しかねないものだ。弱者を捨て置く非情さを持ちながら、耐えたものには進化を与える、凛が知らない温度の慈悲だった。だがそんな太陽は当然、凛だけを照らすわけではない。
洁美得惊人。就像赤道沿线升起的暴烈太阳,将周遭照得刺眼眩目。那不是温暖寒颤旅人助其前行的温柔光芒,而是足以让缺水村民毙命的毒辣日晒。带着抛弃弱者的冷酷,却给予坚持者进化的恩赐——这是凛从未体验过的温度慈悲。但这样的太阳,当然不会只照耀凛一人。

 
 潔は敵味方を超えて世界中の視聴者まで惹き付けた。だれもが目を凝らして潔を見ている。その事実は凛を苦しめた。ほんの数か月前までは、まだ誰にも気づかれていない路傍の石だったのに。友人に対するものか、ライバルに対するものかは分からないが、それは途方もない独占欲となって凛を追い詰めた。思春期の凛には、発散が必要だった。
洁的魅力超越了敌我界限,俘获了全球观众的心。所有人都目不转睛地注视着他。这个事实折磨着凛。就在几个月前,他还只是无人问津的路边石子。不知是出于对友伴还是对手的情感,这份难以名状的独占欲将凛逼至绝境。青春期的凛,急需宣泄的出口。

 だれも知らない潔の姿を己のものだけにしたい。今となっては、それはサッカーに関わるものでなくても良い。凛が生まれ持った破壊衝動、ブルーロックで芽生えた独占欲と、それに従わない潔への苛立ち、そして思春期の性欲が、凛の背中を後押しした。
想要独占无人知晓的洁。时至今日,这份渴望甚至不必与足球相关。与生俱来的破坏欲,在蓝色监狱萌生的独占心,对不肯顺从的洁产生的焦躁,再加上青春期性欲——所有这些都在推着凛的后背前进。

 潔を痛めつけて、泣かせたい。殴って、脅して、性的に辱めて、そうして見られる潔の姿は、想像上のものといえど凛をひどく満足させた。新英雄対戦、対ドイツ戦。凛に向かって「クソNo.1」とほざいた潔。出会った頃より頬の丸みが抜けて、少年から青年に変わりつつある。まだ柔らかいその頬を叩いたら、どんな風に歪むだろう。自分を見上げる潔の好戦的な表情に、恐怖と羞恥で唇を噛み締める妄想上の表情を代入して、凛はオナニーした。自ら慰めると書いて自慰とはよく言ったものだ。
想要弄痛洁,看他哭泣。殴打、恐吓、性羞辱,光是想象洁被如此对待的模样,就令凛获得极大满足。新英雄大战对阵德国队时,那个冲凛叫嚣"狗屁第一"的洁。比起初遇时褪去了脸颊的婴儿肥,正从少年蜕变为青年。如果掌掴那尚存柔软的脸颊,会扭曲成什么表情呢?凛将洁好战仰视的表情,与想象中因恐惧羞耻咬紧嘴唇的模样重叠,完成了自慰。所谓自慰,正是自己慰藉自己——古人造字何其精妙。

 
 これは恋なのか?潔に恋してるなんて認めたくない、という諦めの悪さとともに、本当にこんな暴力的で醜いものが恋心なのかと猜疑心を覚える。もっと優しくて、柔らかくて、幸せなものが恋なのではないか。凛はまだ恋を知らない。だが一般的に恋とは、永遠を誓いたくなるほどに幸福なものではないのか?こんな苦しいこと、永遠になんてしたくない。相手を傷つけて泣かせたいだなんて、こんなものが本当に恋なのだろうか。本当に自分は、惚れた相手をレイプして絶望させたいと願う性癖異常者なのだろうか。
这算是爱吗?带着不愿坦然承认自己陷入恋情的倔强,凛不禁怀疑:如此暴力又丑陋的感情真的能称之为爱吗?难道爱不该是更温柔、更柔软、更幸福的存在吗?凛还不懂什么是爱。但通常来说,爱不应该是让人想要誓约永恒的幸福吗?这般痛苦的感情,根本不愿持续到永远。想要伤害对方使其哭泣——这样的感情真的能算爱吗?难道自己真的是个性癖异常的变态,竟渴望强暴心仪之人使其绝望?

 答えの出ない問いが驟雨のように凛にまとわりつく。射精後に必ず訪れる賢者タイムが不快で、凛はため息をついて仰向けに寝転がった。
无解的疑问如骤雨般缠绕着凛。射精后必然到来的贤者时间令人不快,他叹着气仰面躺倒。

 ***

「……覚えてるか?」  "……还记得吗?"
「……いや、記憶には……」  "……不,关于记忆……"
「……この時期だと……」  "……如果是这个时期的话……"
「……ああ、だから……」  "……啊,原来如此……"

 話し声が聞こえる。今はブルーロックの改修工事で凛は実家に帰っているので、ブルーロックの同期(仲間ではない。あくまで、同期)のものではない。父と兄でもない。自分の部屋で他人の声が聞こえる不快感に目を覚ますと、ふたりの男が目に入った。
说话声传入耳中。由于蓝色监狱正在进行改建工程,凛暂时回到了老家,所以这声音并非来自蓝色监狱的同届生(并非同伴,仅仅是同届)。也不是父亲或兄长。在自己房间听见陌生人声音的不适感让他猛然睁眼,映入眼帘的是两名陌生男子。

「起きたか」  "醒了吗"
「起きたな」  "你醒了啊"
 長身に黒髪、がっしりした体つきと、人を寄せつけない雰囲気。父と兄に似ている。いや、父や兄というより……自分に似ている?
高挑身材配着黑发,壮实的体格加上生人勿近的气场。和父亲与兄长很像。不,与其说像父兄......倒更像我自己?

「……誰だよテメーら」  "......你们他妈谁啊"
「お前」  "你"
「は?」  "啊?"
「だから、お前」  "就是说,你"
 理解が及ばず呆気に取られる凛に、よりガタイの良い方の男が言う。
面对一脸茫然没反应过来的凛,体格更壮实的那个男人说道。

「糸師凛、26歳」  "糸师凛,26 岁"
 あっちは21歳、ともう一人の男を顎でさした。示された男は、腕を組んで「ふん」とそっぽを向く。その素振りに身に覚えがありすぎて、凛はただ呆然とすることしか出来なかった。
 那边那个 21 岁,他用下巴指了指另一个男人。被指到的男人抱着手臂"哼"地别过脸去。这副模样实在太过熟悉,凛只能呆若木鸡地站在原地。


 26歳の凛(仮定)と21歳の凛(仮定)曰く、自室で眠っていただけなのに気づいたらここに居たらしい。夢か幻に違いないと思いつつ、未来の自分(仮定)から立ち上る存在感は果てしなく、おおよそ幻覚とは思えない。おそらく世界レベルのサッカー選手になっているのだろう凛たち(仮定)の強者のオーラは、まだ高校生の凛を容赦なく威圧する。
 据 26 岁的凛(暂称)和 21 岁的凛(暂称)所说,他们原本只是在卧室睡觉,醒来就莫名出现在这里。虽然怀疑是梦境或幻觉,但从未来自己(暂称)身上散发出的存在感实在过于强烈,完全不像是幻象。想必是成为了世界级足球选手吧,凛们(暂称)散发的强者气场毫不留情地压迫着还是高中生的凛。

「なんでこんな事になってんだよ」  "为什么会变成这样啊"
 圧倒されるだけの時間を過ごす居心地の悪さと、我が物顔で凛の自室に居座る図々しさに耐えかねて、とりあえず年上ふたりに問いを投げかける。
在被迫承受单方面碾压的难熬时光里,又实在受不了那两人理所当然霸占凛房间的厚脸皮模样,我姑且向两位年长者抛出疑问。

「……」
「……」
 無視された。  被无视了。
「おい!」  “喂!”
「うるせーな……俺が知るかよ」  “吵死了……关我屁事”
 いくら未来の自分とは言えど、他人にこんなにもどうでもよさげに振る舞われたことがなくて、凛は戸惑う。年齢が若ければ年上に許されるし、顔が良ければ異性は甘くなる。さらにサッカーが上手ければ、同じ土台にいる男たちも凛にひと目置く。凛はこの16年、ずっと周囲に気を遣ってもらってきた。邪険にされたことがないのだ。
虽说对方是未来的自己,但从未被人如此冷漠对待过的凛陷入了困惑。年纪小会被年长者包容,长相好异性就会温柔相待。若是足球踢得漂亮,同阶层的男生们也会对凛高看一眼。这十六年来,凛始终活在周遭人的呵护中。他从未遭受过这般冷遇。

「夢だろ。夢じゃねーと困る」21歳の凛が言う。  “这是梦吧。要不是梦可就麻烦了”21 岁的凛说道。
「なんで」  "为什么"
「明日、店予約してる。来店するまでに4ヶ月待ってんだぞこっちは」
"明天我预约了店里。为了能进店我可是等了四个月啊"

「ああ……これだろ」  "啊……是这个吧"
 26歳の凛が左手を見せる。薬指にはめられた銀の指輪に、16歳の凛はギョッとする。
26 岁的凛伸出左手。看到无名指上那枚银戒指,16 岁的凛顿时瞪大了眼睛。

「……右じゃねえのか」21歳の凛がまんざらでもなさそうに言う。
"……不是右手吗"21 岁的凛带着不置可否的表情说道。

「最初は右手に嵌めてた。ペアリングのつもりだったが……そのまま結婚指輪になったからな」
"最开始是戴在右手的。本来是打算当对戒的……结果直接变成结婚戒指了"

「未来の俺は新しい指輪を買う甲斐性もねえのかよ」  "未来的我就这么没出息连个新戒指都买不起吗"
 21歳の凛が呆れたように言うが、26歳の凛はどこ吹く風だ。
21 岁的凛一脸无语地说着,26 岁的凛却完全不为所动。

「あいつが『これがいい』って言ったんだ。ずっとつけてたのに今更他の指輪なんて、想像できねえって」
"那家伙说'这个就好'。明明一直戴着,现在突然换别的戒指,根本没法想象"

「……ふーん」  "……哼"
 左手をじっと見つめて緩やかに瞬きする26歳。頬杖をつくように口元を隠す21歳。16歳の凛にはわかる。あれは大切なものを見るときと、ニヤけるのをごまかすときの行動だ。
26 岁的他凝视着左手缓缓眨眼。21 岁的他用手托着下巴遮住嘴角。16 岁的凛明白——那是注视重要之物时,以及掩饰窃笑时的习惯动作。

「ま……待て、おい……なんだ、それ」  "等...等等,喂......这算什么啊"
「だから、指輪」  "所以,戒指"
「そうじゃねえ!だ、誰との……」  "不是那样的!是、是和谁的……"
「あ?ああ……」26歳が頷く。  "啊?啊啊……"26 岁的他点了点头。
「そうか、まだか」21歳がこちらを見る。  "这样啊,还没啊"21 岁的他看向这边。
「まだって、何が」16歳がうろたえる。  "还没什么?"16 岁的少年慌乱地问道。
 
「まだ付き合ってねえんだろ。世一と」  "你不是还没和世一交往吗?"
「この頃は潔って呼んでたか?」  "最近都直接叫他'洁'了?"
 勝ち誇った顔の21歳と首をかしげる26歳を見ながら、凛は言葉にできない感情に包まれる。衝撃、喜び、困惑、疑問。5年後には付き合ってる?潔と?俺が?しかも10年後には結婚までしているようだ。
望着 21 岁青年胜券在握的表情和 26 岁青年歪头困惑的模样,凛被难以名状的情绪淹没。震惊、喜悦、困惑、疑问。五年后我会和洁交往?而且十年后似乎都结婚了?

「ど、どうやって」  “怎、怎么做到的”
 咄嗟に口をついて出たのは疑問だった。今の凛は、潔とはただのライバルだ。凛が一方的に懸想しているだけで、とても潔と付き合うだのペアリングだの結婚だの、できるとは思えない。魔法使いか犯罪者にでもならないとその未来へたどり着けないだろう。だが凛はサッカー選手になるので、魔法使いにも犯罪者にもなれない。
 脱口而出的疑问。现在的凛和洁不过是普通对手关系。只是凛单方面暗恋着对方,根本不敢想象能和洁交往、戴对戒甚至结婚这种事。除非变成魔法师或罪犯,否则根本走不到那个未来。但凛要成为足球选手,既当不了魔法师也做不成罪犯。

 潔と付き合うに至った方法を知りたい。凛の脳内に「1日15分でOK!潔世一の落とし方」「潔世一篭絡テク20選」という文言が動画サイトのサムネイルのように浮かぶ。しかし、未来はそう簡単には凛に微笑んでくれない。
 他迫切想知道与洁交往的方法。凛的脑海里浮现出视频网站缩略图般的标题文字《每天 15 分钟!教你攻略洁世一》《拿下洁世一的 20 个技巧》。然而未来可不会如此轻易对凛展露笑颜。

「どうやってもクソもねえだろ」  “哪有什么狗屁方法”
「最初がどうだったか、あんま覚えてねえ」  "最开始啥样来着,记不太清了"
 この役立たずどもが。特大の舌打ちをかまして雑に腰を下ろす。
这群废物玩意儿。他咂了个响舌,粗鲁地一屁股坐下。

「つーか……若ぇな」  "话说……挺嫩啊"
「あー……暇なんだろ」  "啊——……闲得慌是吧"
「は?」  "哈?"
 未来の凛たちがいじめるような表情で床に目をやる。視線の先を追うと、ゴミ箱。空き封筒とビニールゴミ。そして山盛りに積み上がったティッシュ。
未来的凛等人带着戏弄的表情看向地板。顺着视线望去,是个垃圾桶。里面有空信封和塑料袋垃圾。还有堆积如山的纸巾。

「イカくせー部屋だな。換気しろよ童貞」  "这房间真够恶心的。处男你倒是通通风啊"
「やめとけ。まだガキなんだからしょうがねえだろ」  "算了吧。毕竟还是个毛头小子,没办法"
「……!!?死ね!!!!」  "……!!?去死吧!!!!"
 鎌倉の町に凛(16歳)の咆哮が響く。  镰仓的街道上回荡着凛(16 岁)的怒吼。
「年下からかって恥ずかしくねえのか!?未来の俺なら通った道だろ!くたばれジジイ共!」
"被年下小鬼戏弄不觉得羞耻吗!?未来的我可是走过这条路的人!去死吧老东西们!"

「うっせーガキ……」  "吵死了小鬼……"
 騒ぐ16歳に26歳がため息をつく。激動の四半世紀を生きた身では、思春期のあれそれなどケツの青い若造の小さな不満にしか見えない。まるで相手にされていないことが腹立たしく、凛(16)は眉をつり上げる。
26 岁的成年人对着吵闹的 16 岁少年叹了口气。对于经历过动荡四分之一世纪人生的他而言,青春期那些琐事不过是毛头小子幼稚的抱怨罢了。被彻底无视的事实让凛(16)气得吊起眉毛。

「サッカー選手の寿命何歳だと思ってんだよ。21はともかく、26とか落ち目だろこの色ボケアラサーが」
"你以为职业足球员的黄金年龄到几岁?21 岁姑且不论,26 岁根本就是走下坡路的色衰大叔了吧?"

 ムカつくやつには挨拶がわりに喧嘩を売りまくるのが青二才糸師凛(16)のスタイルである。だが十も年下となると相手をする気にもならないのか、26歳の凛は我関せずという顔でたぷたぷとスマートフォンをいじる。
向看不顺眼的家伙挑衅代替问候,正是初出茅庐的糸师凛(16)的作风。但面对小十岁的对象似乎连应付都嫌麻烦,26 岁的凛只是事不关己地划拉着手机屏幕。

「この世一見てもそれが言えんのか?あ?」  "就算亲眼见到世界第一,你还能说出这种话吗?啊?"
 世一、という言葉に16歳だけでなく21歳も反応する。印籠のように掲げられたスマートフォンを見ると、そこには潔世一・26歳の姿が写っていた。
听到"世一"这个词,不仅 16 岁的凛,连 21 岁的凛也立刻有了反应。像出示印笼般举起的智能手机屏幕上,赫然显示着 26 岁洁世一的身影。

「この前ギリシャ行った時のやつ」  "这是上次去希腊时拍的"
 バカンス休暇なのだろう。26歳の潔は、16歳の凛が知っているよりも、ずっと体が逞しくなっている。ふた周りほど大きくなった上半身と、ハーパンから覗く見事なふくらはぎ。健康的に焼けた肌。だが、バケット帽の鍔をつまんでおどけたように笑っている姿は、年齢を感じさせないほど無邪気だ。夜の海に似た深い色の瞳はキラキラと輝いて、まるで子犬のよう。
想必是在度假吧。26 岁的洁比 16 岁凛记忆中的模样健壮许多。壮实了两圈的上半身,从短裤下露出线条优美的小腿,健康的小麦色肌肤。但当他捏着巴拿马帽檐搞怪大笑时,那份天真烂漫让人完全感受不到年龄。那双如夜海般深邃的眼眸闪闪发亮,简直像只小狗。

「これで26は詐欺だろ……」  "说这是 26 岁根本是诈骗吧......"
「今でも年確されるらしい。アジア人は幼く見えるからだと本人は思ってるが、俺はされたことねえから、まあそういうことだ」
"听说他现在还会被查年龄。他本人觉得是因为亚洲人看起来显小,不过我从来没被查过,所以嘛,你懂的。"

 16歳の独り言に返事が返ってくる。  16 岁的自言自语得到了回应。
「ギリシャといえばヨーグルトだろ、とか言ってバカンス中毎朝ヨーグルト食べてたな。海見ながらオレンジ丸かじりして手のひらベタベタにしてた」
"说到希腊就会想到酸奶吧",度假期间每天早上都这么说着吃酸奶。一边看海一边啃着整颗橙子,弄得手掌黏糊糊的。

 さっきまであんなに凛(16)のことを無視していたくせに、潔のことであれば饒舌になるようだ。何歳になっても顔も中身もガキのまんまで手がかかる、学年だけで言えば一応年上のくせにやれやれ困ったもんだ、というスタンスで発せられる自虐風惚気、そしてそれを止める気もない、自覚もない姿を16歳が白い目で見ていると、勝手に写真をスクロールしていた21歳がポツリと呟く。
刚才还对凛(16)爱答不理的,一提到洁倒是变得滔滔不绝了。明明不管长到几岁都还是那张娃娃脸和幼稚性格,从年级来说明明算是前辈却总让人操心——21 岁用这种自嘲式炫耀的口吻说着,完全没有要收敛的意思,也没有自觉。16 岁的少年翻着白眼看他时,擅自滑动着照片的 21 岁青年突然轻声嘀咕起来。

「5歳上もいいな……」  "大五岁也不错啊……"
 その言葉に明確に色を感じて、凛(16)はさらにしらける。凛(26)は凛(21)に殴りかかりながらさっさとスマートフォンを回収した。
这句话里明显带着颜色意味,让 16 岁的凛更加冷淡。26 岁的凛一边扑向 21 岁的凛,一边迅速收回了智能手机。

「死ね。自分の恋人にだけ欲情しろカス。このとおり、26歳なんてまだガキだ。特に世一なんていう常識の範疇外にいる希代の童顔野郎は16歳の時とそんな変わんねーだろ。お前も見せてみろ」
"去死吧。只对自己的恋人发情的垃圾。看吧,26 岁根本还是个小鬼。特别是世一这种超出常识范畴的稀世童颜混蛋,和 16 岁时根本没什么变化吧。你也给我看看"

 凛(26)があごで凛(16)を指さす。たとえ26歳の潔が童顔で可愛らしいとは言え、凛からすれば十歳上だ。流石にお兄さんらしく感じたし、16歳の潔とは同じに見えない。
26 岁的凛用下巴指了指 16 岁的凛。虽说 26 岁的洁确实是童颜很可爱,但对凛来说毕竟是大了十岁。确实能感觉到哥哥般的气场,和 16 岁的洁看起来完全不一样。

「アラサーと一緒にすんな。ん」  "别跟快三十的人混在一起。哼。"
 凛は自分のスマートフォンを差し出す。新英雄対戦のドイツ戦の後、半ば無理矢理交換させられたチャットアプリのホーム画面だ。一難高校サッカー部の集合写真、有象無象の中で笑顔を作る潔。ぴょこんと生えた双葉の自己主張が健気だ。
凛递出自己的智能手机。那是新英雄对战德国赛后,半强迫交换来的聊天软件首页画面。一难高中足球部的集体照里,洁在芸芸众生中展露笑容。那对俏皮翘起的呆毛倔强得惹人怜爱。

 26歳の凛がほんの少し眉を寄せる。  26 岁的凛微微蹙起眉头。
「……こんな幼かったか?中学生か小学生に見える」  "......原来这么幼齿吗?看着像初中生还是小学生"
「小学生には見えねえだろ、目ぇ死んでんのか」  "这都看不出是小学生?你眼睛瞎了吗"
「11歳くらいに見える。ヨーロッパに慣れすぎた」  "看起来像 11 岁左右。在欧洲待太久了"
「俺には子ども顔の16歳にしか見えねえ」  "在我眼里就是个娃娃脸的 16 岁"
「それはお前もガキだからだ」  "那是因为你自己也是个毛孩子"
 ああ言えばこう言う。上下が言い合っていることすら意に介さず、21歳がまた迂闊にも口走る。
他总有办法顶嘴。连上下级之间的争执都不放在眼里,21 岁的他又不小心脱口而出。

「年下もいいな……」  "年下也不错啊……"
 凛(16)の二の腕に怖気が立つ。反射的にパンチしてスマートフォンを奪い取った。
凛(16 岁)的手臂上起了鸡皮疙瘩。条件反射地挥拳夺过了手机。

「しね!しね!キモい!しね!」  "去死!去死!恶心!去死!"
 殺傷力の欠けらも無い罵倒をくり返して、凛はスマートフォンの電源を落とした。これ以上見せてたまるか。と言っても、凛(16)はふたりと違って潔と特別な関係ではないので、見せられるような写真は他には無いが。
凛反复咒骂着毫无杀伤力的话语,随后关掉了手机电源。这种照片怎么能继续看下去?不过话说回来,16 岁的凛与那两人不同,和洁并没有特殊关系,所以也没有其他能展示的照片。

「21歳の潔は?」  "21 岁的洁呢?"
 凛(26歳)が問う。21歳も自慢するつもりだったのか、すでに写真を用意していたようで、通行手形のように掲げて見せつけてくる。
26 岁的凛问道。21 岁那位似乎也打算炫耀,早已准备好照片,像出示通行证般得意洋洋地举到面前。

「家で撮ったやつ。干したての布団はあったかくて最高なんだと」
"在家拍的。刚晒过的被子暖烘烘的,舒服极了"

 ベッドに座って掛け布団を抱きしめている潔だ。重たい前髪をピンでとめて、おでこがむき出しになっている。部屋着のTシャツとハーフパンツはくたくたで、隙だらけの裾から肌が見えている。16歳のときよりも日に焼けた、少しだけ大人の潔。安心しきったふにゃふにゃの顔で微笑む姿は、生活感に塗れてなお愛おしい。
坐在床上紧抱着被褥的洁。用发夹别住厚重的刘海,露出光洁的额头。家居 T 恤和运动短裤皱巴巴的,从松垮的衣摆缝隙间隐约可见肌肤。比十六岁时晒得更黑了些,透着几分成熟韵味的洁。那张完全放松的柔软笑颜,即便沾染了生活气息也依然惹人怜爱。

「……」16歳の凛は黙る。  「……」十六岁的凛沉默着。
「……」26歳の凛も黙る。  「……」二十六岁的凛也沉默着。
 三人の心はひとつになっていた。「抱きたい」一択である。
三人的心声在此刻完全重合——"好想抱住他",这是唯一的选择。

「見せなきゃ良かった。死ねてめーら」  "不该让你们看的。去死吧混蛋"
 ふたりの心中を察した21歳は早々にスマートフォンを回収した。16歳の凛は、自分にとって恋愛対象になる年齢差は5才までなのだと自己理解を深めた。
21 岁的他察觉到两人寻死的念头,迅速收回了手机。16 岁的凛加深了自我认知:对自己而言,恋爱对象的年龄差最多只能接受 5 岁。

 
「お前、16歳の世一を撮ってこい」  "你去把 16 岁的世界第一给我拍来"
 26歳の凛がおもむろに口を開く。  26 岁的凛缓缓开口道。
「は?」  “哈?”
「プロになると『潔世一」で検索するだけで、広報活動の宣材写真や試合中のリプレイ画像が山ほど出てくる。もっと子どもの時の写真は、お義母さんたちが持ってる。だが、ブルーロックにいたころの潔は貴重だ。撮ってこい」
“成为职业选手后,只要搜索‘洁世一’,就能看到铺天盖地的宣传照和比赛回放截图。小时候的照片倒是养母们手里有。但蓝色监狱时期的洁可是稀缺资源。去给我拍来”

「そうだな」21歳も同意する。  “确实”21 岁那位也表示赞同。
「ブルーロックのアーカイブも試合中のものしか残ってねえし」
“蓝色监狱的存档里也只有比赛期间的影像”

「サッカーしてねえ時の気ぃ抜けてる画像とか出回ってねえ」
"没踢球时放松的照片怎么可能流传出去啊"

「飯食ってる時とか休憩中に遊んでる時のアーカイブこそいるだろ。16だぞ」
"吃饭休息时玩耍的影像才该保留吧。毕竟才 16 岁"

「ストレッチ中とか風呂上がりとかもいる。16だし」
"拉伸训练后和洗完澡的也要留。16 岁嘛"

「いるわけねえだろ!!」16歳は吠える。  "怎么可能留啊!!"16 岁少年怒吼道。
「うるせえな思春期……いいから撮ってこい」  “吵死了青春期小鬼……少废话快去拍”
「この中で一番弱ぇんだから最低限の仕事しろ」  “这里面就属你最弱鸡 至少把基本工作做好”
 26歳と21歳の凛が16歳の凛を突き飛ばす。  26 岁和 21 岁的凛把 16 岁的凛一把推开。
「うわっ」  “哇啊”
 ベッドに仰向けに倒れながら、凛(16)は未来の自分に「てめえらふざけんないい加減にしろ殺すぞクソカス色ボケ共」と罵倒するため口を開こうとする。だが未来の自分に胸を押された瞬間から、景色の流れ、自分の動き、視界に入るすべてがスローモーションのようにゆっくりと流れ、凛は心の中で目いっぱい呪詛を吐きながら、ただ重力に身を任せることしかできなかった。
凛仰面倒在床上,16 岁的他正想开口咒骂未来的自己"你们这群混蛋别太过分我要宰了你们这些发情的色鬼人渣"。但从被未来的自己按住胸膛那一刻起,眼前流动的景色、自己的动作、视野中的一切都如慢镜头般缓缓推移,他只能在心中拼命诅咒着,任由重力牵引身体坠落。

 目が覚めた。眠ったはずなのに、どっと疲れている。なにか嫌な夢を見た気がするのだが。
醒了。明明睡过却疲惫不堪。总觉得做了个讨厌的梦。

「……どうでもいい。水」  "......无所谓。水"
 凛は掛け布団を剥いで、リビングへ歩き出した。  凛掀开被子,朝客厅走去。

 *

 いくらブルーロックがサッカーに特化した特殊な施設だからといって、施設の運営設備に限界はある。凛を含めたブルーロックスたちは、健康診断を受けるため監獄から一時外出することとなった。高校生たちが授業を休んでブルーロックにて共同生活を送るにおいて、複数人の保護者から定期的な一時帰宅と半年に一度の定期検診を要求されており、絵心はその証明を各家庭に連絡しなければならないらしい。イカれた施設のくせに時折常識的な対応をするものだ。
虽说蓝色监狱是专门为足球打造的特殊设施,但运营设备终究有其极限。包括凛在内的蓝色监狱成员们,为了接受体检而获得了暂时外出的许可。考虑到高中生们停课在此过集体生活,多位家长提出了定期探亲与半年一次体检的要求,据说绘心必须向每个家庭发送相关证明。明明是个疯狂的设施,偶尔却会采取些合乎常理的应对措施。

 選手たちを迎えに来たバスはたった一台。入監時に乗ってきた台数よりもずっと少ない。だが、感傷に浸るには彼らはライバルを蹴落とし過ぎてきた。負かしてきたやつらの気持ちだの想いだのを、背負うつもりも持って行くつもりは毛頭ない。せいぜい糧になれと考えながらただ積み上げる。少なくとも凛はそうしてきたし、ここまで生き残ってきたやつらは多少なりともそのつもりでいるだろう。
前来接选手的巴士仅有一辆。比起入狱时的车队规模寒酸得多。但这些早已将对手践踏过多的少年们,根本无暇感伤。他们既不愿背负、也懒得带走那些败者的心情与念想,顶多当作垫脚石堆砌起来。至少凛是如此行事,而能存活至今的家伙们,多少都抱着这种心态吧。

 選手たちは次々バスに乗り込んでいく。凛は早々に一番うしろの窓側の席をとって、映画のストリーミングサービスのアプリを立ち上げる。ブルーロックでは娯楽は極限まで絶たれている。バスが健康診断会場に向かうまでの自由時間をみすみす眠って過ごす凛ではない。画面をスクロールし、以前から気になっていたいくつかのホラー映画のあらすじを読む。
队员们陆续登上巴士。凛迅速抢占最后排靠窗座位,点开电影流媒体应用。在蓝色监狱里娱乐被压榨到极限。他可不是会白白浪费前往体检场馆途中自由时间闷头大睡的类型。滑动屏幕浏览着先前关注的几部恐怖电影简介。

「凛、ここ空いてる?座っていい?」  "凛,这里没人吧?我能坐吗?"
 イヤホン越しに潔の声が聞こえて、凛は反射的にそちらを見た。ボストンバッグを抱えた潔が腰をかがめて凛を覗き込んでいる。
耳机里传来洁的声音,凛条件反射地转头望去。只见抱着波士顿包的洁正弯腰俯视着自己。

「もうどこも空いてなくてさ。なに見てんの?」  "到处都没空位了。你在看什么呢?"
 突然の潔の登場に驚いた凛が固まっている間に、潔が隣に座って凛の手元を覗き込む。
凛被突然出现的洁惊得僵在原地,而洁已经顺势坐到邻座,探头看向他手中的东西。

「近え」つい心の声がそのまま出た。  "太近了"——这句心声不小心脱口而出。
「ごめんごめん。映画見んの?うわ、ホラー?やめてくれよ、俺ホラー駄目」
“抱歉抱歉。要看电影?哇,恐怖片?饶了我吧,我最怕恐怖片了”

「お前に関係ねーだろ」  “关你屁事”
「隣で見られるのもやなの!ほらこれとか、交通事故で遭難した男女グループがうんたらって、縁起でもねーじゃん」
“在旁边看着也难受啊!你看这个简介,什么遭遇车祸的男女团体然后怎么怎么的,多不吉利啊”

 潔は凛のスマートフォンを覗き込んで勝手に画面をスクロールする。
洁擅自凑近凛的手机屏幕,手指随意滑动着页面。

「おい」  “喂”
 潔はこういう、運動部の男子らしい無遠慮さがある。がさつさとは少し異なる、他人との境界をひょいと乗り越えてくる自他境界の曖昧さ。だがそれがなんとなく許されているのは、それが短慮さからくるものではなく、潔のオープンな性根から生まれているため。つまりは、愛嬌で乗り越えているということだ。本人も無自覚である。
洁有着这种运动系男生特有的不拘小节。与粗鲁略有不同,是一种能轻易跨越与他人界限的暧昧感。但人们莫名能容忍这点,是因为这并非源于轻率,而是源自洁开朗的天性。说白了,就是靠亲和力蒙混过关。连他自己都没意识到这点。

「あ、これは?面白そう」  “啊,这个?好像挺有意思”
 潔はスクロール先の映画のページを開く。人類と未知の巨大怪獣との闘いを描くSF映画。特殊な燃料を積んだ巨大ロボットに人類が乗り込み、地球の命運をかけた壮大な戦いへ身を投じるストーリー。
洁点开了滚动条尽头的电影页面。这是部描绘人类与未知巨型怪兽战斗的科幻片。剧情讲述人类驾驶装载特殊燃料的巨型机器人,投身决定地球命运的壮阔战役。

「なんでバス事故は駄目で怪獣はいいんだよ」  "为什么公交车事故不行,怪兽就可以啊?"
「リアリティが全然違うじゃん。バス事故はありそうで怖いけど、怪獣とかありえないだろ。これにしよ」
"真实感完全不一样好吧。公交车事故感觉随时可能发生才可怕,怪兽什么的根本不可能出现啦。就选这个吧"

「つーかなんでお前も見る前提なんだよ」  "话说为啥默认你也要一起看啊"
「いいじゃん、一時間暇だし。イヤホン片方ちょうだい!」
"有什么关系嘛,反正有一个小时空闲。分我一只耳机啦!"

 イヤホンはんぶんことかこいつ正気かよ。有線にすればよかった、持ってないけど、と後悔しつつ、凛はつい癖で嫌そうな顔をしたまま片耳のイヤホンを拭いて渡した。なんの抵抗もなく凛の横に座って、堂々とスマートフォンを覗き見し、自分が見たい映画を強請った後、イヤホンの片方を要求する、潔のこの甘ったれぶり。自分に気があるんじゃないかと相手を勘違いさせる振る舞い。潔はきっと、誰にでもこういうことをやってのけるのだ。「再生!」と楽しげに声を上げる潔を見ながら、凛は腹立たしく思った。
耳机分我一半?这家伙脑子正常吗。凛一边后悔着"早知道该用有线耳机了——虽然我也没有",一边习惯性地板着脸擦拭单边耳机递了过去。这个叫洁的家伙毫不客气地挨着凛坐下,明目张胆偷看他的手机屏幕,死缠烂打要看他选的电影后,又理直气壮索要半边耳机。这种撒娇耍赖的做派,简直会让人误会对方对自己有意思。凛盯着兴高采烈喊"播放!"的洁,暗自咬牙切齿地想:这家伙肯定对谁都这样。


「健康診断会場ついたぞー降りろー」  "到体检中心了——快下车——"
「……」
「……」
 引率の教師のように呼び掛ける玲王の声に反応できなかった。ゆっくりとした動作で停止ボタンを押し、ふたりはゆっくりと顔を見合わせた。
我无法对玲王那如同引路教师般的呼唤作出反应。缓缓按下暂停键后,我们慢慢对视了一眼。

 面白すぎる。主人公はとあるロボットパイロットの男性。もともと兄とコンビを組んで怪獣退治を行っていた主人公だったが、冒頭、怪獣が引き起こした海難事故により兄を失ってしまう。CGとは思えない怪獣の質感、もはや変態的なロボットコックピットの作り込みが、世界観の大きさを想像させる。圧倒的な力量差の前に膝をついた主人公の咆哮と、その絶望を食い破るように始まるオープニングが期待感を煽る。世界観の説明と主人公の再出発、一癖ありつつも強者然とした他パイロットたち、新たな相棒との初陣を勝利に収め、相棒の悲しい過去が匂わされたところで、目的地についてしまった。
 实在太精彩了。主人公是某位男性机器人驾驶员。原本与兄长搭档进行怪兽讨伐的他,在开篇就因怪兽引发的海难事故失去了哥哥。那逼真得难以置信的怪兽质感,以及堪称变态级精细的机器人驾驶舱构造,无不令人对世界观之宏大浮想联翩。面对压倒性力量差距跪地咆哮的主角,以及仿佛要撕裂绝望般展开的片头,都让人期待感爆棚。世界观解说与主角的重新出发,性格各异却实力超群的其他驾驶员们,与新搭档初战告捷后隐约透露的搭档悲伤往事——正当剧情推进至此,列车已抵达目的地。

「おっ……面白……俺映画とかあんま見ないんだけど、映画ってこんな面白いの?」
"哇......好厉害......我平时基本不看电影,原来电影能这么好看?"

「……いや……」  "......不......"
 この世のすべての映画がこんなに面白いわけではない。王道といえば王道のストーリーなのだと思うが、凛はホラー以外の映画をあまり知らないので、なんとも言えない。映画紹介文を見ていると、凛や潔でも知っている名だたる賞を受賞している人気作らしい。
并非世上所有电影都如此精彩。虽说这算是主流剧情片,但凛对恐怖片以外的电影知之甚少,实在不好评价。浏览影片简介时发现,这似乎是连凛和洁都听说过的获奖热门作品。

「……有名なだけはあるな……」  "……不愧是名作啊……"
「なああと何分?帰りで全部見れそう?」  "喂还要多久?回去路上能看完吗?"
「ギリ」  "勉强可以"
「健康診断速攻で終わらせて、早く続き見ようぜ」  "体检快点搞定,好早点回去看后续啊"
「分かった」  "知道啦"
「終わったらバス集合な!」  "结束后在巴士集合!"
 そう言って潔は走って会場へ向かう。凛もその背中を追いながら、帰りも潔と隣の席にだと確定したことに、頬の肉を少し噛んだ。
洁说完便跑向会场。凛追着那个背影,想到回程也确定能和洁邻座,不禁轻轻咬住了脸颊肉。

 健康診断を終え早足でバスに戻ると、潔が「遅ぇよ!」とうきうきした様子で映画の続きを促してきた。一応肩を殴っておいた。
体检结束后快步赶回巴士,洁已经兴奋地嚷嚷着"太慢啦!"催促继续看电影。我姑且捶了下他的肩膀。

 ロボットSF映画の面白さに、潔はまんまとやられてしまったようだ。中盤、相棒の過去を知って眉をハの字にし、親子と兄弟の絆を感じては目を潤ませ、新たな相棒との絆を示されて「すげー!」と声を上げ、起死回生の一撃を食らわせた主人公の姿に思わずといった様子で凛の腕を叩き、主人公とヒロインが結ばれたラストシーンで拍手した。
看来洁完全被这部机器人科幻片的魅力征服了。看到中段得知搭档过往时他眉头皱成八字,感受到亲子兄弟羁绊时眼眶泛红,见证新搭档情谊时高喊"太帅了!",当主角使出逆转一击时他无意识地猛拍凛的手臂,最后男女主终成眷属的场面更是让他鼓起掌来。

「めちゃくちゃ面白かった……」  "超级好看......"
 惰性でエンドロールを眺めながら潔がつぶやいた一言に、凛も同意せざるを得なかった。凛は基本的にホラー専門で、SFはともかくロボット映画なんて管轄外なのだが、そんな凛すら時間を忘れるほどのめり込んだ。
望着滚动字幕时洁的这句嘀咕,连凛也不得不点头赞同。凛本是专攻恐怖片的类型,科幻题材姑且不论,机器人电影根本不在守备范围内——但就连这样的凛都看得忘记了时间。

「映画ってすげーな……」  "电影真是太厉害了……"
「面白かった」  "很好看"
「な!なあ、これって続編ないの?」  "对吧!那个,这个没有续集吗?"
「ある。最近日本でも公開されたらしい」  "有的。听说最近在日本也上映了"
「まじ!?すげーいいタイミング!絶対見たい!」  "真的!?太巧了!我一定要看!"
 潔はブルーロックの予定表を確認する。  洁翻看着蓝色监狱的日程表。
「二週間後に一時帰宅日ある!なあ、この日に映画見に行こうぜ。埼玉と鎌倉の間くらいなら……渋谷でどう?」
"两周后有临时回家日!喂,就这天去看电影吧。埼玉和镰仓中间的话......涩谷怎么样?"

 なんで俺も行くことが確定してるんだ、と反射で言いそうになったが、これは明らかにふたりきりでの外出のお誘いである。凛は緊張を悟られないように気を張りながら、映画館の上映予定スケジュールを確認する。
"为什么连我去都成既定事实了"——凛差点脱口而出,但这明显是对方在邀请两人单独外出。他强忍着不暴露自己的紧张,查看着电影院的排片表。

「昼過ぎくらいがちょうどいいんじゃねえの」  "下午那会儿正合适吧"
「じゃあ11時くらいに駅前で待ち合わせしようぜ。どこかで昼飯食べてから続編見よ!」
"那 11 点左右在车站前碰头吧。找个地方吃完午饭接着看续集!"

「わかった」  "好"
「楽しみー!」  "好期待啊!"
 喜色満面。たとえ映画目的と言えど、好き(暫定的表現)な相手に自分との外出を楽しみにされていると思うと、体の内側がもぞもぞとして、暴れ出したくなる。が、自分が浮ついていることに気が付いて、凛は眉間にしわを寄せた。潔に機嫌を取られているような気がした。
喜色满面。即便说是为了看电影,想到喜欢(暂定表达)的对象正期待着与自己的约会,身体深处就躁动不已,简直想手舞足蹈起来。但察觉到自己飘飘然的状态后,凛皱起了眉头。总觉得像是被对方轻易拿捏了情绪似的。

 居心地の悪さを誤魔化すためにもう一度映画情報欄を見ると、どうやら第一作とは監督が違うらしい。
 为掩饰不自在的感觉,他再次看向电影资讯栏,发现续集似乎换了导演。

「……?」
 第一作の上映は十年以上前。結構な年月が経っているうえに、監督が異なっている。十年経ってしまった理由は、製作会社が経営難に陥りプロジェクトが停止していたこと。あらすじを確認したところ、前作の主人公は出てこないようだ。
 前作上映已是十年前的事。经过相当漫长的岁月,导演也换了人。之所以间隔十年,是因为制作公司陷入经营困境导致项目搁置。看了看剧情简介,似乎前作主角不会登场。

 数々のホラー映画を見てきた凛の勘が働く。ホラー映画は低予算の……いわゆるクソ映画が多いのだ。期間を置いて上映される、別監督による続編。嫌な予感がする。だが、その数々の不安も、「続編どうなると思う?」とうきうきする潔には言えなかった。
看过无数恐怖片的凛直觉开始报警。恐怖片大多是低成本烂片……那些隔段时间就上映、由不同导演操刀的续集。她有种不祥的预感。但面对兴奋追问"你觉得续集会怎么拍?"的洁,她终究没能说出口那些不安。

 
 **

 今生のライバルだと思った男がゲイだったことは、凛に大きな衝撃を与えた。彼女の有無を尋ねられ、「恋人はいる」と曖昧に答えた潔に違和感を覚えて、問い詰めたら「男と付き合っている」と言った。穏やかで真面目な大学生で、サッカーはしていないけど話は聞いてくれる、優しい人だという。
发现今生认定的劲敌竟是同性恋这件事,给凛造成了巨大冲击。当被问及感情状况时,洁含糊其辞回答"有恋人"的态度令她心生违和,逼问之下才坦白"正在和男人交往"。据说对方是个温和认真的在校大学生,虽然不踢足球但愿意倾听,是个温柔的人。

「誰にも迷惑かけてないし。なにが悪いんだよ」  "又没给任何人添麻烦。这有什么问题"
 そう開き直った潔の態度が癪で、そのまま自室に連れ込んでレイプした。その彼氏とやらは大層潔のことを大切にしていたようで、潔はまだ処女だった。「初めては彼氏とがよかったのに」と泣いたのも、もはや昔の話だ。この日から凛と潔には、継続的な肉体関係がある。ブルーロックという治外法権では、誰も潔を守っちゃくれない。潔は自分のサッカーを守るために、その彼氏サマとやらを裏切って、凛に抱かれているのだ。
洁那副破罐子破摔的态度让人火大,凛直接把他拖进自己房间强暴了。那个所谓的男友似乎非常珍视洁,洁居然还是处子之身。"明明想把第一次留给男友的"——这样的哭诉也早已成为过往。从那天起,凛与洁建立了持续不断的肉体关系。在这法外之地蓝色监狱里,没人会保护洁。为了守护自己的足球梦想,洁背叛了那位"男友大人",任由凛肆意占有。

 週に三回、潔は凛の部屋にやってくる。洗浄を済ませたアナルは、繰り返される凌辱に適応して縦に割れつつある。
 每周三次,洁都会来到凛的房间。经过反复清洗的后穴,在持续不断的凌辱中逐渐纵向裂开。

「写真、送ったか?」  "照片发过去了吗?"
「……送った……」  "……发了……"
「見せろ」  “给我看”
 先週の金曜日、凛は、「エロい自撮りを撮って彼氏に送れ」と潔に命令した。「断るならお前のアカウントからハメ撮り送る」と言ったら、潔は唇を噛み締めて頷いた。潔は凛に残された噛み跡を写さないようにしながら、乳首から下生えまでが写った自撮りを送信していた。
上周五,凛命令洁“拍张色情的自拍发给你男友”。当凛威胁说“要是拒绝我就用你的账号发床照”时,洁咬紧嘴唇点了点头。洁小心翼翼地避免让凛留下的咬痕入镜,将一张从乳头到下体都清晰可见的自拍发了出去。

 差し出されたスマートフォンを遡ると、困惑した様子の彼氏からチャットが相次いで送られていた。
翻看递来的智能手机,只见困惑的男友接连发来数条消息。

『どうしたの?突然』  『怎么了?突然这样』
『嫌だった?』と潔。  "不喜欢吗?"阿洁问道。
『嫌なわけないけど(笑)こういうのは送っちゃだめだよ。保体の授業で習うでしょ?』
怎么可能不喜欢啦(笑)但是这种照片不能乱发哦。保健体育课上学过的吧?

『ごめんなさい……』  对不起……
 いい子いい子と頭を撫でるスタンプ。紳士振りやがって、うざったい。年下の恋人を諭せる自分のことを好きなだけだろ、気色悪い。潔の人格使ってオナニーしてんじゃねえよ。凛は舌打ちしながらスマートフォンを投げ返した。
对方发来一个摸头说"好孩子"的贴图。装什么绅士啊,恶心死了。不过是享受教育年下恋人的快感罢了,真让人反胃。别用阿洁的人格来自慰啊。凛咂着嘴把手机扔到一边。

 
「そいつ、お前の乳首でシコってんだろうな」  "那家伙,是在用你的乳头自慰吧"
「は……!?」  "哈……!?"
「まだキスしかしてねえんだろ、彼氏とは。急に乳首の写真送られたらシコるだろ」
"你和男朋友还没做到那一步吧。突然收到乳头照片的话肯定会撸的吧"

「あの人はそういうことしねーし」  "他才不会做这种事"
「あ?お前、彼氏にどんだけ夢見てんだよ」  "哈?你小子对男朋友抱了多少不切实际的幻想啊"
「俺の心の準備ができるまで待ってくれるって言ってた……!」
"他说过会等我做好心理准备的……!"

「待ってるだけだろ。お前とヤりてえから付き合ってんだ、そいつも。嫌われたらヤれねえから優しくしてるだけだ」
"只是在等机会罢了。那家伙也是因为想上你才交往的。要是被讨厌就上不成了才装得温柔"

「凛、もううるさい。知らない人のこと想像して、勝手に悪いやつにすんな!」
"凛,烦死了。别擅自把不认识的人想象成坏蛋啊!"

 潔の彼氏なんて無限に糾弾できる。高校生と付き合う大学生なんてまともじゃねえとか、お前の様子に気づいてない時点でそいつはお前をよく見てねえだろとか、思いつく限りなんとでも言える。だが、そのすべてを潔は否定してくるだろう。彼氏という存在に夢を見ているのだ。お互いに、勝手に相手を聖人にしている。聖人なんかに心惹かれるようなまともな男じゃないくせに。ムカつく。
洁的男友简直可以无限批判。大学生和高中生交往本来就不正常,连你状态异常都没发现说明他根本不在乎你——诸如此类的指责要多少有多少。但洁肯定会全盘否定。他正沉浸在对男友的幻想里。双方都在擅自把对方神圣化。明明自己根本不是会被圣人吸引的正经男人。真让人火大。

 凛は苛立ちのままに潔の腕を引っ張る。「痛い」と文句を言う潔の頬を掴んで自分の方へ向けさせると、訴えるような目をして潔が顔を反らした。
 凛带着满腔烦躁拽过洁的手腕。"好痛"在洁抱怨的瞬间掐住他的脸颊扳向自己,洁却别过脸露出抗拒的眼神。

「キスは嫌だ」  "不想接吻"
 抱かれることを許しておきながら、キスは拒絶する。嫌がれば嫌がるほど凛の折檻が厳しくなるとわかっていて、なお。
明明允许被拥抱,却拒绝接吻。明明知道越是抗拒凛的惩罚就会越严厉,却还是这样。

 
 サッカーをしていない男のために守る貞節なんてくだらない。ぐちゃぐちゃに踏み抜いてやる。彼氏なんていう肩書に意味はない。そんな価値のないもののために俺を苛つかせるな。
为了一个不踢足球的男人守节简直可笑。我要把它践踏得粉碎。男朋友这种头衔毫无意义。别为了这种不值一提的东西惹恼我。

 凛は潔の顎を掴んで、殴るようにキスをした。舌を入れながら潔を見た。音もなく涙を流すさまが痛々しく、可憐だった。
凛抓住洁的下巴,像要殴打般吻了上去。一边侵入舌间一边凝视着洁。那无声流泪的模样既令人心痛又楚楚动人。

 
 ***

 自慰の後は眠くなる。凛はうとうとと目を覚まして、目の前にいたふたりの男にうげえと口をひん曲げた。また未来の自分たちだ。
自慰过后总会犯困。凛迷迷糊糊睁开眼,看到眼前两个男人时嫌恶地撇了撇嘴——又是未来的自己们。

「で、写真は」  "所以照片呢?"
 糸師凛の辞書にアイスブレイクという言葉はない。早々に本題に切り込まれて、凛(16)は舌打ちする。
糸师凛的字典里不存在"缓和气氛"这个词。被单刀直入切入正题,16 岁的凛咋了下舌。

「ねえよ」  "没有"
「ヘタレカス野郎」  "没用的废物"
「死ね」  "去死吧"
「うっせーなマジで、てめーらが死ね」  "烦死了真的,你们这群人赶紧去死"
 糸師凛の辞書には謙虚という言葉もない。兄がそうだったので、当然凛もそうだ。
糸师凛的字典里根本没有谦虚这个词。既然哥哥是这样,凛当然也不例外。

「一枚くらいあるだろ」  “总该有一张吧”
「ないつってんだろ。理由もねーし、タイミングもない」
“不是说了没有吗。既没有理由,也没有合适的时机。”

「デートとか行かねえのか」  “你都不去约会的吗?”
 26歳の自分からとんでもない言葉が聞こえてきて、凛は誇張でなく吐き気がした。
听到 26 岁的自己说出如此荒唐的话语,凛感到一阵反胃,这绝非夸张。

「きっしょ……」  「恶心死了……」
 何が喜色悪いって、それを未来の自分に詮索されていることである。凛は自分のペースを外野に乱されるのが嫌いだ。たとえそれが未来の自分であっても。五年後、十年後の自分は、デートなんてものにうつつを抜かして、それを年下に勧めるような、ありきたりなクソキモおせっかい野郎になっているのだろうか?ぞっとする。絶対こんな大人にはならない。
最令人不快的是,未来的自己居然在指手画脚。凛最讨厌自己的节奏被外人打乱——哪怕那个"外人"是未来的自己。五年后、十年后的自己,难道会变成那种沉迷约会游戏、还向年轻人推销这种无聊把戏的庸俗恶心多管闲事混蛋吗?光是想象就毛骨悚然。我绝对不要变成这样的大人。

「ンだ?てめぇ」  「哈?你算老几」
「ほっとけ。思春期なんだろ。まだ潔癖なんだ」  「别管他。青春期嘛,还有洁癖呢」
 こうやって「若いね~」と言わんばかりの対応をされるのも気にくわない。どうせお前らだって、もともとは今の凛と同じように、潔を脳内で汚して、貶めて、痛めつけているくせに。なぜ自分たちは違うと言わんばかりの顔ができるのか。
这种被用"你还年轻呢~"的态度对待的感觉真让人不爽。你们这些人明明当初也和现在的凛一样,在脑海里玷污着洁、贬低着他、折磨着他,凭什么现在就能摆出一副自己与众不同的嘴脸。

 
 凛は自分が性癖異常者である自覚がある。何もかもをぶっ壊して自分も死にたいという自傷行為じみた破壊願望が性欲にまで適応されるなんて、潔世一に視線と心を奪われるまで、考えたことがなかった。自分が恋なんてものに落ちる日が来ると思っていなかったからだ。
凛很清楚自己是个性癖异常者。在遇见洁世一之前,他从未想过那种想要摧毁一切然后自我了断的自毁倾向,居然会蔓延到性欲层面。因为他从不认为自己会有坠入爱河的一天。

 破滅的な恋は相手を巻き込む。凛は潔をサッカーで殺したいのであって、凛の破壊的恋愛に巻き込みたいわけではない。フィールド上で命を賭けあいたいのであって、性的な方法で潔の尊厳を壊したいわけじゃない。だって凛にとっては潔をレイプするよりも、潔をサッカーで潰すことの方が当たり前に大事だからだ。
毁灭性的爱恋会吞噬对方。凛想用足球杀死洁,却不愿让他卷入自己扭曲的恋情。他渴望在绿茵场上赌上性命对决,而非用性爱手段摧毁洁的尊严。毕竟对凛而言,用足球击溃洁远比强奸他来得重要千万倍。

 潔は、凛に出会って運命を変えられた男だ。世界への道は、凛に出会って開いたと言っても過言じゃない。それはまた凛も一緒だ。サッカーにおいて、運命という同じ重みを背負う自分たち。どう潰し合おうが構わない。頭ではそう分かっているのに、凛の性癖はそうじゃない。サッカーでは精神的に、恋愛では肉体的に、潔を圧倒してしまいたいと思っている。
洁是遇见凛后命运被彻底改变的男人。甚至可以说,是凛为他打开了通往世界的大门。这份羁绊对凛而言同样深刻。在足球领域背负着同等命运重量的两人,无论怎样互相摧毁都无所谓。理智上虽然明白这点,但凛的性癖却不这么认为——他既想在精神层面用足球碾压洁,又渴望在肉体层面通过恋爱关系彻底征服他。

 
 以前、両親と会話する潔を見た。潔はひとりっ子のようだった。優しそうで穏やかな両親に褒められて、照れくさそうに笑っていた。愛されて守られてきた、可愛らしい一人息子。そんな潔に凛のような性癖倒錯者が近づいちゃいけないことくらい、分かっている。潔へのアプローチの仕方が分からないという不勉強な背中を、「俺が近づいちゃいけない」「プライベートにまで関わるべきじゃない」という自意識が抑え込む。
曾经目睹过洁与父母交谈的场景。洁似乎是独生子。被看似温柔稳重的父母夸奖时,他露出腼腆的笑容。这个被宠爱呵护长大的可爱独生子。我明明很清楚,像凛这种性癖异常者根本不该靠近这样的洁。那份"我不该接近他""不该干涉他的私生活"的自我意识,正压制着我对如何接近洁毫无头绪的愚钝背影。

 それなのに、未来の自分たちはのうのうと潔と付き合っているときた。だから凛はこんなにも、未来の自分たちが気にくわないのだ。
 可偏偏未来的我们竟能堂而皇之地与洁交往。正因如此,凛才会如此厌恶未来的自己。

 凛の恋は潔を傷つけかねない。なのにそばにいるなんて、潔をなんだと思っているのだろう。……凛が言えたことじゃないけれど。
 凛的恋情很可能会伤害到洁。可即便如此还要待在洁身边,究竟把洁当成什么了?……虽然凛也没资格说这种话。

 
 そんな凛の葛藤にも気づかずに、年上たちはのんきに話している。
 全然没察觉到凛这般纠葛的年长者们,依旧悠闲地谈笑风生。

「世一のことだから、適当に誘えば要件が何であっても来るだろ」と、26歳の凛。
"既然是世一,随便约一下不管什么事都会来的吧"——26 岁的凛说道。

「いつもモブどもに誘われてはよく分かんねえ集まりに顔出してる。なんとかなんねえのか」と、21歳の凛。
"总是被那些路人甲约去参加些莫名其妙的聚会。就不能想想办法吗"——21 岁的凛抱怨道。

「それ五年経っても治ってねえから無理だ」  "这毛病过了五年都没好,没救了"
「クソが。コアラみてえにちっこい脳ミソしやがって」
"混蛋。脑子跟考拉似的只有花生米大小"

 なんだその罵倒。未来の自分の語彙が心配になる。  这算什么辱骂啊。真担心未来的自己词汇量贫乏。
「うっさマジで……。つーか、出かける予定あるし」  "烦死了真是的……再说了,我待会还要出门呢"
 未来の自分にヘタレと思われるのにムカついてつい口走ってしまう。自分のプライドを守るため何かを犠牲にした気がして、自分の矮小さに不愉快になる。
想到会被未来的自己当成窝囊废就火大,忍不住脱口而出。感觉像是为了维护自尊而牺牲了什么,这种渺小的自己真让人不快。

「ああ……映画だろ」  "啊……是看电影对吧"
 21歳の自分が視線を空に浮かせる。その振る舞いにひしひしと嫌な予感がしてくる。
21 岁的自己将视线投向空中。这个举动让人强烈地涌起不祥的预感。

「……クソ映画なのか?」  "……是部烂片吗?"
「まあ……いや、どうだったか」  "这个嘛……不,该怎么说呢"
「内容覚えてねえ」  "内容完全不记得了"
「マジで役に立たねえな……」  "真是派不上用场啊……"
 凛(16)は大人たちを振り切って目を瞑るのであった。
凛(16 岁)甩开大人们,闭上了眼睛。

 ***

 そうして迎えたふたりの休暇、頼みの綱であった映画の評価と言えば。
就这样迎来了两人的假期,至于他们寄予厚望的电影评价——

 
「なんか……その……」  "那个……怎么说呢……"
「……前作の焼き回し以下のカス映画だった」  "……比前作翻拍版还烂的垃圾电影"
「いやあ、あのぅ……凛さん、手心……」  "哎呀,那个……凛先生,手下留情……"
 そういうことであった。  事情就是这样。

「あの映画の続編だと思わなかったら面白かったと思うんだけど、どうしても比べちゃうというか……」
"要不是把它当成那部电影的续集来看的话,其实还挺有意思的...但总会忍不住比较..."

「ほとんど一作目で見た展開だった」  "基本就是把第一部的剧情重演了一遍"
「コックピットの感じとか、なんか違いが気になっちゃって……」
"驾驶舱的氛围什么的,总觉得有些违和感..."

「全然戦わねえし」  "根本就没怎么战斗啊"
「そうそう。ロボットのアクションもっと見たかったなー」
"对对对,我还想多看些机器人打斗场面呢"

 Lサイズのポップコーンとコーラを携えて意気揚々と挑んだ新作映画は、ふたりのお眼鏡にかなわなかった。終盤は映画よりも、ポップコーンの味の濃いところを探す作業に集中していたかもしれない。潔は濃い色のキャラメルポップコーンを見つける度、「見ろよ」と言わんばかりに見せつけてきたので、横から奪って食べたり逆に奪われたりしていた。後ろの方の席を予約してよかった。
抱着大桶爆米花和可乐兴冲冲去看的新片,却没能让两人满意。看到后半段时,他们可能更专注于在爆米花桶里寻找味道更浓的部分。每当洁发现颜色更深的焦糖爆米花,就会用"快看"般的得意神情炫耀,结果不是被凛抢走就是反被抢走。幸好订的是后排座位。

 不完全燃焼なまま映画館を出たが、行く当てもない。そもそも今日の予定は映画を見ることで、その目標は盛り上がりに欠ける形で終了してしまった。このまま潔は家に帰るのだろうか。せっかく休日にふたりで会うことになったのだから、もっと何かできないか。と言えど、不愛想で口下手な凛が、池袋という親しみのない街の中、潔をどこへ連れ出せるというのだろう。勝手な気まずさに耐えかねて潔の方を見ると、潔はスマートフォンを弄っていた。帰りの電車の時間でも検索しているのか。思わず不機嫌さを態度に表しそうになったところで、潔が画面を見せてきた。一番上には「ロボット映画好き推薦!名作映画5選」と書かれている。
带着未尽兴的心情走出影院,却不知该去哪儿。今天的计划本就是看电影,而这个目标在兴致缺缺中结束了。难道洁就这样回家吗?难得休息日能见面,总该再做点什么。但生性冷淡又不善言辞的凛,在这陌生的池袋街头,又能带洁去哪里呢?正因自作主张的尴尬而不知所措时,发现洁正在摆弄手机。是在查回程电车时间吗?就在凛快要忍不住露出不悦神色时,洁把屏幕转了过来——最上方写着"机器人电影爱好者推荐!五大经典影片"。

「気ぃ取り直して、口直ししようぜ。せっかく遊ぶんだし!」
"打起精神来,咱们去转换下心情吧!难得出来玩嘛!"

 「誘えば来る」って言ってたじゃねえか。誘ってなくても来たぞ、どういうことだ。凛は自分を見上げる潔を見ながら思った。
"不是说'叫了就会来'吗?我没叫你却来了,这算什么。"凛望着抬头看自己的洁,心里这样想着。

 
 一番近くのファミレスに入ったふたりは、とりあえずドリンクバーとフライドポテト、クリスピーチキンを頼み、窓側の四人席を陣取った。ピークの時間帯を過ぎたのか、店内の半分は空席だ。
 两人走进最近的家庭餐厅,先点了饮料吧、炸薯条和脆皮炸鸡,占据了靠窗的四人座。或许已过了高峰期,店内有一半座位都空着。

「あの映画が好きな人はこういう映画も好きだと思うって紹介されてた」
"推荐说喜欢那部电影的人应该也会喜欢这类电影"

 ファミレスのWi-Fiを拾った潔は、凛が登録しているサービスとは異なるサブスクアプリを開いている。
 连上家庭餐厅 Wi-Fi 的洁,打开了与凛注册服务不同的订阅应用。

「サッカーの中継見るために契約してるんだ。ちょっと高いんだけど、その分映画もたくさん見れるみたいでさ。これ家族アカウント」
"为了看足球直播才开通的会员。虽然有点贵,不过好像能顺便看很多电影。这是家庭共享账号"

 ウォッチリストに入っている映画は、凛も知っているような名作が多い。バスの一件で潔も映画にはまったのかもしれない。今後誘い出す口実になるかと思いつつ、口実ってなんだよ、どうやって誘えっつーんだ、つーかこいつとどうこうなりたいわけじゃねえし、と凛は苛立つ。
收藏列表里的电影大多是连凛也耳熟能详的名作。或许因为公交车上那件事,洁也开始迷上电影了。凛一边想着这倒是个约他出来的好借口,一边又烦躁起来:什么鬼借口啊到底该怎么约啊,再说了我又没想跟这家伙发展什么关系。

「凛は普段どんなの見てんの?」  "凛平时都看什么类型?"
「ホラー」  "恐怖片"
「それ以外」  "除此之外"
「スプラッタ」  "血浆片"
「それ以外!」  "才不是这样!"
「サバイバルスリラー」  "生存惊悚片"
「スリラーってなに?」  "惊悚片是什么?"
「雪山とか高所とか海とかで、人が死ぬ」  "就是在雪山啊、高处啊、海边之类的地方会死人的那种"
「だから、そういうの以外!」  "所以我才说不要这种的!"
 きゃんきゃん吠える潔を手で払いのけて、潔のスマートフォンをスクロールする。
挥手赶开汪汪乱叫的洁,继续滑动着洁的手机屏幕。

「あ、これ。おすすめにあったやつ」  "啊,这个。推荐栏里看到的"
 潔がひとつの映画を選択して、説明文を見せてくる。ロボットSFアクションシリーズの有名作だ。
洁选了一部电影,把简介展示给我看。是机器人科幻动作系列的知名作品。

「シリーズものなんだけど、どれから見ても大丈夫なんだって。この最新作がド派手で面白いらしい」
"虽然是系列作品,但据说从哪部开始看都没问题。这部最新作好像特别华丽有趣"

「ふーん」  "嗯哼"
 さっき調べたばかりだと思っていたが、やけに詳しい。意外とサブカル的なものに造詣が深いのかと感心していると、コップをスタンド代わりにした潔が「とりあえず再生!」とボタンを押した。
明明刚才还觉得他是临时查的,却意外地了解得很详细。正暗自佩服他居然对这类亚文化作品如此精通时,用杯子当支架的洁说了句"总之先播放!"就按下了按钮。

 凛も潔も、小さな画面に向かって視線を合わせた。  凛和洁都同时将视线聚焦在那个小屏幕上。


 約二時間の視聴を終えて、潔が伸びをした。  看完约两小时的影片后,洁伸了个懒腰。
「面白かったなー!スケールもでかかったし!」  "超有意思!场面也超宏大!"
「地下迷宮のシーンが良かった。特にぶっ壊れるとこ」
"地下迷宫的桥段最棒。特别是崩塌那段"

「ワクワクしたよな!」  "看得超兴奋对吧!"
「人間踏みつぶすんじゃねえかと思ったけど」  "我还以为要把人给踩扁了呢"
「結構危ないシーンあったよな!」  "刚才那段可真够危险的!"
 アメコミ調のエンドロールを横目で眺めながら薄いジンジャエールを飲む。あのシーンがこうでこのシーンがこうでとはしゃぐ潔に耳を傾けた。
一边用余光扫着美式漫画风格的演职员表,一边啜饮着淡姜汁汽水。我侧耳倾听着洁兴奋地解说"那个场景是这样""这个场景是那样"。

 悪くない映画だった。人格を宿したロボットが変形しながら戦うアクション映画で、堅牢な博物館や古代文明の眠る遺跡をキャノン砲でぶち壊しながら敵と戦う有り様は爽快だった。ロボットが人間に作られたものではなく地球外生命体だったのも新鮮なアイデアで、ハイテンポな会話と展開は視聴者を飽きさせない。
算是不错的电影。这部讲述拥有自我意识的机器人在变形战斗中摧毁坚固博物馆和沉睡古代文明遗迹的动作片,用加农炮轰击敌人的场面相当爽快。机器人并非人类造物而是外星生命体的设定也很新颖,快节奏的对话和剧情发展让观众全程无尿点。

「せっかくだしシリーズ全部見ようぜ」  "难得有机会,不如把整个系列都看完吧"
「今日は無理だろ」  "今天肯定不行啦"
「また今度!俺んちでもいいし。凛がいいなら俺鎌倉行くよ」
"改天吧!在我家看也行。要是凛愿意的话,我可以去镰仓找你"

 潔のサービス精神に驚きつつも、反射的に「暇人」と口が形どる。
虽然对洁这种服务精神感到惊讶,嘴上却条件反射地吐出"闲人"二字。

「うっせ!あーでも、次のオフ結構先かも……なぁ、ブルーロックの中で少しずつ見ない?一時間はむずそうだから、一日……二十分とか?」
“吵死了!啊——不过下次线下聚会还早着呢……呐,要不就在蓝色监狱里慢慢看?一小时有点难,一天……二十分钟左右?”

「ブルーロックの中で?」  “在蓝色监狱里?”
「クールダウンとか、ヨガの最中だったらそんなに時間も惜しくないだろ?」
“比如冷却时间或者做瑜伽的时候,应该不会太心疼这点时间吧?”

「ヨガの間はヨガに集中しろ、意味ねえだろ」  “练瑜伽时就专心练瑜伽,搞这些没意义”
「ちぇっ。うーんじゃあ……ランニング中は?」  “切。唔...那跑步的时候看?”
「……ひとりで見ればいいだろ」  “...自己一个人看不就行了”
「だって……感想とか!言いたいじゃん!ひとりで見てもつまんねーし!」
“可是...想讨论观后感啊!一个人看多没意思!”

 こいつそこまでして映画が見たいのか。そんなにロボット映画にはまったのか。染まりやすい性質なのか、それとも潔の少年心にロボットがヒットしたのか。顔も好みもガキみてえなやつ。と言えど、乗りかかった船だ。凛に拒否する理由はない。適当に了承して、ファミレスを立ち去ることにする。
这家伙就这么想看电影吗。对机器人电影这么着迷?到底是容易受影响的体质,还是阿洁的少年心被机器人击中了呢。长相和品味都像个小鬼似的。话虽如此,既然上了贼船。凛也没有拒绝的理由。随便应付着答应了,便起身离开家庭餐厅。

「またブルーロックで!」  "又是在蓝色监狱!"
 手を振って改札の向こう側に消えていく潔を、凛は眺めていた。
凛目送着洁挥手消失在检票口的另一侧。

 凛の好意は潔を傷つけるだろうと分かっているのに、潔から来られると拒否できない。
明明知道自己的感情会伤害到洁,却无法拒绝洁的靠近。

 自分の心なのに自分で制御できないなんて。恋は理不尽だし、厄介だ。
连自己的心都无法掌控。恋爱就是这么不讲理又麻烦。

「……キモ」  “……恶心”
 自分の発想に怖気が立って、凛はさっさと帰路についた。
被自己的想法吓到,凛赶紧踏上了归途。

 *
 
 潔は宣言通り、毎日凛のもとにやってきた。ランニングマシンでの有酸素運動中、ふたりからちょうど見える位置に潔のスマートフォンを置いて、朝食または夕食後に一時間程度走る。体力強化のため時速13キロか15キロで走っているが、疲労に耐えるだけの暇な時間が潔との映画鑑賞の時間に切り替わったことは、お互いに良い影響を及ぼした。主にストレスの解消だ。
正如宣言所说,洁每天都会来找凛。在跑步机上进行有氧运动时,他会把智能手机放在两人刚好能看见的位置,早餐或晚餐后跑一小时左右。虽然为了增强体力以时速 13 或 15 公里奔跑,但这段原本用来对抗疲劳的闲暇时光转变为与洁共赏电影的时间,对彼此都产生了积极影响。主要是缓解压力。

 粒ぞろいの選手が集まるブルーロックでライバルたちを出し抜くには、時間などいくらあっても足りない。最初300人いた選手たちが23人にまで絞られている時点で、ここにいる人間は上位8%の面々。ゴールポイントと交換でスマートフォンを手に入れているとしても、ベッドに転がってのんきにスマホを弄る時間など、ブルーロックスには無いのだ。そんな意識は共通のものとなっており、サッカーの研究と身内からの連絡に対応する時にだけ触っている。ニュースやゴシップを細かに追って「なあ昨日のあれ見た?」と話題を振る時間などない。
在精英云集的蓝色监狱要超越竞争对手,再多时间都不够用。当最初 300 名选手被筛选至 23 人时,留在这里的已是前 8%的佼佼者。即便通过进球积分兑换到了智能手机,蓝色监狱里也不存在躺在床上悠闲玩手机的空闲。这种意识已成为共识,他们只在研究足球和处理家人联络时才会碰手机。根本没时间追踪新闻八卦或闲聊"喂看了昨天那个吗?"之类的话题。

 だが、サッカーのみに打ち込んでいてはオンオフの切り替えができず、気分転換が難しい。時間を浪費せず、新しい娯楽を探しに行く労力も少なく、高校生の小遣いの範疇で出来るものとして、サブスクリプションの映画は適していた。
但若只专注于足球,便难以切换生活节奏,心情也难以转换。既不想浪费时间,又懒得费力寻找新娱乐,在高中生零花钱能承受的范围内,订阅电影再合适不过。

 まず、ランニング中に見るので時間を浪費せずに済む。どうせ映画を見なくても、走ることに変わりはないのだ。また、潔がシリーズのロボット映画を見たがっているので、何を見るのかに頭を悩まさなくていい。月額980円。あとなにより、これを見ている間は話さなくてもいいし、見終わった後も話題が生まれる。口下手な凛にも最適であった。
首先,边跑步边看就不会浪费时间。反正不看电影也是要跑步的。况且洁一直想看机器人系列电影,省去了纠结看什么的烦恼。月费 980 日元。更重要的是观影期间无需交谈,看完还能自然产生话题。对不善言辞的凛而言再适合不过。

 潔はどんどんロボット映画にはまっていき、「キリいいとこまで見よ!」と勝手にランニングを延長する。最初は数日かけてひとつの映画を見ていたのに、だんだんと映画鑑賞の時間は伸びていく。一時間以上走るのも珍しくなくなったころ、潔が楽しんでいた映画シリーズを見終えてしまった。
洁渐渐迷上了机器人电影,"看到精彩段落为止!"擅自延长了跑步时间。最初要花好几天才能看完一部,后来观影时间越来越长。当连续跑步一小时变得稀松平常时,洁喜欢的电影系列却全部看完了。

「次何見る?」  "接下来看什么?"
「さんざんお前の趣味に付き合ってやっただろ。今度はお前が合わせろ」
"我可是陪着你玩够你的兴趣爱好了吧。这次该轮到你配合我了"

「……凛の趣味って……」  "……凛的兴趣是……"
「ホラー」  "恐怖片"
「え!やだ!」  "哎!不要啊!"
 潔が大げさな声を出す。  洁夸张地叫出声来。
「ブルーロックでホラー見んのやだ!化けて出たらどうするんだよ!」
"在蓝色监狱看恐怖片绝对不要!要是鬼跑出来怎么办啊!"

「いいだろ化けて出てきても」  "就算鬼跑出来也没关系吧"
「やだよ!つーか俺のスマホで見たくない。『これを見た人はこれも見てます』つってホラーばっか出てきそうだし」
"才不要!而且我不想用我的手机看。'看过这个的人也看过这些'肯定会推荐一堆恐怖片"

「俺ので見ればいいだろ」  "看我的不就行了"
 凛の登録している動画サービスアプリは、新作のホラーがよく登場するのだ。ウォッチリストに入っているホラー映画を頭に浮かべながら、視聴候補を考える。
凛注册的视频服务平台经常会上新恐怖片。他一边回想着收藏列表里的恐怖电影,一边考虑着待看选项。

「百歩譲ってホラー見るのはまだいいけど、ブルーロックで見んのは絶対やだ!ブルーロックが呪われそうじゃん」
"退一万步说看恐怖片也就算了,但绝对不要看蓝色监狱!感觉蓝色监狱会被诅咒啊"

「もう呪われてるだろどうせ」  "反正早就被诅咒了吧"
 300人の男子高校生の人生を現在進行形でぶち壊している施設である。200人分くらいの生霊が憑りついていてもおかしくない。ここまで嫌がるならなにがなんでもホラーを見せたいと思っていると、潔が「いいこと思いついた」と振り向く。
这是个正在摧毁 300 名男高中生人生的设施。就算附着 200 个怨灵也不奇怪。看到他们如此抗拒,我正想着无论如何都要让他们看恐怖片时,洁突然转身说"想到个好主意"。

「凛の家で見ようぜ」  "去凛家看吧"
「は?」  "哈?"
「凛の家のテレビなら呪われてもいいし」  "反正凛家的电视被诅咒了也无所谓"
 いたずらっぽい笑顔に、まんまと視線を奪われて、凛は黙る。
看着那恶作剧般的笑容,凛的视线完全被吸引,陷入了沉默。

「な!決まり。次のオフでいい?」  "呐!就这么定了。下次休假怎么样?"
「……すげー先だろ。いつだよ、次のオフ」  "……这也太遥远了吧。下次休假是什么时候啊?"
 誘ってなくても来たどころか、誘ってきた。どういうことだ、と凛は思った。
不仅没被邀请就主动来了,现在居然还主动邀约。这到底是怎么回事,凛在心里嘀咕着。

 

评论  评论区

  • REIKA
    14:02回信  14:02 回信
  • 由紀  由纪

    最高すぎます!  太棒了!

    3 天前回信  3 天前回复
  • ゆうひ  夕日
    8月2日回信  8 月 2 日回复