花束の意味は  花束的含义

【プロローグ】  【序幕】
「あいつ、俺のこと……好きなのかも？」  "那家伙...该不会是喜欢我吧？"
　そんな、なさけのない声とともに潔世一はこの数ヶ月の二人のやり取りに思いを巡らせた。
伴随着这句没出息的自言自语，洁世一开始回顾这几个月来两人的互动。
☆☆☆
　潔世一と糸師凛は、青い監獄ブルーロックで高校時代に鎬を削った間柄である。ブルーロックを出たあと、ドイツとフランスに別れてプロのサッカーチームで活躍する一流のサッカー選手となった。プロの世界とは忙しいもので、ブルーロックでの日々から気がつけば一年の月日が流れた。その間、連絡先を交換してはいたものの交流することはなかった。凛は、積極的に交流を取るような人間ではなかったし潔は潔で、凛に複雑な感情を持っていたからだ。あるときは、追いつき追い越したい相手であり、またあるときは最良の相手パートナーであった凛。友人というには殺伐としすぎていて、知人や同業者では他人行儀すぎる――強いて言えば宿敵ライバル、だろうか。でも、たった二文字だけでは語りつくせない、何かがそこにはあるのだ――うまく言葉には出来ないけど。潔は、自分が相手に対する考えを整理できていない中、連絡を取ろうという気にはなれなかった。どんな顔で、どんな声で凛に話しかけるべきか分からなかったから。幸か不幸か、凛も潔もトッププレイヤーで話題には事欠かないから近況はニュースで知れる、というのも連絡を取らない理由になっていた。
洁世一和糸师凛是在蓝色监狱高中时期针锋相对的宿敌。离开蓝色监狱后，两人分别效力于德国与法国的职业足球队，成为顶级球星。职业足坛的忙碌让时光飞逝，不知不觉已与蓝色监狱的岁月相隔一年。虽然交换了联系方式，但两人从未联系过——凛本就不是会主动联络的性格，而洁对凛又怀着复杂心绪。这个时而想超越、时而又堪称最佳对手的男人，用朋友形容太过生硬，称同行又显得疏离，硬要说的话算是宿敌吧。但短短两字又无法道尽其中微妙——虽然洁自己也理不清这份心情，更不知该用什么表情和语气联系对方。所幸或不幸的是，作为顶级球员的他们总不缺新闻，这倒成了不联络的借口。
　
　そんな男と再会したのは、9月のことだ。アイツの誕生日から2週間程が経過した9月の下旬。何を思ったのかは今になっても分からないがアイツ――糸師凛は片手に花束を持って潔の住むドイツまでやって来た。
与那个男人重逢是在九月。他生日过去约两周的九月下旬。至今仍不明白他为何而来——糸师凛单手捧着花束，突然出现在洁居住的德国。

　その日は午後からオフだった。練習から帰った潔はチームの本拠地からすぐのアパートの自室で、家事をこなしたりストレッチをしたり。比較的のんびりとした時間を過ごしていた。リビングのソファで、カフェオレを片手に映画を観ていると玄関のチャイムが鳴った。近くのアパートに住むチームメイトだろうか、とインターホンを覗く。潔は絶句した。そこに映るのは、無愛想が服を着て歩いているような男――糸師凛だった。いや、凛がこんな所に居るはずがないと何度も目を擦る。でも、何度繰り返してもそこには凛がいて、苛立ったようにチャイムが連打された。これ以上続けられると近所迷惑だと、意を決してドアを開ける。
那天下午正好休假。结束训练的洁回到俱乐部基地附近的公寓，正做着家务拉伸身体享受难得的闲暇。当他端着拿铁在客厅沙发看电影时，门铃突然响起。以为是同住公寓区的队友，看向监控屏的瞬间却如遭雷击——画面里那个仿佛"不耐烦"三个字成精的男人，分明是糸师凛。反复揉眼确认后，暴躁的门铃连响终于逼得他开门，毕竟再不开邻居该投诉了。
「どっどうしたんだよ、急に……」  "突、突然这是干嘛......"
　出来るだけ平静を装った潔に、凛は無言で何かを押し付けた。
凛强装镇定地沉默着，将某样东西硬塞给洁。
「えっ……何これ。……花？」  "诶……这是什么。……花？"
「やる、お前に」  "给你的"
　監獄時代から変わらない傲岸不遜な態度。凛は潔に向けて、花束のようなものを差し出してきた。潔は花に詳しくないので何の花なのかは分からないが可愛らしい見た目の花だ。明らかに身長190㎝に届きそうな男から、身長175㎝の男へのプレゼントではない。
从监狱时代就未曾改变的傲慢态度。凛朝着洁的方向，递出了类似花束的东西。洁对花卉并不了解，所以认不出是什么品种，但确实是外形可爱的花朵。这显然不像是身高将近 190 公分的男人会送给 175 公分男人的礼物。
「……何で？」  "……为什么？"
　凛に理由を尋ねるが口数の少ないこの男は別に、と短く答えただけだった。思いがけない男との再会と謎の行動に潔の思考は呆気なく停止させられ、暫しの沈黙が流れる。
向凛询问缘由时，这个寡言的男人只是简短地回了句"没什么"。与意外之人的重逢和谜之行动让洁的思绪瞬间停滞，短暂的沉默在两人之间蔓延。

「……家、入る？お茶くらいなら……」  "……要进屋吗？至少喝杯茶……"
　気まずさに耐えかねた潔は何とか状況に適応して言葉を絞り出す。
难以忍受尴尬气氛的洁勉强适应着现状，挤出这句话。
「……いや、帰る。用事は済んだからな。」  "……不了，我回去。事情已经办完了。"
　凛は考える素振りを見せたのち返答した。  凛做出思考的样子后回答道。
「……あっ、そ。」  "……啊，这样啊。"
　わざわざフランスからやって来たはずの凛との一年越しの再会が、僅か3分程度で終わったことに呆気にとられた潔が、やっとのことで相槌を打つと、凛はクルリと背を向けて立ち去っていった。残ったのは潔の右手に掴まされた、名も知らない花束のみ。
从法国专程赶来的凛时隔一年的重逢，竟在短短三分钟内就结束了，这让目瞪口呆的洁好不容易才应和了一声。凛干脆利落地转身离去，留下的只有洁右手紧握的那束不知名的鲜花。
「何なんだよ、一体。」  "到底怎么回事啊。"
　すっかり、小さくなった凛の背中を見送る潔はボソリと呟いた。
目送着彻底缩成一团的凛远去的背影，洁低声嘟囔道。

　――それから、二人の奇妙な関係は始まった。  ——就这样，两人奇妙的关系开始了。