可哀想じゃなきゃ抜けない？  不可怜就硬不起来？

「凛と付き合うことになりました」  "我决定和凛交往了"
「「おめでとー！」」  “恭喜啊！”
　右側には潔。左側にも潔。潔はふたりの潔に拍手されて、「どーもどーも」と会釈した。
右边是洁。左边也是洁。两个洁同时为他鼓掌，他点头致意道“谢谢谢谢”。

　数か月前から、夢の中で未来の自分たちに会うようになった。五年後の潔と、十年後の潔らしい。未来の自分というだけあって、潔が凛に片思いしていることもお見通しだった。
从几个月前开始，他总在梦里遇见未来的自己。似乎是五年后的洁和十年后的洁。毕竟是未来的自己，他们早就看穿洁对凛的单相思。
「凛ってすげー鈍いから！」と21歳の潔。  “因为凛那家伙超级迟钝啊！”21 岁的洁说道。
「こっちが全力でOKサイン出しててもなんも気づかないんだよな」と26歳の潔。
「就算我全力比出 OK 手势他也完全注意不到啊」26 岁的洁说道。
「そ、そんなに……」と16歳の潔。  「居、居然这么……」16 岁的洁喃喃道。
「そう！だから全力でアタックしねえと！」  「没错！所以必须全力进攻才行！」
「恥ずかしいとか言ってる場合じゃねえんだよ」  「现在可不是说什么害羞的时候啊」
「凛ってさー、なんか全部無自覚なくせに、たまにすごいこと言うんだよな」
"凛这家伙啊，明明做什么都毫无自觉，偶尔却会说出些不得了的话呢"
「あるある。しかも全然照れないから、あれ？俺がおかしいの？って思う」
"就是就是。而且完全不会害羞，搞得我都怀疑是不是自己有问题了"
「そんな相手にアプローチなんて、どうすればいいんだよぉ……」
"面对这种对象到底该怎么攻略啊......"
　潔世一16歳は、まごうことなき恋愛初心者だった。ふたりが語るような無自覚鈍感野郎に太刀打ちできる自信がない。頭を抱えてゴロンと転がると、ふたりが潔の肩を掴んでくる。
十六岁的洁世一，是个不折不扣的恋爱新手。他实在没信心能应付那两人口中描述的迟钝木头人。抱着脑袋在床上翻滚时，那两人突然抓住了洁的肩膀。
「お前が頑張んないと俺たちの未来がおかしくなるかもしんないだろ！なんとか頑張れ！」
"你要是不努力的话我们的未来可能就完蛋了啊！给我加把劲！"
「健康診断行くときのバス、絶対隣に座れよ！」  "去体检的时候坐公交，你绝对要坐我旁边！"
「あーあと一緒に映画見て。ロボットのやつ！な！絶対！」
"啊还有要一起看电影。机器人那部！对吧！必须的！"
「それと凛の家行って！お母さんに愛想よくして！」  "还有要去凛家！要对他妈妈热情点！"
「プールか海も行け！あいつムッツリだから！」  "去游泳池或者海边吧！那家伙太闷骚了！"
「ええ～？できるかな……」  "诶～？能行吗......"
「できるかな～じゃない！やんの！」  "不是'能行吗～'的问题！要去做啊！"
　やいのやいのとアドバイスを投げつけられた潔は、目覚めた後にとりあえずこれらをメモした。映画、凛の家、あとプール。神託ならぬ潔託であった。
被七嘴八舌的建议轰炸后，洁醒来后先把这些都记了下来。电影、凛的家、还有游泳池。这简直不是神谕而是"洁谕"了。

「自分からグイグイいけっていうから、頑張ったけどさ……」
"明明是你自己说要主动出击的，我可是很努力了……"
　潔は今日の凛を思い出す。前日に無理矢理決めたにも関わらず、ちゃんとプールに来てくれた。初めて来たという割に館内にも詳しかったので、事前に施設メニューを見てくれたのかもしれない。凛の態度に浮かれた潔が水をかけても怒らなかった。そうやってはしゃいでいたところに、黒のビキニを見事に着こなす美女たちが凛を見て「かっこよくない？」とひそひそ話をしていて、潔の心は急激に萎んでしまった。いくら他のやつらより仲いいつったって、あんなお姉さんに叶うわけないじゃん。
洁回想起今天的凛。尽管是前一天被硬拉着决定的，他还是乖乖来了泳池。虽然说是第一次来，却对场馆很熟悉，说不定提前查过设施指南。当洁因为凛的态度兴奋地泼水玩闹时，他也没有生气。就在两人嬉戏打闹时，几位将黑色比基尼穿得风情万种的美女偷瞄着凛窃窃私语"好帅啊"，让洁的心情瞬间跌到谷底。就算比其他家伙关系更亲密，怎么可能赢得过那种大姐姐嘛。
　でも凛は俺を探しに来てくれた。となりに座って潔の話を待つ不器用な優しさにときめいた挙句、恋心と嫉妬がぶつかって心の中で暴れた結果、我慢できずに気持ちを伝えてしまった。
可是凛却主动来找我了。他笨拙地坐在旁边等我说话的那份温柔让人心跳加速，最终爱意与嫉妒在心底激烈碰撞，让我忍不住告白了心意。
「なんか、俺ばっか好きな気がする……凛、余裕だったもん」
"总觉得...好像只有我在单相思......凛明明游刃有余的样子"
　付き合えたこと。ぎゅっと強く抱きしめられて、キスされそうになったこと。心臓が爆発しそうなくらいドキドキした。でも自分に余裕がなさ過ぎて、今思い出すと恥ずかしい。凛、俺も知らない俺の顔が見たいんだって。だから付き合うんだって。俺の知らない俺の顔ってなんだよ。まだ潔には分からない。
能够交往这件事。被他紧紧拥抱，差点被亲吻的瞬间。心跳快得几乎要爆炸。但当时的自己实在太慌乱，现在回想起来都觉得羞耻。凛说他也想看看我所不知道的我自己。所以才要交往。我所不知道的自己到底是什么啊。洁至今仍不明白。
　
「凛にもっと好きになってもらうためには、どうしたらいいんだろう」
"要怎么做才能让凛更喜欢我呢？"
　体育座りする潔(16)の言葉に、未来のふたりが顔を見合わせる。
十六岁的洁抱着膝盖喃喃自语时，未来的两人相视而笑。
「そりゃ、スキンシップじゃね？」  "那当然是肢体接触啊？"
「そうそう、いちゃいちゃしろよ」  "对对对，你们就亲热亲热吧"
「い、いちゃいちゃ……」  "亲、亲热......"
　戸惑う16歳に、26歳の潔が「あのな」と声をかける。
面对困惑的 16 岁少年，26 岁的洁开口道："我说啊"
「結構大事だよ、スキンシップ。凛は口下手だし、不愛想だろ？たまにすげーひどいこと言ったりするんだよ。でも抱きしめられたりキスしたりすると、それが本心じゃないって分かる。目は口ほどにものを言うっていうけど、凛は口で何も言ってくれない代わりに、目と体が雄弁なんだ。だからたくさん触ってもらうと、こいつ俺のこと大事なんだって分かる」
"肢体接触可是很重要的。凛不擅长表达，又总板着张脸对吧？偶尔还会说些特别过分的话。但只要被拥抱或者接吻，就能明白那都不是真心话。虽说眼睛比嘴更会说话，但凛虽然嘴上什么都不说，眼睛和身体却特别诚实。所以多触碰他的话，就能明白'这家伙很重视我'这件事"
「な、なるほど……」  "原、原来如此……"
　説得力がある。これがお付き合い十年目の貫禄か。「なんか真面目なこと言っちゃったなー、恥ずかし！」と体を傾ける26歳に目を向けると、寝間着だというダルダルのTシャツの襟ぐりから乳首が見えて、ぎょっとした。
这说法很有说服力。这就是交往十年的底气吗？当我看向那个说着"突然说了这么正经的话好害羞啊~"并歪着身子的 26 岁男人时，从他松松垮垮的睡衣 T 恤领口瞥见了乳头，顿时心头一颤。
　明らかに、今の自分よりでかい。あと、ピンクというか……赤い。潔は思わず自分の乳首を見下ろす。小さくて薄い。肌との境目がかろうじて分かるくらいだ。十年であんなところがあんな風になる！？俺の知らない俺すぎるだろ！いったい自分に何が！？パラパラとパズルが組み立てられ、優秀な脳ミソはほんの数秒で答えを導き出す。凛がムッツリって……そういう……！？
明显比我现在的大多了。而且还是粉色的……不，应该说是艳红色。洁不自觉地低头看向自己的乳头。又小又淡。和皮肤的分界线几乎难以辨认。十年间那里居然会变成那样！？这完全不是我认识的自己啊！到底发生了什么！？零碎的线索如拼图般组合起来，优秀的大脑仅用几秒就推导出答案。凛该不会是性欲旺盛……那种……！？
「お、俺……！しばらく、そういうのいらない……！！」
"我、我……！暂时不需要那种事……！！"
「えーそう？」  "诶？是这样吗？"
「楽しいけどなー」  "不过还挺开心的呢"
　呑気な年上ふたりを尻目に、潔は二の腕ごと自分を抱きしめた。
看着那两个悠闲的年长者，洁用双臂环抱住了自己。
　
　恋愛初心者ふたりのファーストキスがいつのことになるかは、未来の自分たちしか知らない。
至于恋爱新手两人的初吻会在何时发生，就只有未来的他们自己知道了。