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千年の恋/おばけちゃん的小说

千年の恋  千年之恋

7,687字15分钟

よいちくんお誕生日おめでとう話です。  这是庆祝良一生日的小故事。
SF(少し不思議な)話です。  带有些许奇幻色彩的科幻故事。
Xに載せていた話からほんのすこーし修正しました。  对之前在 X 平台发布的内容进行了微幅修改。

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凛は昔からちょっと変わった奴だった。  凛从小就是个有点奇怪的家伙。
俺たちが恋人となった夜。つつがなくファーストキスを終え、片思いの相手とようやく心が通じ合えた多幸感に包まれている俺に対して、凛は真面目な顔でこう言った。
我们成为恋人的那晚。当我正沉浸在顺利完成初吻、终于与暗恋对象心意相通的幸福感中时,凛却一脸严肃地对我说了这样的话。

「潔。――お前が死ぬ時は、俺の目の前で死ぬと約束しろ」
"洁。——你要答应我,死的时候一定要死在我面前"

その日は俺の18歳の誕生日で。凛は俺の実家に「お友達」として泊まりに来て、日付が変わる頃に「恋人」となっていた。
那天是我 18 岁生日。凛以"朋友"的身份住在我家,在午夜钟声敲响时,我们成为了"恋人"。

「え?死……?え?」  “诶?死……?诶?”
夢から覚めたような気分で目をぱちぱちさせてそう聞く俺に、凛は真面目な顔で繰り返した。
我像刚从梦中醒来般眨了眨眼反问道,凛却一脸认真地重复着那句话。

「長生きしろなんて言わねぇ。ただ、死ぬ時は俺の前じゃねぇとダメだ」
“我可没说要你长命百岁。只是,死的时候必须死在我面前。”

長生きしろ、じゃない。早死にしても良いらしい。ただ、死ぬ時は凛のそばじゃないといけないらしい。ハードルが高いんだか低いんだかよく分からない。俺は首を傾げながら言った。
不是要长命百岁。似乎早死也无所谓。只是临终时必须待在凛的身边。这要求不知该算门槛高还是低。我歪着头嘟囔道。

「うーん?……出来るか分かんないけど善処する」  "唔...?虽然不知道能不能做到,但我会妥善处理的"
「死ね。善処するじゃねぇ。死ぬ気でやれって言ってんだよ」
"去死吧。什么叫'妥善处理'。我是让你拼上性命去干啊"

俺が死を覚悟した時、死んでも良いから最後の力を振り絞り、凛を呼ぶか凛のそばに行くかどっちかをしろ、と凛は言う。
当我做好赴死觉悟时,凛说就算死也要榨干最后一丝力气,要么呼唤她的名字,要么赶到她身边。

凛がどういうシチュエーションを想定しているのかよく分からないけれど、これはコイツなりの愛の言葉なんだろうと俺は自分を納得させた。
虽然完全搞不懂凛预设的是怎样一种情境,但我还是说服自己——这大概就是这家伙特有的情话方式吧。

「分かった。約束する」  “明白了。我答应你”
凛はなおも疑うように俺の顔を見ていたが、最後に念押しのように「一人で死んだら許さねぇからな」と言って俺の唇に自身の唇を押し付けた。
凛仍用怀疑的目光盯着我的脸,最后像是强调般说了句“敢一个人去死的话我绝不原谅”,便将双唇压上了我的唇。


とまあ、なんだか謎に包まれたお付き合い初日ではあったけど、その後の付き合いは問題なく続いた。
就这样,虽然交往首日莫名笼罩着谜团,但之后的恋情倒是顺利发展着。

付き合い始めてすぐに遠距離恋愛になってしまったけど、凛は意外にもこまめに俺に連絡を寄越した。というか、寝る前には必ず凛に連絡しないと俺は死ぬほど怒られた。生存確認だ、と凛は言っていた。なに、俺ってどこかの組織に命を狙われてんの?最初は「生存確認って……そんな大袈裟な」とあまり真剣に相手にせず、たまに連絡を怠っては凛にキレられたりしていたら、いい加減堪忍袋の尾が切れたらしい凛がドイツまで直接訪れて「言うこときかねぇならお前の家にペットカメラを設置する」などと鬼の形相で言うので、俺は大人しく凛の言葉に従うことにした。
刚交往就变成异地恋,没想到凛意外地频繁联系我。准确说,要是睡前不联系凛,我会被骂得狗血淋头。凛称之为“生存确认”。喂喂,我是被什么组织盯上性命了吗?起初我还敷衍着“生存确认也太夸张了吧”,偶尔偷懒没联系就会被凛怒吼。后来这位姑奶奶终于忍无可忍,直接杀到德国威胁“再不听话就在你家装宠物摄像头”,看她那恶鬼般的表情,我只好乖乖服从命令。

最初、凛は俺の浮気を疑っているのだと思っていた。凛って見るからに嫉妬深そうだしなぁ、と思っていたけれど、俺の予想に反して、凛は俺が寝る前に一言でも凛に連絡さえ送れば、俺のゴシップ記事(当然デマ)が出ても、試合に勝利した勢いでカイザーが俺の頬にキスをしたシーンがSNSを中心に流れても、俺が夜の連絡を怠った時ほど怒りはしなかった。(それはそれでなんだか複雑だけど)
起初,我以为凛是在怀疑我出轨。虽然看他那副样子就像个醋坛子,但出乎我意料的是——只要我在睡前给凛发哪怕一句话,就算八卦小报(当然是谣言)刊登我的绯闻,就算凯撒在获胜后当众亲吻我脸颊的画面席卷社交媒体,他都不会像我忘记夜间联络时那样暴怒。(虽然这种区别对待也让人心情复杂)

凛の「夜に一言連絡しろ」は本気で生存確認の意味合いしか含んでいないらしい。愛されてるんだか愛されていないんだかよく分からない。
凛那句"晚上必须发消息"似乎真的只是为了确认我活着。完全搞不懂这到底算不算被爱着。

なんだか釈然としないまま、俺は毎晩凛に「おやすみ」とだけメッセージを送るのだった。
就这样怀着微妙的心情,我每晚都只给凛发一句"晚安"。


その日は俺の25回目の誕生日だった。凛と俺の誕生日を一緒に迎えるのは8回目になる。イベントに興味がなさそうな凛だが、意外にも俺の誕生日は大切にしてくれる。住んでる国も違うし、シーズン中だし、俺としては一言「おめでとう」と言ってもらうだけでも十分なんだけど、凛は直接俺に会ってお祝いしようとする。それに関しては、まあ愛を感じるので、俺は照れながらも、毎年凛からのお祝いの言葉とケーキとちょっとしたプレゼントなんかを受け取る。
那天是我 25 岁生日。这是第八次和凛共度生日了。虽然他对各种节日都兴致缺缺,却意外重视我的生日。考虑到我们住在不同国家又正值赛季,我觉得能收到句"生日快乐"就足够了,但凛总会专程来见我。这点确实能感受到爱意,所以我每年都红着脸收下他的祝福、蛋糕和小礼物。

誕生日当日。凛が夕方ごろ、ドイツの俺の家を訪れた。俺はデリバリーの夕飯をテーブルに並べて凛と向かい合って食事をした。食後は凛がうちに来る途中のケーキ屋さんで買ってきてくれたケーキを食べて、シャワーを浴びた。その後、「お前のしたいことに付き合ってやる」という凛と一緒に映画を観た。その日、俺が選んだのは昨年アカデミー賞を受賞したという評判の良いラブロマンス映画だった。いつもはホラー映画やスプラッター映画しか観ない凛も、今日だけは大人しく俺の隣に座って一緒に観てくれた。
生日当天。凛在傍晚时分来到我在德国的家。我把外卖晚餐摆上餐桌,与凛相对而坐共进晚餐。餐后享用了他来我家路上从蛋糕店买来的蛋糕,接着洗了个澡。之后按照凛说的"陪你做你想做的事",我们一起看了电影。那天我选的是一部去年荣获奥斯卡奖、口碑很好的爱情浪漫电影。平时只看恐怖片和血浆片的凛,唯独今天安安静静坐在我身旁陪我看完了。

何となくで観始めた映画だったけど、俺は予想外にもその映画の世界観に引き込まれていた。賞を受賞した映画だけあって確かに面白い。ベースはラブロマンスなんだけど、ミステリー要素もあってそれが解き明かされていく時の驚きとスッキリ感がクセになる。これは最後まで観ないといけないと俺は思った。
虽然是随便选的电影,我却意外地被这部电影的世界观深深吸引。不愧是获奖影片确实精彩。虽然基调是爱情故事,但悬疑元素的加入让真相揭晓时的震撼与畅快令人上瘾。我心想必须要把这部看到最后才行。

「……あー、面白かった」  "......啊——真好看"
二時間後、俺はテレビ画面から目を離して言った。ソファの隣に座っている凛に少し興奮気味に言う。
两小时后,我的视线从电视屏幕移开说道。带着些许兴奋对坐在沙发旁的凛说出这句话。

「ラブロマンス系はそんなに得意じゃないけど、これは良かったな」
"虽然不太擅长爱情浪漫题材,但这个确实不错"

凛はいつもの飄々とした顔をしていた。  凛依然带着那副漫不经心的表情
「ご都合主義過ぎんだろ」  "这也太巧合了吧"
映画の内容は、主人公が交通事故をきっかけに前世の記憶を取り戻していく話だった。そして、今世で親友だと思ってた相手が前世では恋人で、でも、それを知った時には遅く、二人はもう既に別の人と結婚していた――。
电影讲述的是主人公因车祸契机逐渐找回前世记忆的故事。而现世以为是挚友的对象,在前世竟是恋人——可当知晓这一切时已为时过晚,两人都已各自与他人缔结婚约——。

前世ではあれだけ愛し合っていた相手が、今世では自分とは別の人物と結婚している――という事実に苦しむ主人公の姿が、柄にもなく俺の涙腺を刺激したのだが、横で同じものを見ていたはずの凛は表情筋をぴくりとも動かしていなかった。
前世那般相爱的恋人,今生却与他人结为连理——主人公为此痛苦的模样,竟不合时宜地戳中了我的泪点。而身旁明明看着同一场画面的凛,却连睫毛都没颤动一下。

「んなことより。……いつまで待たせるつもりだよ」  "比起这个……你打算让我等到什么时候?"
凛の手が俺の頬を触る。凛の機嫌がちょっと悪いのが分かって、俺はそれ以上は何も言うのをやめた。
凛的指尖抚上我的脸颊。察觉到她心情似乎不太好,我便识相地噤了声。

きっと凛は俺が映画を観始めた時からずっと待っていたのだ。何って、ナニを。今夜は当然そういう気分だったんだろうけど俺が映画に夢中だったから凛は大人しく待っていてくれたのだ。
想必凛从我开始看电影时就一直在等待。等什么?当然是等那个——虽然今晚本该是水到渠成的氛围,却因我沉迷电影而让凛不得不乖巧等候。

凛の唇が重なる。ソファに大人しく押し倒されながら、俺は壁に掛かっている時計にチラリと視線をやった。23時過ぎ。明日はオフだ。ここで寝てしまったら今度こそ本気で凛は機嫌を損ねかねない。俺は内心仕方がないなぁと思いながら恋人の首に腕を回した。
凛的唇覆了上来。被安静地推倒在沙发上时,我瞥了眼墙上挂钟——已过 23 点。明天休假。若就此睡去,凛这次恐怕真要动怒了。我一边暗自叹气,一边将手臂环上恋人的后颈。


「凛って前世って信じる?」  "凛,你相信前世吗?"
俺がベッドの中で寝転んだままそう言うと、隣でペットボトルの水を飲んでいた凛が「は?」と言った。
当我在床上躺着说出这句话时,正在旁边喝矿泉水的凛发出"哈?"的疑问声。

身体も心も満たされた俺はベッドの上の軽い寝物語のつもりでその話を口にした。
身心餍足的我本打算把这话题当作床笫间的睡前闲谈。

「さっきの映画。俺、今までそんなのあるわけないって思ってたけど、さっきの観た後ならちょっと考えちゃうよなぁ」
"刚才那部电影。我本来觉得这种情节绝对不可能存在,但看完之后现在有点相信了呢。"

凛の顔には「なに言ってんだコイツ」とありありと書かれていた。俺はそれを見て笑った。
凛脸上明显写着"这家伙在胡说什么"的表情。我看到他这样忍不住笑了。

「凛の前世は何かな。人間かなぁ」  "凛的前世会是什么呢。是人类吗"
「……」  "……"
「凛が人間だったら俺も人間が良いな。――で、少しくらいは関わりがあったりして」
"如果凛是人类的话,我也当人类好了。——这样说不定还能有点交集"

我ながら先程の映画に影響され過ぎなのは分かるが、それくらい心を揺さぶる映画だったのだ。当然、凛からは「くだらねぇこと言ってないで寝るぞ」という言葉が返ってくると思っていた。しかし、凛はそうは言わなかった。
我自己也明白刚才的电影对我影响太大了,但那就是部如此震撼人心的电影。本以为凛会回我一句"别说蠢话了快睡觉",但他并没有这么说。

「……お前は虫だろ。前世」  "......你上辈子是虫子吧"
凛が俺の横の布団の中に滑り込んでくる。凛は上半身裸で、下着だけ履いている。
凛滑进我身旁的被窝里。他上半身赤裸,只穿着底裤。

「む、むし?」  "虫、虫子?"
予想外のその言葉に俺が目を瞬かせると、凛が再度言った。
面对这句出乎意料的话,我不由得眨了眨眼,凛又重复了一遍。

「虫。イモムシ」  "虫子。毛毛虫。"
「……虫かぁ。いやまあ、その可能性は絶対にないとは言い切れないけども……。じゃあ凛は?」
"……虫子啊。不,虽说也不能完全排除这种可能性……那凛觉得呢?"

「……フクロウ。自分のナワバリ付近にいるアホ面した虫を食べて生きてた」
「……猫头鹰。靠吃自己领地附近那些蠢脸的虫子过活。」

「……もしかして俺って凛に食われちゃった?」  「……该不会我前世是被凛吃掉的吧?」
凛が枕にぼすんと頭を乗せる。俺は仰向けで天井を見つめたまま「うーん」と唸った。
凛把脑袋咚地靠上枕头。我仰面盯着天花板发出「唔——」的沉吟。

「そうか……俺の前世は凛に食われて終わったのか……」
「原来如此……我的前世是被凛吃掉才结束的啊……」

「そんな簡単に信じんな馬鹿」  "别这么轻易就相信啊,笨蛋"
「え、違うの?」  "诶,不是真的吗?"
俺は凛の方を向いて聞いた。凛が面倒臭そうに顔を顰める。
我转向凛问道。凛一脸不耐烦地皱起眉头。

「本当のわけねぇだろ」  "怎么可能是真的"
「そっかー……。たとえ虫とフクロウでも、前世で少しでも凛と一緒にいれたなら俺は幸せだと思ったんだけどなぁ」
"这样啊……就算是虫子和猫头鹰,只要前世能稍微和凛在一起的话,我就会觉得幸福呢"

「キメェ」  "恶心"
凛はそう言って俺に背中を向ける。寝たいらしい。俺はその背中に抱き付いた。
凛这么说着背过身去。似乎是想睡了。我抱住了那个背影。

凛の広い背中に鼻の頭を擦り付ける。凛の背中は凛の匂いがする。その背中に音を立ててキスをした。
把鼻尖蹭在凛宽阔的后背上。凛的后背散发着凛的气息。我对着那个后背响亮地亲了一口。

「美味しかった?俺」  "好吃吗?我"
「……」  "……"
「虫だった俺を食べたんだろ。凛」  "你吃掉了身为虫子的我吧。凛"
「不味かった」  "难吃死了"
「仮にも恋人を食っといて何だよその感想」  "好歹也是吃了恋人,这算什么感想啊"
凛の背中が小さく揺れる。珍しい。凛は俺の言葉に笑ってくれたらしい。俺も笑って、頬を凛の背中に擦り付けた。冗談はこの辺にしてそろそろ寝るか、と俺は口を閉じた。
凛的后背微微颤动。真稀奇。看来凛被我的话逗笑了。我也笑着把脸颊贴在她背上。玩笑到此为止该睡了,我闭上了嘴。

ひたひたと眠気が身体を包むのを感じる。俺は凛に「おやすみ」を言う間もなくいつの間にか意識を手放した。
渐渐感受到睡意包裹全身。还没来得及对凛说"晚安",不知不觉就失去了意识。


そんな会話をしたこともスッカリ忘れた次の年の俺の誕生日。その年も凛がドイツまで来てくれた。今回は家の近くの店でディナーを食べて、俺の家に帰り、シャワーを交互に浴びた。その後はソファに並んで座って肩をくっつけ、頬や唇にキスをしながらイチャイチャしていると、テレビでドラマが始まった。
完全忘记这段对话的第二年生日。那年凛也专程来德国陪我。这次我们在家附近的餐厅吃完晚餐,回到我家轮流洗澡。之后并排坐在沙发上肩挨着肩,一边亲吻脸颊和嘴唇腻歪着,电视里开始播放连续剧。

「あ、この女優さん、あの映画に出てた人じゃね?」  "啊,这位女演员不是演过那部电影的人吗?"
流れ始めたドラマに出ていた女優さんの顔に見覚えがあった。一年前の俺の誕生日に観た映画に出てきた人だ。凛はどうでもよさそうに「憶えてねぇ」と言った。
正在播放的电视剧里出现了眼熟的女演员面孔。她出演过一年前我生日时看的那部电影。凛却满不在乎地说了句"不记得"。

「この人、この前の映画では端役だったからこのドラマで主役してんの変な感じだな」
"这人上次在电影里只是个配角,现在居然在这部剧里当主角,感觉好奇怪啊"

俺の言葉を遮って凛が唇を寄せる。本気でこの話はどうでも良いらしい。
凛凑过来堵住了我的嘴。看来她是真的一点都不想继续这个话题。

凛とキスをしながら俺は思った。この前の映画では少し可哀想な役だったこの人が、いま流れているドラマでは恋人役と思われる男性と楽しそうにデートをしている。それこそ生まれ変わったかのように。
一边与凛接吻,我一边想着。上次电影里还演着可怜角色的这个人,如今在热播剧里正和疑似恋人角色的男性开心约会。简直像重生了一般。

「そういえばさ。去年、俺の前世は虫だって凛に言われたよな」
"说起来啊。去年凛还说过我的前世是虫子呢"

笑いながら言う。酷い話だ。でも凛らしいけど。  我笑着说道。真是过分的话。不过倒也像凛的风格。
「……さあ」  "......谁知道呢"
凛は忘れてるのかしらばっくれてるのか分からない声色で言う。俺は凛の胸を軽く叩きながら言った。
凛用分不清是忘了还是装傻的语气说道。我轻轻拍着凛的胸口说。

「憶えてねぇのかよ。俺が虫で凛がフクロウだったって言ってた」
"你不记得了吗?我说过我是虫子,你是猫头鹰啊"

凛は無言で俺の首筋にキスをする。俺はくすぐったさに首をすくめながら大人しくソファに押し倒された。
凛沉默着吻上我的后颈。我因发痒缩着脖子,乖乖被推倒在沙发上。

「ねぇ、凛。俺たちの前世は虫とフクロウなんだろ?じゃあ、前々世は?」
"呐,凛。我们的前世是虫子和猫头鹰对吧?那前前世呢?"

「……は?」  “……哈?”
「俺、結構ツボだったんだよ。前世が虫って言われたの」
“我其实还挺在意的。说我前世是虫子这件事。”

しかも凛に食われてるし。俺はククッと笑う。凛はヤる気が削がれたのか、眉を寄せて俺を見下ろしていた。
而且还在被凛啃食着。我噗嗤笑出声来。凛似乎被浇灭了兴致,皱着眉头俯视着我。

「……占い師じゃねぇぞ俺は」  “……老子又不是占卜师”
「知ってるって。じゃあ俺が考える。えーっと、前世が人間じゃなかったんなら前々世こそお互いに人間!そんで恋人だった」
"我知道啦。那我来想想。嗯——如果前世不是人类的话,前前世我们肯定都是人类!而且还是恋人关系"

ドヤと凛の顔を見ると、凛は複雑そうな顔をしていた。「くだらねぇ」と一蹴されると思っていたので、その予想外の表情に俺は首を捻った。
我得意洋洋地看向凛的脸,却发现他露出了复杂的表情。本以为会被他骂"无聊",这出乎意料的神情让我困惑地歪了歪头。

「ちげぇだろ。――虫の前は兄弟だった。お前が兄貴で俺が弟」
"错得离谱。——在昆虫之前我们是兄弟。你是哥哥我是弟弟"

俺は驚いて凛の顔を見つめた。凛が俺の冗談に乗ってくれるのは珍しい。
我吃惊地凝视着凛的脸。他居然会接我的玩笑话,这可真稀奇。

「……マジで?」  “……真的假的?”
「兄弟だからキスの一つも出来ないままお前は結婚した。俺の知らねぇ女と」
“因为是兄弟,所以你连一个吻都没得到就结婚了。和一个我根本不认识的女人。”

「……ふーん」  “……哼”
なんか凛らしくない話だ、と俺は思った。凛は例え話だったとしても、俺と女性を結婚させるのは嫌うと思っていた。
总觉得这不像凛会说的话,我暗自想着。就算是打比方,凛也绝不会愿意把我和别的女人凑成一对。

「……凛、俺の結婚式で泣いた?」  “……凛,你在我的婚礼上哭了吗?”
「泣かなかった。ただ、くたばっちまえと思ってた」  “没哭。只是想着‘去死吧’”
「兄の結婚式でそんなこと思ってる弟、怖えよ……」  “在哥哥婚礼上这么想的弟弟,真可怕啊……”
俺の頭の中で、教会で誓いのキスをする俺を今にも人を殺しそうな凶悪な顔で睨みつける凛の絵が浮かんだ。そんなんで何となく罪悪感が湧いてくる俺も俺で想像力が豊か過ぎる。
我脑海中浮现出凛在教堂里用杀人般的凶狠眼神瞪着正在接吻宣誓的我的画面。连我自己都觉得这想象力过于丰富,莫名涌起一股罪恶感。

「なんか悲しくなってきた」  “突然觉得好难过”
俺は凛の身体をギュッと抱きしめた。「本気にすんな馬鹿」と返ってくるかと思ったら、凛は何も言わなかった。
我紧紧抱住凛的身体。本以为他会回一句“别当真啊笨蛋”,结果凛什么也没说。

「……別に良い。最期は一緒だったから」  “……无所谓。反正最后是和你在一起”
「最後?」  “最后?”
凛の顔は無表情だった。冗談を言っていると思えないほど、真剣な顔。
凛的脸上毫无表情。那副认真的模样让人完全无法觉得他是在开玩笑。

「お前は子供にも恵まれて嫁よりも長生きした。最期は老衰だった。俺が看取った。お前が病室で息を引き取る時、お前の手を握ってたのは俺だった」
"你儿孙满堂,比妻子更长寿。最后是自然老死的。是我送你走的。当你在病房停止呼吸时,握着你的手的人是我。"


朝。目が覚めると、部屋の中はまだ暗かった。横を見ずとも隣に凛の気配がする。その穏やかな寝息を聞いてると、昨晩の会話が思い出された。
清晨。醒来时房间仍笼罩在黑暗中。即使不转头也能感知到凛躺在身侧。听着他平稳的呼吸声,昨晚的对话又浮现在脑海。

前世とかそういう与太話に凛が乗ってきたのは珍しい。乗ってきたどころか、やたらと具体的な話までしてくれた。あれはなんだったんだろ。あの場で凛が一瞬で考えた妄想?
凛会接前世这种无稽之谈实在罕见。非但接话,还异常具体地描述了细节。那究竟是怎么回事?是他当场临时编造的幻想吗?

俺は身体を起こした。凛は俺に背中を向けて寝ている。俺は凛を起こさないようにそっとベッドを抜け出してリビングに向かった。顔を洗い、朝食の準備をしていると凛が起きてきたので作ったものをダイニングテーブルに運んでもらい、二人で食べた。パンと目玉焼きとサラダとソーセージ。俺はパンをちぎりながら言った。
我撑起身子。凛正背对着我熟睡。为了不惊醒凛,我悄悄下床走向客厅。正在洗脸准备早餐时,凛也醒了,便让她把做好的食物端到餐桌上,两人一起用餐。面包煎蛋配沙拉香肠。我撕着面包开口。

「なぁ、凛。……昨日の話の続きしてよ」  "喂,凛......继续昨天的话题吧"
なんだそれ、と凛は言わなかった。ジッと俺を見つめ返す。
出乎意料,凛没有说"开什么玩笑"。只是定定地凝视着我。

「信じてないだろ。お前」  "你根本不相信吧"
「信じた方がいい?」  "还是相信比较好?"
凛はしばらく考えた顔をした後に首を振った。  凛露出思索的表情,片刻后摇了摇头。
「信じなくていい」  "不用相信"


前回は俺が虫で凛はフクロウ。  上次我是虫子而凛是猫头鹰。
前々回はお互い人間で兄弟だった。  上上辈子我们是人类兄弟。
前々々回はお互い人間で夫婦だった。  上上上辈子我们是人类夫妻。
「珍しく結婚も出来て、子供も産まれた」  "难得结了婚,还生了孩子"
「幸せだった?」  "幸福吗?"
凛はサラダを頬張りながら素っ気なく言う。  凛一边往嘴里塞着沙拉,一边冷淡地说道。
「まあそれなりに。悪くはなかった」  "还算可以吧。不算太糟"
その言い方に思わず笑ってしまう。きっと幸せだったんだろう。
听到他这种说法,我不由得笑了出来。想必他当时一定很幸福吧。

「凛が、俺が死ぬ時は凛のそばで死ねって言ってるのは前世と関係ある?」
"凛说想让我死在你身边,这和前世有关系吗?"

凛は執拗に俺の死に方を気にしている。何が何でも俺が死ぬ時はそばにいたいらしくて。今まではその理由を聞いても凛は教えてくれなかった。
凛执拗地在意着我的死法。似乎无论如何都想在我死去时陪在身边。之前就算问起原因,凛也从不告诉我。

「……今まで、お前と俺が産まれるタイミングは違うことが多かった。お前が爺さんの時に俺が子供だった時もあるし」
"......迄今为止,我们降生的时机大多错开。有时你是老爷爷时我还是个孩子"

「なるほど」  "原来如此"
「ただ、一緒に死んだら、生まれ変わるタイミングもそこまでズレねぇことが分かった」
"不过发现只要一起死去,转世的时机就不会相差太远"

「……一緒に死ぬって何?」  “……一起死是什么意思?”
なんだか嫌な予感がして俺は聞いた。凛はひたと俺の目を見た後に言った。
我隐约有种不祥的预感便开口问道。凛直直凝视着我的眼睛后说道。

「前回もそうした。虫だったお前を見つけた後、巣に連れて帰った。別に最初は食うつもりはなかった。お前がサナギになるまで見守ってたが、その間にお前には前世の記憶なんてないことに気付いた。いつもそうだから。……蝶になったお前が勝手にどこかに飛んで行くのが許せなくて、羽化してすぐに食べた。俺はお前がサナギになった時からほとんど何も食べてなかったから、お前を食ってすぐに餓死した」
“上次也是这样。发现变成虫子的你之后,我把你带回巢穴。原本并没打算吃掉。一直守候到你化蛹为止,但那期间我注意到你根本没有前世的记忆。每次都是这样……我无法容忍化为蝴蝶的你擅自飞走,就在你羽化瞬间吃掉了你。从你化蛹开始我就几乎没进食,所以吞下你后立刻饿死了。”

「……今回もそうするつもり?」  “……这次也打算这么做?”
凛は今回も俺が先に死んだら一緒に死ぬつもりだろうか。聞くのが怖い。ただ、凛は何の躊躇もなくさらりと言った。
凛这次是不是也打算等我先死后就跟着一起死呢。我害怕开口询问。然而,凛却毫不犹豫地脱口而出。

「今回もそうする。前から決めてた」  "这次也一样。早就决定好了"


部屋が沈黙に満ちた。俺はなんと言っていいか分からずひたすら凛の顔を見つめるだけだった。凛も俺の目を見つめ返し、そして言った。
房间被沉默填满。我不知该说什么好,只能死死盯着凛的脸。凛也回望着我的眼睛,然后说道。

「――本気にすんな馬鹿」  "——别当真啊笨蛋"
「……は?」  "……啊?"
固まった空気を壊すかのように凛はフォークでザクザクと野菜を刺しながら言う。
仿佛要打破凝固的空气般,凛一边用叉子戳着蔬菜一边说道。

「今日が何の日か忘れたのか」  "你忘了今天是什么日子吗"
「え?あ?……俺の誕生日?」  "诶?啊?……我的生日?"
今日は4月1日で。俺の誕生日だから凛がわざわざドイツまで来てくれて。でもその俺の回答は不正解だったようで凛はリスのように頬を膨らませて口をもぐもぐと動かしながら俺を見た。
今天是 4 月 1 日。因为是我的生日,凛特意从德国赶来。但我的回答似乎不正确,凛像松鼠一样鼓起脸颊,一边咀嚼着食物一边看着我。

「なに?違う?4月1日だから――――もしかしてエイプリルフール?」
"什么?不对?因为是 4 月 1 日——难道是愚人节?"

俺がそう言うと凛は口の中のものをこくんを呑み込んで「やっと気づいたか」と言った。
我这么一说,凛咽下嘴里的东西说道:"终于发现了吗。"

「……うっそ。今までの全部嘘だったの?」  "……骗人。之前说的全都是谎话?"
「前世とかあるわけねぇだろ」  "前世什么的根本不存在吧"
「マジで!?でも去年も」  "真的假的!?可去年也..."
「去年もお前の誕生日はエイプリルフールだったろうが」
"去年你生日不也是愚人节吗"

いやそれはそうなんだけど。毎年俺の誕生日はエイプリルフールで。でもでもでも。
话是这么说没错啦。每年我生日都在愚人节。可是可是可是。

絶句している俺を置いて、凛は綺麗に皿を空にすると立ち上がった。
我呆若木鸡地愣在原地,凛却优雅地清空餐盘站起身来。

「お前も早く食え。この後、行きてぇところがあるんだろ」
"你也快点吃。待会儿不是有想去的地方吗"

確かに今日はこの後二人でドライブする予定ではあったけど。すっかり通常通りの凛の姿を見ていると、じわじわと「俺は騙されたんだ」という実感が湧いてきた。
虽然确实计划了今天要一起去兜风。但看着完全恢复常态的凛,我逐渐真切地意识到"自己被骗了"这件事。

「……酷い。俺、本気で信じてたのに」  "......太过分了。我可是真心相信的啊"
「信じるなって言っただろうが」  "不是说了别相信吗"
「でもやけに詳細な設定だったから……!」  "可那些设定实在太详细了嘛......!"
「詳細な設定だったら嘘じゃねぇってことにはなんないだろうな」
"设定详细就能证明不是谎言?你这逻辑有问题吧"

「詐欺師!」  "骗子!"
「あんな話に騙される方が悪い」  "会被那种谎话骗到的人才有问题"
俺はなおも「恋人に嘘付いた!」だとか「俺は傷付いたぞ!」だとか喚いたけど、その度に凛にあしらわらわれ、相手にされなかった。
我还在不停嚷嚷着"居然对恋人撒谎!"、"我受伤了啊!"之类的话,但每次都被凛敷衍了事,根本不被当回事。

「前世から縁があるとかちょっとロマンチックだと思ってたのに」
"说什么前世有缘之类的,我还觉得挺浪漫的呢"

俺は車のシートベルトを締めながら言った。運転するのは俺だ。凛は助手席で「まだ言ってんのか」と言った。
我一边系着汽车安全带一边说道。开车的人是我。凛在副驾驶座回了句"你还在说这个啊"。

「凛が俺の誕生日を毎年ちゃんとお祝いしてくれるのは、今世は俺たちが無事に同じ時期に生まれ変われたお祝いを兼ねてんのかなとかそこまで考えてた」
"凛每年都认真给我过生日,是不是也包含着庆祝我们这辈子能平安在同一个时代转世重逢的意思呢——我居然连这种事都想到了"

「……」  "……"
「俺、アホみたいじゃん」  "我真是傻得可以"
「拗ねんな」  "别闹别扭"
凛の手が俺の頬を撫でる。ご機嫌取りだ。俺はふんと鼻を鳴らして車を出発させた。
凛的手轻抚过我的脸颊。这是在讨好我呢。我哼了一声,发动了车子。

「お詫びになんか奢れ」  "赔罪的话就请我吃饭吧"
「鼻から今日はそのつもりだった。そもそもお前より稼いでるしな」
"本来今天就打算请的。反正我赚得比你多"

「クソ、なんか腹の虫がおさまらない。愛してるって10回言え。そしたら許す」
"靠,还是咽不下这口气。说十遍'我爱你'。说完就原谅你"

「言うわけねぇだろ」  “怎么可能说啊”
「罰ゲームだよ。今日中に10回だからな」  “这是惩罚游戏。今天之内要说十次哦”
「アイシテル」  “我爱你”
「すげぇ棒読みだ……」  “读得超级生硬……”
軽口を叩いているうちになんだか楽しくなってきて、さっきよりもイライラは和らいできた。凛に道案内してもらいながら街を通り抜ける。今日行くのはニンフェンブルク宮殿である。いつか行ってみたいと思いつつ、もう数年たってしまった。
插科打诨间心情莫名愉悦起来,方才的烦躁也消退了不少。跟着凛的指引穿过街道,今天要去的是宁芬堡宫。虽然一直想着哪天要去看看,结果转眼已过去好几年。

「そういえば、今朝だけじゃなくて昨日も前世の話したよな?昨日はエイプリルフールじゃねぇぞ」
"说起来,不光是今早,昨天你也提过前世的事吧?昨天可不是愚人节啊"

運転しながらふと思ったことを言った。凛は窓の外を見て何も言わなかった。俺は続けて言った。
开车时我突然冒出这句话。凛望着窗外没有作声。我继续道:

「ふん。どうせ忘れてたんだろ。昨日がエイプリルフールじゃないこと」
"哼。反正你早忘了昨天不是愚人节这回事吧"

「人生でエイプリルフールを意識したことがねぇからな」
"我这辈子就没在意过愚人节这玩意儿"

「だよな。凛ってそういうイベントに乗っかるタイプじゃねぇもんな」
"确实。凛就不是会凑这种热闹的类型"

そう自分で言って「あれ?」と思った。凛は窓の外を見ていた顔をこちらに向けた。
刚说完这句话,我突然"咦?"地愣了一下。凛把望向窗外的脸转了过来。

「もう着く。意外と近かったな」  "快到了。没想到还挺近的"
「……ああ、うん。道案内ありがと」  “……啊,嗯。谢谢指路”
「駐車場あんのか。ここら辺」  “这附近有停车场吗”
「あ、分んねぇ」  “啊,不知道”
「調べとけアホ」  “不会自己查啊笨蛋”
凛がスマホで駐車場の場所を調べ始める。俺は「ごめん」と言いながら頭が混乱していくのが分かった。
凛开始用手机查找停车场的位置。我一边说着"抱歉",一边感到头脑逐渐混乱。

――結局、嘘なのか本当なのかどっちなんだよ、と俺は聞かなかった。多分、聞いても凛は「嘘に決まってんだろ」と言う気がする。
——到头来,究竟是谎言还是真话呢,我终究没有问出口。大概就算问了,凛也会说"当然是骗你的"吧。

駐車場は城の近くにあった。そこに車を停めて外に出る。
停车场就在城堡附近。我们把车停在那里下了车。

凛は車の横に立ってその場で大きく伸びをした。凛は身体がデカいので車に乗っている時はいつも窮屈そうにしている。
凛站在车旁大大地伸了个懒腰。因为身材高大,他坐车时总显得很局促。

「なぁ。凛」  “喂。凛”
俺はそんな凛に声を掛けた。車を挟んで凛が俺の方を見る。
我对着那样的凛喊道。隔着车子,凛朝我这边看过来。

なんと言おうか少しだけ迷った後に言う。  犹豫了片刻要说什么之后,我开口道。
「――俺が死ぬ時はお前のそばで死ぬって約束するからさ。だから、そん時に本当のこと教えてくれよ」
“——我答应你,死的时候一定会死在你身边。所以到那时候,把真相告诉我吧”

凛は無表情で俺を見返した後に、小さく頷いた。  凛面无表情地回望着我,随后微微点了点头。

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