


子供の頃から、ひとりで過ごすのが好きだった。 从小就喜欢一个人独处。
小さな町で生まれ、更にその街の外れで暮らしていた。
出生在一个小镇上,且生活在镇子的边缘。
両親が結婚した時、友人の力を借りて作ったと言う二階建ての小さな家と、トウモロコシ畑が物心がついた頃の自分の世界のすべてだった。
父母结婚时,借助朋友的力量建造的那座两层小房子和玉米地,是我有记忆以来的全部世界。
父は町のリーダー的存在だった。役所の人間にも顔が利き、いずれ市長にもなる男だと人々から慕われた。
父亲是镇上的领袖人物,在政府机关也有影响力,人们都敬仰他,认为他终有一天会成为市长。
母はとくべつ活発な人では無かったが、常に家に人を招いて、お手製のケーキや、サンドイッチなんかを振る舞ったり、詩集や編み物なんかをしながら夕方までお客人とおしゃべりをして、そうしてきっちり十七時になると解散して、父が帰宅する十八時迄には夕食の準備を整えた。
母亲并不是特别活跃的人,但她总是邀请客人到家里,亲手做蛋糕和三明治招待大家,一边和客人们聊到傍晚,一边读诗集或编织毛线衣。到了整整十七点,大家便散去,母亲会在父亲十八点回家之前准备好晚餐。
父が突然客人を連れて帰宅しても嫌な顔ひとつもしなかったので、代わりに自分が嫌な顔をして見せると母はこっそりと、優しく窘めて見せた。有難かったのは、社交的な両親が自分に対して同じ事を求めなかった事だ。
即使父亲突然带客人回家,母亲也从不露出不悦的表情。反而当我故意做出不高兴的样子时,母亲会悄悄地温柔地劝诫我。让我感激的是,社交活跃的父母从未对我有同样的要求。
例えば、天気のいい休日に読んでいる本を取り上げて外で友達と遊べと部屋から引きずり出される事はなかったし、父の提案で出掛けたピクニックで、一人離れた場所で植物の感触に勤しむ事を「陰気」だなんて意地悪を言う事も無かった。
比如,在天气晴朗的假日里,他们不会强行从我手中夺走正在看的书,拉我出去和朋友玩耍;在父亲提议的野餐中,我独自一人远离人群,专注于触摸植物的感觉,也不会被说成“阴郁”或被恶意嘲笑。
学校を休みたいと言っても、理由を追求する事無く、家に居る事を許してくれた。
即使我说想请假不上学,他们也不会追问理由,而是允许我待在家里。
けれども、土曜日の夜に行われる集会にだけは必ず出席しなければならなかった。
但是,只有周六晚上的集会是必须参加的。
十五年程前の事だ。 大约是十五年前的事情。
ある日、突然、この世界に身体から炎を噴き出す人間が現れた。
有一天,突然出现了从身体喷出火焰的人类。
当初は人体発火現象かと思われたが、炎を噴き出した人間は死ぬことはなく、彼等は身体から噴き出された炎は七色の極彩色をしていた。
起初人们以为这是人体自燃现象,但喷出火焰的人并没有死亡,他们身体喷出的火焰呈现出七彩的极光色。
「切ると血の代わりに炎を噴き出し、周囲のものすべてを焼き尽くす。彼等は山を操り火山を噴火させ、世界を破滅させようと企てた。皆さんも、あの世界同時大炎上を忘れた訳ではないでしょう。あれらは最早人間では無い。悪魔です。此れは信頼のおける人からの情報ですが、あの炎を目にしたもの、触れた者は高頻度で同じ様に身体から炎を噴き出し被害を広めていく。あれは、伝染するのです。数が減ったと政府は言うが、根絶させねば意味が無い。被害が広がる前に食い止めねばならない」
“他们一旦被割伤,喷出的不是血,而是火焰,焚烧周围的一切。他们操控山脉,引发火山喷发,企图毁灭世界。大家也不会忘记那场世界范围的大火灾。那些已经不再是人类,而是恶魔。这是来自可靠人士的消息,凡是目睹或接触过那火焰的人,极高概率会从身体喷出火焰,继续扩散灾害。那是会传染的。政府说数量减少了,但不彻底根除毫无意义。必须在灾害扩散之前遏制住它。”
家の地下に掘られた一室にぎゅうぎゅうに人がひしめき合いながら「そうだ」「奴らの存在を許すな」と何処からか父の演説に賛同する声が上がる。
在家中地下挖出的一个房间里,人们挤得水泄不通,纷纷响应父亲的演讲声:“没错”,“绝不能容忍他们的存在”。
先週、隣町で火事が起きた。 上周,邻镇发生了一场火灾。
その炎は普通の炎とは違い七色の極彩色をしており、水で消化する事も出来ず、建物付近一帯がすべて燃えたと言う。
那火焰与普通火焰不同,呈现七彩极光色,无法用水扑灭,建筑周围一带全部被烧毁。
その火事の原因が家の中に居た人物によるものなのか、それとも、放火によるものかは今も不明だ。
那场火灾的原因是屋内的人引起的,还是纵火所致,至今仍不明朗。
もし放火によるものならば、まだ犯人は他に居るかもしれない。そして、犯人が逃亡しているならば、国境に近いこの町にやってくる可能性が高いのだ、と父は言う。
如果是纵火所致,犯人可能还有其他人。而且,如果犯人在逃,父亲说他们很可能会来到这个靠近国境的小镇。
「見つけ次第、捉えなければいけない。町に火の粉が降りかかる前に」
「一发现就必须抓住。在火星落到镇上之前」
「見つけ次第、捕まえろ」 「一发现就抓住」
「怪しい奴を見掛けたら直ぐに通報しろ」 「一看到可疑的人马上报告」
「でも、どうやって?」 「可是,怎么做呢?」
「簡単だ。奴等の身体には血ではなく、炎が流れているんだ」
“很简单。他们的身体里流的不是血,而是火焰。”
切ったところから、血が流れれば人間で、炎が噴き出せば悪魔だろう。
如果切开后流出的是血,那就是人类;如果喷出的是火焰,那就是恶魔了吧。
そこまで聞いて、うんざりした気分で部屋を後にした。
听到这里,我心生厌倦,便离开了房间。
少しだけ困った様に眉を下げる母の姿が見えたが咎められないのを良い事に、集会に使用している部屋の向かいにある倉庫に向かう。その一角に、外に繋がる扉がある。子供の頃は、棚の間を移動するのに苦労はしなかったが、成長期を迎えてからというもの自分の身体はみるみる大きくなって、棚の間を移動するのに酷く苦労する。地下に降りる階段すら狭くて難儀するのだ。
隐约看到母亲微微皱眉,似乎有些为难,但我并未受到责备,便趁机走向用作集会的房间对面的仓库。那里有一扇通向外面的门。小时候穿梭于货架间毫不费力,但进入成长阶段后,身体迅速长大,穿行货架间变得异常困难。连通往地下的楼梯都狭窄得让人难以通行。
倉庫の奥の扉は、殆ど自分しか使用して居ないせいで開ける度に埃が舞う。
仓库深处的门几乎只有自己使用,每次打开时都会扬起一阵灰尘。
地上に上がり、畑に向かう。 上到地面,朝着田地走去。
季節は秋に片足を突っ込んで居たが、最近は気温が高く、空気も酷く乾燥しているので、トウモロコシの収穫にも影響が出るかもしれない。
季节已迈入秋天,但最近气温偏高,空气也异常干燥,可能会影响玉米的收成。
ぴゅう、と口笛を吹いて合図を送ると家の隣に建つ倉庫から塊が飛び出して隣を並走する。
吹了声口哨示意后,旁边仓库里飞出一个身影,紧挨着家旁边并肩奔跑。
黒い毛並みにぴんと立った耳。犬種は知らない。 黑色的毛发竖立的耳朵。犬种不详。
何処からやって来たのか、いつの間にか家のテラスの軒下に住み着いており、父が畑の番犬に良いと迎え入れたのだ。
不知从哪里来的,不知不觉就住进了家里露台的屋檐下,父亲觉得它是看护田地的好狗,于是收留了它。
畑を暫く突き進むと、一ヶ所だけまぁるく草が倒れている場所がある。そこに座ると、大きな体はトウモロコシによってすっかり隠れてしまう、秘密基地の様なものだった。
沿着田地继续前进一会儿,有一处草地被压倒成一个圆形。坐在那里,庞大的身体完全被玉米遮住,仿佛是一个秘密基地。
「おいで、ガロ」 “过来,Garo”
腰を落として膝を叩くと、すぐに彼が膝の間に身体を納めるので、その身体を抱きかかえるようにしてそのまま夜の空を見上げた。
他蹲下拍了拍膝盖,他立刻将身体挤进两膝之间,我便抱着他的身体,仰望着夜空。
今夜は月が細く、星の光が良く見える。 今晚月亮细细的,星光格外明亮。
部屋の窓からも星がよく見えるが、此処から見る星が自分は子供の頃から好きだった。
从房间的窗户也能清楚地看到星星,但从这里看到的星星,是我从小就喜欢的。
物心がついた時から、クレイはこうして家を抜け出してはガロと共にこうして畑で天体観測に勤しんだものだ。
从有记忆起,克雷就常常这样偷偷溜出家门,和加洛一起在田野里专心观测天体。
春から、クレイは都心の大学に進学する事が決まって居た。
从春天开始,克雷已经决定要去市中心的大学读书。
十五年程前、ほぼ同時期に世界のあちこちで発火現象を起こす人々が現れた。
十五年前,几乎在同一时期,世界各地出现了自燃现象的人们。
初めの頃は、その場で周囲を巻き込み、自身も燃え尽きてしまう者が大半だったそうだが、その内、その炎を操り、生き延びり、自身の意思で炎を操る人が現れた。
起初,大多数人在现场引发周围燃烧,自己也被烧尽,但随后出现了能够操控火焰、幸存下来并凭意志控制火焰的人。
科学技術の権威であり、かつて国連調査団であったデウス・プロメス博士は彼等を「バーニッシュ」と命名したが、名前を得た事で彼等は原因不明の発火に襲われた被害者では無く、自身の炎に人々を巻き込む加害者として認識する者が多く現れ、それは十五年前に起きた世界同時大炎上により決定的なものとなった。全人口の半数の犠牲を出し、バーニッシュの数も一時よりは随分と減ったと聞く。
作为科学技术权威、曾任联合国调查团成员的德乌斯·普罗梅斯博士将他们命名为“Burnish”,但获得名字后,许多人不再将他们视为遭受原因不明自燃的受害者,而是认为他们是将火焰波及他人的加害者。这一认知在十五年前发生的全球大火灾中变得决定性。那场灾难造成了全球一半人口的牺牲,据说 Burnish 的数量也比当时大幅减少。
それでも都心の大学に進む事に両親は反対した。 即便如此,父母仍然反对我去市中心的大学读书。
バーニッシュの多くは大きな都会で現れることが多く、息子がその被害にあう事を恐れた。
大多数的バーニッシュ多出现在大城市,他害怕儿子会成为受害者。
或いは、息子がバーニッシュになる事を。 或者,儿子会变成バーニッシュ。
どちらでも構わない。 无论哪种都无所谓。
クレイとしては家を出ることが出来ればそれだけで良かったのだ。
对クレイ来说,只要能离开家,那就足够了。
「お前も連れていけたら良かったんだけど」 「要是能带上你就好了」
腕に抱いた犬の頭に鼻を押し付けると、ガロはぴす、と鼻を鳴らして尻尾を大きく振って見せた。
加洛把鼻子贴在怀里抱着的狗头上,狗发出“嘶”的一声鼻音,摇着大尾巴示意。
もう彼も老犬と呼ばれる年齢になって随分と久しい。 他已经到了被称为老犬的年纪,已经很久了。
家を出れば、なかなかに戻って来る事は難しくなる。 一旦离开家,就很难再回来。
幼い頃から、常に自分の傍についてまわり、時にはいじめっ子を追い払い、こうして大人しく傍に寄り添ってくれるバディと過ごせる時間は限られている。
从小到大,总有一个伙伴紧紧跟随着自己,有时还会赶走欺负人的坏孩子,就这样安静地陪伴在身边,能和这样的伙伴共度的时光是有限的。
「君と離れると、寂しくなるよ」 “和你分开的话,我会感到寂寞的。”
そう言うと、ガロはクレイの腕に預けていた顎をあげて、じっとクレイの顔を覗き込んだ。
说完,盖罗抬起托在克雷手臂上的下巴,凝视着克雷的脸。
ガロの瞳の色は不思議な色をしていて居て、青い瞳に瞳孔の縁を彩るみたいな赤い縁取りがある。
加罗的眼睛颜色很奇特,蓝色的瞳孔边缘被一圈红色勾勒着。
子犬の頃、家に入れてやると廊下の上をよく滑って転び、それでも名前を呼ぶと懸命に掛けて来るものだから、クレイはそれが可愛らしくて何度も名前を呼んではすってんころりと転がるガロを抱えてやったものだ。今はすっかり廊下のつるつるした板の上でも問題なく歩く事が出来る。
小时候,刚带它进家门时,它经常在走廊上滑倒摔跤,但每当叫它名字时,它都会拼命地跑过来,克雷觉得那样非常可爱,于是一次又一次地叫它名字,抱起那个摔得东倒西歪的加罗。现在它已经能毫无问题地在光滑的走廊木板上行走了。
ちゃ、ちゃと廊下を歩く爪音を聞くのは心が躍るものだ。
听到它在走廊上“咔嗒咔嗒”地走路声,心里总是欢喜雀跃。
ぎゅっと抱きしめて、毛並みに鼻先を埋めると太陽の陽だまりの匂いがした。最近は老齢の為、殆ど動き回る事はなく、一日テラスの一番日当たりのいい場所で眠っている。
紧紧地抱住它,把鼻尖埋进它的毛发里,闻到了阳光洒落的味道。最近因为年老,几乎不怎么动弹,一整天都在阳台上最阳光充足的地方睡觉。
今日一日分の太陽を吸収した毛並を吸って居ると、ガロが嬉しそうにぱたぱたと尻尾を振り、クレイの頬にぐりぐりと頭突きをして見せる。
当我吸吮着吸收了整整一天阳光的毛发时,ガロ高兴地摇着尾巴,头顶顶地蹭了蹭クレイ的脸颊。
「バーニッシュって、本当に父さんが言う様な悪魔なんだろうか。僕は……」
“燃烧者,真的像父亲说的那样是恶魔吗?我……”
そう言ってクレイは草の上に大の字で転がる。 克雷这么说着,仰面躺在草地上。
満天の星空と、虫の声。ガロの呼吸音。 满天的星空,虫鸣声阵阵。加洛的呼吸声。
さらさらと秋の風が頬を撫でる。 秋风轻轻拂过脸颊,沙沙作响。
「宇宙からやって来たんじゃないか。だって、あの炎の色。まるで銀河みたいだ。あれは炎ではなく星の粉かもしれない。仲間を探す為に、炎を灯しているんじゃないか」
“难道不是从宇宙来的?看那火焰的颜色,就像银河一样。那或许不是火焰,而是星尘。它们点燃火焰,可能是在寻找同伴。”
大学進学の条件が、父の畑を継ぐ事でなければ、選考は農学部ではなく、宇宙工学を学んでみたかった。
如果上大学的条件不是继承父亲的农田,我本想选择宇宙工程专业,而不是农学部。
理学部系でも良い。 理学院系也可以。
うまく必修科目の予定を組み合わせれば、授業を受ける事は可能だが、研究やカリキュラムを受ける事は出来ない。
如果能巧妙地安排必修课的时间表,虽然可以上课,但无法参与研究和课程体系。
「クレイは、宇宙飛行士になりたいのか?」 “克雷,你想成为宇航员吗?”
「そんな大それたことは望まない。農学の研究だって楽しい。バーニッシュが現れてから、この十年どんどん気候も変動している。食物の安定供給は人類の永遠の課題だ。だから、ん?」
“我可不奢望那么伟大的事情。农学研究也很有趣。自从巴尼什出现后,这十年来气候变化越来越剧烈。食物的稳定供应是人类永恒的课题。所以,嗯?”
がばりと身体を起こすと、ガロが心配した様にクレイの傍に寄り添う。
他猛地坐起身,伽罗担心地凑到克雷身边。
今、自分は誰と話をしていた? 刚才,我到底在和谁说话?
背中にひやりとした汗が流れる。周囲を見回しても、トウモロコシがうっそうと生えているだけだ。外から自分の姿を隠してくれるトウモロコシも、逆に言えば近付く者を自分の目から隠してしまう。
背脊上流下一阵冰凉的汗水。环顾四周,只有茂密生长的玉米。玉米虽然能从外面遮挡自己的身影,但反过来说,也会把靠近的人从自己的视线中遮挡住。
けれども、傍にいるガロは何かに警戒する様子もない。
然而,身边的加洛似乎并没有对什么保持警戒。
「……冷えて来た。ミサも終わってる頃だ。帰ろうか」
“……天开始冷了。弥撒也差不多结束了。我们回去吧。”
ゆるりと立ち上がると、ガロが応える代わりに尻尾を振る。
缓缓站起身,代替加洛回应的是它摇动的尾巴。
畑の小道を歩いて居ると、家の向こう。 走在田间小路上,家就在对面。
町がある方向がいつもよりも明るく見える。 城镇的那个方向看起来比平时更明亮。
夜空が薄っすらと光を反射する。 夜空微微反射着光芒。
きゃらきゃらと硝子の破片を掻き混ぜた様な音と共に、頭の奥がじん、と痛んだ。
伴随着像是搅动玻璃碎片般叽叽喳喳的声音,脑海深处隐隐作痛。
「……ッ、なに?」 “……什、什么?”
ぐらりと視界が揺らぐ。ガロが吠える声がする。 视线忽然晃动起来。听到加洛的吠叫声。
「火事だ!」と遠くから叫ぶ人の声。 “着火了!”远处有人喊道。
自分の名前を呼ぶ母の声が聞こえて、クレイはそこで意識を手放した。
听到母亲呼唤自己名字的声音,克雷在那里失去了意识。
その日、町に現れたバーニッシュは町の広場にある遊園地の一角を焼き払うと、逃走の途中で警察による発砲で絶命した。
那天,出现在镇上的巴尼什烧毁了镇广场游乐园的一角,逃跑途中被警察开枪击毙。
被害者は、十七名。その内子供の被害は十一名。 受害者共有十七名,其中儿童受害者十一名。
怪我人を含めれば、もっと多い。 如果算上怪我人,数量会更多。
その日を境に、父の信望者は数を増やし、翌期の市長選で父は見事に市長に当選した。
从那天起,父亲的信徒数量不断增加,下一届市长选举中,父亲成功当选为市长。
「ガロが居なくなったの」 “加罗不见了。”
電話口で、母は震える声でそう言った。 电话那头,母亲颤抖着声音这么说。
いつか、そう言う日が来ると分かって居た。 我早就知道,总有一天会听到这句话。
クレイが大学に進学してから三ヶ月。 克雷进入大学已经三个月了。
この数週間、殆どクレイの部屋のベッドで眠って過ごして居ると聞いていたので、ある程度の覚悟はしていたつもりだったけれど、やはりその時が来たのだという事実はクレイを酷く動揺させた。
这几周几乎都听说他睡在克雷的房间床上,虽然我以为自己已经有了心理准备,但事实证明那个时刻真的来了,这让克雷非常震惊。
「テラスの軒下も、倉庫の干し草の中にも、畑の何処にも居ない。貴方と一緒によく出掛けていた森の渓流のあたりもね、マーゴットさんが見に行ってくれたんだけど。ごめんね」
“无论是露台的檐下,仓库里的干草堆,还是田地的任何地方,都找不到他。你经常和他一起去的森林溪流那边,Margot 小姐也去看过了。对不起。”
「謝らないで。母さんのせいじゃない。もしもガロが見つかったら、教えて。すぐに戻る」
“别道歉。这不是妈妈的错。如果找到了加洛,告诉我。我会马上回来。”
とは言ったものの、そんな日が来ることは二度とないだろうという確信がクレイにはあった。
尽管如此,克雷心里却确信,那样的日子再也不会来了。
クレイが済むアパートの住人の大半が学生で学校こそ様々であるが、電話とシャワーは共同で酷く安い家賃が魅力だった。電話はひとりあたり十分まで、という決まりをクレイはきちんと守って部屋に戻る。
克雷所住的公寓大多数住户都是学生,虽然学校各不相同,但电话和淋浴是共用的,极低的房租很有吸引力。电话每人限用十分钟,克雷严格遵守规定,回到了房间。
ガロの事はショックだが、覚悟はして居た事だ。 关于加洛的事虽然令人震惊,但他早已做好了心理准备。
それよりも、父がろくすぽ家に帰らずに反バーニッシュ運動とやらに熱狂してまともに家にも帰らないと言う母の不安な声が頭にこびりついて居た。
比起那个,母亲那担心的声音一直萦绕在脑海中,说父亲不怎么回家,沉迷于所谓的反 Burnish 运动,几乎不回家。
部屋に戻り、床に積み上げた本を避けながら、ベッドに倒れ込む。壁が薄く、他の部屋の話声や、音楽の音が聞こえる。
回到房间,避开堆在地板上的书本,倒在床上。墙壁很薄,能听到隔壁房间的谈话声和音乐声。
外からは、消防車のサイレン。 外面传来消防车的警笛声。
町に出てからと、このサイレンの音を聞かない日は無い。
自从出城后,几乎没有一天不听到这警笛声。
ニュースでは毎日、バーニッシュによる被害が流れる。
新闻每天都在报道由巴尼什造成的灾害。
大学のキャンパスでもボヤ騒ぎや人体発火現象が起きる。
大学校园内也发生了小火灾和人体自燃现象。
以前とは異なり、バーニッシュの炎には水ではなく凍結させる事で消火できる事が判明したらしいが、未だ、その凍結させる技術が思う様に進んで居ないらしい。
据说,与以前不同,巴尼什的火焰不能用水扑灭,而是通过冻结来熄灭,但冻结技术似乎还未达到理想的进展。
世界同時大炎上から姿を消したと言う、デウス・プロメス博士は科学技術のエキスパートと呼ばれ、バーニッシュの存在についてもいち早く提言した。極端な弾圧は、被害を深刻化させるだろうと言う博士の提言は、しかしまともに相手をされる事なく、迫害は加速の一途を辿ったその結果が世界同時大炎上である。
被传在全球大火灾后消失的 Deus Promes 博士,被称为科学技术专家,他也是最早提出巴尼什存在问题的人。博士曾建议,极端的镇压只会加剧灾害,但他的建议未被认真对待,迫害反而愈演愈烈,最终导致了全球大火灾的发生。
今も、彼の提言を支持し、当時彼が研究して居た対バーニッシュ火災への凍結剤の研究も博士と共に行方知れずになって居るらしい。
即使现在,支持他的提议,当时他与博士一起研究的针对燃烧症火灾的冷冻剂也似乎下落不明。
(ストレスが、人間をバーニッシュに変化させる? いや、そんな簡単な理由なら、既に誰かが研究を進めて居る筈だ。無差別で人体発火が起きて、人によってそれに適合するものと、そうでないものが存在する?)
(压力会让人变成燃烧症患者?不,如果理由这么简单,肯定早有人在研究了。人体无差别自燃,有些人适应这种现象,有些人则不适应?)
あぁでもない、こうでもないと思考する事はクレイにとっては楽しい事だ。そして、現実から目を背ける為にも必要な行為だった。
这样想那样想,对克雷来说是一件快乐的事。而且,这也是他逃避现实所必需的行为。
考えて居なければ、頭の中に小さな犬の姿浮かんで来る。
如果不去思考,脑海中就会浮现出一只小狗的身影。
目の奥が、じんと熱くなる。 眼眶深处,隐隐作热。
(もしも、なんらかのストレスが人間をバーニッシュに帰るなら、ガロが居てくれればすべて解決するのに)
(如果说,某种压力会让人类回归到巴尼什的怀抱,那只要有加洛在,一切问题都能迎刃而解。)
そんな風に思いながら、部屋の灯りを落して布団を引き寄せる。窓の外からは、サイレンの音が絶えず鳴り響いていた。
怀着那样的心情,我关掉了房间的灯,拉过被子。窗外,警报声不断响起。
「隣、良いか?」 “旁边,可以吗?”
ふと声を掛けられると同時に、返事を待たずに隣の席にどさりと鞄が置かれる。
话音刚落,旁边的座位上便重重地放下了一个包,连回应都没等。
クレイの席の定位置は教室の最後列の窓際だ。 克雷的固定座位是在教室最后一排靠窗的位置。
けれども、此処以外にも席は他にも開いている場所があると言うのに、と些か煩わしく思いながら顔を上げると、青いトサカ髪が目に入った。
然而,明明还有其他空位,心中有些烦躁地抬头时,映入眼帘的是一头蓝色的鸡冠头发。
よく日に焼けて健康的な肌と、整った顔立ち。 晒得黝黑健康的皮肤,五官端正。
何より此方を見下ろす彼の目に懐かしさを覚えた。 最让人怀念的是他俯视着这边的眼神。
「ガロ?」 “加罗?”
思わず漏れた声に、青い瞳と赤い虹彩がぱちぱちと瞬く。
不由自主地脱口而出,蓝色的眼睛和红色的虹膜闪烁着光芒。
「え? 俺達どこかで会ったっけ?」 “诶?我们在哪里见过吗?”
分からない事があると、こてんと首を傾げて見せる仕草迄、クレイのガロと瓜二つだ。
一旦遇到不明白的事情,他甚至会歪着头思考的样子,和克雷的加洛简直一模一样。
「いや……、すまない。友達にとてもよく似ていて。って、君もガロって言うのか」
“不……,抱歉。你长得很像我的朋友。话说,你也叫 Garo 吗?”
「あぁ、そうだぜ。ガロ・ティモス。社会防災学科だ」
“啊,是的。加洛·蒂莫斯。社会防灾学科。”
「クレイ……、フォーサイト。農業生産科学科だ」 “克雷……,福赛特。农业生产科学科。”
「知ってる」 「我知道」
「知ってる?」 「你知道吗?」
「いつもこの授業受けてるもん。アンタ、凄く目立つから」
「我一直上这门课。你真的很显眼」
そう言ってガロはどっかりとクレイの隣に腰を下ろした。
加洛这么说着,重重地坐到了克雷旁边。
「ええと、他にも空いている席があると思うけど」 “嗯,我觉得还有别的空位吧。”
「その台詞、そっくりそのままお返しするぜ。アンタいっつも此処の席座ってるけど、黒板、見えにくそうにしてるだろ。もう少し前に座らねぇの?」
“这句话,我原封不动地还给你。你总是坐在这里,但看黑板的时候不是很吃力吗?为什么不坐得再靠前一点呢?”
「……邪魔になるだろう」 「……会妨碍的吧」
「ハァ?」 「哈?」
「僕が前の方に座ると、後ろの人が見えなくなる」 「我坐在前面的话,后面的人就看不到了。」
「このガラガラの講義で? アンタが前に座っても、他の奴が他所座ってもお釣が来るぜ?」
「在这空荡荡的讲座里?你坐前面,别人坐别处,差不多一样吧?」
派手に驚いて見せるガロと「えへん」と咳ばらいをして教授が教卓に就くのは殆ど同時の事だった。
加洛夸张地表现出惊讶,教授则“咳咳”一声,几乎同时走上讲台。
ガロ・ティモスと言う男はそれからと言うもの、講義が一緒になる度にクレイの隣に陣取った。
从那以后,名叫加洛·蒂莫斯的男人每次上课都坐在克雷旁边。
三回目からは「折角だしもう少し前の席に座ろう」とクレイの荷物を抱えて前列に移動してしまう始末だ。
从第三次开始,他抱着克雷的行李,自己却搬到了前排座位,说什么“难得来了,就坐前面一点吧”。
実際、クラスの人数分しか席が無いジュニアハイスクール時と異なり、講義によって席に余裕がある時はクレイが前列に居ようと迷惑を掛ける事は無いらしい。
实际上,与初中时只有班级人数那么多座位不同,大学讲座有时座位充足,即使克雷坐在前排,也不会造成困扰。
後列でも問題なく講義を受けられるが、教授に距離が近いと、質問もしやすいし、充実度が上がるのも事実だ。
虽然坐在后排也能顺利听课,但离教授近,提问更方便,学习效果也确实更好。
「ありがとう。君のお陰で、授業が受けやすくなった」
“谢谢你。多亏了你,听课变得更轻松了。”
素直に謝意を述べると、ガロは目をまんまるにして 坦率地表达了谢意后,ガロ睁大了眼睛
「アンタが素直に礼を言うなんて!」 “你竟然会坦率地道谢!”
と驚嘆して見せる。その顔が、あんまりにもガロ(犬の方だ)とそっくりだから、クレイはなんだかんだでガロ(こちらは人間の方だ)を突き放すタイミングを掴めずに居た。
他露出惊讶的表情。那张脸和加洛(指的是那只狗)实在太像了,以至于克雷总觉得自己没能抓住机会彻底疏远加洛(指的是人类的那个)。
「クレイって、友達居ないの?」 「克雷,你没有朋友吗?」
「失礼だな、藪から棒に」 「真失礼,怎么突然冒出来这么一句话」
「藪から……棒が出てなんだって?」 「突然冒出来……冒出来什么了?」
「突然の行動や発言をそう言うんだ」 「突然的行为或发言就是这么说的」
「成程、草むから急に棒が出てきたらビビるもんな。でも、棒じゃなくても急に出てきたら驚かねぇ?」
“确实啊,如果草丛里突然冒出根棍子,谁都会吓一跳吧。不过,不管是不是棍子,突然冒出来的话不也会惊讶吗?”
「あーあー……やかましいな、君は」 “啊啊……你真吵。”
そう言って席を立ち、教室を後にすると、ガロは何も言わずさも当然とばかりにクレイの後を着いて来る。
说完这话站起身,离开教室后,Garo 什么也没说,理所当然地跟在 Clay 后面。
廊下を歩く靴音に混ざって、ちゃ、ちゃと爪の音が聞こえた気がした。
走廊上混杂着脚步声,我似乎听到了“咔、咔”的指甲声。
「君、次はB棟で授業だろ」 「你,下节课是在 B 栋吧」
「それがさ、今日は休講だっていうんで次の講義迄暇なんだ。クレイは?」
“那个啊,今天听说停课了,所以下一节课之前有空。克雷你呢?”
「……僕は此れから図書館に行く」 “……我接下来要去图书馆。”
「じゃあ一緒に行く」 “那我一起去。”
とまぁ、こんな感じだ。 大致就是这样。
クレイはいつも天気の日にはランチは食堂ではなくキャンパスにあるガーデンの一角にあるベンチで過ごすのだが、それもガロに見つかってからは事あるごとに、クレイの座るベンチの隣を陣取って居る。一見、騒がしい印象を受けるガロだが、クレイが講義の準備の為のレポートを作成したり、課題である本を読んでいる時は何をする訳でもなく大人しく座っているので、追い払う理由が浮かばない。
克雷总是在晴天的时候不去食堂吃午饭,而是在校园里花园的一角的长椅上度过,但自从被加罗发现后,每当有机会,加罗总是占据克雷坐的长椅旁边。乍一看,加罗给人一种吵闹的印象,但当克雷为了准备讲义写报告或阅读作业书籍时,加罗什么也不做,安静地坐着,因此也想不出赶走他的理由。
もっと言うならば、存外、ガロが傍に居る事は心地良さすら感じる。
更进一步说,意外地,格罗在身边甚至让人感到舒适。
あのテラスの一角で眠る、真っ黒で可愛い犬の姿を思い出すからかもしれない。
也许是因为想起了那只在露台一角睡觉的,漆黑可爱的狗的身影。
かと思えば、突然デリカシーの無い発言をぶつけて来たりする。
但有时,他又会突然说出毫无分寸的话。
話を戻そう。 话题回到正题。
ガロは先程の問いの答えを諦めるつもりはないようだ。
加洛似乎并不打算放弃刚才那个问题的答案。
「だって、クレイいつ見てもひとりで居るから、大学内に友達居ないのかなって。通う為にこっち出て来た感じ?そういう話ってした事なかったからさ」
“因为,不管什么时候看克雷,他总是一个人,所以我就在想,他在大学里没有朋友吗?是为了上学才搬到这边来的吗?我们从来没谈过这些事情。”
「そんな事を知ってどうする」 “知道了这些又能怎样?”
「どうもしねぇよ。話題のひとつだよ。ちなみに俺は生まれも育ちもこのサウスエリア。と言ってもここの区じゃなくて川を挟んだ向こうの島だけど」
“没什么特别的。只是话题之一而已。顺便说一句,我生在这南区,长在这南区。虽然不是这边的区,是隔着河的对岸那个岛上。”
サウスエリアと言えば、住宅街が並ぶエリアで、都心よりも少し古い建物も多い場所だ。
说到南区,那是一个住宅区,那里有许多比市中心稍微老旧的建筑。
クレイの通う大学は都市の中央に大きな公園があって南に商業施設や住宅地が並び、セントラルエリアを挟んだ東西にオフィス街や大学、美術館などが集まって居る。北は野球場のスタジアムなどの競技場が点在している。
克雷所在的大学位于城市中央,有一个大型公园,南边排列着商业设施和住宅区,中央区的东西两侧则聚集了写字楼、大学、美术馆等。北边散布着棒球场和其他体育场馆。
「僕が住んで居た場所は田舎で、小さな町と、役場とスーパーマーケットがふたつ。人の数より牛の数の方が多くて、町の殆どが畑だった」
“我住的地方是乡下,一个小镇,有一个镇政府和两个超市。牛的数量比人还多,镇上大部分都是农田。”
「成程、それで農学部なのか」 “原来如此,所以才选择了农学部啊。”
「そうだよ。四年勉強して、家に戻って一生トウモロコシを作るんだ」
“没错。学了四年,回家后一辈子种玉米。”
「へぇ、俺、トウモロコシ好きだぜ。齧ると歯に挟まるけど」
“嘿,我喜欢玉米。咬的时候会卡在牙缝里。”
「うちのトウモロコシの殆どは飼料用だけど」 「我们家的玉米大部分都是用作饲料的。」
「そうだったのか?それにしちゃ随分と美味かった」 「是这样吗?不过说实话,味道还挺不错的。」
「何?」
「いや、こっちの話。クレイはトウモロコシを作るのが嫌なのか?」
「没什么特别的。克雷,你是不喜欢种玉米吗?」
「嫌じゃないよ。必要な事だ」 “不讨厌。这是必须做的事。”
「じゃあさ、必要じゃ無かったら何がしたかった?」 “那,如果不需要做这件事的话,你想做什么呢?”
そう言われて、クレイは思わず立ち止まると、背中に衝撃が走る。ガロがクレイの背中に顔から突っ込んだのだ。
被这么一问,克雷不由得停下脚步,背后一阵震动。加洛从正面撞进了克雷的背部。
「わ、ぶ、急に止まるな」 “别、别突然停下。”
「……すまない」 “……抱歉。”
そう言ってガロの方を振り返ると、その向こうに遠くに人だかりが見えた。
说着回头望向加洛,远处隐约可见一群人群。
「エリス・アルデビッドだ」 「我是埃莉斯·阿尔德比德。」
ひそひそと、生徒たちが人だかりを見て話しだす。 学生们悄声议论着,围着人群窃窃私语。
「あぁ、あの飛び級の、天才少女?」 “啊,是那个跳级的天才少女吗?”
「どうしてこんな所に?」 “她怎么会来这种地方?”
「……教授が直々に声を掛けたらしいよ。彼女が来れば、自分の名前にも拍がつくって言うんでしょ」
“……好像是教授亲自邀请的。他说只要她来了,自己的名声也会跟着响亮起来。”
宇宙工学の教授や物理学の教授が顔をそろえて囲んで居る少女は華奢で、その姿は大人の上背に殆ど隠れてしまう程だ。
围绕着的宇宙工程教授和物理学教授们齐聚一堂,而那个少女身形纤细,几乎被成年人的身高完全遮掩。
けれども瞬間、見えた表情は酷く退屈そうなものだった。
然而,瞬间露出的表情却显得极为无聊。
エリス・アルデビッドの名前ならクレイも聞いた事がある。
克雷也听说过艾莉丝·阿尔德比德这个名字。
サイエンス誌に宇宙空間のハイパードライブ、所謂ワープ技術についての論文が掲載され彼女は一躍時の人だった。
她在《科学》杂志上发表了关于宇宙空间超驱动,也就是所谓的曲速技术的论文,一时间成为了众人瞩目的焦点。
彼女ほどの才女がもっと早く現れていれば、デウス・プロメス博士は姿をくらます事は無かったのではないか、なんていう者も居る位だ。
如果像她这样才华横溢的女子能更早出现,或许 Deus Promes 博士就不会消失无踪了,这样的说法也有人提起。
クレイも試験成績は良い方だ。 克雷的考试成绩也算不错。
町の中では少し話題になるくらいには。 在镇上,多少还算是个话题人物。
加えて、機械弄りも嫌いではなく、勉学の傍らで自分がいちから設計した耕運機を独学で作ったりしたものだ。
此外,他也不讨厌摆弄机械,学习之余还自学设计并制造了自己从零开始设计的耕耘机。
しかし、町一番の秀才であろうと、井の中の蛙大海を知らずである事は、他ならぬクレイが誰よりも理解して居た。
然而,即使是镇上最优秀的天才,井底之蛙不知大海之广,这一点,正是克雷比任何人都更清楚。
クレイにそれを突き付けたのが、三年前のサイエンス誌に論文を掲載したエリス・アルデビッドその人である。
三年前,在《Science》杂志上发表论文的正是艾丽丝·阿尔德维德本人,她将这一点摆在了克雷面前。
自分よりもずっと年下の、彼女の論文をクレイは何度も何度も読み直した。
比自己年轻许多的她,克雷反复反复地阅读她的论文。
そうして実感したのだ。 正是这样,他深刻地体会到了这一点。
自分は決して特別な存在にはなれない。 自己永远无法成为特别的存在。
田舎の片隅で、代り映えもしない飼料用のトウモロコシを作り、一生を終えるのだ。
在乡下的一个角落,种着毫无变化的饲料用玉米,度过一生。
「本当に、それで良いのか? アンタは他に何か、したい事があるんじゃないのか?」
“真的,就这样好吗?你难道没有什么别的想做的事吗?”
「したい事? ……そんな事」 “想做的事?……那种事”
考えた事も無かった、と言いかけてやめる。 差点说出“我从没想过”,又止住了。
本当に、考えた事も無かっただろうか。 真的,难道你从未想过吗。
黙りこくったクレイと、ガロの隣をエリスを取り巻く一団が通り過ぎている。
沉默不语的克雷,和加洛身边围绕着艾莉丝的一群人正走过。
「今は何もないかもしれないけど、これから見つかるかもしれないぜ」
“现在或许什么都没有,但以后说不定会找到的。”
くん、と左腕のシャツの袖を引いてガロが言う。 嘎,左臂的衬衫袖子被拉了一下,伽罗说道。
ざぁ、と風が吹いて頬を撫でる。 风呼啸而过,轻拂着脸颊。
自分は、この風を知って居る気がした。 我仿佛认识这阵风。
まるい太陽。 圆圆的太阳。
頭の奥に、ひらめきの様に何かが浮かんで、消える。 脑海深处,像灵光一闪般有什么东西浮现又消失。
ずくりと左肩が痛んだ気がして手を引くと、何故かガロの方が痛みを感じたみたいに目を細めて見せたが、それも一瞬の事で、すぐに、意思の強い光を湛えた瞳がクレイを捉えた。
左肩隐隐作痛,感觉一阵刺痛,手一缩回去,不知为何,Garo 却眯起眼睛,似乎感受到了痛楚,但那也只是瞬间,随即,他那双充满坚定光芒的眼睛锁定了 Clay。
「なぁ、一緒に探してみねぇ?」 “喂,要不要一起找找看?”
一体どうして、彼が自分に対してこんな風に親身になってくれているのか、クレイにはまるで理解出来なかった。
Clay 完全无法理解,为什么他会对自己如此关心,像这样真心实意。
まるで理解できないのに、こちらに差し出される手を、払いのける事も出来なかった。
明明完全无法理解,却也无法拒绝伸向自己的手。
クレイのしたい事を探す。 寻找克雷想做的事。
そう言われたものの、ガロは特別何か行動を起こす訳では無かった。今まで通り、一緒になった講義では隣に座り、ランチも、どこからかふらりと現れ隣を陣取る。
虽然是这么说,但加洛并没有特别采取什么行动。像以前一样,在一起上的讲座中坐在旁边,午餐时也会不知从哪里突然出现,占据旁边的位置。
強いて言うならば、講義が終わった帰り道に一緒に帰る様になった事だろうか。
如果非要说的话,大概就是讲座结束后开始一起回家的事吧。
「連絡先を交換しよう」 「交换联系方式吧」
とクレイが何か言うよりも早く携帯の番号を交換してからは、休日にも誘いが来るようになった。
比起克雷说出这句话,更快的是我们交换了手机号码,从那以后,连假日也会收到他的邀请。
それも絶妙な塩梅で、クレイのレポート課題の予定の邪魔にならない範疇だったせいで、クレイは断る機会を逃し続けていた。
而且时间安排得恰到好处,不会妨碍克雷完成报告作业的计划,因此克雷一直错过了拒绝的机会。
「どうせ他に遊んでくれる友達も居ないだろ」 「反正你也没有别的朋友陪你玩吧」
なんて酷い言われようだが事実なので仕方がない。 虽然被说得很过分,但事实就是如此,没办法。
家とキャンパスの往復しかない生活県内が、ガロのお陰で格段に広がった。
原本只是在家和校园之间往返的生活,因为有了加洛,视野大大开阔了。
何をする訳でもなく街を散歩したり、目についたカフェに入って食事をしたり。ガロはバイクを持って居たので、郊外に出て星を見に行く事もあった。
没什么特别的事情做,就在街上散步,或者走进看到的咖啡馆吃饭。加洛有摩托车,有时还会开车到郊外去看星星。
ガロは星に造詣は深くないらしいが、それでもクレイの説明を面倒がる素振りはひとつもせず、耳を傾けて見せた。
加洛似乎对星星并不特别了解,但即便如此,他一点也没有表现出对克雷的讲解感到厌烦,反而认真地倾听着。
クレイが図書館に行きたいと言えばガロは嫌な顔一つもせずに、むしろ楽しそうな顔をして「一緒に行きたい」と付き添い、クレイが勉強している間は自分の興味のある文献や映像を探している。
克雷说想去图书馆时,加洛一点也不嫌弃,反而露出一副兴奋的表情,说着“我也想一起去”,陪同前往。克雷学习的时候,他则寻找自己感兴趣的文献和影像资料。
快活だが些か乱雑な印象を与えるガロだが、共に過ごす内に勤勉な一面がある事も知った。
虽然 Garo 给人一种快活但有些杂乱的印象,但在一起相处的过程中,我也了解到他有勤奋的一面。
「クレイが居なきゃ、留年してたかも」 「要是没有克雷,我可能就得留级了。」
なんて言うが、共に居れば彼の地頭が良い事も分かるし、勉強は得意ではないようだが、得意なやり方を覚えれば飲み込みが早い。何より素直さが彼の美徳で、ぶっきらぼうなクレイにも懲りずに教えを乞うて見せる。
虽然这么说,但和他在一起的话,也能明白他头脑很灵活,虽然学习似乎不太擅长,但一旦掌握了擅长的方法,吸收得很快。最重要的是,他的诚实是他的美德,即使面对粗鲁的克雷,也不厌其烦地请教。
「ガロは、レスキュー隊員志望なのか」 “加洛,你是想成为救援队员吗?”
「あぁ。俺はバーニングレスキューに入りたいんだ」 “啊。我想加入燃烧救援队。”
「バーニングレスキュー? 聞いた事が無いが、名称から言ってバーニッシュ火災に特化部隊だろうか」
“燃烧救援队?没听说过,不过从名字来看,应该是专门对付巴尼什火灾的部队吧?”
「エッ? あ~、そうそう。そう言う感じ」 “诶?啊,是啊,是那种感觉。”
「へぇ。確かに、此処に来てから火災のニュースを見ない日は無い。バーニッシュによる火災の炎に凍結が有用だと言ううが、中々その技術も思う様に発展しないと聞いている。君がいつかレスキュー隊員になる頃には、設備が整って居ると良いな」
“嗯。确实,自从来到这里后,几乎每天都有火灾新闻。据说冻结技术对巴尼什引发的火灾很有效,但听说这项技术的发展一直不太顺利。希望等你什么时候成为救援队员时,设备已经完善了。”
レスキュー隊員の職務は今やもっとも死亡率の高い職と言っても良いだろう。其れは、バーニッシュが現れて銃根に情の月日が経過しても未だ人類が彼等に対抗できる処置を見出せていない事にある。
救援队员的职业如今可以说是死亡率最高的职业之一。这是因为,自从巴尼什出现并与枪械交锋以来,尽管时间流逝,人类仍未找到有效的对抗方法。
世界同時大炎上でバーニッシュの数は減ったと言われるが、それはそうだ。
据说在全球同时大火中,巴尼什的数量有所减少,这倒是真的。
何しろ人類の半数が犠牲になったのだから、おのずとバーニッシュの数も減る。
毕竟人类有一半牺牲了,巴尼什的数量自然也会减少。
「ガロは、どうしてレスキュー隊員になりたいんだ」 “加罗,你为什么想成为救援队员?”
図書館の帰り道に立ち寄ったハンバーガーショップで、クレイはおもむろに切り出した。
在图书馆回家的路上,克雷在一家汉堡店里突然开口说道。
クレイからガロの事を知りたがるのは初めての事だったから、ガロは少しだけ面食らった様な顔をして見せたが、嫌な顔ひとつせずに
这是克雷第一次主动想了解加洛的事情,加洛露出有些惊讶的表情,但一点也不讨厌地说:
「子供の頃、バーニッシュ火災で家族が死んで」 “小时候,家人在巴尼什火灾中丧生了。”
とまるで天気の話でもするみたいに軽やかに言って見せた。
他说得轻松得仿佛在谈论天气一样。
「えっ……」 “诶……”
思いがけない言葉に今度はクレイが驚く方だ。 意想不到的话语,这次反而是克雷感到惊讶。
「すまない……。配慮がなかったな」 “抱歉……我考虑不周。”
「なんで。話してないんだから、分からなくて当然だ。それに、アンタには話しても良いと思った。クレイはさ、どうやってバーニッシュが生まれるか知ってるか」
“没关系。毕竟没说过,自然不懂。而且,我觉得可以告诉你。克雷,你知道巴尼什是怎么诞生的吗?”
「いや……、突然変異と言われているがその原因迄は。ガロは知って居るのか?」
“不……虽然说是突变,但其原因到底是什么。加洛知道吗?”
「俺も詳しくは知らない。ただ、バーニッシュの誰もが望んでそうなった訳じゃないって事は確かだ。俺の家を焼いたのも、突然バーニッシュの力が発現して力が制御できないまま炎を噴出させた。その先がたまたま、俺の家だった」
“我也不太清楚。不过,可以确定的是,并不是所有巴尼什人都希望变成那样。烧掉我家的,也是突然间巴尼什的力量觉醒了,无法控制,喷出了火焰。恰巧那火焰烧到了我家。”
運が悪い事に、と何でもない事の様にガロは言って見せたが、その火事で大切な家族を失い、傷付いた事は想像に容易い。
加洛若无其事地说着“运气真差”,但那场火灾中失去了重要的家人,受到的伤害不难想象。
「ご両親は」 「你的父母呢?」
「正直、よく覚えてないんだ。薄情なもんだろ。でも、母さんが走って玄関に向かえって言ってくれた事は覚えてる。炎の中、俺は無我夢中で玄関に向かって走った。つまずいて転びそうになった時に、俺の事を受け止めてくれた人が居た。その人が、俺の恩人」
“说实话,我记不太清了。真是薄情吧。但我记得妈妈叫我快跑向玄关。火焰中,我拼命地朝玄关跑去。快要绊倒摔倒的时候,有个人接住了我。那个人,就是我的恩人。”
そこまで一息に言うと、ガロはコーラを啜る。 说完这话,Garo 喝了一口可乐。
「恩人」
「うん、そう。その人はそうは思ってないみたいだけど、俺はそう思ってる」
「嗯,是的。虽然那个人好像不这么认为,但我就是这么觉得。」
ガロはそう言って、真っ直ぐにクレイを見詰めると、何か懐かしいものを見詰めるみたいに目を細めた。
加罗这么说着,直直地盯着克雷,眼睛微微眯起,仿佛在凝视着什么怀念的东西。
「ふふ……」 “呵呵……”
「何がおかしいんだ」 “什么好笑的?”
「いや……、その人、クレイにそっくりだから。だから、声を掛けたのかも」
“不……那个人长得太像克雷了。所以,可能才会跟他说话吧。”
そう言われて、クレイは何故か少しだけ心が苦しくなるのを感じた。お前が特別だから、声を掛けたんじゃない。
被这么一说,克雷不知为何感到心里微微一阵痛。并不是因为你特别,才跟你说话的。
自分を助けてくれた恩人に似ていたから、声を掛けたのだ。
因为他长得像曾经帮助过我的恩人,所以我才跟他说话。
なぁんだ、と言うガッカリした気持ちに驚いた。 “原来如此”,对那种失望的心情感到惊讶。
こうして学校帰りに誰かとハンバーガーを食べるのだってクレイにとっては初めての経験で、だからこれは嫉妬だ。
就这样,放学回家的路上和别人一起吃汉堡,对克雷来说也是第一次经历,所以这就是嫉妒。
分不相応だと思った。 我觉得这不合适。
初めてできた「友達」と思っていたのは自分だけなのかもしれない。
或许只有我一个人把他当成了“朋友”。
「クレイ?」 “克雷?”
「いや……何でもない。それで、火事を起こした犯人は?」
“不……没什么。那么,纵火的犯人是谁?”
「ン~、一応逮捕されて、今は禁固刑みたいなもん」 “嗯~,他已经被逮捕了,现在好像在服刑禁闭。”
「そ……そうなのか」 「是……是这样吗」
ならばよかった、と言うべきなのか。 那么说“那就好了”才对吗。
「まぁ、それも最近の事なんだけど」 「嘛,那也是最近的事了」
てっきり火事を起こした犯人を捕まえるために、と言った理由かと思ったがそうではないらしい。
我本以为他说是为了抓住放火犯,结果好像并不是那样。
「じゃあ、ご両親が亡くなられた後はどうやって」 “那你父母去世后是怎么生活的呢?”
「その恩人の人に面倒見て貰ったんだ。その人、俺を助ける時に左腕を怪我しちまってさ。母さんと父さんが死んで悲しいってのはあったんだけど、施設で暮らしながらも、その助けてくれた恩人の人も俺に会いに来てくれたり、面倒見てくれて、学校に行く援助もしてくれてかなり助けてくれたんだ。その人が居なかったら、今の俺は居ないって思ってる。だから、恩返しがしたくて」
“是那个恩人照顾我的。那个人在救我的时候左臂受了伤。虽然父母去世让我很难过,但即使在孤儿院生活,那个救我的恩人也会来看我,照顾我,还帮我上学,帮了我很多忙。如果没有他,我现在就不会有今天。所以,我想报答他。”
「ガロはそう言うけれど、他に何かやりたい事はないのか。君は僕に言ったじゃないか。親の家業を継ぐだけではなく、他に何か、したい事はないのか」
“加罗你是这么说的,但你没有别的想做的事吗?你不是对我说过吗,不只是继承父母的家业,还有别的什么想做的吗?”
「無い」 「没有」
そう言い切るガロの目は、揺らぐことなく真っ直ぐにクレイを見据えている。
加罗那坚定的话语中,他的目光毫不动摇,直直地盯着克雷。
「……クレイ、心配してくれてありがとうな。でも大丈夫。俺は、この道を選んで後悔したりはしない。そのお陰で、信頼できる仲間にも出会えたし、大切な友達を助けることも出来たし。地球を救う事も」
“……克雷,谢谢你的关心。不过没关系。我选择了这条路,绝不会后悔。正因为如此,我遇到了值得信赖的伙伴,也救了重要的朋友。还拯救了地球。”
「地球を? それは大きく出たな……」 “拯救地球?这话说得可真大……”
ぶは、と噴き出したクレイにガロは分かりやすくむくれた顔をして
克雷忍不住笑出声,伽罗则明显地板起了脸。
「今のアンタは知らないかもしれないけど、俺は地球も、ダチも、アンタも救うんだからな」
「你现在可能不明白,但我会拯救地球、兄弟,还有你。」
と真剣な顔をして言って見せる。 他认真地说着。
「すまない……。君の夢を笑った訳じゃない。ただ、まさか地球規模の話になるとは思わなくて……。でも、君なら出来るかもしれないな、ガロ」
“抱歉……我并不是在嘲笑你的梦想。只是没想到会变成地球规模的事情……不过,也许你真的能做到,Garo。”
久々に笑ったせいで滲んだ涙を拭いながらそう言うと、ガロは「本当に、そう思うか」と疑心暗鬼な目で睨みつけて来る。
久违地笑出声后,擦去模糊的泪水,他这样说道,Garo 用怀疑的眼神盯着他。
「ああ……。きっと君は、世界も、友達も救うだろう」
“嗯……我相信你一定能拯救世界,也能拯救朋友。”
「おい、クレイ。忘れて貰っちゃ困る。俺は、アンタの事も、何があっても助けて見せるんだぞ」
“喂,克雷。别忘了这点。我无论发生什么,都会救你一命的。”
そう言ってガロは握り拳を作ってクレイの左胸を叩いて見せた。
加洛说着握紧拳头,拍了拍克雷的左胸膛。
それからも日常はつつがなく過ぎて行く。 之后,日常依旧平稳地流逝着。
キャンパスライフは充実して居たし、それ以外もガロという友人が居る事で子供の頃とは比べ物にならない程に楽しかった。けれども同時に、楽しく思えば思う程に、ガロにとって自分は数多く居る友人の内の一人であり、彼には他にも大切な友や仲間や、恩義を抱く者が居るのだと思うと胸が痛んだ。
校园生活充实而美好,除此之外,有了加洛这个朋友,生活比起小时候快乐了许多。然而,越是觉得快乐,心中越是隐隐作痛——因为在加洛眼中,自己不过是众多朋友中的一个,他还有其他重要的朋友、伙伴,以及怀有恩情的人。
そんな風に思う資格など、ありやしないのに。 明明根本没有资格那样想。
サイレンの音が聞こえない夜は、ガロの事を思い出した。
在听不到警报声的夜晚,我会想起加洛。
黒い毛並みに青い瞳。ぴんと立った耳。抱き締めると陽だまりの匂いがする。
黑色的毛发配上蓝色的眼睛。竖起的耳朵。抱紧时带着阳光的味道。
彼は無事に見つかっただろうか。せめて、骨だけでも見つかってくれれば、埋葬してやれる。
他到底安然无恙地被找到了吗?哪怕只找到骨头,也能好好安葬他。
畑の一角に、花を植えても良い。彼は収穫したばかりのトウモロコシを分けて貰うのが大好きで、よくクレイに強請って見せたのだ。
可以在田地的一角种些花。他最喜欢分到刚收获的玉米,经常向克雷撒娇要。
母は日ごとに焦燥した声で父が家に帰ってこないと嘆いて見せた。
母亲每天都用焦急的声音哀叹父亲迟迟不归。
私設警団まで作り、バーニッシュと疑わしい人を捕まえているらしい。
据说他们甚至组建了私设警团,抓捕那些被怀疑与巴尼什有关的人。
夏季休暇は結局、家に戻る事はしなかった。 暑假最终还是没有回家。
母との電話を切る度に、頭の中できゃらきゃらと硝子の欠片を擦り合わせるような声が聞こえる気がした。
每次和母亲通完电话后,脑海中总觉得有玻璃碎片摩擦的声音在叽叽喳喳地响着。
左肩が焼ける様に熱く、じくじくと内側から破裂しそうな疼きに苦しんだ。
左肩像被火烧一样炙热,内里隐隐作痛,仿佛要从里面爆裂开来,令人难受。
(駄目だ。こんな事は間違っている) (不行。这种事是错误的。)
何が。 怎么了。
どうして。 为什么。
「顔色、悪ィのな」 “脸色真差啊。”
クレイの部屋にやって来たガロはクレイの顔を見るなりそう言った。
加洛来到克雷的房间,一看到克雷的脸就这么说。
「講義にも顔出してないって言うからひょっとしてって思ってさ。教務課に聞いて来ちまった」
「你说连讲义都没去,我就想会不会是这样。于是我去教务处打听了一下。」
良かったら、と差し出されたサンドイッチに一瞥をくれて、しかしクレイはガロを置いて部屋の奥に戻っていく。
他递过来的三明治我看了一眼,但克雷还是把加洛丢在一边,回到了房间深处。
「う…、わッと。アンタ、部屋散らかし過ぎ。これじゃ何が何処にあるか……、分かってんだろうけどさ」
「呃……哇。你把房间弄得太乱了。这样下去东西都不知道放哪儿了……不过你应该知道吧」
なんて言いながら、ガロが後をついてきているのが分かったが、クレイは気にせずベッドに横になる。
一边这么说着,克雷注意到加罗跟在后面,但他毫不在意,径直躺到了床上。
「調子、悪ィの」 「状态不太好」
「ここ数日は……」 「这几天……」
「病院は?」 「医院呢?」
「説明が難しい。頭の中で声がして……そうすると決まって痛む」
「很难解释。脑子里有声音……一旦那样,头就会痛」
そう言って自身の左腕を握って見せると、ガロは酷く神妙な顔をして見せた。
说着,他握住自己的左臂示意,ガロ露出非常严肃的表情。
「父さん……が、」 「爸爸……」
「父ちゃん?クレイの?」 「爸爸?是克雷的爸爸吗?」
「物心がついた頃から、父はバーニッシュに対し排他的な思想を持って居た。彼等は排除されるべき存在だと。僕は……、僕には父がどうしてそんな風に思うのか分からなかった。狂信的に、そうして何かを憎悪し、罰する気持ちが。恐ろしくて、だから僕はあの町を出た。けれど不思議と離れれば離れる程に、あの思想は間違いなく僕の中にも根付いている気がしてならないんだ」
「从我有记忆起,父亲就对巴尼什抱有排斥的思想。他们是应该被排除的存在。我……我不明白父亲为什么会那样想。那种狂热的、憎恨并想惩罚某些事物的心情。那让我感到害怕,所以我离开了那个镇子。但奇怪的是,越是远离,我越觉得那种思想无疑已经在我心中扎根了。」
「そんな事ない。クレイは父さんとは違うだろ。同じようには、ならない」
「不会的。克雷和爸爸不一样。不会变成一样的。」
「僕は昔、バーニッシュは人間ではなく宇宙からやって来た生命体なんじゃ無いかって、そう思ってた」
「我以前一直觉得,バーニッシュ不是人类,而是来自宇宙的生命体。」
「ワオ。それって割と正解かもしれないぜ」 「哇哦。那或许相当接近真相呢。」
「君は僕を肯定するのがとてもうまい。でもそんな事は言わなくて良い。此処に来て毎日サイレンの音を聞く。キャンパスでは月に何度もボヤ騒ぎやバーニッシュによる傷害事件が発生している。心が休まる時が無い。かつて、デウス・プロメス博士は過度な弾圧は大炎上を引き落とすと警鐘を鳴らした。殆どの人はまともに取り合わなかったけれど、彼の仮説を前提に考えると、あの炎は一定のストレス値に到達するとより強力になると言う事だ。と言う事は炎の発現も、間違いなく其処に起因している筈なんだ」
「你很会肯定我。但你不必这么说。来到这里后,每天都能听到警报声。校园里每个月都会发生几次火灾警报和バーニッシュ引发的伤害事件。心里从未有过安宁。曾经,デウス・プロメス博士警告过,过度的压制会引发大火灾。大多数人并未认真对待,但如果以他的假设为前提思考,那火焰在达到一定压力值后会变得更加强烈。也就是说,火焰的出现无疑是由此引起的。」
「クレイ。今日はもう考えるのやめて眠った方が良い」
「クレイ,今天别再想了,还是睡觉比较好。」
「いや、ガロ。僕はやりたい事を見つけた。バーニッシュの発現の起因の解明だ。人の感情によってあの炎が生まれるなら、あの七色の輝きは人間の……自己の身勝手で引き起こされている」
“不,ガロ。我找到了我想做的事。那就是揭开バーニッシュ现象的起因。如果那火焰是由人的情感产生的,那么那七彩的光辉就是人类……自私自利所引发的。”
「そうとは限らないだろう。ストレスがトリガーになるとしても、それは人によって様々な要因があるはずだ」
「情况未必如此。即使压力是诱因,也应该因人而异,有各种不同的因素。」
「君はとても優しい。そう言う風に考えられるのは美徳だと思う。けれども僕はそんな風には考えられない。もしも発火現象の起因が感情によるものだとすれば、それを制御せず炎を使い続ける彼等は、獣に等しいと僕は思う」
“你真是太温柔了。能这样想是一种美德。但我无法那样想。如果发火现象的起因真的是情感,那么那些不加控制地使用火焰的人,我认为他们和野兽无异。”
人間なんかじゃない。 他们根本不是人类。
「……俺は、そんな風には思わない。身勝手な奴も沢山居るけど、良い奴だって居る。俺も昔はバーニッシュに対して良い感情は抱いて居なかった。人や、大切なものを灰にする一方で人間じみた振る舞いをする事に腹が立つ事もあった。ああそうだ。奴らは人間なんかじゃないって俺もそう思ってた。でもそうじゃないって、今は思う」
「……我可不这么认为。虽然有很多自私的人,但也有好人。我以前对バーニッシュ也没有好感。看到他们把人和重要的东西化为灰烬,却又表现得像人类一样,我也曾感到愤怒。没错,我也曾认为他们根本不是人类。但现在,我不这么想了。」
「君は、バーニッシュの味方をするのか」 「你是要站在バーニッシュ那边吗?」
きゃら、とクレイの頭の中で声がした。 咔啦,克雷脑海中响起了声音。
どうしてガロがバーニッシュに温情を与えるのか理解できなかった。まるで父親と同じような思考に、そら見た事かと内側から沸き上がる様な声がした。
我无法理解为什么加洛会对燃烧者心存怜悯。那声音仿佛是父亲的思维一般,从内心深处涌现出来,仿佛在说“早就料到会这样”。
「ガロ。今夜はもう帰った方が良い。そして、二度と此処には来ない方が良い」
「加洛。今晚你最好回去,而且最好永远不要再来这里。」
「クレイ……」 “克雷……”
「君と過ごした時間はとても楽しかった。その気持ちに嘘偽りはない。感謝している。けれども僕達はこれ以上、関わるべきじゃない」
“和你共度的时光非常愉快。对此我毫无虚假,心存感激。但我们不应该再有更多的牵扯了。”
「なんで、そんな事言うんだ」 “你为什么要说那种话?”
「わかるんだよ!」 “我知道的!”
クレイの声に、隣の部屋から壁を打つ音が聞こえる。 随着克雷的声音,从隔壁房间传来敲打墙壁的声音。
びくりと身体を震わせて硬直するガロの腕を引き、扉へ向かう。積み上げた本が崩れるが気にせず進む。
我拉着吓得浑身颤抖、僵硬的加洛的手臂,朝门口走去。堆积的书本倒塌了,但我毫不在意,继续前进。
「クレイ、ごめん。俺が間違えた」 “克雷,对不起。是我错了。”
「何を間違う事があるんだ。君はいつだって正しい」 “有什么错呢?你永远都是对的。”
正しすぎて、嫌になる。 太正确了,让人厌烦。
醜悪な自分を照らすまるい太陽の光が美しく、疎ましい。
照耀着丑陋自我的圆太阳光既美丽又令人厌恶。
「そうじゃない。俺が、アンタと居たいと思ったから……。アンタと色んなところに行けて楽しかったんだ。可愛げのない事も言うけど、親切で、優しくて、人の役に立つのが好きで、アンタの隣はずっと居心地が良かった。ずっと見て来たから分かる。一人で過ごすのが好きでも、俺の事はずっと傍に置いてくれたな。嫌な事もいっぱいあっただろう。俺はガキだから……。疎まれても仕方がないって思ったけれど、それでもアンタのすべてが嘘じゃないって一緒に居ればわかる」
「不是那样的。是因为我想和你在一起……和你去过很多地方,很开心。虽然有时候会说些不讨喜的话,但你善良、温柔,喜欢帮助别人,待在你身边一直很舒服。我一直在看着你,所以知道。即使你喜欢一个人独处,也一直把我放在身边。肯定也有很多不愉快的事吧。我毕竟是个孩子……我以为被讨厌也是理所当然的,但即便如此,只要和你在一起,就能明白你的一切都不假。」
「なに……何の話をしている」 “什……你在说什么?”
頭が混乱する。 头脑一片混乱。
ガロは紛れもなく、目の前にいるクレイに対して話をしている筈なのに、まるで他人の話をされているような気がした。
加罗无疑是在对眼前的克雷说话,但却感觉像是在谈论别人一样。
「君には、他にも大事な人が大勢いる。その人たちを大切にしろ」
“你还有很多重要的人。要珍惜他们。”
そう言ってなんとか部屋の外にガロの身体を押しだすが、ガロは全身で抗う様にしてクレイが扉を閉めない部屋に押し入ろうとする。
说着,勉强把加洛的身体推到房间外,但加洛全身抗拒,试图闯进克雷没有关上的门的房间。
「流石レスキュー隊員。びくともしないな」 “不愧是救援队员,一点也不动摇呢。”
「アンタが強情だから、鍛え甲斐があるってもんだ……。アンタに言われなくても、俺は仲間が大事だし、リオの事だって支えて行く。でも、そこからアンタを排除するつもりは微塵も無い。アンタが自分を大切にしないから、俺がその分アンタを大事にするって決めたんだ。観念しろ!」
“因为你这么倔强,才更值得我去锻炼……就算你不说,我也知道伙伴很重要,我也会支持里奥的。但我一点也不打算把你排除在外。正因为你不珍惜自己,我才决定多珍惜你。认命吧!”
「えぇい、喧しい」 “哎呀,真吵。”
押して駄目なら引いてみろ。 推不动就试着拉。
扉を押す力を抜くと、ガロが扉ごとつんのめるので、擦れ違いざまに部屋の外に出ると、そのままマンションを後にする。
松开推门的力气,结果加洛连同门一起扑了过去,趁着擦肩而过时走出房间,随后就离开了公寓。
後から何かを喚きながらガロが追い掛けて来る気配がするが知った事ではない。
感觉后面有加洛一边喊叫着一边追过来的气息,但那与我无关。
夜の街を掛ける。 奔跑在夜晚的街道上。
今夜も相も変わらずサイレンが鳴って居る。 今晚依旧是那熟悉的警报声响起。
人々の平穏な暮らしを自分の感情を制御できず害する化物。
那是无法控制自己情绪,扰乱人们安宁生活的怪物。
悪魔め!と頭の中で声が響く。 恶魔啊!声音在脑海中回响。
「違う。僕は、そんな風にはならない!」 “不,我不会变成那样的!”
きゃらきゃらと頭の中で声が響く。硝子を擦り合わせる様なこの音が、笑い声だと分かった瞬間に、もう駄目だと思った。
脑海中响起叽叽喳喳的声音。那声音像玻璃摩擦的声音,当我意识到那是笑声的瞬间,我就知道不行了。
「ガロ!」 “加罗!”
君と離れてから、僕はどんどん駄目になっていく。 自从和你分开后,我变得越来越糟糕。
「ガロ・ティモス」 “加罗·蒂莫斯”
君と出会ってから、私はどんどん駄目になっていく。 自从遇见你后,我变得越来越糟糕。
左腕が、溶け落ちそうな程に熱かった。 左腕烫得仿佛要融化一般。
気付けばサウスエリアの居住区に足を向けていた。 不知不觉中,脚步已经朝着南区的居民区走去。
「クレイ……! クレイ、止まれ。頼むから、一緒に帰ろう」
“克雷……!克雷,停下。拜托了,一起回家吧。”
ガロは一定の距離を保ちながらも、ぴったりと追い掛けて来る。流石の体力馬鹿である。インドアの自分とは大違いだ。
加洛保持着一定距离,却紧紧地跟了上来。果然是体力怪物,和我这个宅男完全不同。
覚えのない記憶が頭の中を巡る。 脑海中浮现出一段陌生的记忆。
丸い太陽の光を、クレイは初めて目にした。文献や資料で知っては居たが、実物を見るのは初めてだった。
克雷第一次看到了圆圆的太阳光。虽然在文献和资料中有所了解,但这是他第一次亲眼见到。
バーニッシュ、もといプロメアが地球の中心の核に繋がった時から、この世界の太陽は四角だったから。
自从バーニッシュ,也就是プロメア,与地球中心的核心相连,这个世界的太阳就是方形的。
だからあの日、世界は終わって、始まったのだ。 所以那一天,世界终结了,又重新开始了。
そこに自分の居場所は無いと、クレイはずっと思っていた。
克雷一直认为那里没有属于自己的立足之地。
朝の光の中、拳を交わす自分の計画を台無しにした子供達を見詰めながらクレイは思ったのだ。
在晨光中,克雷凝视着那些打乱了自己计划的孩子们,心中想着。
ああ、これでようやく終わる事が出来るのだと。 啊,终于可以结束了。
「なんだ……、僕は。私は、クソッ」 “这到底是……我。我,真该死。”
「クレイ……!」 “克雷……!”
ずきずきと痛む頭を抱えていよいよ立っていられなくなるクレイにガロが駆け寄る。
抱着隐隐作痛的头,终于站不稳的克雷,伽罗跑了过来。
「捕まえた」とガロがクレイの身体を抱き締めるのと、何かが爆発する様な音がしたのは殆ど同時の事だった。
“抓住了。”伽罗紧紧抱住克雷的身体,几乎同时传来一声爆炸般的响声。
二人で揃って顔を上げると、1ブロック先のアパートメントから七色の炎が噴き出すのが見えた。
两人一起抬头望去,只见一条街区外的公寓里喷出七彩的火焰。
「……いけない。ガロ、消防隊を」 “……不行了。伽罗,叫消防队。”
クレイが這う這うの体でそれだけ言うのと同時に 克雷一边爬行着,一边说出那句话的同时,
「たすけて!」 「救命!」
と声が聞こえる。 传来了声音。
子供の、声だ。 是孩子的声音。
クレイの全身から血の気が引く。 克雷全身的血色顿时褪去。
なのに、全身炎に炙られた様に熱い。 然而,浑身却像被火焰炙烤般炽热。
左腕の感覚は最早無きに等しいものだった。 左臂几乎已经失去了所有感觉。
反射的に駆け出しそうになるクレイの身体を何かが引き留める。
克雷本能地想要冲出去,身体却被什么东西拉住了。
左腕を掴んだ、ガロだった。 抓住了左腕的是加罗。
「行かなくて、良い」 “不用去了。”
「けれどガロ、子供が」 “可是加罗,孩子们——”
レスキュー隊員を目指す彼にあるまじき発言に我が耳を疑うが、ガロは小さく首を横に振る。
我怀疑自己听错了,这种话对立志成为救援队员的他来说实在不该说出口,但加罗轻轻摇了摇头。
「行くな。俺と一緒に、帰ろう」 “别走。和我一起回去吧。”
迷子の子供のみたいに、頼りない声でガロは言う。 加洛用像迷路孩子般无助的声音说道。
「だってもう、助からない」 “可是已经没救了。”
「……お前らしくない事を言うじゃ無いか。ガロ・ティモス。今ならまだ、間に合うかもしれない」
“……你可不像你自己说的话啊,加洛·蒂莫斯。现在或许还来得及。”
「アンタが行かなくても、大丈夫なんだ。俺は、ひとりでも」
「就算你不去,也没关系的。我一个人也能行。」
クレイを、英雄にはしたくないんだ。 我不想让克雷成为英雄。
かちり、と頭の中でパズルのピースがあう気がした。 脑海中,拼图碎片啪嗒一声拼合在一起的感觉。
「私は、英雄にはなれない。それはお前が誰よりもよく知っている筈だ」
「我不能成为英雄。这一点,你应该比任何人都清楚。」
「そんな事ない。アンタが何と言おうと、世間にどう思われようと、少なくとも俺はあの時アンタに救われた。アンタは俺の英雄だよ、クレイ。でも、それがアンタを追い詰める事になった」
「不是那样的。不管你怎么说,不管世人怎么想,至少那时我是被你救过的。你是我的英雄,克雷。但正因为如此,才把你逼到了绝境。」
「そうだな。そうなのかもしれない」 「是啊。也许确实如此。」
「たすけて!」 「救命!」
炎の中から声がする。 火焰中传来了声音。
子供の、声の様で、自分の声のような気もする。 像是孩子的声音,也感觉像是自己的声音。
「しかし、それでも。助けなければと思った。結局、お前は自分の力であの炎から逃げ出して見せた。恐怖に直面しても、バーニッシュに覚醒する事無く、腐る事なく成長した。僕には何もできなかったけれど……。君が生きていてよかったと、心から思ったのは本心だ。だから、ガロ。力を貸してくれないか」
「但是,即便如此。我还是觉得必须得救你。结果,你用自己的力量逃离了那团火焰。即使面对恐惧,也没有觉醒为 Burnish,没有腐化,依然成长了。虽然我什么都做不了……但我真心觉得你活着真好。所以,Garo。能不能借我点力量?」
あの炎から、救いたい人が居る。 有一个人,我想从那团火焰中救出来。
そう言うと、クレイの身体にしがみ付いて居たガロが顔を上げた。水面の瞳はたっぷり水の膜を張り、今にも零れ落ちそうだったけれど、ガロは泣いたりせず代わりに、力強く笑って見せる。
这么一说,紧紧抱着克雷身体的加洛抬起了头。水面的眼睛布满了厚厚的水膜,眼泪似乎随时都会溢出,但加洛没有哭泣,反而用力地笑了笑。
「その言葉を、待ってた」 「我一直在等你说这句话」
行こう、と腕を引かれる。 走吧,手臂被拉着。
空っぽの、左腕をガロ・ティモスが強く握って燃え盛る家に駆けて行く。
空荡荡的左臂被加洛·蒂莫斯紧紧握住,他冲向那燃烧不止的房子。
青い炎が、極彩色の炎を食らう様に覆って行くのが見えた。
蓝色的火焰,仿佛吞噬着极彩色的火焰般蔓延开去。
殆ど体当たりをする様に扉にぶつかると、簡単に扉はひらいた。炎に包まれる廊下の先、こちらの姿を認めたらしい子供がかけて来るのが見える。
几乎是用身体撞向门,门轻易地打开了。走廊尽头被火焰包围着,似乎认出了我的身影的孩子正朝这边跑来。
真っ直ぐに。脇目もふらず。真っ直ぐに。 笔直地。毫不分心。笔直地。
両親が死んだ。 父母去世了。
バーニッシュの疑いで捕縛していた子供の家族に殺されたのだと言う。その知らせを受けた時、クレイは病室に居た。
据说是被怀疑是燃烧者而被捕的孩子的家人杀害的。克雷接到这个消息时,正待在病房里。
左肩の治療が終わり、ようやっと一人になった時に、連絡が入ったのだ。
左肩的治疗结束后,终于独处时,接到了这个通知。
『奴等の身体には血ではなく、炎が流れているんだ』 “他们的身体里流淌的不是血液,而是火焰。”
切ったところから、血が流れれば人間で、炎が噴き出せば悪魔だろう。
如果切开后流出的是血,那就是人类;如果喷出的是火焰,那就是恶魔了吧。
父はそう言ったが、バーニッシュフレアで吹き飛ばされた腕からは、血が流れた。
父亲是这么说的,但被焰火风暴吹飞的手臂上流出了血。
ただ、バーニッシュの回復能力により、それが通常の人間に比べて軽量で済んだ事と、失った血液の再生成が早く傷が塞がるのが早いのだと身をもって知ったのだ。
只是,通过巴尼什的恢复能力,我亲身体验到,与普通人相比,伤势较轻,失去的血液能迅速再生,伤口愈合也更快。
何てことは無い。 没什么大不了的。
バーニッシュの身体だって、切られれば血が流れる。 即使是巴尼什的身体,被割伤也会流血。
(人間と同じように) (就像人类一样)
それがクレイにとってより醜悪な事に思えた。 这对克雷来说显得更加丑陋。
いっそ、すべてが化物になってしまえれば良かった。 干脆,一切都变成怪物算了。
「人間」である事に縋りたかった。 想要依附于“人类”的身份。
けれどももう、自分が「人間」で居る事も許せなかった。
但是,自己作为“人类”这一身份已经无法被接受了。
人間が、身体から炎を吐き出し、人々の平穏を奪い、のうのうと生きている。
人类从身体中喷吐火焰,夺走人们的安宁,却依然无忧无虑地生活着。
悪魔の所業だ。 这是恶魔的所作所为。
バーニッシュと嫌疑を掛けた者を捕縛し、尋問と言う名の拷問じみた行為を繰り返していた父の姿に自分の姿が重なる。
看到父亲逮捕被怀疑是燃烧者的人,不断进行名为审讯实则酷刑的行为,自己仿佛看到了自己的影子。
自白するべきだと、理解はしていた。 我明白,应该坦白。
居住エリアの一角を焼き払ったクレイの腕に飛び込んで来た子供の証言から、クレイは火災の中、自分の身を犠牲にして子供を救った英雄として一躍時の人となって居た。
根据跳入克雷手臂、烧毁居住区一角的孩子的证词,克雷在火灾中牺牲自己救了孩子,成为了当时的英雄人物。
そのニュースを聞きつけて、ある人物からコンタクトを取れないかと連絡があった。
听到这个消息后,有人联系过来,想要取得联系。
デウス・プロメス博士その人である。 那人正是德乌斯·普罗梅斯博士。
『君は、バーニッシュとして覚醒した。そうだね?』 「你,作为バーニッシュ觉醒了。是吧?」
人払いをした病室で、開口一番にそう言った。 在清空了病房后,他开口第一句话就是这么说的。
『君に、私の研究に協力してもらいたいのだ。人類を救う為の、研究に』
“我希望你能协助我的研究。为了拯救人类的研究。”
それはなんと甘美な誘いだったろうか。 那是多么甜美的邀请啊。
それはクレイにとっての贖罪であり、そしてさらに深い業へと踏み込む一歩だった。
对克雷来说,那既是赎罪,也是踏入更深业障的一步。
同時に、脅しでもあった。 同时,这也是一种威胁。
自分の秘密は、デウス博士の一言ですぐに露見する。 自己的秘密,只要德乌斯博士一句话就会立刻暴露。
本当の英雄になるか。 成为真正的英雄吗。
犯罪者となりバーニッシュとして迫害されるか。 成为罪犯,被作为バーニッシュ迫害吗。
クレイは前者を選択した。 克雷选择了前者。
バーニッシュとしての力をデウスに捧げ、研究を進めた。
将作为バーニッシュ的力量献给デウス,继续进行研究。
フレアを基にしたエネルギー開発は、四肢が引き千切れるかと思う様な苦痛を伴ったが、それも罰と思えば苦しくは無かった。先に音を上げたのはデウスの方だ。
基于 Flare 的能源开发,伴随着四肢仿佛要被撕裂般的痛苦,但若将其视为惩罚,便不觉得痛苦。先认输的是 Deus 那边。
バーニッシュとの共存の模索としてエネルギー開発の可能性に掛けたが、痛みを伴う行為にあまりに非人道だと嘆いて見せた。
他寄希望于作为与 Varnish 共存的探索,能源开发的可能性,但又为这种伴随痛苦的行为过于不人道而感到哀叹。
非人道。
それを今更貴方が言うのか。 你现在才说这个吗。
非人道。
それをバーニッシュなどという化物に向けるのであれば、人類を救う手を考えろ。
如果要把这话指向像巴尼什那样的怪物,就应该想办法拯救人类。
姿をくらまし、フレアへの対抗手段としての凍結弾の開発も止め、この男は人類の見方をして居るのか、バーニッシュの味方をして居るのかクレイには理解出来なかった。
隐藏了身形,停止了作为对抗 Flare 的手段的冻结弹开发,克雷无法理解这个男人究竟是站在人类这边,还是站在 Varnish 那边。
あるいは、プロメアの味方をして居るのか。 或者说,是站在 Promare 那边。
ならば、この男は人類の敵だ。 那么,这个人就是人类的敌人。
引鉄を引く事に、躊躇は無かった。 扣动扳机时,没有丝毫犹豫。
耐火構造と凍結弾の研究を奪い、クレイはバーニッシュの命を使い、ほんものの英雄になろうと試みたのだ。
夺取耐火结构和冻结弹的研究,克雷利用巴尼什的生命,试图成为真正的英雄。
今となっては何が正しかったのか分からない。 现在已经不知道什么才是正确的了。
何になりたかったのかも、分からない。 也不知道自己曾经想成为什么。
ただ、助けたいと思った。 只是,我想要去帮助。
ちゃ、ちゃ、と廊下を歩く爪の音。 咔、咔,爪子在走廊上走动的声音。
クリーム色の毛をなびかせて垂れ耳の子犬が廊下で転がって見せる。
一只奶油色毛发飘扬、垂耳的小狗在走廊上打滚卖萌。
どうして今迄忘れていたのだろう。 为什么直到现在才想起来呢。
『 』
名前を呼ぶと、わん、と吠えて腕の中に飛び込んで来た。
一叫名字,它就汪地一声叫着跳进了怀里。
陽だまりの匂いがする。 有阳光洒落的味道。
「目が覚めた?」 “醒了吗?”
声が聞こえるものの、視界は白く塗り潰され、クレイは答える代わりに喉奥で唸って見せる。
虽然能听到声音,但视线被白色涂抹得一片模糊,克雷没有回答,只是在喉咙深处发出低沉的呻吟。
「大丈夫、光は知覚出来てる。その内見えるようになるわ」
“没事的,光是能被感知到的。过一阵子你就能看见了。”
「その声は……エリス?」 “那个声音……是艾莉丝吗?”
「えぇ。貴方覚えてる?パルナッソス号が落ちて、世界が青い炎に包まれたの」
“嗯。你还记得吗?帕尔纳索斯号坠落,世界被蓝色火焰包围的时候。”
「忘れたくても、忘れられそうにない」 “即使想忘,也似乎忘不了。”
「じゃあ、あれから半年が経過したって言ったら?」 “那么,如果我说从那以后已经过去半年了呢?”
「…………は」 「…………是」
墜落したパルナッソス号の上で、クレイは糸が切れた様に倒れたのだと言う。
据说克雷像断了线的木偶一样倒在了坠落的帕尔纳索斯号上。
それから目を覚ます事無く、昏睡状態が続いた。 之后一直没有醒来,处于昏迷状态。
「これは予測に過ぎないけど、恐らくバーニッシュの力を過度に使い過ぎたせいだと言うのがリオ君の見解」
「这只是推测,但里奥君认为,很可能是因为过度使用了巴尼什的力量。」
「リオ・フォーティアが?」 “里奥·福提亚吗?”
「貴方、ずっとバーニッシュの力を制御していたでしょう。それを一気に放出したせいで身体に負担が掛かった、というのがリオ君と、デウス博士の見解」
“你一直在控制着燃烬的力量。里奥君和德乌斯博士的看法是,因为你一次性释放了全部力量,身体承受了很大负担。”
「待て。今デウスと言ったか」 “等等。刚才你说德乌斯?”
「ええそうよ。あのデウス・プロメス博士。貴方が殺した」
“是的,没错。那个德乌斯·普罗梅斯博士。是你杀的他。”
エリスの声音が冷えたのが分かった。 我能感觉到艾莉丝的声音变得冰冷。
「それがどうして」 “那又怎么样?”
「博士が残した。AIシステムが残って居るの。本体があった基地は炎の噴火に巻き込まれて跡形も残らずだけど、バックアップデータがパルナッソス号のシステムに侵入して生き残って居た。今度会わせてあげる。貴方の治療については博士の協力が無ければ成し得なかった事だから。貴方を助けたかったのよ、博士は。……生憎と言うべきか。貴方がバーニッシュである事、博士の殺害の首謀者である事は実証が得られず、私から政府には伝えていない。あ、政府って言うのは貴方が昏睡している間に立ち上げられた新政府の事。私も貴方も、今はその機関の監視下にある。勿論、ビアルもね。彼女は元気よ。プロメポリスの都市中央はパルナッソス号墜落により未だに復興が出来ていない状況で、私達はその裁判を待ちながらも、その復興計画に助力する事が義務付けられている。貴方も、回復したら監視官の下で馬車馬みたいに働かされるから、覚悟してね」
“博士留下了。AI 系统还在。虽然本体所在的基地被火焰喷发吞没,连一点痕迹都没留下,但备份数据侵入了帕尔纳索斯号的系统,幸存了下来。下次我会让你见到它。关于你的治疗,没有博士的协助是无法完成的。博士是想救你……说不清是遗憾还是幸运,你是 Burnish 的事实,以及你是博士被杀的主谋,这些都没有得到证实,所以我没有向政府报告。哦,政府是指你昏迷期间成立的新政府。你和我,现在都在那个机构的监视之下。当然,Bial 也一样。她很好。由于帕尔纳索斯号坠毁,普罗梅波利斯市中心至今未能复兴,我们一边等待审判,一边被要求协助复兴计划。你恢复后,也会在监视官的监督下像马车马一样工作,做好心理准备吧。”
「理解が追い付かん」 「我还没弄明白。」
話している内に、だんだんと世界が輪郭を持ち始める。
说话间,世界的轮廓渐渐开始清晰起来。
「少し視界が戻って来た?胃が驚くから、急に水は飲まずに湿らせる程度にしてね。他に何か聞きたい事ある?」
「视线稍微恢复了一些?胃还在适应,别急着喝水,只要润润嘴唇就好。还有什么想问的吗?」
エリスに差し出された水を含んだ綿を唇に宛がう。 将艾莉丝递来的含水棉花贴在嘴唇上。
水分を口に含んでから、一気にクレイの身体の細胞が覚醒して行くのが分かった。
含了一口水后,克雷感觉到身体的细胞瞬间觉醒。
輪郭が朧ながらエリスの姿は認識できた。 虽然轮廓模糊,但依稀能认出是艾莉丝的身影。
病室のカーテンは遮光の薄手のレースのカーテンが引かれており、窓が開いて居るのか時々風に吹かれてそよいでいる。
病房的窗帘是遮光的薄纱蕾丝窗帘,偶尔被风吹动,轻轻摇曳着,窗户似乎开着。
どこからか、花の匂いがして目をやるとベッドサイドに花らしきものが飾られているのが分かった。
不知从哪里传来花香,转头一看,床边摆放着几束花。
「……随分と長く、夢を見ていたようだが。あれは君が?」
「……看来你做了很长时间的梦。那是你吗?」
「厳密に言うとそれも博士の案よ。昏睡の中でも、身体機能については回復の兆しが見えて来たんだけど貴方は眠り続けたままで、精神に過度な負担が掛かって居る、というのが博士の見解だった。貴方が、貴方自身で目覚める事を拒んでいるのではないか、と。だから直接、起こしに行く事にしたの」
“严格来说,那也是博士的提议。虽然在昏迷中,身体机能已有恢复的迹象,但你依然沉睡不醒,精神承受着过度的负担,这是博士的看法。他认为,你可能是在拒绝自己醒来。所以决定直接去叫醒你。”
「直接?」
「それは、本人の口から聞いた方が良いんじゃない?」
「这事,还是让本人亲口说比较好吧?」
「本人?」
「貴方の事、叩き起こすって言って立候補したは良いけれど、意識にダイブする為に、彼の身体にも相当の負担を強いたの。街の復興や、通常のレスキュー業務もこなして、貴方の面倒も見てたのよ。半年も! 」
“你说要把你叫醒,虽然自告奋勇了,但为了潜入你的意识,他的身体也承受了相当大的负担。还要处理城市的重建和日常的救援工作,同时照顾你。整整半年!”
そう言って、エリスが指差した先に青いトサカ髪が見えた。
说着,Eris 指向前方,那里隐约可见一头蓝色的鸡冠发。
クレイのベッドに隣接する様に設置されたソファで、ガロが眠って居る。
加洛正睡在紧挨着克雷床铺摆放的沙发上。
「まさか、夢の中に出て来た犬は」 “难道,梦中出现的那只狗是——”
「ガロくんよ。貴方の精神に関与する為に、記憶を覗かせて貰った。もっとも主体で動いたのは博士で私は最低限の情報誌から知らないから、安心して。貴方の事は嫌いだけれどプライバシーを覗く様な趣味は無いの」
“是 Garo 君。为了介入你的精神,我窥视了你的记忆。不过主要行动的是博士,我只是从最低限度的信息资料中了解,所以你可以放心。我虽然不喜欢你,但没有窥探隐私的兴趣。”
「犬種も名前も違ったぞ。彼女は……、ベラは」 “犬种和名字都不一样。她是……贝拉。”
「でも、貴方違和感なく受け入れてたわよ。ガロくんもガロくんよ。貴方の小さい頃の姿が新鮮だって本来の目的を忘れて犬ゴッコに精が出たみたい。キャンパスライフも随分とお楽しみだったようじゃない」
“不过,你却毫无违和感地接受了。加罗君就是加罗君。你小时候的样子让人觉得新鲜,似乎忘了最初的目的,专心玩起了‘狗狗游戏’。看起来你也很享受校园生活呢。”
「ほぉ」 “哦?”
「博士曰く、貴方の中のトラウマ、要はストレス負荷を取り除けば意識が戻るのではないかと言う仮定だったんだけれど、貴方ってば頑固だから中々心をひらかなくて」
“博士说,如果能消除你内心的创伤,也就是压力负荷,意识可能会恢复。这是他的假设。不过你太固执了,心门一直不开。”
「分かった、これ以上は……エリス」 “我知道了,不要再说了……艾莉丝。”
そう言ってガロの方に視線を向けるクレイに、エリスは合点が言った様に鼻を鳴らして見せる。
说着,克雷将视线转向加洛,艾莉丝则发出一声表示理解的鼻音。
「何かあったらすぐに連絡してね。これでも貴方の主治医でもあるから」
“如果有什么事,马上联系我。毕竟我还是你的主治医生。”
そう言って部屋を後にするエリスを見送って、クレイはゆっくりと身体を起こす。未だ、身体は動かしづらいものの、座る位は問題ない。
送走说完这话离开房间的艾莉丝后,克雷慢慢地坐起身来。虽然身体仍然有些不便,但坐起来已经没问题了。
「お前に言いたい事は山ほどある。人の記憶に介入して、随分と好き勝手してくれたものだ。……すまなかったな」
“我有一大堆话想对你说。你干涉了别人的记忆,随心所欲地做了不少事……真是对不起。”
「……そこは、ありがとうだろ」 「……那里,应该说谢谢吧」
ちらり、と片目を開いてガロが唇を尖らせて言うと、勢いよく立ち上がり、真っ直ぐにクレイの傍まで歩み寄ると、痛い程の力でしがみ付かれた。
加洛眯着一只眼睛,嘟起嘴说道,然后猛地站起身,径直走到克雷身边,用几乎让人疼痛的力气紧紧抱住了他。
「……俺を助けなかったら良かったのに」 “……要是不帮我就好了。”
「私も、そう思う。けれど、そうせずには居られなかった。お前の為じゃない。私の為に、だ」
“我也是这么想的。但我就是忍不住不这么做。这不是为了你,而是为了我自己。”
「はは、それってもう俺が必要だったって言ってる様なもんだって分かってんの」
“哈哈,你知道这不就是在说我对你来说很重要吗?”
ぎゅう、と背中を抱く腕に更に力が籠められる。 紧紧抱住背部的手臂用力更甚。
「これからは俺の前では、ただのクレイで居てくれ」 “从今以后,在我面前,就做回那个普通的克雷吧。”
義肢を失った伽藍の左腕はそのままで、残された腕で抱き締めたガロからは、陽だまりの匂いがする。
失去义肢的伽蓝左臂依旧如故,被剩下的手臂紧紧抱着的加罗身上,散发着阳光般的气息。
まるい太陽。新しい、世界。 圆圆的太阳。新的,世界。
予測もつかない、未来の匂いだ。 这是无法预测的未来气息。
5/18に開催された【SUPER COMIC CITY 32 -day3-】にて頒布した無配の再録になります。
这是 5 月 18 日举办的【SUPER COMIC CITY 32 -day3-】上免费发放的再录本。
カプ要素は薄いですが、間違いなくこの先クレガロになる二人なのでカプタグつけました。
虽然 CP 元素很淡,但毫无疑问他们将来会成为クレガロ,所以加上了 CP 标签。
どうしても新刊が欲しくて試行錯誤する中で、思い立って一日で書き上げたので、粗削りですが殆どそのまま掲載します(細かい調整はしました)
因为非常想要新刊,在反复试验中一气呵成地一天写完了,虽然有些粗糙,但几乎原样刊载(做了一些细微调整)。
実はもう何年も前から、こういう話しが書きたいとあたためていた話で、ここで出す事が出来て良かったです。
其实这故事是我多年前就一直想写的,能在这里发表真的很高兴。
クレイの過去の捏造、片鱗とは言えようやく出せたな。6年掛かってしまいました。
克雷过去的捏造,虽然只是冰山一角,但终于能展现出来了。花了整整六年。
まだ自分が書ける事も素直にうれしいです。少しでも楽しんでいただけますと幸いです。
还能写出自己的东西,真心感到高兴。若能让您稍微享受其中,我将不胜荣幸。