【サンプル】 SPOILED 【样章】 被宠坏的
「SPOILED」 「被宠坏的」
A6/358P/全年齢/2800円 A6 尺寸/358 页/全年龄向/2800 日元
※イベントではノベルティーの栞が付きます。 ※活动期间将附赠特制书签。
素敵な表紙は 精美的封面设计
あさましさん(@asamashi288753) 浅间氏(@asamashi288753)
に描いて頂きました!! 由您绘制!!
✦本のあらすじ✦ ✦故事梗概✦
青い監獄計画終了後、バスタード・ミュンヘンに獲得され渡独した世一が色々あってホームシックになり、色々あってカイザーの体温に懐きカイザーのベンチコートに潜り込むようになる話です。
这是关于蓝色监狱计划结束后,被巴斯塔德·慕尼黑队签下并前往德国的世一因种种原因患上思乡病,又因种种缘由开始眷恋凯撒的体温,最终钻进凯撒替补席外套里的故事。
捏造満載かつ、全体を通して人種差別に触れる内容となっておりますのでご注意ください。
本作品包含大量虚构内容,且通篇涉及种族歧视描写,请谨慎阅读。
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Spoiled✦One
──ドイツ、そこは日本から飛行機で約12時間かかる、中央ヨーロッパの一国である。
──德国,那是从日本乘飞机约需 12 小时才能抵达的中欧国家。
広義によっては西ヨーロッパにも分類されるドイツと日本の時差は、なんとマイナス8時間。
从广义上讲也属于西欧的德国与日本的时差,竟然达到了负 8 小时。
つまり日本の朝7時がドイツでは前日の深夜11時になると考えると、距離の遠さがなんとなくでも想像出来るかもしれない。
也就是说,当日本早上 7 点时,德国还是前一天的深夜 11 点——想到这里,或许就能稍微体会到两地相隔之远。
そうして彼──潔世一は、そんなドイツに約半年前程に一人で渡って来た〝外国人〟である。
而他——洁世一,正是约半年前独自来到这个德国的"外国人"。
そう、青い監獄の年俸入札制度により、最終的にドイツの強豪バスタード・ミュンヘンに勝ち取られ──当然、世一自身がBMを選んだというのが大前提だけれども──た世一は、日本から12時間かけ遠路はるばる中欧、もしくは西欧と称されるこの大国へとやってきた。
没错,通过蓝色监狱的年薪竞标制度,最终被德国豪门拜塔·慕尼黑签下——当然,前提是世一本人选择了 BM 俱乐部——这位少年历经 12 小时长途飞行,从日本远赴这个被称为中欧或西欧的足球强国。
まあ、といってもその道中には、同じくドイツのバーサーク・ドルトムントに獲得された黒名蘭世も一緒だったんだけど。
不过话说回来,在前往德国的途中,同被德甲多特蒙德队签下的黑名兰世也一路同行。
でもドイツ西部に位置するドルトムントとドイツ南部に位置するミュンヘンは、当たり前──なんとこの二つの都市は電車で片道7時間もかかる──に場所が違う。
但位于德国西部的多特蒙德与德国南部的慕尼黑之间——说来你可能不信——这两座城市单程火车竟要耗费 7 小时之遥。
だから多くの報道陣やファンが待ち構えていたフランクフルト空港で黒名とは別れてしまい、それきりだ。
因此在法兰克福机场与黑名分道扬镳后,大批守候的媒体和粉丝便再无缘相见。
というのも、片道7時間の距離は流石に遠く。 毕竟单程七小时的距离,终究太过遥远。
かつ、公式ライバルチームに所属している以上、休日に会って遊ぶというのもまだ難しく──ちなみに二人が来独した際、BMとBSKのスタッフ及び各ファン同士がバチバチに威圧し合っていたのが流石サッカー大国って感じで新鮮だった──同じ国に居るものの、黒名とは渡独時に別れてから今に至っての間、まだ通話でしか話せていない。
而且,既然隶属于官方竞争对手球队,休息日见面游玩也还很难实现——顺带一提,两人来德国时,BM 和 BSK 的工作人员及双方球迷剑拔弩张的紧张氛围,不愧是足球大国,让人感到新鲜——虽然同处一个国家,但黑名自从来德国分开后,至今都只能通过电话交流。
ただ、それはまだドイツに来て半年と日が浅く、チームからの信頼を獲得しきれていないからなので。
不过,这只是因为来德国才半年时间尚短,还没能完全获得球队的信任罢了。
きっと来年あたりには世一もチームメイトとBMのサポーターたちからの信頼を得られて、黒名と休日に会ったり遊んだりする事も許されるんじゃないかな、とこっそり思っていたり。
我暗自想着,等到明年左右,世一应该就能赢得队友和 BM 球迷们的信任,被允许在休息日和黑名见面玩耍了吧。
あと、補足で言えば。 另外,补充说明的话。
本当は、世一と黒名だけではなく氷織にだって、ドイツからオファーが来ていたのだ。
其实不仅世一和黑名,连冰织也收到了来自德国的邀约。
そう、青い監獄で世一との連携が評価された氷織にも、世一と同じこのBMからオファーが届いていたというのに。
没错,在蓝色监狱中与世一的配合受到认可的冰织,同样收到了这家 BM 俱乐部的邀请函。
なのに氷織はそれを〝今はまだその時やない〟とか言って断ってしまったのである。
可冰织却以"现在还不是时候"为由拒绝了这份邀约。
そうしてそのまま、氷織は〝ちょい腕磨いて来るわ〟とかなんとか言って、同じくオファーが来ていたマンシャイン・シティへ迷いなく行ってしまった。
就这样,冰织丢下一句"先去磨练下球技"之类的话,毫不犹豫地去了同样发出邀约的曼城俱乐部。
なんでも肉体改造をして、パスの精度を更に上げたかったらしい。
据说他为了进一步提高传球精度,对身体进行了全面改造。
──目的がはっきりしている所が氷織らしいと言えば氷織らしいが、複雑といえば複雑でもある。
——目标明确这点确实很有冰织的风格,但细想起来又觉得颇为复杂。
というのも世一的には、てっきり氷織は自分と同じクラブを選ぶものだと傲慢にも思っていた──なんせ氷織は、とある試合から世一にべったりになっていた──ので。
因为世一曾傲慢地认定冰织必定会选择和自己相同的俱乐部——毕竟自从某场比赛后,冰织就彻底黏上了世一——
こうもアッサリと振られた事実に。まァ、うん。諸々なコトを思わないでもなかったんだけれども。
面对如此干脆的拒绝。嘛,嗯。倒也不是完全没有产生各种念头。
しかし空港で旅立つ時に、世一に対して「僕が居る事忘れるんやないで」とか「変に男誑かすんやないよ」とか。ちょっとイマイチ真意が把握しきれない念押しみたいな事を散々言ってきたので。
不过在机场送行时,他对世一说了些"可别忘了我还在这儿"、"不许随便勾搭男人"之类的话。这些带着微妙占有欲的叮嘱,让人有点摸不清他真正的意图。
なんとなくだけど。 虽然只是隐约感觉。
でも多分きっとあの様子なら、世一がこのままBMに居ればその内世一の事を追い駆けてBMに移籍してくるんじゃないかなと。思ってはいる。
但看那副架势,如果世一继续留在 BM 俱乐部的话,他迟早会追着世一转会过来吧。我这么猜测着。
だってじゃなかったら、わざわざ同じ行き先の千切たちとの日程をズラしてまでして世一たちと同じ日に飛行機に乗ったりしないだろうし。
毕竟要不是这样,他也没必要特意错开和千切他们同行的日期,非要选和世一同一班飞机不可。
だからそう、きっと、きっといつかその内。 所以啊,肯定,总有一天会实现的。
氷織はこのドイツに来るんだろうな、なんて。 冰织大概会来德国吧,之类的。
そんな予感めいた事を、なんとなく思ったり。なんとなく確信していたり。
这种近乎预感的念头,不知为何浮现在脑海。又莫名地确信着。
──とは言っても、しかし氷織も、シビアなエゴイスト。
——话虽如此,但冰织也是个彻头彻尾的利己主义者。
世一が腑抜ければ違うストライカーを〝王様〟なるものに定めちゃうんだろうなぁと、これまた感じているので。
我总觉得,要是世一真的废了,他们大概会另立一个前锋当"国王"吧。
氷織に見限られないよう、孤軍奮闘で世一も頑張っているんだけど。
世一也在孤军奋战,努力不让冰织放弃他。
つまりは、青い監獄のBM日本チームは、文字通りバラバラとなったのだ。
也就是说,蓝色监狱的 BM 日本队,真的已经四分五裂了。
ここには氷織たちは居ない。 冰织他们并不在这里。
黒名は同じ国にこそいるけど、その距離はザックリ500㎞。
虽然黑名和我同在一个国家,但两地相隔足足 500 公里。
日本で例えるなら東京から滋賀辺りの距離感で、やっぱり近さは感じない。
用日本来比喻的话,相当于从东京到滋贺县的距离,果然还是感觉不到近在咫尺。
さびしい。 好寂寞。
じゃない、寂しいなんて言わない。 才不,我才不会说寂寞这种话。
いや嘘。 才不是呢。
実は、結構さびしい。 其实,挺寂寞的。
───そう、この新天地で、日本人は自分一人だけ。 ──没错,在这片新天地里,只有我一个日本人。
そうしてBSKと違ってBMにはアジア人は世一だけしか居ないから、なおのこと〝ひとりぼっち〟だなんて疎外感を覚えてしまう。
而且和 BSK 不同,BM 里亚洲人只有世一一个,这种"孤零零"的感觉更让人感到疏离。
そうだ。BMは、白人、黒人、ヒスパニック系にラテン系で固められている。
确实。BM(篮球经理)的阵容基本由白人、黑人和拉丁裔球员组成。
言い訳としては〝BMが望む個性を持った選手がアジア系にあまり居ないから〟だけど。
借口是"亚洲裔球员中很少有具备 BM 所需特质的选手"。
でも多分、その中にはちょこっとアジア蔑視も入ってるんだろうとも感じてる。
但我总觉得,这其中或许也掺杂着些许对亚洲人的轻视。
だって、じゃなかったらここまで見事に東洋を弾かない。
否则,不至于如此彻底地将东方人排除在外。
確かに他の人種に比べると見劣りする部分も確かにあるけれど。
确实与其他种族相比存在某些逊色的地方。
でも、探せば光る粒はある筈なのだ。 但是,只要用心寻找,必定能发现闪光的种子。
それこそ、世一たちみたいに。 就像世一他们那样。
才能の原石は、どの国にだって必ず存在する筈なのだから。
因为才能的原石,在任何国家都必定存在。
──ちなみに世一が感じている差別疑惑は、疑いというよりは確信に近い。
──顺便一提,世一所感受到的歧视嫌疑,与其说是怀疑,不如说近乎确信。
なんせ世一自身がその〝アジア蔑視〟をされてンなぁと思う事が多々あるので。
毕竟世一自己就经常遭遇那种"亚洲歧视"。
まァでも、それは欧州では仕方のないことなのだ。どこの国だって、たぶん数が多い方が発言も行動も強くなる。
不过在欧洲这也是无可奈何的事。任何国家都是如此,大概数量占优的一方说话做事都更有底气。
だからきっと、世一が気付いてないだけで、日本にだって差別や蔑視は存在している。
所以日本肯定也存在歧视和蔑视,只是世一没有察觉罢了。
そう、どんなに上手に取り繕っても、蓋を開ければその実態は丸見えだ。
是啊,无论表面装点得多么完美,揭开盖子后本质便暴露无遗。
そうしてここドイツは、欧州の中でも取り分け白人が多い国だから。
而德国这个地方,在欧洲本就是白人比例特别高的国家。
なのでそりゃまぁ、世一みたいな東洋が浮いたり悪目立ちするのも、理解はできる。
所以嘛,像世一这样的东方人显得格格不入甚至招来异样眼光,倒也不难理解。
そんでもって別に世一は、差別云々に関してはそこまで気にしていない。
不过世一本人其实并不太在意这些歧视不歧视的。
だってそんなの、最初から覚悟していた事だったし。それは絵心さんやアンリさんに、青い監獄を旅立つ時に散々言われてきた事だった。
因为我从一开始就做好了这样的心理准备。在离开蓝色监狱时,绘心和安里先生已经反复告诫过我这一点。
そう、なので最初からそのつもりで世一は海を渡ったし、そのつもりでこの強豪BMを選んだのだ。
没错,所以世一从一开始就怀着这样的觉悟远渡重洋,也是基于这份觉悟才选择了这支豪门 BM 队。
だからここでどれだけ人種差別を受けようが、そこに想定外は存在しない。
因此无论在这里遭受多少种族歧视,都不存在意料之外的状况。
つまり全て想定内の、想像の範囲内の現象。 也就是说一切都在预料之中,属于可想象范围内的现象。
むしろ今、困っているのは──── 此刻真正困扰的是────
「────────へっくし!」 「────────阿嚏!」
盛大なくしゃみと共に、ぶわりと白くなる視界。 伴随着一个响亮的喷嚏,视野骤然泛白。
けれどそれはビュウと吹く冷たい風にあっという間に巻き取られ、瞬きの間に輪郭を蹴散らされてしまう。
然而这抹白瞬间被呼啸的寒风席卷,眨眼间便消散了轮廓。
そうして見上げなくとも視界にチラつく結晶は白く、量が多い。
即便不抬头,视野中闪烁的结晶也白得刺眼,数量多得惊人。
このまま外に居ようものなら、数秒もしない内に凍ってしまうだろう寒さに。
若是继续待在外面,不出几秒就会被这足以冻僵人的严寒吞噬吧。
ぶるッと背を震わせた世一は、強張ってギシつく足をなんとか動かし、クラブハウスの扉の隙間にするりと身体を滑り込ませる。
世一打了个寒颤,强忍着僵硬作响的双腿,将身体灵活地滑进了俱乐部大门缝隙中。
けど、所詮は壁一枚。そうしてここは〝エコ〟とやらを異様に愛するドイツなので。
然而终究只隔着一堵墙。更何况这里可是德国——那个对所谓"环保"异常执着的国度。
室内であろうと世一の望む温かさは感じられず、ハァと零れる息は相も変わらず白いままだ。つまりこの国の冬、あり得ないほど寒い。
无论身处室内,世一都感受不到渴望的温暖,呼出的气息依旧凝结成白雾。这个国家的冬天,冷得超乎想象。
──そう、冬。 ——没错,就是冬天。
ドイツに来てから、初めての冬の季節。 来到德国后经历的第一个冬季。
気温が高くても湿気がなく過ごしやすかった8月とは打って変わって、10月から急速に冷え込み11月には容赦ない雪が降り始めるようになったこの国の冬季は、世一にとってはあまりにも険しすぎたのである。
与气候温暖干燥的八月截然不同,从十月开始气温骤降,到了十一月便飘起无情的雪。这个国家的冬季,对世一而言实在太过严酷了。
まず、寒い。本当に寒い。 冷,真的好冷。
刺すような寒さとでも言えばいいのか。どれだけ防寒していても、手足の先端がキリキリ痛むような冷たさを覚えるし。
或许该说是刺骨的寒冷。无论穿得多厚,手脚末端仍会感到刀割般的刺痛。
どれだけ布で覆っていても覆い切れない隙間から入り込む風で、針で刺されているみたいに肌がツキツキ痛む。
无论用多少布料包裹,总有寒风从缝隙钻入,像针扎般刺痛皮肤。
なんなら呼吸する度に冷気で鼻腔が痛くなり、すぐ鼻先が真っ赤になってしまって。
甚至每次呼吸都会因寒气让鼻腔生疼,鼻尖很快就冻得通红。
ならばとネックウォーマータイプのフェイスマスクで顔半分を覆ってみても、今度はマスクの内部が自分の呼吸で結露し、ぐしょぐしょに口許が濡れてしまって気持ち悪い事この上ない。
于是试着用围脖式的面罩遮住半张脸,结果口罩内部因呼吸结满水汽,嘴周湿漉漉黏糊糊的,简直恶心到极点。
というか、雪が降って、グラウンドだってべしゃべしゃになっているのに。
话说回来,明明下着雪,连球场都变得泥泞不堪。
それなのに世一以外の選手は、みんな普通の顔で走り込んだりボールを蹴ったりしているのだ。意味が分からない。
可除了世一之外的其他选手,全都神色如常地跑动踢球。实在无法理解。
いや世一とて、雨の日でも普通に試合したりするけど。
不过世一这家伙,雨天不也照样正常比赛嘛。
でも雪ってもう違うじゃん。積もってんじゃん。緑の芝生が白で埋め尽くされちゃってんじゃん。もうここまで来ると無理じゃん。
可这雪明明不一样啊。都积起来了啊。绿草坪都被白色完全覆盖了啊。到这份上根本没法踢了吧。
なのに──なにその〝芝が見える部分もあるからまだ使える〟理論。
结果——居然搬出什么"还能看见部分草皮所以场地可用"的理论。
マジで意味わかんねぇって。 真是完全无法理解。
なんかコーチもチームメイトも当たり前の顔して〝皆で踏み込めば雪も解けるから問題ない!〟とか熱血論みたいなこと言ってっけど、マジでそれなんも合理的じゃねえってか、積もってんじゃん!!
教练和队友还都一脸理所当然地说什么"大家一起踩踏的话雪就会融化所以没问题!"这种热血论调,讲真这根本不合理好吗,明明都积雪了!!
ならもう普通に室内練習でよくね?! なのになんで頑なに外練なの!? この国の人間ってドMしかいねェの!??
那干脆在室内训练不就好了吗?! 为什么非要固执地在户外练习啊!? 这个国家的人都是受虐狂吗!?
──つまりは、渡独した世一は雪国の冬を舐めていたのだ。
──也就是说,远赴德国的世一君低估了雪国之冬的威力。
いや、ドイツの冬がヤバい事は、事前の下調べでわかっていた。
不,其实通过事先调查,他早就知道德国的冬天有多可怕。
でもまあなんとかなるだろうと心のどこかで舐めてかかっていた。それが全ての敗因。
但心底某处还是抱着"总会有办法"的轻率想法。这正是败北的全部原因。
そう───圧倒的、雪! 这——简直是铺天盖地的雪!
シンシンどころじゃない、雪! 見渡す限りの、圧迫感のある雪!!
哪里是零星小雪,分明是遮天蔽日的暴雪!放眼望去全是令人窒息的雪白!!
部屋の中に居るのにかじかむ手! なのにエコじゃないとか頭沸きすぎな理由で全然使わない暖房!
明明待在屋里手指却冻得发僵!偏偏还以不环保这种荒唐理由死活不开暖气!
珍しく付けてもそれ意味あんの? な低い温度設定! まさかの19度!
就算破例开了又有什么用?温度设定低得离谱!居然只有 19 度!
リーグの賞金で稼いでる癖に薄っすい作りの寒すぎな寮部屋!
靠联赛奖金过活却住在单薄简陋的冰冷宿舍!
部屋の中の空調ダイアル? 回してもまっったく変化のない室温!
房间里的空调旋钮? 怎么转室温都纹丝不动!
だからネットで注文したのに全然届かない電気ヒーター! 救いは談話室にある暖炉だけ!
网购的电暖器迟迟不送货!唯一的慰藉只有休息室的壁炉!
でも暖炉、火が消えたらガチで寒すぎ!! 可壁炉一旦熄火就冷得要命!!
──これで仮に、世一が北海道やら東北あたりの出身なら、まだなんとかなったのかもしれなかったが。
──如果世一出生在北海道或东北地区,或许还能勉强应付这种天气。
しかし埼玉出身の、雪は降れど大抵霙程度でそこまで積もらない──いや、埼玉だってガチで積もるヤバい地域はあるんだけど、幸運なことに世一の住んでた場所は雪が控え目にしか降らなかったので──雪だるまやら雪合戦でやら無邪気にはしゃげるレベルの寒さしか体験してこなかった世一は、本番ドイツの底冷えと言うよりも最早これは冷凍庫の中を彷彿とさせる、肺の中に針を刺されるような攻撃性が高すぎる寒さ、いや冷気に毎秒奥歯をガチガチ鳴らして震えていた。
但作为埼玉县出身的他,那里虽然会下雪却多以雨夹雪为主,积雪并不深──当然埼玉也有积雪严重的危险地带,幸运的是世一居住的区域降雪量向来克制──这个只在堆雪人打雪仗程度的天真嬉戏中体验过寒冷的少年,此刻在德国遭遇的已非普通严寒,而是堪比冷冻库的刺骨侵袭。那仿佛将冰针刺入肺叶的凌厉寒气,让他每分每秒都在咯吱作响地磨着后槽牙瑟瑟发抖。
そのくらいドイツは寒かった。 德国就是冷到这种程度。
親に送って貰った段ボールいっぱいのカイロなんて数日で使い切ってしまうレベルでドイツは寒かった。
父母寄来的整箱暖贴短短几天就消耗殆尽,德国就是冷到这种地步。
てかドイツ人、エコとか言って暖房入れないのマジでなに!?
话说德国人嘴上说着环保不开暖气到底是闹哪样!?
その癖暖炉は普通に使うの本気で何なの!? ど~~~ぉ考えても排気煙の方がヤバいだろ!!
结果转头又理所当然地用壁炉这到底是啥脑回路!?怎么想都是排出的烟更糟糕吧!!
てか暖炉とか範囲狭いじゃん! しかもすぐ冷えるじゃん!!
再说了壁炉取暖范围超小的好吗!而且很快就凉透了!!
だったら暖房で! 部屋全体を!! 暖めろよ……!!!
要取暖就开暖气啊!!把整个房间!!都烘暖啊……!!!
──なんて感じの世一は、故に毎秒熱源を求めていた。
──这样的世一,因此每秒钟都在寻找热源。
だって寒いのだ。耐えきれない程寒いのだ。もう寒すぎてベンチコートを着込みながらジョギングするレベルで寒さが無理なのだ。
因为实在太冷了。冷到无法忍受的程度。已经冷到必须裹着羽绒服才能勉强慢跑的程度了。
てかドイツ人たち、この寒さの中で「温まったわ」とか言ってすぐ軽装になるの、マジでなに……?
话说德国人在这鬼天气里说着"暖和起来了"就立刻换上轻便装束,认真的吗……?
体感温度がバグってるとしか思えない。 这绝对是因为体感温度系统出 bug 了吧。
は? 筋肉は熱を持ちやすいからお前も鍛えて筋肉をつけろ? は?? 喧しいわ。
哈? 肌肉容易发热所以你也该锻炼增肌? 哈?? 烦死了。
──つまり世一は、この寒さをどうにか誤魔化してくれる、自分にベストフィットな熱源を世一は全力で求めていたのだ。
──也就是说世一正在全力寻找能帮他熬过严寒、最契合自己的热源。
というか、世一は割と重めのホームシックになっていたのである。
或者说,世一其实患上了相当严重的思乡病。
だってドイツ人、優しいんだか冷たいんだかわかんない。てか多分冷たい。意地悪な奴が多い。
因为德国人根本分不清是温柔还是冷漠。或者说大概就是冷漠。坏心眼的家伙特别多。
それは世一がチームメイトとは言えポジションを奪い合うライバルで、仲良しこよしをする関係じゃないからなんだろうけど。
大概因为世一虽然是队友,但也是争夺位置的竞争对手,并非那种亲密无间的关系吧。
けど、それにしたって世一が困っている時に手を差し伸べてくれる奴はほんのひと握りだ。
不过即便如此,在世一遇到困难时愿意伸出援手的人也寥寥无几。
いや、練習チーム内ではほぼ一人? そのくらい皆冷たいし、皆世一が困っている姿を見て楽しんでいる節がある。
不,在训练队里几乎就一个人?大家都这么冷漠,甚至有种以看世一陷入困境为乐的倾向。
あと、普通に人種差別されてるのもある。 此外,还存在着赤裸裸的种族歧视。
差別してくる奴らマジで嫌い。 最讨厌那些搞歧视的家伙了。
ぜぇッッてぇポジションから引き摺り落してやるからな……。
我要把你们从高高在上的位置拽下来……
───そう、世一はチームで差別されまくっていた。 ───没错,世一在队里受尽了歧视。
その確信もちゃんとある。 对此我深信不疑。
だってアイツら、文化の違いで戸惑う世一をこれ見よがしに馬鹿にして、見世物扱いするし。
因为他们总是故意用文化差异来戏弄困惑的世一,把他当猴耍。
世一の身体的特徴を見下すことで、嫌な笑いを取ろうとする。
通过贬低世一的身体特征来获取恶意的笑料。
絶対に伝わってる時でも「ア~~? もっと明瞭に話さなきゃ、俺たち生粋のドイツ人には聞き取れねぇよ~~」とかニヤニヤしながら世一の発音を馬鹿にしてくる。
即便完全听懂了也要故意歪着嘴说"啊~~?不说清楚点我们这些纯种德国人可听不懂呢~~",这样嘲弄世一的口音。
なのでこれは間違いなく嫌味で嫌がらせ。 所以这绝对是蓄意的讽刺和骚扰。
あ~~~不快。 啊~~~真不爽。
けど、実際言語問題はかなりのネックであることは、事実で。
不过语言问题确实是个相当大的障碍,这是事实。
世一はイヤホンを持っているから──青い監獄を出る時に選別としてMIKAGEからプレゼントされたのだ。流石は大企業、太っ腹である──周りがなんて言っているのかわかるけど、周りはイヤホンを持っていないから日本語をわかってくれない。わかろうともしてくれない。
世一戴着耳机——这是离开蓝色监狱时作为选拔礼物由御影赠送的。不愧是大企业,出手真阔绰——他能听清周围人在说什么,但其他人没戴耳机就听不懂日语。他们甚至懒得去理解。
だから世一が拙いなりにもドイツ語で一生懸命コミュニケーションを取ろうとしてるのに、アイツらはその歩み寄りを鼻で笑って小学生みたいなノリで揶揄ってくる。
所以当世一用蹩脚的德语努力沟通时,那些家伙却嗤之以鼻,像小学生起哄般嘲弄他的努力。
それが普通にムカつく。てかマジで生粋のドイツ人ってなんなんだよ。
这简直让人火大。话说纯种德国人到底是什么鬼啊?
この国が人種のサラダボウルって言われてンの知ってんだからな!? DND検査したらきっと他の血混じってる癖に! マジでムカつく!
明明知道这个国家被称为种族大熔炉!?DNA 检测的话肯定混着其他血统吧!真是气死人了!
それに、それにそう、アレだ。 而且,而且啊,就是那个。
ご飯も当たり外れが激しいし、てか外れが多いし──駄目だ不満を上げ始めたらキリがない。
饭菜也是时好时坏,不如说难吃的时候更多——不行,要开始抱怨的话就没完没了了。
……別に、世一だって。 ……其实,世一也是。
これが新入りに対する洗礼だと、わかっている。 我明白,这是对新人的洗礼。
でもわかっても、わかっていたとしても。 但即使明白,即使早就心知肚明。
積み重なり続ければ、初めはなんでもない顔で流せたものも段々耐えきれず、キツくなっていくワケで。
当压力不断累积,最初能若无其事承受的事情,也会渐渐变得难以忍耐。
その上、トドメと言わんばかりのこの寒さ。 再加上这仿佛要给人最后一击的刺骨寒冷。
だから気付いた時には、世一のメンタルは限界値ギリギリになってしまっていた。
所以当察觉时,世一的精神状态已经濒临崩溃边缘。
頑張ろうと、堪えようと。 明明想要努力坚持。
しっかりしなきゃって、思ってるのに。 明明告诫自己必须振作起来。
なのにもう、最近、気持ちがコントロールできない時が、時々あって。
可最近却时常控制不住自己的情绪。
─────母さんに、会いたい。 ─────好想见妈妈。
気を抜けば、頭に出て来るのはいつもこれ。 稍一松懈,这个念头就会浮现在脑海。
別に、マザコンとかじゃないけど。 倒也不是什么恋母情结。
そんなつもりで、そんな意識で。生きて来た覚えはないけれど。
我并非有意如此,也从未刻意以这种心态生活。
でもいつもどんな時も優しく世一を守り慈しんでくれた母を、生まれ育ったあの家を。
但那个始终温柔守护、疼惜世一的母亲,那个生我养我的家。
世一は最近、どうにも恋しく思ってしまう。 近来世一总是抑制不住地思念。
──寒すぎて、ちょっと弱って来てンのかも。 ──或许是天气太冷,让人变得脆弱了吧。
そう思っても。そうなんだろうなとわかってても。でもやっぱり、寂しい。
明明心里明白。明明知道会是这样。可果然,还是觉得寂寞。
母さんの料理が恋しい。 好想念妈妈做的饭菜。
ドイツの、あのよくわかんないハーブだったりの塩味がキツい肉々しい料理じゃなくて。
不是德国那些搞不懂的香草味、咸得要命的油腻料理。
母さんの作った優しい味付けの美味しい料理が食べたい。
好想吃妈妈做的那些味道温和的美味家常菜。
白米とみそ汁があって、鮭とか生姜焼きとかお煮つけとかの、美味しいご飯。
有白米饭和味噌汤,还有鲑鱼、姜烧肉和炖菜的美味饭菜。
母さんの作ったご飯が食べたい……。 好想吃妈妈做的饭啊……。
炭酸の水にももう飽きた。硬水も不味い。 碳酸水也喝腻了。硬水也很难喝。
世一の家では朝は番茶で夜はほうじ茶だった。あのお茶が飲みたい。
世一家早上喝的是番茶,晚上喝的是焙茶。好想喝那种茶。
身体の芯がほわっと温かくなる味。 从内而外温暖身心的味道。
朝と夜とで茶葉を変える理由を聞いても、いつも〝なんとなくよぉ〟としか言われなかったけど。
虽然每次问起为何早晚要换不同茶叶,得到的回答总是"就随便啦"。
けどあの、硬水でも炭酸水でもましてやコーヒーでもなく、母さんが淹れてくれたお茶が飲みたい。
但此刻无论是硬水、气泡水还是咖啡,都比不上想喝妈妈泡的那杯茶。
風呂だって、シャワーばっかで疲れてくる。 就连洗澡,总是冲淋浴也让人疲惫不堪。
そしてこっちも硬水で、気付いたら肌も髪もカサカサしてきて、ほんと最悪。
这边水质也是硬水,不知不觉间皮肤和头发都变得干巴巴的,真是糟透了。
肩までゆっくり湯船に浸かりたい……。 好想慢慢泡个澡,让热水漫到肩膀啊……
あァ、家族に会いたい。家族が恋しい。 啊——好想见家人。好想念家人。
ほんのちょっとでいいから、日本に帰りたい。 哪怕只有一小会儿也好,真想回日本。
朝から晩までサッカーに夢中になれて、家に帰ったらお風呂が用意されてて、お風呂上りにすぐに夕飯が出て来たあの生活。
从早到晚都能沉迷于足球,回到家就有准备好的洗澡水,洗完澡立刻能吃上晚饭的那种生活。
バスタオルもベッドシーツも枕カバーだって、気付けばいつも取り替えてくれてて、掛け布団だってお日様の匂いがよく香ってた。
浴巾、床单、枕套,不知不觉间总是被更换一新,连盖的被褥都常常散发着阳光的芬芳。
──ずっと〝当たり前〟だと思っていた日常。 ——我一直以为这不过是"理所当然"的日常。
甘えてばっかの、子供でしかなかった自分の毎日。 那个只会撒娇、永远长不大的我的每一天。
その愛に満ちた時間が、今はこんなにも、遠い。 那段充满爱意的时光,如今已如此遥远。
「………、…………」 "………、…………"
ロッカールームで、ず、と鼻を啜る。 在更衣室里,一直、抽泣着鼻子。
たぶん、きっと誤魔化せた。 大概,一定蒙混过去了吧。
周りは世一が半泣きのことに気付いていない。 周围人都没注意到世一已经半哭出来了。
だって周りの奴らは、頭一つ小さい世一に興味なんて向けてないのだから。
毕竟那群家伙对矮一头的世一根本毫无兴趣。
そう、だからスパイクの靴紐をキュッと引っ張りながら結んで、そのまま何事もない装いで静かに立ち上がる。
于是他只是默默拽紧钉鞋鞋带系好,若无其事地站起身来。
いつも通り鼻上まですっぽりマスクで覆って、厚手のインナーを三枚着こんだウェアの上にウォームアップジャケットを着て。
照例用口罩遮到鼻梁,在三件加厚打底衫外又套上热身外套。
その上に更に分厚いベンチコートを羽織れば〝いつもの姿〟の完成だ。
再披上一件厚实的呢绒大衣,就完成了"日常造型"。
マスクをすると、籠ったロッカールームの匂いが軽くなって少し安堵する。
戴上口罩后,更衣室里浑浊的气味变得淡了些,让人稍微松了口气。
外国人あるあるとでもいうのか、ドイツ人はやたらに香水臭いのだ。
或许该说是外国人的通病,德国人总是喷得一身香水味浓得刺鼻。
どいつもこいつも鼻が曲がりそうなくらい強い匂いを纏うから、色んな匂いが混ざって人が集まる密室は空気が酷い事になる。
每个人都散发着浓烈到几乎让人鼻子发酸的香气,各种气味混杂在人群聚集的密闭空间里,空气简直糟糕透顶。
だから暖かい部屋だけど、ここにはあまり居たくはない。というか居れない。──あまり長居しすぎると、頭が痛くなってしまうから。
所以虽然房间很暖和,但我不想在这里久待。或者说根本待不住。——因为待得太久的话,头就会开始疼。
なので図体ばかりが無駄にデカく──そして揃って匂いがキツい──やたらに嵩張る、筋肉質な選手の隙間を縫うように進んでいけば。
于是我只能在那些体型庞大——而且个个散发着浓烈体味——肌肉发达的选手之间穿行,像在缝隙中游走般前进。
しかしふと、違和感を覚えて立ち止まる。 但突然,某种违和感让我停下了脚步。
「…………ン?」 「…………嗯?」
──なんか、クラブがザワついてる気がする。 ──总觉得俱乐部里气氛有点躁动不安。
そう思って、世一は自分に対して比較的態度が丸いチームメイトの傍に、すすすと近づいた。
这么想着,世一悄悄挪到了队里对自己态度相对温和的队友身边。
金髪のくるくる頭。世一と同い年だけど世一よりも頭二個分デカい、生意気なやつ。
金色卷毛脑袋。虽然和世一同岁但比世一高出两个头,是个嚣张的家伙。
「なあ、なんかあったの?」 "喂,发生什么事了吗?"
「ん? あァ、雪が強くなってきたらしくって。今練習場が使えるか使えないかの確認中なんだと」
“嗯?啊,好像雪下大了。现在正在确认练习场还能不能用”
「ふぅん」 “这样啊”
それで、こんなに人口密度が高くなっているのか。 难怪这里人变得这么密集。
マスクの位置を調整し直しながらそう思う世一は、そのままびゅうと冷たい風が吹き込む開けっ放しの扉に嫌そうに目を向けた。
世一重新调整着口罩位置,一边这么想着,一边嫌弃地望向那扇大敞着、不断灌进刺骨寒风的门。
寒いんだから、ガラス扉を早く閉めてくれればいいのに。
冷死了,就不能快点把玻璃门关上吗。
ていうか、こんなに寒いのに。ベンチコートじゃなくてウォームアップジャケットでうろつけるとか、コイツらの体温マジでバグってんだろ。意味わかんねぇ。
话说回来,这么冷的天。不穿羽绒服而是套着运动外套到处晃悠,这群人的体温绝对出问题了吧。简直无法理解。
──そう、ドイツ人はやたらに体温が高いのだ。 ——没错,德国人的体温就是出奇地高。
だから世一が極寒だと感じる場所でも、動けば耐えれるとか舐めた事を言いながらウォームアップジャケットだけで〝この程度の寒さなんてマジへっちゃら〟みたいな顔が出来ている。
所以即便在世人公认的极寒之地,他们也能一边说着"动起来就扛得住"这种狂妄的话,一边只穿着运动外套摆出"这种程度根本不算冷"的表情。
こちとらその上に分厚いベンチコートを着込んでて、それでもまだ寒いと言うのに。ほんと理不尽だ。
我身上还裹着这么厚的呢大衣呢,居然还喊冷。简直不讲道理。
そうだ。そうだ理不尽だ。 就是。就是不讲道理。
コイツらときたら、身長があって、体格も良くて? 这些家伙倒好,个个高挑健硕?
それで筋肉が付きやすくって、いつもどんな時もカイロいらずのポカポカ体温?
肌肉线条分明,自带恒温暖炉体质,什么时候都暖烘烘的?
「………………」
──マジで舐めてる。 ──简直是在耍我。
俺は一生懸命ウエイトトレーニングしても、中々筋肉つかないのに。
我拼命进行重量训练,却怎么都长不出肌肉。
代謝を上げる食生活だとかも色々頑張ってんのに、なのに俺はこんなに寒くって。
明明连提升代谢的饮食方式都尝试了这么多,可我还是这么怕冷。
なのにそんな努力を欠片もしてないコイツらは、俺が厚着しなきゃ耐えられない場所で薄着で普通に歩けてる。歩いてる。
可这些家伙明明半点努力都没付出,却能在让我不得不裹得严严实实的地方穿着单薄衣服若无其事地走着。就这么走着。
俺の頭をポンポン叩いてチビとか言って、笑って、揶揄って!
还砰砰拍着我的脑袋喊小不点,嬉皮笑脸地嘲弄我!
俺が背伸びしても届かないモノを当たり前の顔して持ってやがる。
我踮起脚尖都够不着的东西,他们却一脸理所当然地攥在手里。
そう考えたら──なんかもう、全部ズルすぎ。 这么一想——简直,全都狡猾过头了。
全部全部、コイツらズルすぎ! 这些家伙全都太狡猾了!
──つまりは、八つ当たりである。 ——说白了,就是在迁怒。
故郷を離れた寂しさ。家族に会えない心細さ。言葉の通じない不安さ。
背井离乡的寂寞。见不到家人的无助。语言不通的不安。
そして人として軽んじられる不快感。 以及作为人类被轻视的不快感。
それら全てが〝ホームシック〟という形で突如爆発してしまった世一は、だからそのまま───前方でダルそうにゆらゆら身体を揺らしながら立っていたカイザーの背中に、割と本気でタックルしたのである。
这一切都以"思乡病"的形式突然爆发,所以世一就这样——朝着前方懒洋洋晃悠站着的凯撒的后背,相当认真地扑了过去。
「ゥ゙オ゙ッッ?!」 "呜哇?!"
どこかゴリラを彷彿とさせる、潰れた汚ったねェ声。 某种让人联想到大猩猩的、沙哑难听的嗓音。
それに、カイザーもこんな声出すんだな、なんて。 而且,没想到凯撒也会发出这种声音啊。
思ったまま、世一はウォームアップジャケットの上からでもわかる高めの体温に、ぐり、と頭を擦り付けた。
世一就这样把脑袋蹭了上去,隔着运动外套都能感受到对方偏高的体温。
つまりは世一の中で潔癖症疑惑があるカイザーへの、純然たる嫌がらせである。
这纯粹是世一对疑似有洁癖症的凯撒实施的恶意骚扰。
「ッ!? 誰だクソやろ──ハ? 世一?」 "呜!?哪个混蛋——啊?世一?"
「……、…………! ちょッちょっと! 世一お前ッカイザーに何しやがってんですか!? 離れろバカ! 離れ……エッ全然離れない!?」
"……、…………!喂、喂!世一你这家伙在对凯撒干什么!?快松开你这白痴!快松……咦怎么完全挣不开!?"
──なんか、いい気味かも。 ──这种感觉,或许还挺爽的。
このタックルに全然関係ない筈のネスの声がギャアギャアと煩いが。
本该与这次拦截毫无关系的尼斯在旁边叽叽喳喳吵得要命。
いつもと違う、余裕のないカイザーの声を聞いてほんのちょっとだけ気分が上がった世一からすると、そんなの全く気にならない。
听到与平日不同、略显慌乱的凯撒声音,让世一的心情稍微好了那么一点点——至于尼斯的吵闹,他根本毫不在意。
なんならちょっと。そう、ちょっとだけ。自分でも、それはおかしいだろって思うけど。
甚至可以说...没错,就只是稍微。连他自己都觉得这种想法有点不正常。
でも、でもなんでか久しぶりに、安堵すら感じてて。 可是,不知为何时隔许久,我甚至感到了一丝安心。
けど。でも。だってこの匂い──日本でいた時も、監獄でよく嗅いでたから。
但是。可是。毕竟这个气味——在日本时,在监狱里也经常闻到。
そうあの──今思えば色々と法律に接触していた気がしないでもない、というか確実に接触していた──トチ狂った巨大プロジェクト。
没错那个——现在回想起来总觉得多少触及了法律边缘,或者说确实越界了——那个疯狂的巨型企划。
日本どころか全世界を熱狂の渦へと巻き込み、世一たち〝才能の原石〟を世界の大舞台へと送り込んだ、絵心甚八のエゴイスティックな執念が渦巻いた閉鎖空間。
不仅是日本,更将全世界卷入狂热漩涡,把"未经雕琢的天才原石"们送上世界大舞台的,由绘心甚八自私执念构筑的封闭空间。
濃厚で濃密な一年間。 浓烈而深刻的一年。
世界を変えた、奇跡みたいな一年間。 改变了世界、如同奇迹般的一年。
日本サッカーで燻ってた潔世一を磨き直してくれた──あの、夢のような場所。
将日本足球界沉寂的洁世一重新打磨发光——那个,如梦似幻的舞台。
「………ぐすっ」 「……呜咽」
だからまァ、それを連想させる匂いに。 所以嘛,会联想到那种气味。
つい、鼻が鳴っちゃったのも。致し方ないワケで。 忍不住哼出声来。也是没办法的事。
「エッ」 "诶"
「エッ」 "诶"
世一が鼻を鳴らした途端──何故かピタリと、周りの喧騒が止んだような気がした。
世一发出鼻音的瞬间——不知为何,周遭的喧嚣仿佛突然静止了。
でも、そんなん、まるでどうでもよかったから。 但是,这种事情根本无关紧要。
自分を引き剥がそうと掴んできたネスの手が弛んだ隙に、世一は更にカイザーの背中にしがみつく。
趁着尼斯试图掰开自己而松懈力道的空档,世一更加用力地攀附在凯撒背上。
大きくて厚い身体。世一のモノとは全然違う、ガタイの良いゲルマンの肉体。
那副宽厚结实的躯体。与世一截然不同的、体格健壮的日耳曼肉体。
息を深く吸い込めば、薔薇の香水の奥に感じる──カイザー本人の肌の匂い。
深吸一口气,便能嗅到玫瑰香水深处——凯撒本人肌肤的气息。
そうだ体臭も、ドイツ人は多分、日本人より強め。 没错,德国人的体味大概比日本人更浓烈些。
そんでもってその体臭は、人によっては〝臭い〟に分類される。てか臭い。
而且那种体臭,在某些人闻来会被归类为"难闻"。不,就是难闻。
「………ッ、……ぅ゙~~~」 「………唔、……呜~~~」
濃厚な薔薇の匂い。薔薇の奥に感じる、カイザーの体臭。
浓郁的玫瑰香气。在玫瑰气息深处,隐约可闻凯撒的体味。
なんで香水で匂い覆うんだよコイツ、ムカつく。 这家伙干嘛非要用香水盖住味道啊,真让人火大。
でも、ムカつくのに、この匂いに安心しちゃうのが、もっとムカつく。
可是更气人的是,明明很火大,却莫名对这气味感到安心。
でも、そう、ドイツ人って、風呂をシャワーだけで済ます上に洗うの早いから。
不过话说回来,德国人本来就这样,洗澡只用淋浴还洗得特别快。
多分洗いが甘くって、だからみんな結構匂いがち。 大概是因为洗澡没洗干净,所以大家身上都容易有味道。
まぁこれは、あくまで世一の勝手な憶測だけども。 当然这只是世一自己随便猜的。
けど、きっとこの推測は当たってる。 不过这个猜测肯定没错。
だって黒名とか蜂楽とか千切とかとふざけて抱き合った時には、そこまでの体臭を感じることはなかったから。
因为和黑名、蜂乐、千切他们打闹拥抱的时候,都没闻到过那么重的体味。
そうだ。いつも謎に良い匂いのする玲王だって、体臭って感じの匂いは全くしない。
是啊。就连总是莫名散发着好闻气味的玲王,也完全没有那种体臭的感觉。
きっと洗剤だろう香料の匂いしかしなかった。 肯定只是洗衣剂或者香料的香味罢了。
けどドイツ人──いやもしかして、白人全般? ──の匂いは〝体臭〟って感じで濃厚で、その匂いを誤魔化す為に恐らくは香水をかなり強く付けてて。
但德国人——不,说不定是所有白种人?——的体味特别浓重,为了掩盖这种气味,他们大概喷了相当浓烈的香水。
その所為でもっと臭くて。鼻が曲がりそう。 结果反而更臭了。简直要熏死人了。
──なのにカイザーは、臭いよりも〝カイザーの匂いだ〟って。そういえば思うな。
──可凯撒却说,比起臭味,这是"凯撒的味道"。这么一说倒让我想起来了。
「………ッ、……、………ぅぅ゙~~~」 「………呜、……、………唔嗯~~~」
ずびっと、再度鼻を啜る。啜り続ける。 吸溜一声,他又抽了抽鼻子。不停地抽着鼻子。
目の奥が熱い。胸をぐるぐると埋め尽くしていた不安。それが、堰を切ったように溢れ出しちゃって、もう止めらんない。
眼眶发热。那些在胸口盘旋不散的不安,此刻如同决堤般倾泻而出,再也无法抑制。
でも、それは俺のせいじゃない。全部コイツのせい。 但这又不是我的错。全都怪这家伙。
だってこの背中、あったかくって知ってる匂いがして、なんか知んないけど安心するんだから。
因为这后背的温度和熟悉的气息,莫名让人感到安心。
そうだよ。俺をこんなにした、カイザーが悪い。 没错。把我变成这样的,都怪凯撒。
「…………よ、よいち」 「…………好、好疼」
戸惑ったカイザーの声が、抱き着いた身体の中から響いて来るような錯覚。
凯撒困惑的声音仿佛从紧贴的身体里传来,让人产生错觉。
変な声。いつもと全然違う。そうは思うけど、でもそれに世一はしがみつく力を強めるだけで、返事をする気には全くなれなかった。
奇怪的声音。和平时完全不同。虽然这么想着,但世一只是更加用力地抱紧对方,完全不想回应。
困るんだったら、どこまでも困らせてやりたい。 既然觉得困扰,那就让你困扰到极致好了。
なんて。後で絶対に後悔するだろう気持ちばっかり胸に湧き上がって、どうにも自分を止められないのだ。
这样的念头。胸中不断涌现出事后绝对会后悔的情绪,却怎么也无法控制自己。
──あ~~ぁ。これ絶対、あとで〝最悪〟になる。 ──啊~~啊。这绝对,之后会变得"糟透了"。
子供っぽい癇癪。子供っぽい行動。子供っぽい八つ当たり。
孩子气的暴躁。孩子气的行为。孩子气的迁怒。
その自覚はある。 我对此心知肚明。
駄目なことをしていると理解している。 我清楚自己在做错事。
でも、止められない。止めたくない。このままでいたい。
可是停不下来。也不想停。就想这样继续下去。
「………………」
だからやっぱり世一は無言のまま、カイザーの背中にぎゅうと抱き着いて。
所以世一还是沉默着,紧紧抱住了凯撒的后背。
けど、でも、あれ。思えば、世一をカイザーから引き剥がそうとしていたネスの手が、いつの間にか外れてる。
但是,等等,咦。仔细想想,原本试图把世一从凯撒身上扯开的尼斯的手,不知何时已经松开了。
それを世一は頭のどこかでちょっと不思議に思うけど。
世一在脑海的某个角落对此感到些许疑惑。
でもそんなん、思いっ切り我儘ぶりたい今の心情ではどうでもよくって。
不过现在这种想要尽情任性撒娇的心情下,那种事根本无所谓啦。
そう、そうだから、周りがのよくわかんない沈黙なんか。もう知らね。
是啊,所以周围那些莫名其妙的沉默。我才不管呢。
だって俺、今まですごくがんばってきた。 因为老子啊,一直都很拼命努力到现在。
がんばってきたんだから──ちょっとくらい、いいじゃん。
都这么拼命了——稍微任性一下也没关系吧。
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