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【5/3新刊】1000pieceのI LOVE YOU/朔也的小说

【5/3新刊】1000pieceのI LOVE YOU
【5/3 新刊】1000piece 的 I LOVE YOU

15,773字31分钟

05月03日(東京)SUPER COMIC CITY 32-day1-
05 月 03 日(东京)SUPER COMIC CITY 32-day1-

東7ホール L48ab 花浅葱  东 7 展馆 L48ab 花浅葱
05月18日(大阪)SUPER COMIC CITY 32-day3-
05 月 18 日(大阪)SUPER COMIC CITY 32-day3-

4号館 の39b 絵文字俱楽部  4 号馆 39b 展位 表情符号俱乐部

カイ潔再録本  凯洁同人志再录本
【1000pieceのI LOVE YOU】  【千片拼图般的我爱你】
・Twitterにて掲載のワンライ作品  ・Twitter 上发布的单篇作品
・Pixiv掲載作品  ・Pixiv 刊登作品
・2023年5月既刊「敗北を捧げる」の再録  ・2023 年 5 月已出版《献上败北》的再录版

文庫/R-18/1000p/会場頒布5000円  文库本/R-18/1000 日元/会场发售 5000 日元
※一部作品に♡喘ぎ・結腸責めあり  ※本作包含♡喘息声描写与结肠刺激情节
※既刊再録以外はweb上で読めます。紙で欲しい方向けです。
※除再录旧作外,均可在线阅读。本册面向想要实体书的读者。


とらのあな通販  虎穴通贩
https://ec.toranoana.jp/joshi_r/ec/item/040031245672#

表紙デザイン:nzworks様( @_nzworks_ )
封面设计:nzworks 老师( @_nzworks_ )

カバー:箔押し5種(つやけし金、つやけし銀、シルキーピンク、シルキーコバルト、シルキーアイスグリーン)
封面:5 种烫金工艺(哑光金、哑光银、丝光粉、丝光钴蓝、丝光冰绿)

表紙:特殊紙、箔押し1種(銀)  扉页:特种纸,1 种烫银工艺

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 墓標に青薔薇 2022/12/10  墓碑上的蓝玫瑰 2022/12/10



 目の前には、今にも崩れ落ちそうなほどに積み上がった大量のプリント。潔から見て左が手付かずの山、右が完了済みの山だ。
 眼前堆积如山的文件几乎要坍塌。在洁看来,左侧是未处理的文件堆,右侧是已完成的文件堆。

 まだまだ左の山の方が高いのはきっと目の錯覚だろう。そうでも思わなきゃやってられない。
 左侧文件堆明显更高肯定只是视觉错觉。不这么想的话根本撑不下去。

「……脳みそ干からびそう」  「……脑子快要枯竭了」

 少しでも手を止めてしまえば、集中が途切れるのは一瞬だった。
只要稍一停手,专注力就会瞬间中断。

 シャーペンを机に転がして腕を後ろへ伸ばすと、体がミシミシと嫌な音を立てる。これなら外周をランニングしていた方がいくらかマシだ。
把自动铅笔滚到桌上,向后伸展手臂时,身体发出咯吱咯吱的讨厌声响。这样看来还不如去外围跑步来得强些。

 使い古された椅子を傾けて揺らしながら、潔はため息をついた。
摇晃着用旧了的椅子,洁叹了口气。

 ――本当に戻ってきたんだなあ、一難に  ——真的回来了啊,一难

 こうして普通の高校生みたいなことをしていると、その事実をあらためて実感する。いや、普通の高校生みたいって普通に高校生ではあるんだけど
就这样做着普通高中生会做的事,反而让我重新意识到这个事实。不,说是像普通高中生,但其实本来就是高中生啊

 U20ワールドカップを終えて、ブルーロックプロジェクトは大成功を収めた。その主役を担ったメンバーには、もちろんそれ相応の対価が用意されている。世界有数の強豪チームへの入団というプレミアチケットだ。ただ問題は好きなことだけして許されるほど、世の中は甘くないってことだ。
U20 世界杯结束后,蓝色监狱计划取得了巨大成功。作为主角的成员们自然获得了相应的回报——加盟世界顶级豪门的入场券。但问题是,这个世界可没宽容到能让你只做喜欢的事。

 まさか絵心さんが高校くらいは卒業しておけなんて言い出すのは意外だったよな。
没想到绘心先生居然会说出"至少把高中读完"这种话,真是意外啊。

 今すぐ新天地へ飛び立ちたいと文句を言うやつも多かったが、潔は絵心の意見に同意だった。
虽然不少人抱怨想立刻飞往新天地,但洁却赞同绘心的意见。

 いきなり連絡も取れなくなった息子を怒るでもなく応援してくれた両親に顔向けできないようなことはしたくない。その一心で始めこそ気合いで頑張っていたが、数日も経てば気も緩み始める。将来のためになるとはいえ、キツいものはキツいのだ。
突然失联的儿子让父母担心不已,但他们没有责备反而全力支持,这份恩情让我绝不能做出辜负他们期待的事。最初全凭这股心气硬撑着,可没过几天就开始松懈。虽说对将来有益,但辛苦终究是辛苦。

 世間ではもう春休みに入っているというのに、出席日数の足りない潔はひとり毎日登校している。
尽管外界早已进入春休假期,因缺勤天数不足的洁仍独自每日到校上课。

 学生の本分は勉強だ。先生は潔の活躍を労いつつも、有無を言わさず補講を課した。日本フットボール連合からの招集とあって授業は公欠扱い。でも、単位は別。このままだと留年だと言われて、潔は思わず頭を抱えてしまった。
学生的本分是学习。老师虽赞赏洁在球场上的表现,却不由分说地安排了补课。日本足球联盟的征召虽算公假,但学分另当别论。听说这样下去会留级,洁不禁抱头哀叹。

 まあ、それでも補講を受けて課題を提出すれば進級させてくれるというのだから、これでもまだ優しい方かもしれない。今の潔から見れば、鬼のように見える先生も事実こうして休み中に付き合ってくれている。
不过只要参加补课并提交作业就能升级,这么看来校方还算宽容。在如今的洁眼中,这位看似魔鬼的老师其实连假期都在陪他补习。

 きっと潔に期待しているといった言葉も本心なんだろう。ありがたいとは思うけれど、まあそれでやる気が出るかというと話は別だ。
他说的"对洁抱有期待"那番话想必也是真心实意的。虽然心怀感激,但要说因此就能打起精神来,那就是另一回事了。

 特別講習と銘打たれたそれは潔を閉じ込める監獄に他ならない。サッカーの監獄から勉強の監獄に移っただけだった。
这场冠以"特别补习"之名的活动,不过是囚禁洁的另一个牢笼罢了。只不过是从足球的牢笼转移到了学习的牢笼里。

 ブルーロックに戻りてぇな。  好想回蓝色监狱啊。

 もう何度目かになるホームシックにため息をつく。  面对不知第几次袭来的思乡情绪,他深深叹了口气。

『声出していけー!!』  『大声喊出来啊!!』

 春休みとは言っても、部活動自体はやっている。遠くから聞こえてくる掛け声に窓の外を見るが、まだ蕾のままの桜が並ぶばかり。
虽说正值春假,社团活动却仍在进行。循着远处传来的呐喊声望向窗外,只见枝头樱花含苞待放。

 初日についついサッカー部の練習に見入ってしまったせいで、グラウンドとは反対の教室に変えられてしまったのだ。
都怪报到首日忍不住盯着足球部训练看,结果被调换到了与操场方向相反的教室。

 無断で出て行ったにも関わらず、潔の籍はまだサッカー部に残っていた。
尽管擅自离队,洁的学籍仍挂在足球部名下。

 さすがにレギュラーは奪われてしまったが、今の潔ならすぐに返り咲けるだろう。実際、監督からはいつでも戻って来いと言われている。ありがたい話だよな、ホント。
虽然主力位置确实被夺走了,但以洁现在的实力很快就能东山再起。实际上教练也说过随时欢迎他归队。真是值得感激啊,真的。

 ブルーロックを出てからは、まだ一度もサッカー部の練習には参加していない。やる気以前に補講が朝から夕方までみっちり詰まっていて、解放された時にはもう練習が終わっている。潔も進級がかかっているから、無理に抜け出そうとはしなかった。
离开蓝色监狱后,他还一次都没参加过足球部的训练。倒不是没干劲,而是从早到晚都排满了补习课,等解放时训练早就结束了。洁自己也面临升学问题,所以没硬要抽身参加。

 とはいえ、体が鈍らない程度には練習もしている。補講が終わった後は、自主練する部員達に紛れてトレーニングに勤しむのがここ最近の日課だった。
话虽如此,他还是保持着不至于让身体生疏的训练量。最近每天的日常就是补习结束后混在自主训练的队员里埋头锻炼。

 次こそ全国、と闘志を燃やすレギュラー陣は当たり前のように毎日居残り練習をしている。人の良い多田なんかは一人でトレーニングをこなす潔に、こっちに入れよと誘ってくれたりもした。
那些怀着"下次一定要打进全国大赛"斗志的主力队员们,理所当然地每天都留下来加练。性格温和的多田甚至还会邀请独自训练的洁加入他们。

 仲間思いな優しい連中だ。けれど、潔がその誘いに乗ったことは一度もない。
这些家伙既重情义又温柔体贴。但阿洁从未接受过他们的邀约。

 散り散りになったメンバーのためにアンリが用意してくれたフィジカルトレーニングはそれなりのボリュームがあり、いい隠れ蓑になった。監獄式のトレーニングかと囃立ててくる面々を潔は曖昧に笑って受け流す。本音を言えば対人戦もしたいが、恐らくやめておいた方がいいだろうと思ったから。
 阿凛为四散各处的成员们准备的体能训练量相当可观,成了绝佳的掩护。面对众人起哄说这是监狱式训练,阿洁只是含糊地笑着敷衍过去。说实话他也想打对抗赛,但总觉得还是克制为妙。

 黙々とメニューをこなしていると、自然と隣で行われているミニゲームの様子が視界に入ってくる。
 当他默默完成训练项目时,余光自然瞥见了旁边进行的小型比赛。

 皆、声を掛け合いながらパスを回して楽しそうだ。しばらくチームを離れていた潔の目から見ても連携が取れているように思う。こっちは仲間内でも殺伐としてたしな。
 大家传着球有说有笑。即便在离队许久的阿洁看来,他们的配合也相当默契。而我们那边就连队友之间都充满肃杀之气呢。

 誰が一番でもない。皆が横並びのサッカー。  这不是谁当第一的比赛。这是全员并肩作战的足球。

 今の潔にはどうしてもそこに混ざりたいとは思えなかった。それにブルーロックに染まりきった潔は、チームにとってきっと異物にしかならない。
 此刻的洁世一无论如何都无法产生参与其中的念头。更何况已被蓝色监狱彻底浸染的他,对这支队伍而言注定只会成为异物。

 ワンフォーオール、オールフォーワン。   人人为我,我为人人。

 懐かしい掛け声を聞きながら、ブルーロックに戻りたいと強く思った。
 听着这令人怀念的口号,他强烈地渴望回到蓝色监狱。




「松風黒王高校から練習試合の打診があった」  "松风黑王高中发来了练习赛的邀约"


 昼休みに教室を訪ねてきた監督は、開口一番にそう切り出した。
午休时分造访教室的教练,开口第一句话就直奔主题。

 想定外の来訪者に、空き時間でランニングをするはずだった予定が崩される。頭の中で予定を組み替えながら表情を取り繕った潔に、監督は気づかなかったようだ。
面对突如其来的访客,原本计划利用空闲时间跑步的安排被打乱。在脑海中重新调整日程的同时,洁努力维持着表面的平静,教练似乎并未察觉他的异样。

 覚えているかと続けて問われて首を縦に振る。忘れもしない因縁の相手だ。あの試合がなければ、今の潔はきっといない。
当被问及是否还记得对方时,他点了点头。那是刻骨铭心的宿敌。若没有那场比赛,现在的洁根本不会存在。

 松風黒王高校はブルーロック計画により主力FWの欠けた強豪校を押しのけ、全国大会で準優勝を飾ったらしい。次の県予選でも一番の壁となるのは間違いない。
松风黑王高中似乎凭借蓝色监狱计划,击败了因主力前锋缺席而实力受损的强校,在全国大赛中获得了亚军。在接下来的县预选赛中,他们无疑会成为最大的障碍。

 格上から練習試合を申し入れてくれるなら受けない手はなかった。が、その条件がどうにもいただけない。
若能从强队那里获得练习赛的邀请,自然没有拒绝的道理。但对方提出的条件实在令人难以接受。

「向こうは潔を出せと言ってきている」  "对方要求我们派出洁世一"
「俺、ですか? でもチームを離れて久しいですし」  "我吗?可是我已经离队很久了"
「吉良くんがぜひとも潔と戦いたいと言ってくれているらしい。お前も知ってるだろ? 日本サッカー界の宝と言われている、あの吉良涼介くんだ」
“听说吉良君非常想和洁一较高下。你也知道的吧?就是那个被称为日本足球界瑰宝的吉良凉介君。”

「…………」  “…………”

 潔も松風黒王高校と聞いて吉良のことを思い出さない訳じゃなかった。入寮テストのことを考えれば恨まれていても不思議じゃない。あの時、吉良は蜂楽が来たからと言ったが、最後にボールを蹴り抜いたのは潔自身だ。
听到松风黑王高中这个名字时,洁并非没有想起吉良。考虑到入寮测试那件事,就算被记恨也不奇怪。当时吉良虽然说是因蜂乐而来,但最终将球踢进网窝的正是洁本人。

 ――つまり、そういうこと。  ——也就是说,就是这么回事。

 どう転んでも気持ちの良い試合にはならない。もしかしたら、他の部員に不愉快な思いをさせてしまう可能性だってある。
无论怎么看这都不会是一场令人愉快的比赛。说不定还会让其他队员感到不快。

 オニごっこで負けた吉良はイケメンにあるまじき表情をしていた、と思う。
在捉鬼游戏中落败的吉良,露出了与帅哥形象极不相称的表情——我这样想着。

 実のところ、先ほどから吉良の顔を思い出そうとしていたが、ぼんやりとモヤがかかったようにしか浮かんでこない。それよりは蜂楽の楽しそうな顔の方がよっぽど鮮明に思い出せるくらいだ。
实际上,从刚才起我就试图回忆吉良的脸,却只能想起模糊朦胧的轮廓。相比之下,蜂乐那副开心的表情反而能回忆得更加清晰。

「すみません。俺、補講受けないと進級が危ういんで」
"抱歉。我要是再不去补课的话,恐怕就要留级了。"

「そこは俺が交渉するから任せろ」  “那边我去交涉,交给我吧”
「いや、でも……」  “不,可是……”
「潔、これはチャンスだぞ。吉良くんから指名されて怖気付く気持ちはよく分かる。だが、格上に食らいついていかなきゃ全国には行けない!」
“洁,这可是机会啊。被吉良君指名感到胆怯的心情我很理解。但如果不咬紧牙关挑战强者,就没法进军全国大赛!”

 別に怖気付いてる訳じゃない。そう否定しかけて途中でやめた。
(其实并不是胆怯)——刚想这样反驳又中途作罢。

 監督の言った言葉は、監督が意図しない形で的を射ていたから。潔が吉良と戦うことから逃げているのは間違いない。
因为监督说的话,以他未曾预料的方式正中要害。毫无疑问,洁正在逃避与吉良的对决。

「去年は残念な結果に終わったが、今年こそは全国に届くと信じている。一難は強い。ワンフォーオール、オールフォーワンだ。お前には皆がついている」
"去年虽然遗憾收场,但我坚信今年一定能进军全国。一难很强。One for all, all for one。大家都会支持你的"

「……はい」  "……是"

 観念して頷いた潔の頭を監督が笑いながらワシャワシャと撫でた。弾んだ声で語られるチームの状況を一つ一つ頭にインプットしていく。
监督笑着揉了揉认命点头的洁的头发。洁将监督用轻快语气讲述的团队状况逐一记在脑中。

 たぶん潔が一難でプレーするのはこれが最後だ。まだ進路を決めた訳じゃないけれど、それだけはよく分かっていた。
大概这是洁在一难高中踢的最后一场比赛了。虽然还没决定未来的去向,但这一点他心里很清楚。

 一難高校サッカー部は良いチームだ。部員同士の仲は良好だし、埼玉県内では強豪と言われている。そこでツートップを張らせてもらえるんだ。文句をつける方が頭がおかしい。
一难高中足球部是个优秀的团队。队员之间关系融洽,在埼玉县内也算得上是强队。能在这里担任双前锋之一,抱怨的人才是脑子有问题。

 ――ごめん、皆。  ——对不起,大家。

 一難のメンバーとはブルーロックの連中よりも長い付き合いで、もっとお互いのことを深く語り合っていたはずだった。なのに潔は全国優勝と夢を語り合った彼らの表情をもう思い出せない。
和一难的队友们相处时间明明比蓝色监狱那群人更久,本该有更多深入交流的。但洁却已经想不起和他们畅谈全国夺冠梦想时的表情了。

 皆に相応しくないのは、きっと潔の方だった。  真正配不上大家的,恐怕是洁自己才对。



「パス出せ、パス! 繋いでいけ!」  "传球!快传球!保持连线!"

 約束通りスケジュールを調整してもらったおかげで、潔は陽の高いうちからグラウンドにいた。ピッチの中では、主力のメンバーが二つに分かれて試合をしている。
多亏事先协调好了日程安排,洁得以在阳光正盛时就来到训练场。球场内,主力队员们正分成两队进行对抗赛。

 潔が抜けていた時間の分、チームは着実に成長していた。だが、対応できないほどの大きな変化はない。今すぐ投入されても問題なくついていけるだろう。
在洁缺席的这段时间里,球队确实有所成长。但并没有发生让他难以适应的巨变。即使现在立刻上场,他也能毫无障碍地跟上节奏。

「潔、行けるか?」  "洁,能上吗?"
「はい!」  "能!"

 監督に呼ばれて立ち上がった。号令がかかって多田の隣にいた一年生FWが入れ替わりで抜けていく。久しぶりの対人戦だ。胸が高鳴らない訳がない。
被教练点名后站起身来。随着哨声响起,原本站在多田身旁的一年级前锋被轮换下场。久违的实战对抗。心脏不可能不剧烈跳动。

 一つ深呼吸をして頬を軽く叩く。ピッチの中に入ると、潔の挙動を見ていたらしい多田がニヤニヤしながら肩を組んでくる。
做了个深呼吸,轻轻拍了拍脸颊。刚踏入球场,似乎一直在观察洁动作的多田就挂着促狭的笑容凑过来勾住了肩膀。

「何だ、緊張してんのか?」  “怎么,紧张了吗?”
「多田ちゃん」  “多田”
「お前と組むの久しぶりだな。おかえり、相棒」  “好久没和你搭档了。欢迎回来,搭档”
「うん、ただいま」  “嗯,我回来了”

 元々、チームでの役割は前線におけるパサーが大きな比重を占めていた。味方から来たボールをトラップして受け止める。
原本在团队中,前锋传球手的角色占据着重要比重。他的任务是接应队友传来的球并稳稳停住。

 少しぎこちない体の動きとは反対に思考はちゃんと巡っていた。使い方を覚えた優秀な目はフィールドの状況を正確に把握する。
 虽然身体动作略显生涩,但思维却异常清晰。那双掌握要领的锐利眼眸,正准确捕捉着场上瞬息万变的局势。

 潔は最適解を導き出して走り出した。   洁在计算出最优解后猛然启动。



「潔、なぜ呼び出されたか分かっているな?」  "洁,你应该明白为什么被叫来吧?"
「……はい」  “……好”

 世界基準を目の当たりにした後の高校レベルのサッカーなんてタカが知れている。潔は誰に頼ることもなく中央突破を試みて実際に成功した。
见识过世界级水准后,高中足球比赛简直不值一提。洁不依靠任何人尝试中路突破,并且真的成功了。

 ストライカーとしてこれ以上ない価値を示したのだ―と絵心なら言ってくれたかもしれない。
作为前锋,他展现了无与伦比的价值——如果让绘心来说的话大概会这么评价吧。

「U20日本代表に選ばれたのは確かに凄いことだ。だが、それと自己中なプレーに走ることは別なのも分かるな?」
“入选 U20 日本代表确实很厉害。但你应该明白,这和踢球独断专行是两码事吧?”

「…………」
「代表メンバーに比べれば、一難のチームメイトは確かに物足りなく感じるかもしれない。だが、自分の力不足の責任を相手に押し付けてはいけないことも潔なら理解できるはずだ。お前は一難高校サッカー部の潔世一なんだから」
「和代表队成员相比,一难高中的队友们确实可能让你觉得不够格。但你应该明白,不能把自己的无能归咎于他人——毕竟你可是洁世一,一难高中足球部的王牌。」

 でも、俺は得点を上げました。   可我还是进球了。

 そう言い返したとしても無駄であろうことは呼び出された時点で察していたので何も言わなかった。得点を上げたやつが一番偉いという理論はここでは通用しない。
被叫来训话时我就明白,这种辩解毫无意义。在这里,"进球者最伟大"的理论根本行不通。

 あくまでチームとしての戦術が優先され、その戦術も使い古されたありがちなマニュアル。変化をすなわち異常だと始めから思い込んでいる。だから、強豪と呼ばれても全国常連校には及ばないのだ。
说到底,团队战术始终被摆在首位,而那些战术也不过是陈腐老套的教条。他们从一开始就将变化等同于异常。正因如此,即便被称为劲旅,也始终无法跻身全国强校之列。

 潔が自分の主張を押し通すことは難しくはなかった。我を通すに見合うだけの成果はすでに内外に知れ渡っているし、そもそも一難でプレーするメリットが潔には一切ない。追い出されても痛くも痒くもないのだ。
 洁要贯彻自己的主张并不困难。他内外皆知的成绩足以支撑这份坚持,更何况对洁而言,在一难高中打球本就毫无益处。即便被赶出球队,他也毫不在乎。

「……自分勝手なプレーをして、すみませんでした」  「……擅自按自己的方式打球,非常抱歉」
「分かってくれたならいい。皆だってきっと分かってくれるはずだ」
「能理解就好。大家肯定也都会理解的」

 ――ただわざわざ輪を乱してまで得られるメリットもない。
——毕竟特意打乱团队节奏也捞不到什么好处。

 今はもう思い出すのは難しいが、彼らは潔のチームメイトだったのだ。一緒にプレーしたいとは思えないけれど、サッカーは好きでいて欲しいと思う。
 如今已很难回想起来,他们曾是洁的队友。虽然不想和他们并肩作战,但还是希望他们能继续热爱足球。

 肩をパシパシ叩かれながら、潔は愛想笑いをした。   被人啪啪拍着肩膀,洁挤出了营业式笑容。

 こうして、いくつの才能が沈んできたのだろうかと考えるとブルーロックに呼ばれたことは本当に幸運だったのだろう。
 每当想到有多少才能就这样被埋没,就觉得能被蓝色监狱选中真是幸运至极。



 一悶着あったものの、潔はチームに適応した。  虽然一开始有些生疏,但洁已经适应了团队。

 最初の頃は思考と動作のちぐはぐさにワンテンポ遅れて動き出すこともままあったが、一週間もすれば慣れもする。
 最初时常因思维与动作不协调而慢半拍,但不到一周就逐渐习惯了。

 チームメイトからは糸師凛はウチには居ないんだぞと揶揄われたから、彼らは潔が何に戸惑っていたかまでは気づかなかったようだ。ベストではないけれど、それなりに上手くやれてる手応えは感じる。
 队友们揶揄说"我们这儿可没有糸师凛",看来他们并未察觉洁困惑的真正原因。虽非最佳状态,但他确实感受到了渐入佳境的实感。

 それに潔自身は特に強みとも感じていなかったフィジカルのおかげで、褒められることも増えた。
 更意外的是,洁原本并不突出的身体素质反而频频受到称赞。

 これくらいドイツ組に比べたらようやくピッチの上に立つことを許されるレベルだ。今まで置かれていた環境との違いを一層強く感じる。
这种程度才勉强达到被允许站在德国组球场的水平。与之前所处的环境差异感愈发强烈。

 幸か不幸か、チームメイト達は目の前の潔のプレーを素直に受け止めているらしい。
不知是幸运还是不幸,队友们似乎坦然接受了眼前洁的表现。

 ブルーロックはそんなに甘くなかったけどな。  不过蓝色监狱可没这么温柔。

 もし潔がフィジカルで勝負する選手だったら、一次選考はギリギリ突破できたとしても二次選考の時点で落とされていただろう。
如果洁是靠身体素质硬拼的选手,就算勉强通过初选,在二选阶段也肯定会被淘汰吧。

 俺も努力すれば並べるかも、と期待に沸き立つ調子のいいやつら相手にわざわざ水を差す必要もない。彼らは自身のサッカー人生を賭けて勝負なんかしたことがないんだから。そして、これからもそんな経験をすることはないだろう。だったら、波風立てず曖昧に笑って受け流すのが一番いい。
我也没必要给那些满怀期待、自以为努力就能比肩的家伙泼冷水。他们从未赌上自己的足球生涯去拼搏过——今后恐怕也不会有这种经历。既然如此,和和气气地含糊笑着应付过去才是上策。

 それに純粋な個人技のみなら、一難にだって優れた選手はいる。潔の後釜で入った一年生FWは、地元では有名なクラブチームの出身だった。
况且单论纯粹的个人技术,一难高中也不乏优秀选手。接替洁位置的一年级前锋,就是当地知名俱乐部青训出身。

 彼のシュート技術はおそらくチームで一番。ブルーロックに招集されるまでの間しか見ていないが、高校でも十分に通用するレベルだ。
他的射门技术恐怕是队内第一。虽然只在蓝锁召集令发布前短暂观察过,但确实具备足以在高中联赛立足的水准。

 きっと本人は悔しくて仕方がないだろうなと潔は同情した。
洁不禁同情起对方——想必那家伙现在懊悔得要命吧。

 得点をもぎ取るだけの実力はあるのに、チームに馴染めないという理由だけで外されたのだから。彼は長らくフィニッシャーとしてチームのワントップを任されてきた。そのせいで一難の繋ぐサッカーに適応することができなかったのだ。
他明明具备独揽得分的能力,却仅仅因为无法融入团队就被排除在外。长久以来他作为终结者肩负着球队单箭头的重任,正因如此才难以适应这种讲究传切配合的足球风格。

 まあ、それでも実力は確かだから来年くらいには上がってくるに違いない。その頃には自分のゴールへの執着も忘れ、集団に馴染んでしまっているだろうが
不过以他的实力,明年肯定能重返主力阵容吧。到那时他大概早已淡忘对个人进球的执着,彻底融入集体了

 潔はそれが残念だと思う。  洁为此感到遗憾。

 ボールがピッチの外に蹴り出されたタイミングでベンチを見ると、待機していた部員の一人と視線が合った。
当足球被踢出场外的瞬间,他望向替补席,与其中一名候补队员的视线不期而遇。

 一年生FWの彼だ。彼はずっと潔のことを観察していたのかもしれない。心持ち緊張しながらも視線を逸らせずにいると、彼の口元が動いた。
他是一年级的前锋。或许他一直在观察着洁。洁强忍着内心的紧张没有移开视线,这时他的嘴角动了动。

「潔先輩、ファイトー!!」  "洁学长,加油!!"

 そこに嫉妬の色は見つけられず、ただ純粋な尊敬の念しか込められていなかった。
那声音里找不出丝毫嫉妒的色彩,只蕴含着纯粹的敬意。

 内心ガッカリしてしまう気持ちを押し殺して、潔は軽く手を上げて答える。すぐに再開したプレーに集中する振りをして、もうベンチに視線を向けることはなかった。
洁强压下内心涌起的失落感,轻轻抬手回应。随即假装专注于重新开始的比赛,再也没有将目光投向替补席。

 絵心が言いたかったのはきっとこういうことだろうな、と潔は思った。
洁心想,绘心前辈想表达的应该就是这个意思吧。




⿴⿻⿸



 ブルーロックのメンバーとは、脱獄後も頻繁に連絡を取り合っていた。潔の一学年上の連中はすでに入団契約を結んでいるやつもいて、旅立つ前にと何度も送別会が企画されている。
即便越狱成功后,洁仍与蓝色监狱的成员们保持着频繁联系。比他高一届的前辈们有些已经签下了职业合约,临行前大家策划了好几次送别会。

 潔もなるべく顔を出すようにはしていたが、補講に加えて部活にまで顔を出していればそんな暇があるはずもない。けれど、今回ばかりはほぼフルメンバーが参加ということもあって無理をして参加を決めた。
洁虽然尽量抽空参加,但既要补课又要参加社团活动,实在分身乏术。不过这次聚会几乎全员到齐,他还是硬挤出时间参加了。

「いっさぎー! 元気そうじゃん」  "一砂!看起来精神不错嘛"
「そっちもな。久しぶり、蜂楽」  "你也是啊。好久不见,蜂乐"

 まるで数ヶ月のブランクを感じさせないような素振りに何だか実家に戻ってきたような安心感がある。ホームシックと言うのはおかしいかもしれないが、それに似た何かはあったのだろう。
他那副仿佛数月空白期从未存在般的自然态度,莫名让人有种回到老家的安心感。说是思乡情结或许有些奇怪,但确实存在着某种类似的情绪。

「おい、ヘタクソ。俺を無視すんな」  "喂,菜鸟。别无视我啊"
「んな訳ないじゃん。むしろ今日の主役だし」  "怎么可能啊。倒不如说今天你才是主角"
「ならいい」  "那就好"

 蜂楽を押しのけて出てきた馬狼は潔の言葉に満足そうに鼻を鳴らした。
被蜂乐挤开的马狼对洁的话语满意地哼了一声。

 今日は馬狼の壮行会という名目で集まっている。もちろん皆が皆そうではなく、ただ単純に古巣のやつらと会いたかっただけのやつもいるのだろうが
今天是以马狼壮行会的名义聚在一起的。当然并非所有人都是这个想法,其中肯定也有人单纯只是想和老队友们见见面

「もー、素直じゃないんだから。あれだけ潔が来るか気にしてたのにね」
"真是的,一点都不坦率。明明那么在意洁会不会来呢"

「うるせえ。コイツが腑抜けてないか確認しに来ただけだ」
"烦死了。我只是来确认这家伙是不是还活着"

「おう、俺も会いたかったぜ」  "哟,我也很想见你啊"
「だから、違えって言ってんだろ」  "所以都说了不是那样啊"

 相変わらずな反応に潔は笑った。蜂楽からは馬狼がどうしても潔と会いたいらしいと聞いて来たのだが、この分だと黙っておいた方が良さそうだ。
面对一如既往的反应,洁不禁笑了出来。虽然从蜂乐那里听说马狼似乎无论如何都想见洁一面,但看这情形还是保持沉默为妙。

「で、潔は今何してんの? 付き合い悪いし、彼女でも出来た?」
"话说洁你现在在干嘛?这么难约,该不会是交女朋友了吧?"

「……お前、それ。絶対ないって分かってて言ってんだろ」
"……你这家伙。明明知道绝对不可能还故意这么问吧"

「にゃはは、バレた?」  "喵哈哈,被发现啦?"

 あっけからんと笑ってみせる蜂楽に潔はため息をついた。
蜂乐爽朗地笑着,洁却叹了口气。

 確かに何をしているのかと聞かれれば、難しい質問ではある。潔自身も成り行きでそうなっただけで、望んでそうしている訳じゃないから。
若真要问他在做什么,确实是个难题。洁自己也只是顺势而为,并非出于本意。

「実は部活の方で練習試合に出ることになっちゃってさ。そっちの調整にも時間かかるわ、補講も受けなきゃいけないわで忙しくて」
"其实是社团那边突然要打练习赛。那边要调整时间,还得参加补习,实在忙得不可开交。"

「ありゃりゃ、何でまた部活に?」  "哎呀呀,怎么又搞起社团活动了?"
「うーん、……なんか吉良くんから指名みたいでさ」  "嗯...感觉像是被吉良君点名了似的"
「キラ?」  "吉良?"

 蜂楽は初めて聞いたとでも言うように首を傾げている。ストレートな反応に潔は笑ってしまった。
蜂乐像是初次听闻般歪着头。面对如此直率的反应,洁不禁笑出了声。

 顔を合わせたのはあの入寮テストくらいだ。その後も代表メンバー入りなんてしなかったし、忘れたのも無理はない。
他们上次见面还是在入寮测试那会儿。之后吉良也没能入选代表队,被遗忘也是情理之中。

「ほら、最初の鬼ごっこで落ちたやつ」  "看,就是第一次玩捉鬼游戏时掉队的那个"
「ふーん、潔はよく覚えてるね」  "哼,洁你倒是记得挺清楚嘛"
「いやいや、あれだけ睨まれてて忘れられる方がすごいから」
"不不不,被那样瞪过还能忘记的人才叫厉害呢"

 関わったのはほんの少しだが、印象には残っている。顔を思い出せない潔が言うことじゃないかもしれないが
虽然交集不多,但印象确实深刻。这话从连对方长相都记不清的洁嘴里说出来或许不太合适

「でも、潔もお人好しだね」  "不过,洁也太老好人了吧"
「あー、まあ借りにも古巣だし」  "啊——毕竟老东家还是有情分在的"
「そんなつまんないサッカーするなんて、俺だったら絶対に無理」
"要我踢这么无聊的足球绝对办不到"

 ベッと舌を出した蜂楽はあくまで感想を言っただけで悪気はないんだろう。だからこそ、その言葉はストレートに潔の胸に刺さった。
 吐着舌头的蜂乐只是单纯发表感想并无恶意。正因如此,这句话才更直接地刺痛了洁的心。

 確かに〝つまんないサッカー〟かもしれない―と思ってしまう潔は酷いやつなのか。それでも付き合ってやるだけ優しい方なのか。
或许想着"确实是场无聊的足球赛"的洁真是个过分的家伙。但即便如此还愿意陪着他,已经算是很温柔了吧。

 答えも見つけられないままに曖昧に濁して答える。  找不到答案的他含糊其辞地回应道。

「いやさ、監督が妙に熱くなっちゃって断るに断れなくて」
"不是啦,教练突然特别来劲,实在没法拒绝"

「ふぅん、そっか。潔ってホントお人好しだね。―でも、そんなにのんびりしてたら置いてっちゃうよ?」
"哼~这样啊。小洁真是老好人呢。——不过要是继续这么悠哉的话,我可要丢下你咯?"

 ワントーン落ちた声は、ブルーロックにいた頃も何度か聞いたものだ。
那低了一度的声线,在蓝色监狱时也曾听过几次。

 いくら相棒とはいえ、自分の隣に相応しくなければ切り捨てる。言外にそう取れるような言葉に、蜂楽からのプレッシャーを痛いほどに感じた。
 即便是搭档,若配不上站在自己身边就该舍弃。从蜂乐的话语中能明显感受到这种弦外之音带来的压迫感。

「すぐに追い越す。今度は待たせねぇよ」  "马上就会超越你。这次可不会让你等了"

 理由のない後ろめたさを押し隠すようにして潔は言い切った。
 洁像是要掩盖无来由的愧疚般斩钉截铁地说道。

 気を抜いていてはすぐに彼らの背中は見えなくなってしまう。戦友とは言えども、一ミリも油断出来ない相手だ。
稍不留神就会立刻看不见他们的背影。虽说是战友,但也是丝毫不能大意的对手。

「も~、そこで追いつくじゃないあたり潔ってさぁ」  "真是的~明明在那里就能追上了,偏偏要耍帅"

 背筋がひりつくような緊張を解いて蜂楽が破顔した。どうやら失望は免れたらしい。
蜂乐舒展紧绷的神经露出笑容。看来似乎免于让他失望了。

 続々と集まってくる旧友達から近況を聞きながら、やはり一難でプレーするのはこれが最後だと決意する。進路は様々だが、今の現状に満足して停滞するやつなんてブルーロックには存在しない。足踏みをしている暇などないのだ。
听着陆续聚集而来的老友们讲述近况,他再次下定决心这将是最后一次在同一赛场竞技。虽然前路各不相同,但在蓝色监狱里不存在安于现状停滞不前的家伙。根本没有原地踏步的闲暇。

 少しずつ咲き始めていた桜はもう見頃を迎えようとしていた。
樱花已渐次绽放,即将迎来最佳观赏期。



 電車を乗り継ぐこと一時間。松風黒王高校は一難より校舎が真新しく見えた。
换乘电车约一小时后,松风黑王高中的校舍显得比一难高中崭新许多。

 さすが全国出場の実績があるだけあって、グラウンドも設備が整っている。潔がおのぼりさんよろしくキョロキョロと辺りを見回していると、隣からジャージの袖を引っ張られた。
不愧是拥有全国大赛参赛资历的学校,操场设施一应俱全。当洁像初来乍到的游客般东张西望时,身旁有人拽了拽他运动服的袖子。

「なあ」  "喂"
「ん、どうかした?」  "嗯,怎么了?"
「お前なんかすっげぇ睨まれてるけど」  "你好像被人狠狠瞪着啊"

 多田が指さした方を振り返ると、緑のユニフォームを着た選手が潔のことをジッと見つめていた。
多田所指的方向,回头望去,只见一名身穿绿色队服的选手正死死盯着洁。

 おそらく吉良だ。  多半是吉良吧。

 頬を痩けさせ目の下にクマを拵えつつも瞳を爛々と光らせている様は、一種のホラーだった。さすがの潔も頬を引き攣らせて乾いた笑いを漏らす。
消瘦的脸颊配上浓重的黑眼圈,却依然目光炯炯的样子,简直像恐怖片场景。就连一向冷静的洁也不禁脸颊抽搐,挤出干笑。

「う、うん、何だろうな」  "呃、嗯,怎么说呢"
「……大丈夫か?」  "......你没事吧?"
「あー、たぶん大丈夫。ほら、行こ行こ」  "啊——应该没问题。好啦,快走快走"

 声を掛けられる前に、と多田を引っ張って皆の後を追う。
还没等对方开口,我就拽着多田追上了众人。

 何かしらのいざこざがあるとは覚悟していたが、まさかここまでとは思わなかった。前に会った時は品行方正そうだったし、さすがに殴りかかってくることはないだろう―と信じたいのは潔の甘さだろうか。
虽然早有心理准备会发生些争执,但没想到会闹到这种地步。上次见面时明明看起来品行端正,总不至于动手打人吧——这种天真想法或许暴露了我的幼稚。

 ウォーミングアップ中もチラつく視線のおかげで他の部員からも心配されてしまったが、そこはどうにか誤魔化した。
热身时频频走神的样子甚至引来了其他部员的关心,不过总算被我搪塞过去了。

 元々向こうが指名してきたんだから、ライバル心を持たれていても不思議じゃない。それにしては殺気立ちすぎている圧は、それだけやる気があるんだとすり替える。
毕竟原本就是对方主动邀约的,就算被当成竞争对手也不奇怪。但那股杀气腾腾的压迫感,我只能自我安慰说这代表他斗志昂扬。

 11番のビブスを着ながらも、今日の試合は一波乱ありそうだとため息が出た。
穿着 11 号球衣,却不由得为今天的比赛可能出现的波折叹了口气。

 どう足掻いても吉良からの執拗なマークは避けられないだろう。せっかく一難のメンバーとサッカーができる数少ない機会だというのに
无论怎么挣扎,恐怕都躲不开吉良的严防死守。明明这是难得能和这群优秀队友一起踢球的宝贵机会

「潔、ほら円陣組むぞ」  "洁,快来围圈打气"
「悪い、すぐ行く!」  "抱歉,马上来!"

 考え事をしていれば、他のスタメン達はすでにベンチ前に集まっていた。多田のすぐ隣の空いてる場所に潔も滑り込む。
正想着事情时,其他首发队员已经聚集在休息区前。洁也在多田身旁的空位上迅速落座。

「一難、ファイトー!!」  "一难,加油啊!!"
「おうッ」  "噢——"



 試合運びはおおむね松風黒王高校の優勢で進んだ。  比赛局势基本按照松风黑王高校的优势推进着。

 あれだけ睨みつけてきたのだから当然、潔のマークは吉良が来ると思っていたが、予想に反して他の選手が張り付いてきた。
明明被那样死死盯防着,洁原本理所当然地以为吉良会亲自来盯防自己,没想到却换成了其他选手贴身防守。

 正直なところ少しだけホッとしたが、ボールを持っていない時にまで執拗にマークしてくるのは勘弁して欲しい。おかげで試合開始から前半が終わるまで、潔はほとんどボールに触れていない。
说实话倒是稍微松了口气,但连无球状态都被这样穷追不舍地盯防实在令人困扰。结果从开赛到上半场结束,洁几乎没怎么碰到球。

 マークが少しでも甘いと吉良が物凄い形相で睨んでくるから相手も離れるに離れられないようだ。隙をついて抜け出そうにも、ここまでやられるとさすがに厳しい。もはや怖いを通り越して呆れてしまうほどの執着ぶりだ。
只要盯防稍有松懈,吉良就会用可怕的表情瞪过来,搞得对方选手根本不敢离开半步。就算想找机会突破,被防到这种地步也确实无计可施。这种执着程度已经超越了可怕,简直让人目瞪口呆。

 一方で吉良本人はプレースタイルが前よりも随分と攻撃的になった。ワントップでエースストライカーを補佐するような布陣は、皮肉にも吉良をエゴイストたらしめている。
而吉良本人的踢球风格却变得比从前更具攻击性。作为单箭头辅助王牌射手的阵型,讽刺的是反而让吉良更像个利己主义者了。

 この勢いでブルーロックに来てたら、いい線いってたかもしれないのにな。
要是以这种状态去蓝色监狱的话,说不定能混得风生水起呢。

 敵とはいえ、そう考えてしまうのは潔がすっかり絵心の理論に染められてしまったからだろうか。まあ転機のタイミングは人それぞれだ。チャンスの時に掴めなかった時点で吉良はそこまでだったのだろう。
虽说对方是敌人,但会产生这种想法,大概是因为洁已经完全被绘心的理论同化了吧。不过人生转折点的时机因人而异。在没能抓住机会的那一刻,吉良的极限也就到此为止了。

 このままワンサイドゲームで終わりそうかというと、一難もやられっぱなしじゃない。
眼看比赛就要变成一边倒的局面,但这边也不是单方面挨打。

 潔の身動きが取れないと分かると、交代枠を使って例の一年生FWを投入した。吉良はやはり頭一つ分飛び抜けているが、他は全く歯が立たないほどじゃない。こちらの攻撃もちゃんと通じている。
发现洁无法自由行动后,对方立即启用替补名额派上了那个一年级前锋。吉良确实技高一筹,但其他队员还不至于毫无招架之力。我方的进攻也依然能有效突破。

 ハーフタイムミーティングでは、潔はこのままDFの注意を引き付けておくように指示があった。張り付いていた選手は一年生ながらも期待のルーキーらしく、無理に引き連れたまま混じるより遠ざけた方がチャンスメイクできると踏んだようだ。
中场休息会议上,洁被指示要继续吸引对方后卫的注意力。虽然盯防他的是一年级新生,但似乎是备受期待的新秀,教练判断与其强行带球突破,不如拉开距离更能创造得分机会。

 話が終わって解散すると、すぐにチームメイトから気遣わしげに声をかけられる。
会议结束后一解散,队友们立刻关切地围了上来。

「潔、吉良くんのあれ大丈夫か?」  "洁,你和吉良那家伙没事吧?"

 あれだけ敵意丸出しではもはや誤魔化すことも難しいので、潔は曖昧に笑って見せた。
对方敌意如此明显已经很难蒙混过关,洁只好露出暧昧的笑容。

「あー、まあ別に何かしてくる訳じゃないし」  "啊,反正也不会对我做什么"
「お前、メンタル強いな」  "你这家伙心理素质真强啊"
「そうかな?」  "有吗?"

 ブルーロックでは殺気なんて日常茶飯事だった。凛や馬狼のそれに比べれば、吉良はまだ大人しい方だ。
在蓝色监狱里,杀气什么的早就习以为常了。和凛或马狼比起来,吉良还算温和的。

 そう潔は軽く考えていたが、傍から見れば恐ろしく見えるらしい。代わる代わる気遣いの言葉がかけられる。
洁原本觉得这没什么大不了的,但在旁人看来似乎相当骇人。周围不断传来关切的问候。

 ボールに触れず試合にも関われないのはフラストレーションが溜まるが、同時にこれで良かったのかもしれないとも思う。
虽然碰不到球也无法参与比赛确实让人沮丧,但转念一想或许这样反而更好。

 だって、下手に吉良の注意が他へ向くよりはずっといい。ターゲットは潔だけなんだから、周りが迷惑を被ることもないだろう。
毕竟比起让吉良的注意力分散到其他人身上,现在这样要好得多。反正目标只有洁一个人,至少不会连累到队友。

 普段より格段に少ない運動量のおかげで、汗もほとんどかいていなかった。することもなくただベンチに座っていると、不意に背中を強く叩かれる。
由于运动量比平时少得多,几乎没怎么出汗。正无所事事地坐在替补席上时,后背突然被人重重拍了一下。

「……なあ」  "……喂"
「痛ッ! ったく、何だよ」  "痛死了!搞什么啊"
「あれって、ミヒャエル・カイザーじゃね」  "那个,是米海尔·凯撒吧"
「はあ?」  "哈?"

 いやいや、いくらカイザーがマウント大好きクソ野郎でもこんな片田舎に転がっているはずがない。と、振り返ったら本当にいた。
不不不,就算凯撒是个爱骑脸的混账家伙,也不该出现在这种穷乡僻壤才对。这么想着回头时,那家伙居然真的站在那里。

 フェンス越しだから少し距離はあるが、金から裾にかけて青に変わるド派手な髪色はカイザー特有のものだ。しかも、ご丁寧なことにその手には自身の呼び名でもある、青薔薇の花束が抱えられていた。
 虽然隔着栅栏有些距离,但那从金色渐变到青色的夸张发色确实是凯撒的标志。更离谱的是,这家伙手里还煞有介事地捧着一束与他同名的蓝玫瑰花束。

 これ以上ないほどミヒャエル・カイザーをアピールしている男に何だか頭が痛くなってくる。むしろここまでされるとコスプレか何かだと言われた方がまだ納得がいくというものだ。
 眼前这个把"米歇尔·凯撒"要素堆砌到极致的男人让我太阳穴突突直跳。倒不如说夸张到这种程度,被人当成 cosplay 反而更容易接受些。

 つうか、コイツはどこから湧いてきたんだよ。警備員はどうした。
 话说这家伙到底是从哪儿冒出来的?保安呢?

 カイザーらしき男は潔を見つけると、悠然とこちらへ歩いてくる。その顔には人を小馬鹿にするような笑みが浮かべられていて、紛れもなくカイザー本人だった。
那个疑似凯撒的男人发现洁后,悠然自得地朝这边走来。他脸上挂着嘲弄般的笑容,毫无疑问就是凯撒本人。

「――、世一」  「——,世一」

 何言ってんのか、さっぱり分かんねえ。  完全听不懂他在说什么。

 ノアが出ている試合を見るために少しはドイツ語も勉強していたが、まだまだ簡単な挨拶程度だ。翻訳イヤホンなしで会話を理解できるほどじゃない。
虽然为了看诺阿的比赛稍微学了点德语,但顶多只会简单问候的程度。没有翻译耳机根本没法理解对话内容。

 潔があからさまに顔を顰めると、カイザーがくすくす笑いながら自身が付けていたイヤホンの片方を差し出してきた。その際についでとばかりに花束も押し付けられて渋々ながらも受け取ってやる。
洁明显皱起脸时,凯撒一边窃笑着将戴着的耳机分了一只递过来。顺势还把花束硬塞过来,虽然不情愿还是勉强收下了。

『世一、遊びに来てやったぞ。観光案内しろ』  世一,我来找你玩了。给我当导游
「いや、練習試合中だし」  "不要,现在在打练习赛"
『元チームメイトがわざわざ会いに来てやったというのに、世一は冷たいやつだな』
前队友特意来看你,世一真是个冷淡的家伙啊

「チームメイトは仲間のゴールを邪魔したりしねぇんだよ。ほら、用事ないなら帰れって」
"队友才不会妨碍同伴进球呢。喂,没事就赶紧回去吧你。"

 潔の素っ気ない対応にも、カイザーは楽しそうにするばかりで全く意に介さなかった。
面对洁冷淡的态度,凯撒反而显得兴致勃勃,完全没放在心上。

 それよりもカイザーの来訪にざわつく中、監督達と話をしているマネージャーの方が気にかかった。何だか嫌な予感がする。
比起凯撒的突然造访,更让洁在意的是正在和教练们交谈的球队经理。总觉得有种不祥的预感。

 そうこうしているうちに多田が潔の方へスっと寄ってきて耳打ちをした。
正这么想着,多田突然悄悄凑近洁耳边低语起来。

「カイザーと仲良かったなら早く言えよ。水臭いな。なあなあ、サイン頼んでくれね?」
"要是跟凯撒关系好就早点说啊。真见外。喂喂,帮我要个签名呗?"

「いやいや、別に仲良くないし」  "不不,我们其实不熟"

 自身も翻訳イヤホンを付けているのだから聞こえていないはずがないだろうに、カイザーは愛想のいい笑顔を浮かべるばかりだ。
明明自己也戴着翻译耳机不可能听不见,凯撒却只是挂着营业式的笑容。

 まさかこの男がファンサービスなんてする訳がないので、おそらくは潔を揶揄うためにそうしているのだろう。海外のスター選手の登場に遠巻きに見ていたやつらも潔の知り合いらしいと分かると、周囲を取り囲んであれこれと口出ししてくる。
这男人怎么可能做粉丝服务,八成是为了揶揄洁才故意这样。那些原本远远围观海外明星选手的路人们,发现洁似乎是熟人后,立刻围上来七嘴八舌地起哄。

「潔、俺も俺も! ミヒャエル・カイザーのファンなんだよ。ちょっとくらい取り持ってくれてもいいだろ」
“洁,还有我!我也是米歇尔·凯撒的粉丝。帮我引荐一下总可以吧?”

「あ、俺はカイザーインパクトが見たいんだけど」  “啊,我想看凯撒冲击波来着。”
「ッだから、そういうんじゃ――」  “所以说不是那种——”
『正直に言ってやったらいいじゃないか、世一。ミヒャエル・カイザーはお前らみたいな雑魚に興味がない、と』
『老实告诉他不就好了,世一。米歇尔·凯撒对你们这种杂鱼没兴趣。』

「……お前は黙っとけよ」  "……你给我闭嘴"

 伝わらないことをいいことにロクでもないことしか言わないやつだ。別に一緒にプレーする訳じゃないんだから適当に愛想よくしていればいいだろうに、どうにも人を貶めずにはいられないらしい。
这家伙仗着别人听不懂就净说些混账话。明明又不是要一起组队演出,随便应付下保持表面和气就行了,可这人似乎不贬低别人就浑身难受。

 このクソ、性格破綻者め。  这个该死的性格缺陷者。

 睨みつける潔に、穏やかな笑顔で肩をすくめて見せるカイザーの姿は周囲からどう見えているんだろうか。少なくとも、潔がカイザーを独り占めしているという感想は抱かれたに違いない。
凯撒面对洁世平瞪视时耸肩露出的温和笑容,在旁人眼里究竟是怎样一副光景呢。至少肯定会让人觉得是洁在独占着凯撒吧。

 じゃなければ、無理やりイヤホンを奪い取ろうなんてしない。
否则也不会硬要抢走耳机。

「それで翻訳してんの? 俺にも貸して――」  "你是在用这个翻译吗?也借我——"
「触んなッ!」  "别碰!"

 耳へと伸びてきた腕を叩き落として、イヤホンを守った。
我打落伸向耳朵的手臂,护住了耳机。

 とてもじゃないが、カイザーの言葉を聞かせることはできない。カイザーがクソ野郎だと思われても潔には関係ないが、きっとその過程で本人が傷ついてしまうだろうから。
我实在没法让凯撒说出那种话。虽然就算凯撒被当成混蛋对洁来说也无所谓,但在这个过程中他本人肯定会受伤的。

「なんだよ。ちょっとくらい貸してくれたっていいじゃん」
"搞什么啊。借我一下又不会怎样"

 こっちを睨みつける目には明確な敵対心が含まれていた。潔はただ気を使って拒否しただけなのに
那双瞪过来的眼睛里明显带着敌意。洁明明只是体贴地拒绝了而已

「……いや、こっちこそごめん。でも、大事な物だから貸せない」
"……不,该道歉的是我。但这个很重要,不能借给你"

 言い訳のような言葉を口にしながらも納得してもらうのは難しいだろうなと思った。潔だって事情を知らなければ嫌なやつだと感じるだろう。
一边说着像是借口的话,一边想着要让对方接受恐怕很难吧。如果不知道内情的话,大概会觉得我是个讨厌的家伙。

『そんなにもったいつけなくても貸してやったらどうだ?』
既然这么舍不得,干脆借给他不就好了?

「…………」  "…………"
『それとも世一が翻訳してやるか?』  要不让世一来帮你翻译?

 もっと真面目にドイツ語を勉強しておけば良かったと思った。ドイツ語でなら言い返したとしても、周りには分からないから。
要是当初更认真学德语就好了。用德语回嘴的话,周围人也听不懂。

 頑なにカイザーと関わらせないようにしようとしている潔に周囲の目も変わってくる。最初はただ有名人と知り合いですごいと言う視線だったのが、お前だけズルいというような視線に
众人看向执意不让凯撒接近的洁的眼神逐渐变了。最初只是"居然认识名人好厉害"的视线,渐渐变成了"就你一个人耍滑头"的目光

 ……コイツ、一体何しに来たんだよ。  ……这家伙到底是来干嘛的。

 何で寄りにもよって練習試合当日に来るのだろうか。訪ねてくるタイミングはもっと他にいろいろあったはずだ。そもそも用事なんて対面じゃなくて電話でいいだろうに
为什么偏偏要选练习赛当天过来。明明有更多合适的拜访时机。说到底有什么事不能电话说非要当面谈啊

 ジトリと睨みつける潔にカイザーはヘラヘラと笑うばかりだ。この意味不明な男をどう追い返したものかと悩んでいると、話が終わったらしいマネージャーが帰ってきてカイザーに何事かを耳打ちした。
洁死死瞪着对方,而凯撒只是嬉皮笑脸地回望。正当他苦恼该如何赶走这个莫名其妙的男人时,似乎结束谈话的经理回来了,凑在凯撒耳边低语了几句。

 パッと表情を明るくさせたカイザーはコートを脱ぎ捨てた。下から現れたのはバスタード・ミュンヘンではないものの、スポーツメーカーのユニフォームだ。
凯撒突然眼睛一亮,甩手脱掉了外套。里面露出的虽然不是拜仁慕尼黑的队服,但确实是某运动品牌的训练服。

 ――どうやら最初からそのつもりだったらしい。  ——看来他打从一开始就计划好了。

『喜べ、世一。俺も入ってやる』  开心吧,世一。本大爷也来陪你玩玩

 反射で帰れと怒鳴りそうになるのを飲み込んで、潔は言葉を選びながら口を開いた。
我强忍住想要吼出"滚回去"的冲动,洁世一斟酌着词句开口道。

「……お前、こんなとこで勝手にサッカーしてていいのかよ」
"......你小子,在这种地方擅自踢足球真的没问题吗"

『別に構わん。許可なら取ってある。クソ下々のために手間をかけさせたんだ。せいぜい俺を楽しませろよ』
『无所谓。已经拿到许可了。为了让你们这些底层废物能参与可是费了不少功夫。就好好取悦我吧』

 どうやらすでに手遅れらしかった。潔の発言からどうやらカイザーが参加するらしいと気づいたチームメイトが黄色い声をあげる。
看来为时已晚。队友们从洁的发言中察觉到凯撒似乎要参赛,顿时发出兴奋的尖叫声。

 潔はあまりの絶望に泣きたくなった。  阿洁因极度的绝望而几乎要哭出来。

「お前はお呼びじゃねぇし」  "你算什么东西也配叫我"
『世一は素直じゃなくていけないな。お前がどうしてもと言うなら、同じチームに入ってやろうと思っていたのに』
世一必须学会坦率才行。本来你要是坚持要求的话,我倒是考虑过和你进同一支队伍

「死んでもお前に頼むことはねぇから」  "我死也不会求你这种事"

 冷たく突き放したが、カイザーがプレーに参加するのはもう止められないだろう。遠目に見る限り、向こうの監督も選手達を集めて事情を説明しているようだ。今さら潔が駄々をこねたって他のやつらが納得しない。
虽然冷漠地拒绝了,但看来已经无法阻止凯撒参与比赛。远远望去,对方的教练似乎正在召集队员说明情况。事到如今就算洁闹脾气,其他队员也不会买账。

 最悪だ。嫌な予感が的中してしまった。  糟透了。不祥的预感果然应验了。

 カイザーはきっと接待プレーなんかしてくれないだろう。手加減なしで叩き潰しにかかる。
凯撒肯定不会打什么友谊赛。他绝对会毫不留情地碾压对手。

 劣勢とはいえ、穏便に上手くいっていたのに全てが水の泡だ。こんな目的もよく分からないやつの介入で全てがぐちゃぐちゃになってしまう。
虽说处于劣势,但原本还能稳妥应对的局面现在全泡汤了。因为这个目的不明的家伙横插一脚,所有计划都被搅得一团糟。

 今日の練習試合は実のところ、勝ち負けはどうだってよかったのだ。
今天的练习赛其实输赢根本无所谓。

 潔にとっては、ある種の引退試合。勝っても負けても、このチームでプレーできて楽しかったと気持ちよく言えればそれでよかった。だからこそ、理不尽な要求を突きつけられても、自分のプレースタイルを封印してまで適応しようとしたのだ。
对洁来说,这算是某种退役赛。无论胜负,只要能痛快地说出"在这支球队打球很开心"就够了。正因如此,即使被提出无理要求,他也宁愿封印自己的球风去配合。

 だが、こうなってしまえばもう後に残るのはただの胸糞悪さだけだろう。
但事到如今,剩下的只有满腔恶心感了吧。

 全てカイザーのせいだ。せっかく潔が大事に守ってきたのに、ぽっと出のカイザーに全てを台無しにされてしまう。
都怪凯撒。明明洁一直小心翼翼地守护着,却被半路杀出的凯撒毁于一旦。

『あの白髪のやつ、いいな。腑抜けた世一よりずっと活きがいい』
那个白毛的家伙不错啊,比那个窝囊的世界第一有活力多了。

 俯いていた顔を上げると、カイザーは吉良を見ながらニヤニヤと笑っていた。さすがの吉良も新世代世界十一傑に意識されると嬉しいらしく目が輝いている。
凯撒抬头露出坏笑,盯着吉良看。就连吉良被新世代世界十一杰关注似乎也很开心,眼睛闪闪发亮。

 俺は眼中にないのに、アイツは意識すんのか……?  明明我根本不在他眼里...那家伙却在意他?

 もう興味の対象が変わろうとしているカイザーに強烈な怒りを覚えた。
我对兴趣对象正在转移的凯撒感到强烈的愤怒。

 言い方は悪いが、吉良はブルーロックで敗北した側の人間だ。決してカイザーに気に入られたい訳じゃないが、あんなやつに関心を奪われるのは潔のプライドが許さない。
话说得难听点,吉良是蓝色监狱里的败者组。虽然绝无讨好凯撒的意思,但被那种家伙夺走关注实在有损洁世一的自尊。

 エゴ剥き出しのままカイザーに掴みかかろうとして詰め寄り、不意に視界に入った面々に潔は我に返った。
正当洁世一赤裸裸地暴露出自我意识想要揪住凯撒时,视野中突然映入的人群让他猛然清醒。

 ――はたして、チームメイトをバカにしたカイザーと庇護するべきものと見ていた潔に何の違いがあるのだろうかと
——说到底,把队友当蠢货的凯撒和将他人视为保护对象的洁世一,究竟有什么区别呢?

 ブルーロックの最終的な脱落者数は二百を超えている。全てではないにしろ、潔も少なくはないやつらの人生を踏みにじってきた。そして、それに申し訳ないと思ったことは一度もない。
蓝色监狱最终淘汰人数超过两百。虽非全部,但洁世一也践踏过不少人的梦想。而且,他从未对此感到过丝毫愧疚。

 ブルーロックで生き残れないようなぬるいエゴのやつに潔は見向きもしなかった。果てはプレーにおいて邪魔だとすら感じていたのだ。
那种在蓝色监狱里活不下去的软弱利己者,洁连看都懒得看一眼。甚至在比赛中觉得他们碍事。

 一体、自分は何を守ろうとしていたのだろうか。  我到底在试图守护什么呢?

 潔は彼らのサッカーを認めていた訳じゃない。一緒にプレーしたいとすら思っていなかった。ならば、それは何か意味のあるものなのだろうか。
洁并非认可他们的足球。甚至都没想过要和他们一起踢球。那么,这究竟有什么意义呢?

 ――ムカつく。  ――真让人火大。

 勝手に割り込んできたカイザーにも、無邪気にはしゃいでいるチームメイトにも腹が立って仕方がない。だが、何より腹が立つのはこんな生ぬるいところに適応しようとしていた自分自身だ。
无论是擅自插话的凯撒,还是天真嬉闹的队友,都让我气得不行。但最让我愤怒的,是居然试图适应这种温吞环境的自己。

 吉良に向かって手を上げるカイザーの胸ぐらを掴み、無理やりこちらへ引き寄せた。下から覗き込むようにして睨みつけながら、潔は冷たく吐き捨てた。
我一把揪住正要对吉良挥拳的凯撒的衣领,强行拽到面前。从下方逼视着他,洁冷冷地啐道。

「余所見してんじゃねぇよ。お前は俺が殺すって言ったろ。俺から目を離すな」
"别东张西望的。我说过要亲手宰了你吧?给我把眼睛盯牢了"

『いい面構えだ、世一。やはりお前はそうでなくてはな』
表情不错嘛,世一。你果然就该是这样

「知ったかぶりしてんじゃねえ」  "少在那装模作样"

 満足そうに頷いたカイザーは反対側のベンチへ歩いていった。
 凯撒心满意足地点点头,朝对面的长椅走去。

 黙って見送ると、チームメイトからは散々に文句を言われた。お前が失礼だから怒らせちゃったとか、何で紹介してくれなかったんだとか。
 我沉默地目送他离开,队友们立刻七嘴八舌抱怨起来。说什么都怪我太失礼惹人生气啦,为什么不帮忙介绍啦。

 潔はその全てに答えなかった。もはや答える必要性を感じなかったからだ。
洁没有回答任何问题。因为他已经觉得没有必要再回答了。

 黙って文句を聞き流していると、招集がかかった。試合再開のコールに、ピッチへと足を踏み入れる。
他默默听着抱怨不作回应时,集合哨声响起了。随着比赛重启的号令,他迈步踏入球场。

 芝をスパイクで踏みしめると、背筋がゾクゾクした。ただそれは恐怖などではなく、心の底からの高揚だった。
钉鞋踩上草皮的瞬间,脊背窜过一阵战栗。但那绝非恐惧,而是发自心底的亢奋。



⿴⿻⿸



 ワンフォーオール、オールフォーワン。  一人为大家,大家为一人。

 掛け声がどんどん遠くなって、そのうち聞こえなくなった。
口号声渐渐远去,最终完全听不见了。

 ピッチの中を全力で駆け回ると、全身から汗が吹き出して息も苦しいほどに上がるのに潔の足は止まらない。視界に入るチームメイトは一人、また一人と立ち尽くしていく。
在球场上全力奔跑时,全身汗如雨下,连呼吸都变得困难,但洁的双脚却停不下来。视野中的队友一个接一个地站在原地不动了。

 ただそれはこちら側に限った話ではない。相手チームも似たり寄ったりな状況で、すでに試合は崩壊していた。
不过这种情况并非只发生在我们这边。对方球队也差不多,比赛早已支离破碎。

 あれほど潔を目の敵にしていた吉良も足こそは止まっていないものの、すでにボールを追いかける気力は尽きたようで表情がしんでいる。もし潔ひとりだったら、つまらなくなっていたことだろう。
那个曾经视洁为眼中钉的吉良虽然脚步未停,但显然已经失去追球的力气,整张脸都垮了下来。如果只有洁一个人在场,恐怕早就觉得索然无味了吧。

 そんな中でも唯一、立ち塞がってくるカイザーが今はこの上なく好ましかった。サッカーってこんなにも楽しいものだったのか、と今さらながらに思って笑いが零れた。
而在这样的局面下,唯一挺身阻拦的凯撒此刻却让他觉得无比顺眼。足球原来能让人这么快乐啊——他后知后觉地想着,笑意从嘴角溢了出来。

 ――やっぱり俺は一生こうして走っていたい。  ——果然我这辈子就想这样永远奔跑下去。

 試合は結局、勝てなかった。前半で点差をつけられていたし、最後はチームプレーなんて望めないような有様だったから。
比赛最终还是输了。上半场就被拉开比分,到最后更是连像样的团队配合都打不出来。

 カイザーと差しの勝負では潔に分が悪すぎる。フィジカルが今後の課題だと思いながら荷物を片付けていると、早々に着替え終わったカイザーが潔の方へ歩いてきた。
在与凯撒的较量中,洁世一明显处于绝对劣势。他一边收拾行李一边想着体能问题仍是今后需要攻克的课题,这时早已换好衣服的凯撒朝他走了过来。

『ドイツで待っている』  我在德国等你

 押し付けられた白い封筒には、バスタード・ミュンヘンのロゴが入っていた。潔に最高額のオファーをかけたチームだ。
被硬塞过来的白色信封上印着拜仁·慕尼黑的队徽。这支球队为洁世一开出了最高规格的转会报价。

 エース自ら勧誘かよと思ったが、理由を聞こうにもカイザーはもう用は済んだとばかりに背中を向けている。
(居然让王牌亲自来挖角吗)洁刚想追问缘由,凯撒却已经背过身去,摆出"话已说完"的姿态。

 最初から最後まで訳の分からないやつだ。  从头到尾都是个莫名其妙的家伙。

 反射的にカイザーを追いかけようとして、潔は少しだけ後ろを振り返った。
条件反射般想要追赶凯撒时,洁稍稍回头望了一眼身后。

 試合が終わってから時間が経っているのに、まだピッチで座り込んでるやつもいる。ただ敵も味方も一様に同じなのは、下を向いて俯いていることくらいだ。
比赛结束已经过去一段时间,还有人瘫坐在球场上。敌我双方唯一的共同点,大概就是都低垂着头的样子。

 最後に挨拶くらいはしていきたかったが、これじゃあ話しかける方が可哀想だ。潔にもそれくらいの気遣いはあった。
本想至少该打个招呼,但看这情形主动搭话反而显得可怜。洁至少还有这点体贴。

 だが、諦めて行こうとした時にそのうちの一人が顔を上げた。
就在他准备放弃离开时,其中一人突然抬起了头。

 一年生FWの彼だ。   是一年级的前锋选手。

 虚ろな瞳はそれでも潔のことを真っ直ぐに見つめてきて、何だかよく分からない気持ちにさせられた。先程の試合も彼だけは最後まで足を止めずに、潔とカイザーの後ろを追っていた。
 那双空洞的眼睛却直勾勾地凝视着洁,让他莫名感到一阵难以言喻的情绪。刚才的比赛中,只有这个人始终没有停下脚步,一直追随着洁和凯撒的背影。

 ゆっくりと唇が動き、声が吐き出される。決して大きな声ではなかったが、周りが異様に静かなおかげでちゃんと潔の耳にも届いた。
 对方缓缓翕动嘴唇发出声音。虽然音量不大,但由于四周异常安静,那句话清晰地传进了洁的耳朵里。

「ば、……ばけもの」  "怪、……怪物"

 はたしてそれは潔に向けられたものなのか、カイザーに向けられたものなのか。あるいは、その両方なのか。
这究竟是指向着洁,还是指向凯撒?又或者,两者皆是。

 潔には分からなかったけれど、それを聞きながら蜂楽の言葉を思い出していた。
洁虽然无法确定,但听着这句话时,他想起了蜂乐曾经说过的话。

『凄ぇやつはみんな心の中に〝かいぶつ〟を飼っている』
厉害的家伙心里都养着'怪物'

 ――そう、きっとそれだけのことなのだ。彼の中には〝かいぶつ〟がいなかった。
――没错,肯定只是这样而已。他体内根本不存在什么"怪物"。

 それを見誤った潔が間違っていただけのことだ。やはり絵心は人を見る目がある。
 看走眼的洁才是错的那一方。果然画师的眼睛最会识人。

 今度こそ振り返ることなく潔は駆け出した。もたもたしているうちにカイザーはかなり遠くなっていたが、どうにか見失わずに捕まえられた。
 这次洁头也不回地跑了起来。虽然磨蹭的功夫让凯撒已经拉开不小距离,但总算没跟丢抓住了他。

「待てよ!」  "给我站住!"
『まだ何か用か?』  “还有什么事吗?”
「観光って言ったろ。俺が案内してやる」  “不是说了要观光吗。我来给你当向导”
『は?』  “哈?”

 カイザーは自分から言い出した癖に目的をすっかり忘れていたらしい。珍しく間の抜けた表情が見れて気分がよかった。
凯撒明明是自己提出的建议,却好像完全忘了这回事。难得看到他露出这种傻乎乎的表情,让我心情大好。

「だから、代わりにドイツ語教えろよ。リスニングは本場が一番だろ」
"所以,改教我德语吧。听力练习还是原汁原味的最有效"

『世一、お前は……。まあいい。しっかりガイドしろよ』
世一,你这家伙......算了。好好当向导啊

 この選択が本当に合っているのかは分からない。カイザーとの仲はすこぶる悪いし、もしかしなくても後悔することになるのかもしれない。
这个选择是否正确还不得而知。和凯撒的关系简直糟透了,说不定事后肯定会后悔。

 でも、今はこれが一番自分が望んでいる道だと胸を張って言えるから。
但此刻我能挺起胸膛说,这就是我最渴望走的路。

 言語に始まり、ありとあらゆる障害はあるだろうが、たぶん何だかんだでそれなりに上手くやっていくんだろう。
尽管从语言开始就存在各种障碍,但大概无论如何都能勉强应付过去吧。

 世界一のストライカーになってやるという気概と、潔をおちょくりながらも隣を走り続けるカイザーさえいれば、きっとそれでいい。
 只要有成为世界第一前锋的志气,以及那个一边调侃洁世一却仍坚持并肩奔跑的凯撒在,这样应该就足够了。

「あっ、お前の花束忘れてきた」  "啊,你的花束忘带了"
『世一、人のプレゼントをなんだと……』  世一,你刚才说别人的礼物什么来着……
「おい、男に花束ってのも大概だからな。ちょっと取ってくるから待ってて」
"喂,给男人送花束也太夸张了吧。我去拿点东西,你等着"

『いや、いい』  不用了
「え、でも青薔薇って高いんじゃ」  "诶,可是蓝色玫瑰不是很贵吗"
『アイツらにはいい手向けになるだろ』  对他们来说正好当供品吧
「……お前さぁ、そういうの厨二病っぽいからやめろよな」
"……你啊,这种说法太中二病了,快别这样了"

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