カイザーが潔の浮気相手に立候補する話【前編】 凯撒自荐成为洁的出轨对象【前篇】
浮気癖のある恋人のいる潔に、カイザーが浮気相手として立候補する話の前編です。後編は来週にアップする予定です。以下の注意書きをよく読んでいただき、大丈夫そうであれば閲覧をお願いします。
这是关于凯撒主动请缨成为有出轨倾向的恋人洁的出轨对象的故事前篇。后篇预计将于下周发布。请仔细阅读以下注意事项,确认无碍后再行阅读。
【注意】
・潔にモブ♂の彼氏がいる設定です。 ・设定中洁有个路人♂男友。
・直接的な描写はありませんがカイザーにも性経験があるような表現があります。
・虽然没有直接描写,但凯撒的言行中暗示其已有性经验。
・潔とカイザーがプロとしてBMに所属している未来を捏造しています。
・捏造了洁与凯撒作为职业选手效力于 BM 俱乐部的未来。
・前編はエロパートがないですが後編にあるのでR18にしています。
・前篇没有色情内容但后篇包含,因此标记为 R18。
・前編のカイ潔要素はちょっと薄めです。後編ではがっつり浮気します。
・前篇的凯洁要素稍显淡薄。后篇将会浓墨重彩地描写出轨情节。
・浮気ネタなので、どんなことがあっても浮気は許せない!潔やカイザーは浮気なんかしない!という方にはおすすめしません。
・本作涉及出轨情节,若您坚持"无论发生什么都不能原谅出轨!洁和凯撒绝不会出轨!"这类观点,建议谨慎阅读。
・キャラ崩壊が許せる方向けです。 ・适合能接受角色崩坏的读者。
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潔世一には恋人がいる。 洁世一有个恋人。
潔がプロとしてチームに所属するため渡独してから少しした頃、猛烈なアタックを受けて付き合うに至った相手だ。
在洁作为职业球员加盟球队赴德后不久,他就遭遇了猛烈的追求攻势,最终与对方确立了关系。
彼はドイツ人にしては珍しくフットボールのない世界で生きている男性で、潔世一が「バスタード・ミュンヘンのダブルエースストライカーの片割れ」とはつゆ知らずクナイぺで偶然に相席し、潔のその人好きのする朗らかな性格と、つまみを口いっぱいに頬張る幸せそうな笑顔に惹かれて、人生で初めてナンパというものをしたんだ、と後々恋人となった彼は言った。
这位德国男性罕见地生活在与足球绝缘的世界里,对"巴斯塔德慕尼黑双王牌前锋之一"的洁世一毫不知情。据后来成为恋人的他所说,两人在啤酒馆偶然拼桌时,他被洁那讨人喜欢的开朗性格,以及塞满小菜时幸福洋溢的笑容所吸引,人生中第一次主动搭讪了别人。
一方の潔も、サッカー漬けの人生で恋愛とは無縁だったため、初めて向けられた相手からのストレートな好意に軽率に舞い上がり、あれよあれよという間に恋に落ちてしまった。
而从小浸泡在足球世界、与恋爱无缘的洁,面对人生首次收到的直白好感,轻率地飘飘然起来,不知不觉间就坠入了爱河。
潔は自分の恋愛対象は女だと思っていたこともあり戸惑いもあったが、付き合ってから間を置かずに始まった半同棲のような生活にもすぐに順応していった。
洁原本以为自己只会对女性产生恋爱感情,因此最初也有些困惑,但开始交往后没过多久,他就完全适应了这种近乎半同居的生活。
休日は街に出て、お互いに似合う服を探したり、おいしいと噂の店を巡ったりする。練習で疲れて家に帰ると温かいご飯が用意されている。
每逢假日两人就会逛街,互相为对方挑选合适的衣服,或是探访口碑不错的餐厅。训练结束后回到家中,总有热腾腾的饭菜等着他。
家族以外で初めての、自分だけに持ちうる限り時間や愛情を注いでくれる特別な存在。
这是除家人外第一个愿意将全部时间与爱意都倾注给自己的特别存在。
ゆるぎない明日を信じられる幸せな日々が続いていくと疑わなかった。
他从未怀疑过这样坚信着明天会更好的幸福日子将持续下去。
しかしその幸せは、たった一つのほつれを引っ張ってしまっただけで簡単に崩壊していった。
然而这份幸福,仅仅因为一个微小的裂痕被拉扯,就轻易地崩塌了。
最初のきっかけは、大きなシーズンが終わりを迎えた日の夜に、潔が相手からの「お誘い」を断ったことだったと思う。
最初的导火索,我想是在重大赛季结束的那天夜里,洁拒绝了对方"邀约"这件事。
大事な試合が終わるまではと我慢してくれていたために1カ月近くご無沙汰だったのは申し訳なく思っていたが、それならわざわざ疲れの溜まっている今日でなくとも体力の回復した明日まで待ってくれたらいいのに、と潔は思ってしまった。
虽然对因对方体谅"等重要比赛结束前先忍耐"而近一个月未能亲热感到愧疚,但洁还是忍不住想:既然如此,何必非要选在疲惫不堪的今天,等体力恢复的明天不行吗?
そもそも潔は性欲の強い方ではないし、何より男同士で組み敷かれる側というのは前準備が大変だ。
说到底洁本就不是性欲旺盛的类型,更何况作为男性关系中承受方,事前准备实在麻烦。
付き合ってから日に日に増す安心感と比例して、相手への性的な部分への関心は当初より明らかに薄れ、それを黙認してくれている相手に甘えていってしまっていた。
随着交往日久,与日俱增的安全感让彼此对性的关注度明显比最初淡薄许多,而自己竟仗着对方的默许越发任性起来。
翌日の夜、在宅の仕事であることもあり滅多に1人で外出しない恋人が珍しく予告もなく23時過ぎに2人の家に帰ってきた。今夜こそと「お誘い」を予測して準備を済ませていた潔は、彼の纏う嗅いだことのない甘ったるい香水の匂いに顔を顰めることとなった。
次日晚间,向来因居家办公而鲜少独自外出的恋人,竟破天荒未作预告地在 23 点后回到两人住所。做好"邀约"准备满心期待今晚能成的洁,却因对方身上从未闻过的甜腻香水味皱起了眉头。
(何か、怪しい) (总觉得...很可疑)
恋人は昨夜の意趣返しのように潔からの誘いを断り、シャワーを浴びて早々に眠りについた。その行動で潔は、取り返しのつかない亀裂が生じ始めていることを勘付いてしまった。
恋人像是报复昨夜之事般拒绝了洁的邀约,冲完澡便早早入睡。这番举动让洁察觉到——两人之间已然出现了无法挽回的裂痕。
以降、相手からのお誘いはない。潔への態度こそ変わらず優しいが、家に居ない夜が増え、電話しても出ない数が増え、潔とも行ったことのないような所謂それ用のホテルのレシートがポケットから出てきたりもした。
自那以后,对方再没主动邀约过。虽然对洁的态度依然温柔,但夜不归宿的次数越来越多,电话不接的情况与日俱增,甚至还会从口袋里翻出些明显是情侣酒店的收据——那些地方洁从未和他去过。
さすがにレシートを見つけたときには問い詰めるくらいのことはした。だが恋人は、ただ涙ながらに「本当に好きなのは世一だけだから信じてほしい。やけになっただけだ」と強く抱きしめてくるだけだった。
发现收据时终究还是忍不住质问过。可恋人只是流着泪紧紧抱住他,反复说着"真正喜欢的只有世一,求你相信我,我只是自暴自弃了"。
もちろん許す気になんてなれないが、それから数カ月の間何度も同じようなことがあったのにその手を離すことができなかったのは、初めてできた恋人と別れた後の世界がどんな色をしているか、知るのがただ怖いからだった。
当然不可能原谅,但此后数月间重复上演着类似戏码却始终放不开那只手,不过是因为害怕知道——和初恋分手后的世界会褪成怎样的颜色。
「どうしよう…俺捨てられるかも」 "怎么办...我可能要被抛弃了"
チームの懇親会という名のバカ騒ぎをするだけの飲み会で、潰れかけた潔は上記の内容を語りながら滾々と地獄から湧き上がる瘴気のようなものを発していた。
在名为团队联谊实则是胡闹的饮酒会上,烂醉如泥的洁一边讲述着上述内容,一边散发出如同从地狱深处翻涌而出的瘴气般的气息。
酒が入ると潔は私生活を赤裸々に話す癖があるらしい、恋人とお付き合いを始めた経緯から初夜のことまで、チームメイトたちは皆聞きたくもないのに全部知っている。
据说洁一喝酒就会毫无保留地袒露私生活,从与恋人相识的经过到初夜细节,队友们明明不想听却被迫掌握了全部情报。
ひっそりと潔に恋心のようなものを抱いていた数人のチームメイトが、恋人ができた話を聞かされた夜に一致団結して二次会へ行き酔いつぶれ、翌朝仲良くゴミ捨て場で目を覚ました、というのは潔以外みんな知っている有名な笑い話だ。
暗恋着洁的几名队友,在听闻他脱单消息的当晚集体转战二次会喝到人事不省,翌日清晨在垃圾场相亲相爱地醒来——这个除了当事人尽皆知的笑谈,至今仍是队内著名梗。
今度はどんな惚気という名の爆弾を投下されるのかと半ば呆れ顔で聞いていたチームメイトたちも、予想に反してなんともコメントのし辛い今夜の潔の話に誰も何も言えないでいた。
原本以为又要被迫接受闪光弹轰炸的队友们,面对今夜这个出乎意料难以评价的故事,全都陷入了微妙的沉默。
夜のお誘いを断って以降、彼氏が何度も浮気するようになってしまった。指摘すると絶対にもうしないと泣き付かれる。心から反省しているように見えるその姿を見ると情が湧いて別れきれない。浮気されたのに別れられない人が大抵陥っている負のスパイラルそのものだ。
自从拒绝夜间邀约后,男友就开始频繁出轨。每次指出他的不忠,他都会哭着发誓再也不犯。看着他真心悔过的模样,我又会心软无法分手。这正是被出轨却无法放手的人最常见的恶性循环。
そんな相手さっさと別れろよ、とアドバイスするだけなら楽だが、それが可能ならとっくにそうしているだろう。だから何も言うことができない。
要是能轻飘飘说句"赶紧分手吧"就轻松了,但真能做到的话早就分了吧。所以我什么也说不出口。
たまたま潔の隣の席に座っていたカイザーは心底バカらしいという顔をしていた。
偶然坐在洁邻座的凯撒,此刻正露出打心底觉得荒谬的表情。
潔がドイツに来てからもう3年近くが経過し、潔とカイザーの犬猿の仲、水と油、不倶戴天という言葉の似合う関係は、いつの間にか驚くことに時々2人で飲みに行き、他にはできないような相談をするくらいの親密さに成り代わっていた。
洁来德国已近三年,曾经水火不容、势不两立的两人,不知何时竟发展到会相约喝酒、互相倾诉心事的亲密程度,这变化连他们自己都感到惊讶。
元々認めた相手には面倒見の良いカイザーと、サッカーが絡まなければただ人懐こい潔の相性が良いことは早々に明らかになっており、その様子は例の潔に恋心を抱いてしまったチームメイトたちにも「潔にもし男の恋人ができるならカイザーだと思ってた、というかカイザーでないと諦めがつかない」と言わせしめた。
原本就待人亲切的凯撒,和只要不涉及足球就单纯温顺的洁,两人性格相投这件事很快就显而易见。这般情景甚至让那些对洁怀有恋慕之心的队友们感叹道:"如果洁要找男性恋人的话,我觉得肯定是凯撒,倒不如说如果不是凯撒的话根本无法接受。"
「世一、お前飲みすぎだ。明日また余計なことをくっちゃべったと後悔する羽目になるぞ」
"世一,你喝太多了。明天又要为说了多余的话而后悔的。"
「なぁ~カイザーも思うだろ!?たった一晩断っただけで浮気は酷過ぎるって!」
"呐~凯撒你也这么觉得吧!?仅仅拒绝一晚就出轨什么的太过分了!"
「あいあいそうだな~世一くんとその恋人(笑)くんは2年以上一緒にいても簡単に浮気できるくらいのモンしか築いてこれなかったんだよなぁ」
"哎呀呀~世一君和那个所谓的恋人(笑)君啊,就算交往两年多也只能建立这种随便就能出轨程度的脆弱关系呢~"
「ハァ!?違う!!たぶんアイツはちょっと魔が差しただけなんだって!」
"哈!?才不是!!那家伙肯定只是一时鬼迷心窍啦!"
「あ?じゃあ黙って泣き寝入りしてろこの脳味噌スカスカクソ色ボケ野郎」
"啊?那你就乖乖忍气吞声吧这个脑浆空空的屎色白痴"
「脳…ス…うるせぇ!俺はお前みたいにとっかえひっかえしまくって本当の愛を知らねー奴に口出しされたくねえよ!」
"脑...空...吵死了!我才不想被像你这样换来换去根本不懂真爱的家伙说三道四!"
「お前本当の愛とか自分で言ってて寒気がしないのか?俺は今鳥肌が立った」
"你自称真爱的时候不会起鸡皮疙瘩吗?我现在寒毛都竖起来了"
カイザーは潔の目の前に腕を差し出した。たしかに肌が粟立っている。潔は渾身の力でカイザーの形の良い頭をはたいた。「痛えよ」とカイザーを潔の柔らかな頬をギチ、と抓ったが、既にアルコールで人よりも鋭敏なはずの皮膚感覚も麻痺している潔にはあまりダメージになっていないようだ。
凯撒向洁伸出了手臂。确实能看到他皮肤上起了鸡皮疙瘩。洁用尽全力拍了下凯撒形状完美的脑袋。"好痛"凯撒说着掐住洁柔软的脸颊发出"咯吱"声,不过对因酒精而本应比常人更敏锐的皮肤感觉都已麻痹的洁来说,似乎没造成什么伤害。
仲が改善したと言ってもみんなの前で見せる憎まれ口の応酬は変わりない。変わったのは、最初こそ一触即発の空気にオロオロしていたものの、今ではこの会話を小鳥のさえずりと認識できるようになった周囲の方だ。
虽说关系改善了,但在人前互相斗嘴的情形依旧没变。改变的反倒是周围人——最初还因这剑拔弩张的气氛而手足无措,如今已能将这番对话当作小鸟啁啾来理解了。
「はぁ~…悪い俺もう帰るわ。今の間にも誰かひっかけてるかもしんないし…」
"哈啊~...抱歉我先回去了。说不定这会儿已经钓到谁了呢..."
ふらふらと立ち上がる潔の腕を、カイザーが掴む。 当洁摇摇晃晃要起身时,凯撒抓住了他的手腕。
「家の近くまで送る。どうせ今のお前じゃ辿り着けないだろ」
"我送你到家附近。反正以你现在这样也回不去吧"
「ん~…じゃあ宜しく」 "嗯~...那就拜托啦"
今夜の飲み会にネスが出席していたならここでカイザーに小間使いのようなことをさせるなとひと悶着起きていただろうが、あいにく用事で欠席している。
如果今晚的酒会涅斯在场的话,此刻肯定会因为凯撒被使唤跑腿而引发一场争执,但不巧他因故缺席了。
会費を払って店を出て行く2人を止める者は誰も居なかった。
没有任何人阻拦支付完会费离开店铺的两人。
「はぁ~~…なんでこうなっちまったんだろ~~」 「唉~~…怎么会变成这样啊~~」
「俺は付き合うかどうか悩んでた時からやめとけってちゃんと言ってたからな」
「我可是从你犹豫要不要交往的时候,就明确说过趁早放弃比较好啊」
「それは俺に先に恋人ができるのが悔しかっただけだろ」
「你只是不甘心我先有了恋人而已吧」
「…浮気されてかわいそうな世一くんのためにそういうことにしといてやろうか?」
「…要不要为了被出轨的可怜世一君,我就这么顺着你说下去?」
「ムカつく!ムカつく!ムカつく!」 "气死我了!气死我了!气死我了!"
潔は心底悔し気に地団駄を踏んだ。もう春から夏に変わろうかという季節なのに、夜になると外の空気は少しひんやりとしていて、酔いを醒ますのにはちょうど良かった。
洁气得直跺脚。明明已是春夏之交的时节,夜晚的空气却仍带着几分凉意,正好能醒酒。
懇親会の会場からそう遠くない潔と恋人の住む家の付近は閑静な住宅街で、2人の話し声以外は何も聞こえない。並んで歩く2人の距離は酒の入っていない状態より心なしか近い。
离联谊会场不远的住宅区安静得出奇,除了这对情侣的说话声外再无其他声响。微醺状态下,两人并肩而行的距离比清醒时似乎更近了些。
「…俺も浮気してやろうかな」 "...要不我也出轨算了"
「は?」 “哈?”
「向こうは浮気やめてくんねえし、俺も別れらんねえし。なら俺も浮気すれば、相手を責める気になんなくなるのかな…」
“那边不肯停止出轨,我也没法分手。那要是我自己也出轨的话,说不定就不会有责怪对方的念头了…”
「どう考えてもさっさと別れるのが一番早い。100人が100人そう言うと思うが」
“怎么想都是赶紧分手最省事。一百个人里一百个都会这么说吧。”
「解ってる。解ってるんだよ。ゴメン、言ってみただけ!そもそも浮気できるような相手なんかいないし!」
“我知道的。我都知道的。抱歉,就是随口一说!说到底我根本找不到能出轨的对象啊!”
カイザーがその後何も言わなかったので、潔は内心焦った。さすがに引かれたか、呆れられただろうか。
凯撒之后什么都没说,洁内心开始焦躁起来。该不会是被嫌弃了吧,或者觉得我很可笑吧。
別れればいい。それは至極尤もな話で、それができずにぐちぐち言っている女々しいチームメイトにこれ以上何かしてやろうなんて普通思わない。
分手就好了。这本是理所当然的事,面对一个连分手都做不到、只会絮絮叨叨发牢骚的软弱队友,正常人根本不会想再为他做什么。
できればカイザーとはこれからも仲良くしていたいから、可能なら家に着くまでに明るい話でもして挽回したい。そう思案していた時、カイザーが徐に口を開いた。
如果可以的话,洁还是想和凯撒继续保持友好关系,所以最好能在到家前聊些轻松话题挽回局面。正这么盘算时,凯撒缓缓开口了。
「じゃあ俺が、お前の浮気相手になってやろうか?」 "那不如——让我来当你的出轨对象怎么样?"
「、え」 "呃..."
「今日、家に帰らずウチに来い」 "今天别回家,来我家"
「…これって冗談?」 "...你认真的?"
返事の代わりにカイザーは潔の肩を抱いて方向転換した。カイザーの家にはまだ行ったことがない。いつも2人で会うのは外だけだ。潔は自分の恋人が男というのもあって、何となく同性であっても家に2人きりという環境を避けていたし、カイザーもそれは分かっていたからだ。
凯撒没有回答,只是搂着洁的肩膀调转方向。洁还从没去过凯撒家。两人向来只在外面见面。毕竟自己的恋人也是男性,洁下意识地回避着同性独处一室的场合,而凯撒也一直理解这点。
「…ほんとにすんの?浮気」 「…真的要这么做吗?出轨」
カイザーはまたもや何も喋らない。薄暗い街灯に照らされた綺麗なつくりをした顔の、その口角が上がっているのを見て、潔ははじめてカイザーをそういう対象として意識し、心臓を跳ねさせた。潔は躊躇いがちに、しかし確実にカイザーの導く方向へ足を進めた。
凯撒依旧沉默不语。在昏暗路灯映照下,那张轮廓分明的俊美面容嘴角微扬,洁第一次将凯撒视为那种对象来意识,心脏剧烈跳动起来。洁犹豫不决却又坚定地朝着凯撒引导的方向迈出脚步。
「なんだよもう!俺めっちゃ色々悩んだんだぞ!」 「搞什么啊!我可是纠结了好久才下定决心的!」
潔は自分の家のものより格段に座り心地の良いソファに腰を据えて、羞恥で顔を朱く染めていた。
洁坐在比自家沙发舒适数倍的座椅上,羞耻得满脸通红。
「アハハ!傑作だったな、あの世一の顔」 "啊哈哈!太精彩了,那张世界第一的脸"
カイザーのだだっ広い家に着いた潔は、不安や罪悪感と葛藤しながら玄関の敷居を跨いだ。その瞬間、カイザーが弾けるように爆笑し始めたので、潔は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして固まり、その後すぐに意味を理解した。
洁来到凯撒宽敞的家中,怀着不安与罪恶感跨过玄关门槛的瞬间,凯撒突然爆发出弹珠般的大笑。洁顿时像吞了枪子的鸽子般僵在原地,随即明白了话中含义。
(―揶揄われた!) (——被戏弄了!)
「もぉ~…最悪だ…映画だけ見たらさっさと帰るからな」
"真是的...太差劲了...看完电影我马上就走"
結局カイザーのお誘いは、映画一本観るだけのものだった。
最终凯撒的邀约,不过是看一场电影而已。
とはいえ現在ちょうど深夜0時を回ろうかというところだったので、潔はカイザーへの文句を零しながら、恋人が心配しないよう電話1本だけ入れておこうと携帯電話をズボンのポケットから取り出し、コールボタンを押した。
不过现在时间已近午夜零点,洁一边抱怨着凯撒,一边从裤袋掏出手机准备给恋人打个电话报平安,免得对方担心。他按下通话键。
「……」
カイザーは黙って潔の隣に座った。ソファが2人分の重みでさらに深く沈む。スピーカーにしていなくてもカイザーにコール音は届いているだろう。相手が長い時間、応答しないことにもそろそろ気づいたはずだ。
凯撒默默坐在洁身旁。两人份的重量让沙发更深地陷了下去。即便没开扬声器,通话铃声也清晰可闻。他应该已经注意到——电话那头迟迟无人接听。
「…なんか、してるみたい」 "…感觉你好像在做什么"
「ぼかすなよ。分かりきってんだろ」 "别含糊其辞。你明明心知肚明"
「また浮気、してるみたい」 "你又在出轨了对吧"
「そうだな」 "是啊"
今まで何回もあったことだ。だからもういい加減慣れてもいいはずなのに、カイザーが隣に居ると分かっていても涙が滲むのを止められなかった。
这种事情已经发生过很多次了。明明早该习惯了才对,可即便知道凯撒就坐在身旁,眼泪还是不受控制地涌了出来。
カイザーは立ち上がり、馬鹿でかいテレビのスイッチを入れた。恋愛要素のない、頭を空っぽにして見れるアクション映画。絶対にカイザーはこんな映画、趣味じゃない。効果音がやたらとうるさくて耳に障る。でもその音が鼻水をすする音や嗚咽をあまりにも綺麗にかき消すから、今自分はカイザーに優しくされているんだと、嫌でも分かった。
凯撒起身打开了那台大得离谱的电视。放着不需要动脑子的无恋爱元素动作片。他绝对不爱看这种电影。爆炸音效吵得人耳朵生疼。但正是这些噪音完美掩盖了擤鼻涕和抽泣的声音,让我不得不承认——此刻自己正被凯撒温柔地对待着。
「今日は泊まって行けばいい。」 "今晚住下吧。"
「え、でも」 "可、可是"
「世一も浮気しているかもと思ったら、向こうだって反省する可能性はあるだろ」
"要是让世一觉得你可能也在出轨,说不定对方就会反省呢"
「するかなぁ…」 "会吗..."
「まあそれは保証できないが、少なくとも恋人が帰ってくるかどうかやきもきしながら1人で夜を過ごすよりマシだろ」
"虽然不能保证,但总比你一个人焦躁不安地等着恋人回来过夜要强吧"
「うん、それは魅力的な提案かも」 "嗯,这提议倒是挺诱人的"
エンドロールが流れる頃には深夜2時になっていた。内容なんて全然頭に入ってこなかったけれど、毎度恋人の浮気を知った後に感じる喪失感のようなものはなく、心は凪いでいた。
当片尾字幕滚动时,已是深夜两点。虽然完全没看进去剧情内容,但不同于每次发现恋人出轨后那种惯常的失落感,此刻内心异常平静。
テレビのリモコンを操作しながらカイザーはすっかり泣き止んだ潔に声を掛ける。
凯撒一边操作电视遥控器,向早已停止哭泣的洁搭话。
「ところで残念なお知らせだが、ウチにベッドは1つしかない。お前の選択肢は、俺とベッドで寝るか、お前がソファで寝るかだ」
"不过有个遗憾的消息,我家只有一张床。你的选择是——要么跟我睡床,要么你睡沙发"
「カイザーがソファっていう選択肢もあるだろ」 "明明还有凯撒睡沙发这个选项吧"
「あーそうだ、世一がベランダって選択肢もあったな」
“啊对了,世一还有阳台这个选项呢。”
2人の間に軽口が戻ってきた。ふ、と笑い合い、調子を取り戻した潔に、カイザーもこれ以上の気遣いをやめた。
两人之间又恢复了轻松的对话。相视一笑后,洁找回了状态,凯撒也不再过度关心。
「…2人でベッドにしようかな。せっかくだから浮気気分味わってみたいんだ。あ、でも絶対なんもすんなよ。横で寝るだけだからな」
“…要不我们俩一起睡床上吧。难得有机会,想体验下偷情的感觉。啊,但绝对不准干坏事啊。只是并排躺着睡觉而已。”
「へぇ。…じゃ、まずは先風呂行ってこい。酒屋臭い状態のやつはウチのベッドでは寝られない決まりなんだ」
“哦?…那你就先去洗澡吧。带着一身酒气的人可不准睡我家床上,这是规矩。”
「へいへい。タオルとかいろいろ貸せよ」 “喂喂。借我条毛巾什么的用用”
「仰せのままに、ネズミちゃん」 “遵命,小老鼠”
カイザーも潔の後にシャワーを終え、2人揃って寝室へとやってきたものの、潔は謎の緊張に襲われていた。
凯撒冲完澡跟在洁身后,两人一同来到卧室,但洁却陷入了莫名的紧张。
(アイツ以外と同じベッドで寝るの、何年ぶりだ…?俺いびきとかかかないよな…?寝相とか大丈夫かな)
(和那家伙以外的人同床共枕,已经多少年没试过了…?我该不会打呼噜吧…?睡相应该没问题吧)
ベッドを前に立ち止まっている潔を尻目に、カイザーはさっさとベッドに入って寛ぎ始めた。
洁站在床前踌躇不前,凯撒却早已钻进被窝悠然自得地躺下了。
「ほら、さっさと寝ないと明日に響くぞ」 “喂,再不快点睡觉明天可要遭殃了。”
カイザーが真っ白な掛け布団を持ち上げて、潔が隣に入るのを促す。
凯撒掀起纯白的被褥,示意洁躺到身旁。
「おー…」 “啊…”
潔は極力何も気にしていない振りをして、するりとそこに潜りこんだ。
洁极力装作毫不在意的样子,轻巧地钻了进去。
クイーンサイズのベッドは大の男が2人並んでもかなり余裕があり、2人の間にも距離ができる。多少寝返りを打ったとしても間違って触れ合ったりはしないだろう。
这张大号双人床即使躺下两个大男人也绰绰有余,两人之间还能保持距离。就算翻身时不小心碰到对方,也不至于产生肢体接触吧。
それでも部屋の明かりを落とすと、カイザーの息遣いが聞こえるようで潔は眠れる気がしなかった。おかしいな、青い監獄時代にはイガグリが隣からこちらの布団に侵入してきても、物理的にはキツかったがこんな緊張感は欠片も生まれることはなかったのに、と潔は思った。
即便如此,关上房间的灯后,洁似乎能听见凯撒的呼吸声,根本无法入睡。真奇怪啊,洁心想,在蓝色监狱时期,就算蜂乐从隔壁钻进自己被窝,虽然物理上很挤,但从未产生过这种紧张感。
息がし辛い。自分の心臓の音が聞こえる。 呼吸变得困难。能听见自己的心跳声。
カイザーの居る方とは逆側を向いて寝よう寝ようと努力したが、寧ろカイザーが今どのような体勢でいるのか、起きているのかもう寝ているのか、この状況に何とも思わないか気になって、明るくなるまで眠気が全くやってこなくて困った。
我努力背对着凯撒那边睡觉,却反而更在意他现在是什么姿势、醒着还是已经睡着了、对这种情况有没有什么想法,结果直到天亮都没能睡着,真是苦恼。
(こんなの、体の浮気よりよっぽど浮気みたいだ…) (比起身体出轨,这更像是精神出轨啊…)
結局寝たのかどうかも曖昧な中、カイザーが布団を抜けて部屋を出ようとする音で潔の意識は浮上した。
在连自己是否睡着都模糊不清的状态下,洁因恺撒掀开被子准备离开房间的声响而恢复了意识。
「…トイレ?」 “…厕所?”
「朝飯の準備。帰る前にお前も食うだろ?」 “早饭准备好了。你回来前也要吃的吧?”
「ん、食べたい」 “嗯,想吃”
時間を確認しようと枕元にあったスマホを見ると、恋人から10件近く着信があった。気づかなかったということは潔も少しは眠っていたのだろう。1回目の着信は朝方5時頃。つまり、恋人は5時頃に家に戻り、潔が居ないことに気づいたと窺える。
想确认时间看了看枕边的手机,发现恋人打来了近 10 个未接来电。既然没注意到,说明洁应该也稍微睡了一会儿。第一次来电是凌晨 5 点左右。也就是说,恋人大概是 5 点回到家,发现洁不在。
「…ざまぁみろ」 “……活该。”
少しだけスカッとした。帰ったらきっと自分のことを棚に上げて昨晩はどこで過ごしたのかと問いただしてくるんだろう。恋人は優しくて、自分より大人だ。だけど、フットボールの世界でしか生きていない潔よりも自分の方が多くを知っていて、正しい人間だと心の底では思っている。垣間見えるそれに本当は違和感を感じていたけれど、潔はずっと見ない振りをしていた。
心里稍微畅快了些。回去后他肯定会双标地追问昨晚我去了哪里。恋人很温柔,比我成熟。但在心底里,他其实觉得比起只活在足球世界里的洁,自己懂得更多,是更正确的人。洁早就对这种若隐若现的违和感有所察觉,却一直假装没看见。
カイザーみたいな人と付き合ったら、どうなんだろう。たぶん家でもサッカーの試合を見ながら分析したり、デートで試合観戦に行ったりできそう。普通におしゃれで色々知ってるから恋人らしいデートもしたりしそうだ。まあたまにサッカーのことで喧嘩して私生活も険悪になりそうってのはあるけど。でもどこかしっくりくるかも。
要是和凯撒这样的人交往会怎样呢。大概在家里也会边看足球比赛边分析,约会时去看现场比赛吧。因为平时就很时髦又见多识广,应该也会做些情侣般的约会。虽然偶尔可能会因为足球吵架导致日常生活变得紧张。但说不定意外地合拍呢。
とは言えカイザーの方がお断りだろうな、と思い直し不毛な妄想を止めた。俺と違ってアイツは完全に恋愛対象は女だろうし。浮気してみるかっていうのも、本当にあり得ないからこそ出た冗談だろうし。潔はスマホをベッドに投げて、パンの焼けた香ばしい匂いのするリビングへ向かった。
话虽如此,转念一想凯撒肯定会拒绝吧,于是停止了这种无谓的妄想。那家伙和我不同,恋爱对象绝对是女性没错。至于"要不要试试出轨"这种话,正因为绝无可能才当作玩笑说出口的吧。洁把手机扔在床上,朝着飘来面包烘焙香气的客厅走去。
あれ以降、カイザーと2人きりで会うことはなくなった。
从那以后,我就再也没和凯撒单独见面了。
その理由は彼氏が激しく束縛するようになったからに他ならない。代わりに彼氏の浮気癖がなりを潜めたのを見て、浮気ごっこにも効果はあったみたいだと練習後のロッカールームでカイザーに冗談交じりにこっそり報告したものだ。
原因无他,只因男友开始变本加厉地束缚她。不过看到男友收敛了花心毛病后,她在赛后更衣室里悄悄对凯撒半开玩笑地报告说,看来这场假装出轨的戏码还挺有效果。
あの日の朝、玄関で仁王立ちしていた恋人に、酔ってチームメイトの家に泊めてもらったと説明したとき、彼は潔に対して信用する姿勢を全く見せずに、不機嫌を露にして一日を過ごした。
那天早晨,当我在玄关向如门神般伫立的恋人解释自己醉酒借宿队友家时,洁世一全程没表现出丝毫信任,整日都阴沉着脸。
サッカー中の潔ならば「このヤリチンブーメラン野郎、人の振り見て我が振り直せってことわざをタトゥーに彫ってやろうか!」と言っていたかもしれないが、そもそも本気で誰かと浮気に踏み出す勇気もなかったので、この一件でもって不安になるこちらの気持ちも理解してくれたらそれでいい、と思うだけだった。
要是踢足球时的洁在场,大概会骂"这个花心大萝卜混蛋,要不要把'以人为镜可以明得失'这句谚语纹在你身上啊!"不过说到底他根本没有勇气真的去出轨,所以只要他能理解我因为这件事而感到不安的心情,我就心满意足了。
その日の夜は恋人の浮気癖が始まってからはじめて、彼に抱かれた。
那天晚上,自从恋人开始有出轨的毛病以来,我第一次被他拥抱了。
久々だったからか向こうは何だか盛り上がっていたように思うが、潔にはもう義務としか思えなかった。これをしなければまた浮気されてしまう。そうならないための作業だ。いつも言われる、行為の最中の「好きだよ」の言葉が、ついこの間まで求めていたものだったはずなのに寒々しくて、その理由に気づきたくなくて何も応えず目を伏せた。
或许是因为久违的缘故,对方似乎格外兴奋,但对洁来说这已只是义务。不做这件事的话又会被出轨。这是为了防止那种情况发生而进行的作业。明明行为过程中那句常被说出的"我喜欢你",直到不久前还是自己渴求的话语,此刻却只感到寒意刺骨。洁不愿深究其中缘由,只是垂眸沉默以对。
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