【凛潔】way back home 【凛洁】归途
5/3 SUPER COMIC CITY32 超青春エゴイズム2025 参加させて頂きます。
5 月 3 日 SUPER COMIC CITY32 超青春自我主义 2025 将参展本次活动
スペース:東7 K48a/花日和/Miyako 展位:东区 7 K48a/花日和/Miyako
『way back home』凛潔+潔←カイザー/文庫サイズ180P↑/R18/1000
《way back home》凛洁+洁←凯撒/文库本尺寸 180P↑/R18/1000 日元
可愛くてエモい、素敵なカバーイラストはポポさん(@pon_wooo)に描いて頂きました✨ありがとうございます!
封面由 Popo 老师(@pon_wooo)绘制了既可爱又令人心动的精美插画✨非常感谢!
部数アンケート行っておりますので、ご協力頂けますと幸いです。
正在进行作品数量问卷调查,如能协助将不胜感激。
(https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdjpF7FfLIRJ_9tcmAWBsdcAhxczB_TbdPP9CfloHZ2ia2QjA/viewform?usp=header)
・数年後、プロ設定。 ・数年后的职业选手设定。
・潔はドイツ、凛はスペインでプレイしています。 ・洁世一在德国,凛在西班牙踢球。
【あらすじ】 【故事梗概】
ブルーロックで出会ってから六年、付き合い始めて五年目の2024年。
自蓝色监狱相遇已过六年,开始交往第五年的 2024 年。
些細な行き違いから、互いへの気持ちを持ちながらも別れることになってしまった二人。
因细微的误会,明明仍怀抱着对彼此的感情却不得不分手的两人。
そして代表合宿中、潔と凛はペナルティエリア付近で接触し、意識を失ってしまう。
而后在国家队集训期间,洁与凛在禁区附近发生碰撞,双双失去意识。
凛が目覚めたのは医務室ではなく、5年前、U-20W杯前のブルーロックの中だった。
凛醒来的地方并非医务室,而是五年前 U-20 世界杯前的蓝色监狱。
同じあやまちを繰り返さないようにと、潔を避けようとする凛。けれど、戻った世界は五年前とは少し違っていた。
为避免重蹈覆辙,凛试图避开洁。但重返的世界与五年前略有不同。
以前とは違い、カイザーと良い雰囲気になっている潔に、凛は複雑な思いを抱く。
看着与凯撒相处融洽的洁——这与前世截然不同的景象,凛心中泛起复杂的涟漪。
*最終的には凛潔でハッピーエンドになります。*カイザーさん自身は出てきませんが、潔←カイザーさん要素が強いので、苦手な方はお気をつけ下さい!
*最终会迎来凛洁的 Happy Ending。*虽然凯撒本人不会登场,但存在强烈洁←凯撒要素,不喜者请注意避雷!
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way back home 回家的路
1
雨のにおいがする。 空气中飘着雨的气息。
目を覚ましたばかりの、ぼんやりとした頭に浮かんだのはそんな言葉だった。
刚睡醒的朦胧脑海中浮现的便是这样一句话。
勿論、本当に雨のにおいがするわけではない。 当然,并非真的嗅到了雨的味道。
帰国してすぐ、きれいに掃除した寝室の香りは、木々をイメージしたインテリアフレグランスだ。
一回国就闻到卧室里飘着树木气息的室内香氛,那是刚打扫完的清新味道。
五年前、この部屋を買った同居人が選んだ香りで、なんとなくそのまま使い続けている。
五年前同居人买下这间房时选的香气,不知怎的就一直沿用至今。
首を伸ばせば、サイドテーブルに置かれた時計が、朝の九時を指しているのが見える。
伸长脖子就能看见床头柜上的时钟正指向早上九点。
オフシーズンだからといって、あまり生活のリズムは崩したくない。
虽说正值淡季,但也不想把生活节奏打乱太多。
そう思って翌日には戻した時間の感覚は、二日前の夜更かしのせいでまた乱れてしまったようだ。
这样想着第二天调整回来的时间感,似乎又因为前天的熬夜而紊乱了。
さすがに、そろそろ起きないと。少しの気怠さを感じながら寝室を出て、リビングで簡単な朝食を済ませる。
再不起床就真的不行了。带着些许倦意走出卧室,在客厅简单解决了早餐。
一年のうち、住むのは長くてもほんの三ヶ月程度。そのせいか、白い壁紙は未だ新築のように真新しい。
一年之中,住在这里的时间最长也不过三个月左右。或许正因如此,纯白的壁纸依然像新房般崭新。
それでも、大きなソファや壁に掛けられた液晶テレビ、硝子テーブルに落ち着いた色合いのラグと、十分すぎるくらい生活空間は整っている。
即便如此,宽敞的沙发、墙上悬挂的液晶电视、玻璃茶几搭配沉稳色调的地毯,生活空间已布置得过于完善。
どうせ住んでも三ヶ月くらいだし、最低限の家具があればいいんじゃない。
反正最多也就住三个月左右,有最基本的家具不就行了吗。
そう言った潔に、凛は明らかに不満げな顔をして、そのまま都内のセレクトショップへと連れて行った。
听到洁这么说,凛明显露出不满的表情,直接把他带去了东京都内的精品店。
店の中はラグジュアリーな家具に溢れており、試しに座ってみようとはとても思えないソファがいくつも鎮座していた。
店内摆满了豪华家具,光是看着那些让人根本不敢试坐的沙发就够让人却步了。
「どれにする?」と凛に聞かれたときには「どれがいいって言われても……」という何とも間抜けな回答をしてしまった。
当凛问"选哪个?"时,洁只能给出"你问我哪个好我也......"这种蠢到家的回答。
潔はおおよそインテリアには疎かったし、ただただ圧倒されるばかりで、聞かれたところではっきりとした返答は出来なかった。
洁对室内装潢几乎一窍不通,此刻只能被震撼得说不出话来,被问到时也支支吾吾给不出明确回答。
ドイツの人気チームで、億単位の年俸を貰っていたとしても、高校を卒業して二年も経っていないのだ。とても感覚が追いつかなかった。
即便在德国人气球队拿着上亿年薪,毕竟高中毕业还不到两年。这种奢华感实在难以适应。
いや、それは今もあまり変わんないか。 不,现在其实也没好到哪里去。
遠征の際、チームが用意してくれる高級ホテルに入るのは今でも慣れない。
直到现在,入住球队为远征准备的高级酒店时仍会手足无措。
対して凛は、あの頃から妙にそういった場に慣れていた。
相比之下,凛从那时起就莫名地适应这种场合。
一般的な家具より明らかにゼロが一つか二つ多い値段に潔が驚いているうちに、凛はあれこれと買う物を決めてしまった。
当洁还在为那些比普通家具明显多出一两个零的价格震惊时,凛已经迅速决定了要购买的各种物品。
購入する家具の一つ一つに、潔の確認を取りながら。
每选定一件家具,都会征得洁的确认。
今思えば、凛なりにちゃんと、「二人の家」を意識してくれていたのだろう。半分払うと申し入れれば、素直に応じてくれた。
现在回想起来,凛大概是以自己的方式认真考虑着"两人的家"吧。当洁提出要分摊费用时,他也爽快地答应了。
まあ、マンションを購入した際のお金は何度言っても受け取ってもらえなかったけど。
虽然关于买公寓的钱我说了多少次他们都不肯收下。
食べ終わった朝食をシンクに下げ、水につけておく。
把吃完的早餐餐具放进水槽,泡在水里。
そのまま窓の方へと向かえば、予想していた通り、静かに雨が降り始めた。
径直走向窗边,果然如预料般,外面开始静静地下起雨来。
六月に入ったとはいえ、まだ梅雨入りはしていないはずだ。洗濯物は昨日全て終わったし、特に問題はなかった。
虽说已进入六月,但应该还没到梅雨季节。昨天刚洗完所有衣物,所以没什么特别的问题。
濡れていく東京都心の景色は、独特な雰囲気がある。
被雨水浸湿的东京都心景色,别有一番独特韵味。
凛がこのマンションを買ったのは、付き合い始めて二年目の夏のことだった。
凛买下这间公寓,是在我们交往第二年夏天的事。
日本にいるオフの間はなるべく一緒に過ごしたいとは思ってはいたが、まさかマンションの購入までしているとは思わず、心底驚いた。
虽然我也想过在日本休假时要尽量多待在一起,但没想到她竟然直接买了公寓,着实让我大吃一惊。
大使館や大きな公園が周辺にある南麻布は、所謂高級住宅街といわれている。
周边环绕着大使馆和大型公园的南麻布,正是所谓的高级住宅区。
勿論治安は良く、落ち着いた場所だが利便性も良く、主要駅へは乗り換えなしに十分足らずで出ることが出来る。
这里治安良好环境宁静,且交通便利,无需换乘不到十分钟就能抵达主要车站。
意外と高級趣味なのかと思えば、この場所に決めた理由は「ゴミゴミしていないこと、うるさくないこと」と「ジムがついていること」。
原以为他有什么高端品味,结果选择这里的理由竟是"不杂乱喧闹"和"配有健身房"。
そして、「埼玉スタジアムまで乗り換えなしで行くことが出来ること」だったという。
再加上"可以直达埼玉体育场"这个条件。
埼玉スタジアムは、日本代表をはじめとして国際試合がよく行われるスタジアムだ。
埼玉体育场是经常举办日本国家队赛事及其他国际比赛的场馆。
乗り換えなしで行けるのは確かに便利だが、冷静に考えれば試合会場へ行くのに電車を使うことはまずない。
确实不用换乘是很方便,但冷静想想去比赛场地根本不会坐电车。
潔が遠慮がちにそう突っ込めば、そこでようやく気付いたらしい凛が「そういや、そうだな」と決まりが悪そうな顔をした。
当洁犹豫着这么指出时,凛这才恍然大悟地露出尴尬表情"说起来...确实是这样呢"。
凛って意外と、天然だよな。 没想到凛还挺天然呆的嘛。
笑ってそう言えば、ぎろりと視線を向けられた。 刚笑着说完,就被狠狠瞪了一眼。
フィールド上では常に鋭利な頭脳とそれに結びついた動きをする凛だが、私生活では時々こういったことがあった。
在球场上总是以敏锐的头脑和与之配合的动作著称的凛,私下里偶尔也会有这样的一面。
饒舌な方ではないが、会話をするのが面倒というわけではないようで、潔の話はいつも聞いてくれていた。
虽然算不上健谈,但似乎并非讨厌与人交流,总是耐心听着洁说话。
ソファには座らず、床にぺたんと座り込んで窓からの景色を眺めていると、よく飽きねえなといつの間にか隣に座っていた。
不坐沙发而直接盘腿坐在地板上看窗外风景时,常常会听到"你都不会腻吗"的吐槽,不知不觉间那人已坐在了身旁。
大きな一面の窓からは東京都心が見渡すことが出来、夜になるとライトアップされた東京タワーも見える。
从整面落地窗可以俯瞰东京都心,入夜后还能看见亮起灯光的东京塔。
その景色を見る度に日本に、凛と暮らすこの家に帰ってきたんだと実感することが出来た。
每次看到这片景色,都能真切地感受到自己回到了日本,回到了与凛共同生活的这个家。
最後に二人でこの景色を見たのは、いつだっただろうか。
上一次两人一起看这片景色,究竟是什么时候的事了呢。
どんよりとした天気と同じように落ちていく気分を感じながら、手元にあるスマートフォンの画面を見る。
感受着与阴沉天气一同低落下去的心情,低头看向掌中智能手机的屏幕。
やることがないと、つい手にしてしまうのは現代人の悪習だと何かの専門家が以前テレビで言っていた。
无事可做时总会不自觉地拿起手机——记得某位专家曾在电视上说这是现代人的恶习。
もっとも、潔が手に取ってしまうのはそれが理由ではない。
说到底,洁拿起手机并不是因为这个理由。
いや、むしろなんらかの理由を探してしまっている気がする。
不,倒不如说似乎是在寻找某种借口。
今何時だろう。雨はいつ止むのかな。面白いニュースは入ってきていないか。
现在几点了呢。雨什么时候会停。有没有什么有趣的新闻。
言い訳するようにスマートフォンを手にとり、自分が望んだ通知がきていないことに、落胆する。
像是找借口般拿起手机,发现没有收到期待的通知,不由得感到沮丧。
LINEを開けば、最後の凛とのやりとりは、潔の「飛行機何時に着く?」で終わっていた。
打开 LINE,最后和凛的对话停留在洁那句"飞机几点到?"。
既読はついているが、何の返答もきていない。 消息显示已读,但没有任何回复。
一日ほど経ってしまったこともあり、他のやり取りに埋もれてしまい、少しスクロールしなければ見つけることは出来ない。
由于已经过去一天左右,这段对话被其他消息淹没,需要稍微滑动屏幕才能找到。
ほんの数年前までは、何かしらのやり取りがあって、常に上の方に表示されていた。
就在几年前,他们还有来有往地聊天时,对话总是显示在最上方。
こちらが聞いたことに端的にしか答えない、一言二言の凛のメッセージに当時はなんだかなあと思ったが、今となってはメッセージがくるだけずっと良かった。
那时总觉得凛回复得太过简短,对我的问题只给出一两句回应,但现在能收到消息就已经很好了。
そのままぼうっと眺めていると、微かにスマートフォンが振動する。
正发着呆时,手机突然微微震动起来。
最近のAIはとても優秀で、こちらが興味を持った事柄やニュースを分析し、配信してくれる。
如今的 AI 非常智能,能分析我感兴趣的话题和新闻并主动推送。
けれど、糸師凛とタイトルに表示されたネットニュースは、いつもとはやや趣が違った。
但这次标题显示"糸师凛"的网络新闻,却与往常有些不同。
「え……」 "呃……"
イケメン日本代表、人気タレントと試合後に密会。 日本国家队帅哥球员赛后与人气艺人秘密约会。
視界に入ってきた文字を理解するのに、少し時間がかかった。
理解映入眼帘的文字花了我一些时间。
現役日本代表、しかも海外リーグで活躍するサッカー選手だ。こういったニュースを目にするのは珍しくもなんともない。
现役日本国脚,而且还是在海外联赛大放异彩的足球运动员。看到这类新闻本不是什么稀奇事。
記事につけられた画像には、確かに凛と、そして女性が映っていた。
照片里确实拍到了凛和一名女性。
密会、とタイトルには書かれているが、街中に立っているだけで、親しげな雰囲気も感じられない。
虽然标题写着"密会",但两人只是站在街上,也看不出有什么亲密的氛围。
いや、それは自分の欲目だろうか。 不,这会不会只是我自己一厢情愿的想法呢?
自分が思った以上に動揺していることに驚きながら、スマートフォンを一旦ガラステーブルの上に置く。
意识到自己比想象中更加动摇,我暂时把智能手机放回了玻璃桌上。
このままスマートフォンを持っていれば、感情的なメッセージを凛に送りかねない。
要是继续拿着手机,很可能会给凛发去情绪化的消息。
けれどその瞬間、再びスマートフォンは小さく振動した。
但就在那一刻,手机再次微微震动起来。
反射的に開けば、送り主は今ちょうど頭の中で考えていた人物ではなく、その兄だった。
条件反射般点开,发现发信人并非此刻萦绕在脑海中的那个人,而是他的兄长。
内容は、二日前に冴が出場していた試合の後に送った潔の感想に対する、返答。
内容是对洁两天前看完冴参赛比赛后所发感想的回复。
試合に関する感想は、おおよそ同じようなものだったそうだが、冴が気付いていなかった部分もあったようで、その点を感心された。
关于比赛的感想,两人大体相似,不过似乎还有些冴未曾注意到的细节,这点让凛颇为佩服。
冴とは定期的にメッセージのやり取りを行っており、意外なことに返信もはやく、内容も丁寧だ。
凛和冴保持着定期短信往来,意外的是对方回复很快,内容也很认真。
二人の話題のほとんどはサッカーに関するものだということもあるだろう。
或许因为两人聊的话题八成都是关于足球吧。
それこそたまたま同じ試合を見ていた時など、まるで一緒に見ているかのような感覚になる。
特别是当偶然观看同一场比赛时,简直就像并肩观战般的奇妙感受。
『今パス出した瞬間、出てきたの、視えてたか?』 『刚才传球瞬间,你看到我冲出来了吗?』
『ギリ、やっぱりテレビだとフィールド全体が見えないんだよな~』
『果然电视转播还是看不清整个球场啊~』
『まあ、カメラは基本はボールを中心に映してるからな』
『毕竟摄像机基本都聚焦在球上嘛』
凛との関係を知っているからなのか、それとも潔自身にそれなりに好感を持っているからなのかはわからないが、冴とのそういったやり取りは楽しかった。
不知是因为知晓凛与自己的关系,还是对洁本身抱有一定好感,和冴这样的互动总让人心情愉悦。
メッセージへの返信をうっていると、振動と共に追加のメッセージが表示される。
正在回复消息时,手机随着震动又弹出一条新消息。
内容は、ちょうど先ほど潔が目にしたニュースに関するものだった。
内容正是关于洁刚才看到的新闻。
一緒にいたタレントは、ちょうどチャンピオンズリーグ決勝の中継で来ており、試合後に一緒に食事に、という流れになったこと。
同行的艺人恰好因欧冠决赛转播而来,赛后便顺理成章地约了聚餐。
食事といっても二人きりだったわけではなく、冴や他のスタッフもいたこと。
虽说是聚餐也并非独处,冴和其他工作人员都在场。
写真を撮られた時には、ちょうどタクシー待ちをしていた時で、勿論別々のタクシーに乗って帰ったこと。
被拍到照片时,他们正好在等出租车,当然最后是分别搭乘不同的车回去的。
食事中も二人の間にはほとんど会話はなかったし、連絡先すら交換していないこと。
用餐期间两人几乎没有任何交流,甚至连联系方式都没有交换。
冴にしては珍しく、事細やかにそれらの内容が説明されていた。
对于冴来说实属罕见,他竟事无巨细地解释了这些细节。
はっきりとは書かれていないが、潔が誤解しないよう、気を遣ってくれたのだろう。
虽然没明说,但大概是为了避免洁产生误会,才如此体贴周到吧。
一歳しか違わないのに、こういうところは年上らしいというか……お兄ちゃん気質なんだよな。
明明只差一岁,在这种地方却显得很成熟稳重……真是很有哥哥气质呢。
冴に感謝しながらも、肝心の凛からは何のフォローもないことには少し引っかかりを覚えた。
虽然对冴心怀感激,但关键人物凛完全没有表态这件事还是让他有些在意。
報道されていることを知らない可能性も高いが、凛の性格を考えれば、知っていたとしても何も言ってこないだろう。
凛很可能根本不知道媒体报道的事,不过以他的性格,就算知道了大概也不会说什么吧。
根も葉もない、くらだないゴシップ記事に弁解の必要なんてないと、そんな風に思っているはずだ。
他肯定觉得,对这种毫无根据的低俗八卦报道,根本没有解释的必要。
潔だって、本当に凛がタレントと密会していたとは思わないし、良い気分はしないが目くじらを立てるつもりはなかった。
洁其实也不相信凛真的和艺人私下见面,虽然心情不太好但也没打算小题大做。
けれど、試合が終わって二日ほど経つというのに自分には用件のみのメッセージしか送らず、他の人間と食事をとっていたのかと
可是比赛结束都两天了,凛只给自己发些事务性的消息,原来是在和别人吃饭啊——
思うと、やはり面白くはない。 这么一想果然还是很不爽。
やっぱ決勝、見に行けば良かったかな……。 早知道决赛还是该去看的……。
凛と冴が所属するレアールがチャンピオンズリーグで優勝したのは、一昨日のことだ。
凛和冴所属的皇家队在前天夺得了欧冠冠军。
多くの日本人選手ががヨーロッパのリーグで活躍しているとはいえ、その頂点を決めるチャンピオンズリーグのファイナルに日本人選手が出場するのだ。日本国内も、かなりの盛り上がりを見せていた。
尽管有许多日本球员在欧洲联赛中表现出色,但能登上欧冠决赛舞台的日本选手依然罕见。日本国内对此事的关注度也异常高涨。
時差の関係もあり、放送時間は深夜だというのに視聴率も高かったようだ。
虽然由于时差关系比赛在深夜转播,收视率却依然居高不下。
ちなみに、潔が所属するバスタード・ミュンヘンは準決勝でレアールに負け、敗退した。
顺带一提,洁所属的拜仁慕尼黑队在半决赛中败给皇家队,止步四强。
スコアは2-1という僅差だったとはいえ、ボール支配率はともかく、シュート数はレアールが圧倒していた。
虽然比分只是 2-1 的微弱差距,但抛开控球率不谈,射门次数上雷阿尔队占据绝对优势。
準決勝の会場となったのが、レアールのホームスタジアムであるサンチャゴ・ベルナベウスタジアムということもあったのだろう。
或许因为半决赛场地设在雷阿尔队的主场——圣地亚哥·伯纳乌球场的缘故。
決して気後れしたわけではないが、レアールのサポーターの熱量はすさまじかった。
虽绝非怯场,但雷阿尔队球迷的热情实在骇人。
レアールに負けるのは初めてではなかったが、正直今回ばかりは勝ちたかった。
虽然输给雷阿尔队并非首次,但老实说唯独这次特别想赢。
『ファイナル、見に来るか?』 『决赛,要来看吗?』
『チケットなら用意できる』 『票的话我能准备』
試合後しばらくして、凛から送られてきたそのメッセージを返すのにも、少し時間がかかった。
比赛结束好一阵子后,凛发来的这条消息,洁也花了一点时间才回复。
決勝が行われるのはミュンヘン、バスタード・ミュンヘンのホームスタジアムだった。
决赛将在慕尼黑举行,就在拜仁慕尼黑的主场。
五月の中旬に国内リーグが終わっているとはいえ、具体的にいつ帰国するかはまだ決めていなかったし、調整しようと思えば出来た。
虽说五月中旬国内联赛就结束了,但具体什么时候回国还没决定,真要调整的话也来得及。
それをしなかったのは、単純に悔しかったからだ。 之所以没这么做,纯粹是因为不甘心。
『返信遅れてごめん』 「抱歉回复晚了」
『悪い、ちょっと予定が入ってて』 「不好意思,临时有点事」
我ながら、見え透いてる。本当は、予定なんてなかった。
我自己都觉得太明显了。其实根本没什么安排。
何かフォローしなければと、次の文面を考えているうちに、既読がついた。
正想着必须说点什么补救时,消息已显示已读。
『でも、絶対リアタイするから』 『但我一定会看直播的』
テレビで、とは書かなかった。 她没写明是在电视上看。
スタジアムで試合をする凛と、それをテレビで観戦する自分を想像すると、やはり忸怩たる思いがした。
想象着在体育场比赛的凛,和在电视前观战的自己,果然还是感到羞愧难当。
『わかった』 『知道了』
凛からのメッセージは一言、了承の言葉だけが書かれていた。
凛发来的信息只有简短的一句同意。
文面を見たとき、どこか力が抜けた。 看到这条消息时,莫名松了口气。
恋人の晴れ舞台なのだ、見に行くのが当然じゃないかという後ろめたさがなかったわけではない。
去看恋人的重要比赛,要说完全没有"这不是理所当然的吗"这种愧疚感,那倒也不是。
凛が少しでも不満を表したり、見に来て欲しいという意思を見せたら、考え直していたかもしれない。
如果凛稍微表现出不满,或是流露出希望他来看比赛的意思,他或许就会重新考虑。
それこそ、一昨年のリーガでのレアールの優勝は、潔も試合会場まで足を運んだ。
就像前年联赛中雷阿尔队夺冠时,洁也专程去了比赛现场。
あの時の凛には、潔に対して何よりも自分を優先して欲しいという意思を感じたし、そんな恋人の我が儘も心地よかった。
那时的凛让洁感受到,比起其他任何事,她更希望自己被优先考虑。而恋人这样的任性,也让他觉得格外舒心。
けれど、今回は意外なほどに凛はあっさりと引き下がった。
但这次凛却意外干脆地退让了。
テレビで見た決勝は、試合内容もとても良く、面白かった。
电视上看到的决赛,比赛内容非常精彩,看得人津津有味。
レアールの中心となっていたのは凛と冴で、二人の連携は気持ちが良いほど上手くいっていた。
雷奥队的核心正是凛和冴,两人的配合默契得令人心旷神怡。
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、無意識にガッツポーズをしていた。
终场哨声响起时,自己都不自觉地摆出了胜利姿势。
やっぱり凛はすごい。悔しいけれど、素直にそう思えた。同時に、スタジアムでこの試合を見なかったことを後悔した。
果然凛很厉害。虽然不甘心,但能坦率地这么想。同时,也后悔没在体育场看这场比赛。
自分から断っておいて、何をショックを受けているんだと思う。
明明是自己先拒绝的,现在又在受什么打击啊。
無意識とはいえ、試し行動のようなことをしてしまったことへの自己嫌悪もあった。
虽说并非有意,但对这种试探性行为产生的自我厌恶感也涌上心头。
潔がスタジアムにいなくとも、いつものように、いやいつも以上のパフォーマンスを凛が見せたことが、ほんの少しだけ寂しかった。
即使洁不在体育场,凛依然像往常一样——不,是比往常更出色的表现,让心里泛起一丝寂寞。
サッカーにおける凛のストイックさを考えれば当然のことで、それくらいのことで凛のプレイに影響がでないことだってわかっている。
考虑到凛在足球上的严苛自律,这种程度的事情根本不会影响他的表现,这点洁心知肚明。
それでも、もしかしたらという自分の浅はかな自惚れに気付いたことは、しんどかった。
即便如此,意识到自己竟还抱着这般肤浅的妄想,仍让他痛苦不堪。
凛の中では、自分は今も特別な存在だと、どこかで信じたかった。
在内心深处,洁始终渴望相信自己对凛而言仍是特别的存在。
期待してはいけないと思っているのに、期待するのをやめられない。
明明告诫自己不该有所期待,却始终无法停止这份期待。
何より、潔の行動に対し何も言ってこない凛に対する寂しさが何より強かった。
最令人难受的,莫过于凛对洁的行为始终保持沉默所带来的那份强烈孤独感。
出会ったばかりの、あの青い監獄の中で凛に告げられた言葉を思い出す。
记忆又闪回初遇时,在那座蓝色监狱里凛对自己说过的话。
--世界一になるのを、見届けろって言ったくせに。 ——明明说过要亲眼见证我成为世界第一的。
あの時の言葉は、もう凛の中ではなかったことになってしまったのだろうか。
难道那时的誓言,在凛心中早已不复存在了吗?
気圧が急に下がった影響だろうか。微かな頭痛を感じながら、立ち上がってキッチンへ向かう。
或许是气压骤降的缘故吧。我一边感受着隐隐的头痛,一边起身走向厨房。
さすがに身体がなまりそうだったし、午後からはジムにいくつもりだった。
毕竟身体都快生锈了,本打算下午去趟健身房。
だからその前に、夕食の支度をしておく。 所以在那之前,先把晚饭准备好。
帰国するのは今日だと聞いていが、正確な時間までは教えられていなかった。
虽然听说他今天回国,但具体时间并未被告知。
それでも夕食の準備をしようと思ったのは、賭けみたいなものだった。
即便如此,准备晚餐这件事本身就像一场赌注。
もし、凛が今日夕食に間に合って、一緒に食事をとることが出来たら、もう一度考え直す。
如果凛今天能赶上晚餐,能一起吃饭的话,就再重新考虑一次。
間に合わなかったら、という可能性も頭に過ったが、それは頭の端に寄せておいた。
虽然脑海中也曾闪过"如果赶不上"的可能性,但被刻意搁置在思维角落。
昨日のうちに、食材は買い込んである。後は、考えておいたメニューの下ごしらえをするだけだった。
昨天就已经采购好了食材。剩下的,只需按构思好的菜单进行预处理就好。
パチッというスイッチを押す音が小さく聞こえ、はじかれたように潔は目を開いた。
啪嗒一声轻响,开关被按下的声音传来,洁像是被电到般猛然睁开了眼睛。
夕食を作った後、そのまま凛を待っているうちに眠り込んでしまったようだ。
看来是在做完晚饭后,等着凛回来的过程中不小心睡着了。
大きなソファの寝心地は悪くないが、姿勢があまり良くなかったのだろう。少し腕が痺れていた。
长沙发的舒适度倒是不差,不过可能是睡姿不太好吧。手臂有些发麻。
「あれ、凛……?」 "咦,凛……?"
間接照明の淡い橙の光の中、整った顔が浮かび上がる。
在间接照明淡淡的橙色光线中,一张端正的脸庞浮现出来。
服装こそラフな普段着だが、手元には見慣れたスーツケースがある。
虽然穿着随意的便服,但手边却放着熟悉的行李箱。
「おかえり」 "欢迎回来"
へらりと笑ってそう言えば、目の前にいる凛は苦い顔をした。
刚露出爽朗笑容说完这句话,眼前的凛就露出了苦涩的表情。
「夕食、作ってたのか」 "你做了晚饭吗?"
「あ、うん……」 "啊,嗯......"
「遅くなるって、言ってなかったか?」 "不是说过会晚回来吗?"
「遅くなるって言ってたけど、深夜になるとは言ってなかったから」
"是说过会晚回来,但没说会到深夜啊"
「深夜だって言ってなくても、遅くなるって言ったら普通は夕食はいらないって思うだろ」
"就算我没说深夜回来 但说了会晚归的话 一般人都会觉得不用准备晚饭吧"
「夕食がいるって言わなかったけど、いらないとも言わなかったよな」
"我是没说需要晚饭 但也没说过不需要啊"
潔がそう言うと、凛が黙り込んだ。嫌な沈黙だった。
洁说完这句话后 凛陷入了沉默。这沉默令人不适。
久しぶりに会うのに、なんで俺たち、言い合いをしてるんだろう。
明明久别重逢 为什么我们却在这里争执不休呢。
いや、久しぶりでもないか。 不,也算不上久别重逢吧。
それこそ一ヶ月前、マドリードのスタジアムで顔を合わせたばかりだ。
毕竟就在一个月前,我们还在马德里的球场见过面。
凛はため息をつくと、テーブルに向かおうとする。 凛叹了口气,准备走向餐桌。
「いいよ食べなくて。もう冷めちゃってるだろうし」 "不用吃了。反正都已经凉透了吧"
「温めればいいだろ」 "热一下不就行了"
「夜遅くに食べるの、体によくないから」 "这么晚吃东西对身体不好"
「あ? どうせ時差で感覚は狂ってる」 "哈?反正时差早就把生物钟搞乱了"
「じゃあ、ますます感覚狂わせちゃダメだろ。いいよ無理しなくて」
"那就更不能继续扰乱作息了啊。别勉强自己了"
「無理してるなんて誰が言った」 "谁说我在勉强了"
「こんな時間に食べるなんて、無理してるに決まってるだろ」
"这个点还吃东西,肯定是在硬撑吧"
これ以上言い合っても平行線だと思ったのだろう。凛が、もう一度ダイニングテーブルの方に視線を向けた。
大概觉得继续争论也不会有结果吧。凛再次把视线转向餐桌方向。
「だから、いいって食べなくて!」 "所以都说了不用吃也没关系!"
苛立ったような声がでてしまった事に、少し後悔する。凛がせっかく気を遣ってくれたのに、感じが悪かった。
为自己脱口而出的尖锐语气感到些许后悔。明明凛特意这么体贴,自己却表现得这么不近人情。
「ごめん。だけど本当に大丈夫だから。一人分作るのもあれだったから、ついでに二人分作っただけだし」
"抱歉。不过真的没关系。单独做一人份反而奇怪,顺手就做了两人份而已。"
本当は、凛に食べて欲しくて作った夕食だった。けれどそれを言ったところで、余計な罪悪感を与えるだけだ。
其实这份晚餐是特意为凛准备的。但即便说出口,也只会徒增对方的愧疚感。
凛の表情は曇ったままだった。 凛的表情依然阴云密布。
納得できていないようだが、それ以上言う気はないようだ。
虽然她看起来并不信服,但似乎也没有继续争辩的意思。
自分にも原因はあるとはいえ、雰囲気の悪さに居たたまれなくなる。
虽说自己也有责任,但这种糟糕的氛围实在让人待不下去。
凛の表情からは疲労の色は見えないが、、長いフライトを終えてこの時間に帰ってきたのだ。疲れていないはずがない。
从凛的表情看不出疲惫的痕迹,但刚结束长途飞行在这个时间点回家,不可能不累。
はやく、寝室で休ませないと。 得赶快让她去卧室休息才行。
会話の糸口を探っていると、ガラステーブルに置かれていたスマートフォンが振動した。
正寻找着聊天话题时,放在玻璃桌上的手机突然震动起来。
メッセージアプリの通知だったが、薄暗い中、画面が明るくなる。
是社交软件的消息通知,在昏暗环境中屏幕骤然亮起。
「あ……!」 「啊……!」
まずい、午前中のうちに見た凛とタレントのニュースを開いたままだった。
糟了,早上看过的凛和那位艺人绯闻的新闻页面还开着没关。
スマホの画面を見た凛の眉が微かに上がったことには気付いたが、潔はすぐさまスマホの画面を隠すように手に取った。
我注意到凛的眉毛在看到手机屏幕时微微挑起,但洁立刻把手机藏到了手里。
「その、冴からちゃんと聞いてるから」 "那个...我听冴说过了"
「……あ?」 "...啊?"
「決勝が終わったと、番組のスタッフさんとかとみんなで食事に行ったんだろ? 試合の後すぐのメッセージで、冴が言ってて」
"决赛结束后,你们和节目组工作人员一起去吃饭了对吧?比赛刚结束冴就发消息说了"
あくまで、会話の流れから話は聞いていたという流れに持って行こうとする。
凛只是试图将话题引向"自己是从对话中偶然得知此事"的方向。
ニュースを知った潔が誤解しないよう、冴が気遣ってくれたことを伝えるのはなんとなく気まずかった。
告诉洁这是冴担心他看到新闻后产生误会而特意告知的,总觉得有些尴尬。
そんなことまでしなきゃいけないのかと、負担に思われたくなかった。
他不想让对方觉得自己连这种事都需要特意说明,显得太过沉重。
「いや、これ多分望遠なのによく撮れてるよな。記事にもあったけど美男美女っていうか、絵になってるし」
"不,这张照片虽然可能是远距离拍摄但效果意外不错呢。就像报道里说的,俊男美女简直像幅画似的"
なにが悲しくて、恋人とタレントのゴシップ記事を褒めなきゃ行けないのか。
凭什么要违心夸赞那些关于恋人和明星的八卦绯闻。
ズキズキと心は傷んだが、自分は全く気にしていないからと、そうアピールするのに必死だった。
心脏阵阵刺痛,却还要强装出一副毫不在意的模样。
「くだらねえ、いつものマスコミの飛ばし記事だろ」 "无聊透顶,又是媒体在捕风捉影吧"
「それは勿論、そうなんだけど」 "话是这么说没错..."
「兄貴にどんなメッセージ送ったんだよ」 "你给老哥发了什么消息啊"
そんなことはどうでもいいとばかりに、凛に切り出される。
凛直接打断了他,仿佛在说这种事根本无关紧要。
「え? 試合全体の感想と、冴のゲームメイクについてと、あと一点目のシュートの時のボールコントロール、あれ角度がないとこからだったのに、すごかったよな? 周りも絶対パス出すと思ったし。それから……」
"啊?就是整场比赛的感想,还有冴的战术组织,还有第一记射门时的控球处理,那个角度明明没什么射门空间,超厉害的对吧?周围人肯定都以为他要传球。然后......"
「うぜえ、もういい」 "烦死了,闭嘴"
潔の言葉を遮り、吐き捨てるように凛が言った。 凛打断了洁的话,用近乎唾弃的语气说道。
自分から聞いておいてなんだとは思ったが、喋りすぎてしまった自覚はあった。
虽然觉得主动询问又这样很矛盾,但洁也意识到自己确实说得太多了。
また、沈黙が流れる。 沉默再次蔓延开来。
「そ、そろそろ寝たら? 飛行時間長かったし、疲れてるだろ?」
"差、差不多该睡了吧?飞行时间那么长,你也累了吧?"
「お前は?」 "你呢?"
「え?」 "啊?"
「寝ないのかよ」 "你不睡吗"
凛の問いに、目が泳ぐ。おそらく、寝室に行かないのかという意味のはずだ。
面对凛的提问,眼神游移不定。这应该是在问为什么不去寝室的意思吧。
「ああ、うん、寝る。けど、今日はここで寝ようと思って」
"啊,嗯,要睡了。不过今天我想睡在这里"
「あ? なんでだよ?」 "哈?为什么啊?"
「このソファ、寝心地が良くて。あと、夜景見ながら寝られるのもなんかいいなって」
"这张沙发睡着很舒服。而且,能看着夜景入睡感觉也不错"
苦しい言い訳だと、自分でも思った。けれど、これといって他に理由が見つからなかった。
连自己都觉得这是个蹩脚的借口。但实在找不出其他更好的理由了。
「それにほら、凛も疲れてるだろうし一人の方がゆっくり出来るだろ?」
"而且你看,凛你也累了吧?一个人待着更能好好休息不是吗?"
この言い方はずるい、と言った直後に自覚する。自分の我が儘に対して、凛を理由にするのは卑怯だ。
这种说法太狡猾了——话音刚落洁就意识到了。把自己的任性用凛当借口,实在卑鄙。
そしてそれは、凛も感じたようだ。 而这份卑鄙,似乎也被凛察觉到了。
「勝手にしろ、別にお前がどこで寝ようがどうでもいい」
"随你便,你爱睡哪儿关我屁事"
苛立ったような声を出した凛が、そのままリビングを出て行く。
凛发出带着焦躁的声音,就这样走出了客厅。
そのうち電気をつける音と、水が流れる音が聞こえてきた。どうやら、シャワーを浴びてから寝るようだ。
随后传来开灯的声响和流水声。看来她是打算冲个澡再睡。
凛の姿が見えなくなったことに、少しだけホッとする。
看不见凛的身影后,我稍稍松了口气。
ほんの少し前まで会いたくて溜まらなかった存在。けれど、いざ顔を合わせると二人に流れる空気はぎこちなく、
就在片刻之前还思念得难以自持的存在。然而一旦真正见面,两人之间的空气却变得如此凝滞,
会話もどこかギスギスとしている。 对话中总带着些微妙的火药味。
最近は、いつもこうだった。 最近总是这样。
どちらかが百パーセント悪い、なんてことはないが、どちらも百パーセント悪くないとは言えない。
说不上是谁百分百的错,但双方也绝非完全无辜。
違う人間なのだ、長い間一緒にいれば齟齬が出るのは当たり前だ。
毕竟是两个独立的个体,长期相处难免会产生摩擦。
それらのズレを埋めるために、会話があるのだろう。そしてそれを誤魔化し、サボってきたのは潔だ。
为了填补这些错位,才有了对话吧。而一直逃避、敷衍了事的正是洁。
こうして欲しい、ああして欲しいと言えれば良かったのだろうが、それを言うことで面倒くさいと思われたくなかった。
明明直接说出"希望这样""想要那样"就好了,却因为害怕被觉得麻烦而始终未能开口。
ほんの少しずつしていた我慢は、時間が経つにつれ少しずつ募っていき、時限爆弾のようにいつか爆発しそうで怖かった。
那些微小的忍耐随着时间不断累积,就像定时炸弹般随时可能爆发,令人恐惧。
我慢しているのは自分だけだとは思っていない。凛にも言い分はあるだろう。
我明白忍耐的不只自己。凛一定也有她的苦衷。
だけど、凛が何を考えているのか潔にはわからなかった。
但洁世一并不明白凛在想些什么。
サッカー……したいな。 好想……踢足球啊。
同じフィールドに立てば、不思議と凛の思考は読むことが出来た。勿論、さらにその上をいかれることもあるが、それもまた心地よかった。
只要站在同一片绿茵场上,就能不可思议地读懂凛的思绪。当然,有时也会被他更胜一筹的表现所压倒,但这种感觉同样令人愉悦。
普段の会話がうまくいかない時でも、凛との連携は面白いくらいにうまくいった。
即便日常交流总是不太顺利,与凛在球场上的配合却总能默契得令人称奇。
どこで、間違っちゃったのかなあ。 到底是从哪里开始出错了呢。
出会った時から、潔にとって凛は目標で、サッカー選手としてたくさんの影響を受けてきた。
从相遇的那一刻起,对洁而言凛就是目标,作为足球选手从他身上获得了诸多影响。
密かに憧れてもいて、だからこそ、告白された時には驚いたがそれ以上に嬉しかった。
私下里也一直憧憬着,正因如此,被告白时除了惊讶更多的是欣喜。
男同士とか、そんなことはどうでも良かった。凛が自分に好意を持っている、それだけで舞い上がるような気持ちになった。
同为男性什么的根本无所谓。只要凛对自己怀有好意,光是这点就足以让人雀跃不已。
でも、今となっては告白を了承したことが良かったのかはわからない。
但现在回想起来,当时答应告白究竟是不是正确的选择。
そういえばおめでとう、って言えなかったな。 说起来,那句"恭喜"我都没能说出口呢。
チャンピオンズリーグのタイトルをとるのがどれだけ難しいか。
欧冠冠军的头衔究竟有多难获得。
潔自身は誰よりわかっているし、帰ってきたら一番に伝えるつもりだった。
洁比任何人都清楚这一点,原本打算等他回来就第一时间告诉他的。
スマートフォンの時計を確認すると、既に日付が変わっていた。
看了眼手机时钟,日期已经跳转。
やはり、賭けには負けてしまったようだ。 果然还是输掉了这场赌约。
そう思った途端、いや、やっぱり……という気持ちがこみ上げてくる。
刚这么想着,不甘心的情绪就涌上心头——不,果然还是......
鈍りそうになる決心を、自分自身で奮い立たせる。もう、決めたことだろうと。
快要动摇的决心,被自己强行振作起来。明明早就决定好了的。
ちょうど、眠気も戻ってきた。 正好,睡意又涌了上来。
とにかく今日は寝ようと、タオルケットを身体にかけて横になる。
总之今天先睡吧,他拉过毛巾毯盖在身上躺下。
すると、先ほどきていたメッセージに返信していなかった事に気付く。
这时才注意到还没回复刚才收到的消息。
ぼうっとした頭でドイツ語の文面を考えながら、気がつけば潔は眠りに落ちていた。
迷迷糊糊地用德语构思着回复内容,等回过神来时,洁已经坠入了梦乡。
***
昨日とはうって代わり、翌朝の東京の空は晴れ間が広がっていた。
与昨日截然不同,翌日清晨的东京天空已放晴。
日中に身体を動かしておいたからだろう。あの後は意外なほどによく眠れ、スマートフォンのアラームが鳴る前に目を覚ますことが出来た。
或许是白天活动了身体的缘故。之后竟意外地睡得很好,在手机闹钟响起前就自然醒来了。
とても落ち込んで深い悲しみを感じていたとしても、身体は起床し、食事の摂取を求めている。
即便内心仍沉浸在深切的悲伤中,身体却已自动醒来,渴求着食物的补给。
休養をとることと怠惰に過ごすことは違う。サボれば、確実にパフォーマンスは落ち、今の居場所を失う。
休息调养与懒惰度日截然不同。一旦懈怠,表现必然下滑,现有的位置也会随之失去。
欧州でプロサッカー選手をするということは、そういうことだ。
在欧洲踢职业足球,就是这样的生存法则。
サッカーは今でも楽しいが、それだけではプロとしてやってはいけない。
足球至今仍令我快乐,但仅凭热爱无法支撑职业道路。
あの青い監獄に入ってから六年、自分の身体も心の持ちようも、確実にアスリートのそれになっていた。
自踏入蓝色监狱那日起已过六年,这副身躯与意志,确确实实蜕变成了运动员的形态。
そして、潔がそういった姿勢を持てているのは、少なからず凛の影響があった。
而洁之所以能保持这样的态度,很大程度上是受了凛的影响。
出会った頃のことを、思い出す。 回想起初遇时的情景。
おそらく、というか絶対、凛は潔のことを視界に入れていなかった。
恐怕——不,绝对是这样——凛当时根本没有把洁放在眼里。
潔だけではない。凛にとってほとんどの人間はその他大勢、にすぎなかったからだ。
不仅是对洁。对凛而言,绝大多数人不过是芸芸众生中的一员罢了。
何度も言われた『モブ』という言葉。 被反复提及的"路人甲"这个称呼。
それが、いつしか名前で呼ばれるようになり、凛の方から近づいてくれるようになった。
不知从何时起,她开始用名字称呼我,甚至主动向我靠近。
対等なライバルと認められたようで、嬉しかった。 这让我感觉被认可为平等的对手,内心雀跃不已。
まあ……まさかこんな関係になるとは思わなかったけど。
不过……确实没料到会发展成现在这种关系就是了。
自分の中にあった、秘めた想い。凛はもちろん、誰にも告げることはないと思っていた。
深藏心底的隐秘情愫。凛当然认为,这份心意永远不会向任何人袒露。
あ、いや。あいつにはバレてたかな。 啊,不对。或许那家伙早就察觉了吧。
同じチームに所属する、金髪の派手な容姿の男の顔が頭に浮かぶ。
脑海中浮现出同队那个金发张扬的男人的面容。
どこがいいんだか、と。凛のことを話す度に苦い顔をされる。
"到底哪里好了",每次谈及凛时对方总会露出苦涩的表情。
どこがいい。聞かれる度に、どう伝えようか毎回迷った。
哪里好呢。每次被问到,都会犹豫该怎么回答。
好きなところは、たくさんある。付き合った後は、それはどんどん増えていった。
喜欢的地方有很多。交往之后,这些地方还在不断增加。
長く一緒にいれば、嫌な部分も見えてくるはずだと言われたし、確かに嫌だと思う部分はある。
有人说相处久了就会看到讨厌的部分,确实有些地方让我觉得讨厌。
でも、だからといって嫌いになったりはしなかった。
但是,即便如此也没有因此变得讨厌你。
潔の中の一番大事な場所に凛はいて、多分これからもそれはずっと変わらない。
凛存在于洁心中最重要的位置,或许今后这一点也永远不会改变。
昨夜の残った食事を、淡々と片付ける。何も手をつけてもらえなかった、原型のままのそれがまるで自分自身のようだった。
他面无表情地收拾着昨晚剩下的饭菜。那份完好无损、无人动过的残羹,简直就像他自己一样。
わかってる。凛は食べようとしてくれて、それを止めたのは潔自身だ。
洁心里明白。凛原本是打算吃的,是自己阻止了他。
だけど仕方なく、気を遣って食べて欲しかったわけじゃない。
但这并非出于勉强或客套,而是真心希望他能吃下去。
サラダはしなびてしまっていたし、味噌汁も豆腐ハンバーグも煮物も和え物も、冷めて味が濃くなってしまっていた。
沙拉已经蔫了,味增汤、豆腐汉堡肉、炖菜和凉拌菜也都凉透了,味道变得浓重。
作ったばかりのまだ温かい、一番美味しい時に食べて欲しかった。一緒に食べたかった。
我多希望你能在刚做好还热乎的时候,在最美味的时候吃掉。想和你一起分享。
我ながら、プライドが高いと思う。だけど、これが自分の性格なのだから仕方がない。
我自己也觉得这样太过骄傲。但这就是我的性格,无可奈何。
残飯となったそれを全てゴミ箱の中に入れ、皿は軽く予洗いしてビルトインの食洗機の中へ突っ込む。
我把这些剩饭全部倒进垃圾桶,简单冲洗碗盘后塞进嵌入式洗碗机。
そして、テーブルをきれいに拭くと、朝食の準備をする。
擦干净桌子后,我开始准备早餐。
昨夜は遅かったし、とりあえずコーヒーでも飲んで凛を待とうと思ったが、意外にもドリップをしている間に凛は起きてきた。
昨晚睡得晚,本想着先喝杯咖啡等凛起床,没想到在冲泡期间凛就醒了。
どこか不機嫌そうな顔はいつものことだが、今は本当に不機嫌なんだということがなんとなくわかる。
那张带着些许不悦的脸庞虽是常态,但此刻我能隐约感觉到她是真的心情不佳。
長い付き合いなのだ、そういった些細な凛の表情の変化はわかる。
毕竟相处已久,凛这些细微的表情变化我都了然于心。
おそらく、まだ昨日の件を引きずっているのだろう。
大概还在为昨天的事耿耿于怀吧。
朝になったのだし、気持ちを切り替えてくれればいいのに。
明明都早上了,能转换下心情就好了。
「おはよう、コーヒー飲む?」 "早上好,要喝咖啡吗?"
「ああ」 "嗯"
こちらも見ずに言った凛は、サニタリールームの方へ向かっていった。
凛头也不回地说完,便朝洗手间方向走去。
返事をしてくれただけマシだろう。 能回话已经算不错了。
今日くらいは、穏やかに、お互い気分が悪くならないように過ごしたい。
至少今天想平静地度过,不让彼此心情变糟。
そしてそんな潔のささやかな願いは、僅か数十分の間にやぶられることになった。
而洁这个微小愿望,在短短几十分钟内就被打破了。
「なんだよこれ?」 "这什么玩意儿?"
ダイニングテーブルに座った凛が、顔を顰めて言った。
坐在餐桌前的凛皱着脸说道。
「なんだって、プレッツェルだけど。っていうか、なにこれって、食事を出したときに言われて一番嫌な言葉なんだけど」
"什么叫什么玩意儿,这不就是椒盐卷饼嘛。话说回来,'这是什么'可是端出饭菜时最讨厌听到的话"
「プレッツェルなのは見りゃわかる」 "是椒盐卷饼我当然看得出来"
「わかるならなんで聞いたんだよ」 “既然明白干嘛还问啊”
「なんで朝食に出てくるのかって聞いたんだよ」 “我问的是为什么早餐会出现这个”
「貰ったからだよ」 “因为是别人给的啊”
「……誰に」 “……谁给的”
「ここから十分位歩いたところにあるパン屋さんに。あの、舌噛みそうな名前のお洒落な外観の。なんか、旦那さんがドイツ人らしくて、一緒にサッカーも見てるから俺のことも知っててさ。来シーズンも頑張って、って。おまけでつけてくれたんだ」
"从这儿走十分钟左右有家面包店。就是那家店名拗口但装修很时髦的。听说店主是德国人,还经常一起看足球比赛,所以也认识我。跟我说下赛季也要加油来着。这是额外送的。"
パンっていうと日本だとやっぱりフランスが一番に出てくるんだけど、ドイツのパンも美味しいでしょう?
说到面包,在日本果然最先想到的还是法国面包,不过德国面包也很好吃吧?
そう言いながら、本場仕込みのプレッツェルをおまけにとつけてくれた。
这么说着,店家还额外送了个正宗德式碱水结面包。
「俺も忙しいときには朝はプレッツェルとサンドイッチで済ませたりするんだけど、腹持ちも良いし美味しいよ」
"我忙的时候早餐也经常用碱水结和三明治对付,既顶饱又好吃。"
食卓には、プレッツェル以外にもサンドイッチにチーズとパン、ヨーグルトやフルーツを並べた。
餐桌上除了椒盐卷饼外,还摆满了三明治、奶酪面包、酸奶和水果。
「そういや、ミュンヘンのホテルの朝食にこんなのがたくさん並んでたな」
"说起来,慕尼黑酒店的早餐也摆过这么多花样呢"
「うん。ホテルでも定番で……」 "嗯。酒店里的标配......"
ミュンヘンのホテル、ということはチャンピオンズリーグの決勝の時に泊まったのだろう。
说到慕尼黑的酒店,想必是欧冠决赛时住过的那家吧。
ちょうど良かった、話を先日の試合にしようと思ったところで、凛が潔の言葉を重ねるように口を開いた。
正好想跟你聊聊前几天的比赛呢——凛像是要接上洁的话头般开口了。
「なんで日本に帰ってまでドイツの朝飯食わなきゃなんねーんだよ」
"为啥回到日本还得吃德国式早餐啊"
「はあ? だったら朝はご飯がいいって、言えば良かっただろ?」
"哈?那你想吃和式早餐的话,早点说不就得了?"
「ご飯がいいって言う前に、お前がもう作ってたんだろ」
"我还没开口你就已经做好了吧"
「嫌なら食べなきゃいいだろ」 "不想吃就别吃啊"
「誰も食べないとは言ってねえだろ」 "又没人说非吃不可"
そう言うと、凛は手を合わせ、目の前にあるサンドイッチに手を伸ばした。
凛这么说着,双手合十后伸手去拿面前的三明治。
こんな時でも、ちゃんと手を合わせるのは凛の好きなところだったが、潔の気持ちの方はただ下がりだった。
即便在这种时候也不忘合掌致意,这正是我喜欢凛的地方,但洁的心情却直线跌落谷底。
俗説だが、プレッツェルには「愛」の意味もあるのだという。
虽说是个俗套的说法,但椒盐卷饼确实也蕴含着"爱"的寓意。
今この場面でプレッツェルを出すのは皮肉めいていると思ったし、凛に伝わるとも思わなかったが。
明知此刻拿出椒盐卷饼显得讽刺,也不认为凛能领会其中含义。
それでも、自分の凛への気持ちは変わらないままなのだと、そう伝えたかったのかもしれない。
但或许,我只是想借此表明自己对凛的心意始终未变。
こんなギスギスした状況で、愛だなんてあまりにも滑稽だ。
在如此剑拔弩张的境况下谈论爱情,未免太过荒唐可笑。
朝の白い光が、食卓に入ってくる。 清晨的白光洒进餐桌。
そんな中で無言で食事をとり続けていると、思い出したように凛が言った。
在这片沉默中持续用餐时,凛突然像想起什么似的开口。
「昨日の夕飯、どうしたんだよ」 "昨天的晚饭你怎么处理的"
「え、捨てたけど」 "啊,我扔掉了"
「温めれば食えただろ」 "热一下就能吃了吧"
勿体ない、と凛は言いたいのだろう。だが、責めるような口調にムッとする。
凛大概是想说"太浪费了"。但那种责备的语气让人火大。
「時間が経ってるし、どうせ美味しくなくなってるから」
"都放这么久了,反正也不好吃了吧"
「こんなもんより、よっぽど美味いだろ」 "比起这种东西,明明好吃多了"
「こんなもんって……」 "这种东西啊……"
わかってる。元々凛は和食が好きで、だからこそ一緒にいるときにはなるべくそれに合わせていた。
我明白的。凛本来就喜欢和食,所以在一起的时候我都会尽量迁就她的口味。
焼き魚も煮物も、甘みが強すぎたとか、もう少し塩気があってもよかったとか、好みにあわせながら二人の味を作っていった。
无论是烤鱼还是炖菜,有时觉得甜味太重,有时觉得再加点盐会更好,就这样一边调整口味一边烹制属于我们两人的料理。
自分たちで試行錯誤しながら作った和食は、温かく、とても美味しかった。
我们反复尝试做出来的和食,总是热腾腾的,特别美味。
だからこそ、今日の朝は和食にしたくなかった。 正因如此,今早才不想吃和食。
潔の言葉に、凛がムッとした表情をし、そのまま押し黙る。
洁的话语让凛露出不悦的表情,随即陷入沉默。
もうずっと、こういうことの繰り返しだった。 这样的情形已经持续很久了。
会話でのコミュニケーションをとろうとしても、気がつけば言い合いになっていて、そのまま会話が終わってしまう。
每次试图通过对话沟通,回过神来总会变成争执,最终不了了之。
怒鳴り合って、気持ちをぶつけあえた方がいっそすっきりするんじゃないかとも思ったが、そうなる前に互いに諦めてしまう。
有时甚至觉得,与其这样不如大吵一架把情绪发泄出来更痛快,但总是在爆发前就双双选择了放弃。
ささやかな、ちょっとした会話を行うことで、優しく、柔らかい気持ちになれた頃にはもう戻れない。
那些曾经通过细碎对话就能变得温柔柔软的心境,如今再也回不去了。
わかっているのに、もしかしたらという気持ちを捨てきれない。
明明心知肚明,却始终无法彻底舍弃"万一还有可能"的念想。
不満を口にしながらも、凛の皿の上からはプリッツェルもサンドイッチも、ハムもチーズも全てなくなっている。
虽然嘴上抱怨着,但凛餐盘上的椒盐卷饼、三明治、火腿和奶酪却早已被吃得干干净净。
後は、デザートに用意したヨーグルトとフルーツだけだ。
剩下的只有准备好的酸奶和水果作为甜点。
最初の頃、失敗した潔の料理も、凛は黙って食べてくれた。そういうところも、本当に好きだったし、今もその気持ちは変わらない。
最初那段日子,即使小冴的料理失败了,凛也会默默吃完。这种地方也让人特别喜欢,如今这份心意依然未变。
同じタイミングで食べ終われるよう、目の前にいる凛の様子を見ながら潔も一つ一つを口にしていく。
为了能同时吃完,小冴一边观察坐在对面的凛的用餐节奏,一边将食物逐一送入口中。
ガラスで出来たデザートカップが空になったタイミングで立ち上がり、コーヒーメーカーに残ったコーヒーをそれぞれのマグカップに入れる。
当玻璃甜点杯见底时,他起身将咖啡机里剩余的咖啡分别倒入两人的马克杯中。
「あのさ」 "我说啊"
湿っぽくならないように、明るく。そう意識しながら話しかければ、目線だけ凛がこちらを向けた。
为了不让气氛变得沉重,刻意用明朗的语气搭话。这样想着开口时,只有凛的视线转向了我。
視線が合ったことで、一瞬言葉に詰まる。今日初めて、互いの顔を見ていた。
目光相接的瞬间,话语突然哽在喉头。这是今天第一次,我们真正看着彼此的脸。
朝起きてから随分時間が経つのに、視線すら合わせていなかったことに、ようやく気付いたのだ。
直到这时才惊觉,从早晨醒来已经过去这么久,我们却连视线都不曾交汇。
もう、潮時だった。 是时候了。
「別れよう、俺たち」 "我们分手吧"
何度も頭の中で想像していた言葉が、思った以上にスルッと口から出ていた。
这句在脑海中想象过无数次的话语,比预想中更轻易地脱口而出。
けれどそれが声になった瞬間、後悔した。嫌だ、やっぱり別れたくない。
但当它化为声音的瞬间,我就后悔了。不要,果然还是不想分开。
それは言葉になることはなく、唇が微かに震えた。 那句话终究没能说出口,只是让嘴唇微微颤抖了一下。
凛の切れ長の目が僅かに見開かれたような気がしたが、潔の願望なのか、実際驚いているのかはわからない。
凛那双细长的眼睛似乎略微睁大了些,但不知这是洁的幻想,还是对方真的感到了惊讶。
「わかった」 "知道了"
ばっさりと、切り捨てるような了承の言葉。 干脆利落得近乎斩钉截铁的回应。
自分から提案しておきながら、何かに切りつけられるような痛みを感じた。
明明是自己提出的建议,却感到一阵仿佛被利刃划过的疼痛。
「理由とか、聞かないのかよ」 "你就不问问...原因吗?"
「理由も何も、お前が言い出したんだろ」 "哪有什么原因,这不是你自己先开口的吗"
凛の言うとおりだ。自分から別れの言葉を口にしていて、引き留めて貰おうなんてあまりにも都合が良い。
凛说得没错。主动提出分手的是我,现在却奢望对方挽留,未免太过自私。
「そうだな」 "是啊"
このまま凛と一緒にいると、惨めに縋ってしまいそうで、それだけは避けたくて立ち上がる。
要是继续和凛待在一起,恐怕会忍不住可悲地依赖她,唯独这点想要避免,于是我站起身来。
食べ終わった皿を下げながら、会話を続ける。 一边收拾吃完的餐盘,一边继续交谈。
「家具とかはそのまま使っても、処分してくれてもいいから……マンションは、どうしよう。これからも凛が使うなら、そのまま……」
"家具可以继续用,处理掉也行......公寓的话怎么办。如果凛今后还要用,就保持原样......"
「うぜえ、勝手に決めんな。だいたお前には、関係ねえだろ」
“烦死了,别擅自决定。这本来就不关你的事吧”
「だよな、関係ないな」 “是啊,确实不关我的事”
余計なお節介だったとは思う。けれど、関係ないという言葉は、思っていた以上に潔にとってはきついものだった。
或许自己确实多管闲事了。但"不关你事"这句话,对洁来说比想象中更伤人。
恋人でなくなった自分には、凛のプライベートな部分にまで口を出す権利はもうない。
既然已经不再是恋人,自己早就失去了干涉凛私生活的资格。
こういう結果になってしまっても、二人で一緒にいた時間が、無駄だったとは決して思わなかった。
即便落得如此结局,我也从不认为两人共度的时光是种浪费。
今の心境では、幸せだった頃を思い出すことなんて出来ないが。だけどいつか、あの時間を懐かしい思い出として振り返ることが出来るのだろうか。
以此刻心境,虽无法追忆往昔幸福时光。但终有一日,或许能将那段岁月作为温馨往事回首吧。
いや。多分、そんな日は来ない。だってそれくらい、二人でいた日々は幸せだったから。
不。大概,那样的日子永远不会到来。因为两人共度的时光,实在是太过幸福了。
「付き合わなきゃよかったな、俺たち」 "要是没交往就好了,我们"
付き合わなければ、あんなに幸せな時間を過ごすことはなかった。求められる喜びを、知ることはなかった。
倘若不曾交往,就不会经历那般幸福的时光。也无从知晓被需要的喜悦。
シンクの水を流しながら、独り言のように呟いた言葉は、凛の耳にも入っていた。
当凛听见这句随着流水声呢喃的自语时,洗碗槽的水仍在哗哗流淌。
「珍しく考えがあったな」 "难得你还会动脑子想事情"
「なんだよ、告白してきたのは凛なのに」 "搞什么啊,明明是你先告白的"
「何かの気の迷いだった、もうしねえよ」 "那只是一时鬼迷心窍,再也不会了"
「ひでえな」 "真过分"
言い始めたのが自分とはいえ、あの時の告白まで否定されてしまうのがさすがに悲しかった。
明明是自己先开口的,可连那时的告白都被全盘否定,终究还是令人难过。
明らかに歪んでいるであろう自分の顔を見られたくなくて、水を流し続けて何度も予洗いをする。
不想让对方看见自己明显扭曲的表情,只能持续开着水龙头反复预洗餐具。
そのうちリビングから凛が出て行くと、水を止めて大きく息を吸う。
直到凛走出客厅后,才关上水龙头深深吸气。
自分から別れを切り出しておきながら、いざ別れが決まった途端、涙を流す自分がこれ以上ないほど滑稽で、みじめだった。
明明是自己提出的分手,却在离别成为定局的瞬间泪流满面,再没有比这更滑稽可悲的模样了。
***
数年前の成人式、久しぶりに一難高校のチームメイトと再会した。
数年前在成人礼上,与许久未见的一难高中队友们重逢了。
最初は近況や、あの頃の思い出的なもので盛り上がったが、二十を超えている連中に酒が入ると、いわるゆ恋バナへと話が発展していった。
起初大家还兴致勃勃地聊着近况和当年的回忆,但当这群二十出头的年轻人几杯酒下肚后,话题就不可避免地转向了所谓的恋爱八卦。
半分以上は大学や専門学校に進学していたが、中には就職している同級生もいて。
虽然超过半数人都上了大学或专科学校,但同学里也有已经工作的。
そして、元サッカー部という経歴を活かし、地元の大きな自動車メーカーに入社した一人が言っていた。
其中一位曾效力于足球部的成员,凭借这段经历成功入职了家乡的大型汽车制造商,他这样说道。
『職場にちょっと気になってる子がいるんだけど、別れたときに毎日顔を合わせなきゃいけないかと思うと気まずくて』
公司里有个让我在意的女孩,但想到分手后还得每天碰面就觉得尴尬
『確かにそれはありそう。高校や大学と違って、時間が経てば離れられるってこともないもんな』
确实有这种可能。和高中大学不同,在这里时间再久也避不开对方啊
『そうそう、さすがにそのために転職するのはバカらしいし』
就是就是,为此辞职也太蠢了
その時には、そんなものかと思っていた。 那时只觉得不过如此。
口には出さなかったが、別れて気まずくなる気持ちより、気になっている相手との関係を発展させないことの方がもったないとすら思った。
虽然没说出口,但比起分手后的尴尬,更觉得错过与在意之人发展关系的机会实在可惜。
けれど、潔は今その時の同級生たちの気持ちが少しだけわかった。
但此刻的洁终于稍稍理解了当年同窗们的心情。
長いようで短いオフが終わり、ドイツに戻って一週間。短期の日本代表合宿、そしてW杯最終予選のため、日本にとんぼ帰りすることになった。
看似漫长实则短暂的假期结束,返回德国一周后。由于短期日本代表队集训及世界杯最终预选赛,他又要立刻折返日本。
ヨーロッパリーグはまだ開幕したばかりだったし、監督や他のチームメイトも笑顔で送り出してくれた。
欧洲联赛才刚刚开幕,教练和其他队友们都面带笑容地送别了他们。
今年から来年にかけて行われる最終予選の結果で、再来年のW杯の出場国が決まる。
从今年持续到明年的最终预选赛结果,将决定后年世界杯的参赛国家。
二次予選まで無敗で勝ち進んでいるとはいえ、最終予選の空気はこれまでとは少し違う。
虽说在二次预选赛前都保持不败战绩一路晋级,但最终预选赛的氛围与之前略有不同。
どの国も、W杯という舞台に立つことを夢見て、必死になってぶつかってくるからだ。
因为每个国家都梦想着站上世界杯的舞台,会拼尽全力放手一搏。
この時期にわざわざ事前合宿が行われるのも、そのためだろう。
特意选在这个时期进行赛前集训,想必也是出于这个原因吧。
JFUが運営する千葉市内のナショナルフットボールセンターは、成田からも羽田からも三、四十分ほどの距離という、好立地な場所にある。
由 JFU 运营的千叶市国家足球中心地理位置优越,距离成田和羽田机场都只需三四十分钟车程。
湾岸沿いの高速から景色を眺めていると、自然と気持ちが高揚する。
沿着海岸线的高速公路眺望风景,心情不由得雀跃起来。
タクシーを降り、特徴的な建物の前に立つ。ちょうどその時、自分の少し前を歩いている見慣れた背中に気付いた。
下车后站在造型独特的建筑前。就在这时,我注意到前方不远处有个熟悉的背影正走着。
代表合宿には招集されているのだから、いるのは勿論わかっていた。けれど、まさか鉢合わせることになるなんて思わなかった。
既然被召集参加代表集训,当然知道他会来。但没想到会这样迎面碰上。
どうしよう、俺から話しかけた方がいい? 普段通りにした方がいいよな?
怎么办,该由我主动搭话吗?还是表现得像平常一样比较好?
そう思いながらも、足取りは自然と遅くなる。 虽然这么想着,脚步却不由自主地放慢了。
別れてから三ヶ月と少し。気持ちの整理はついたと思いこもうとしていたが、単純にサッカーに打ち込むことで先延ばしにしていただけだった。
分手后三个多月。本以为自己已经整理好了心情,其实不过是借着埋头踢球来逃避现实罢了。
潔の視線に気付いたのだろうか。あれこれ考えていると、目の前にいる凛がこちらを振り返った。
或许察觉到洁的视线了吧。正当思绪纷飞时,眼前的凛突然转过头来。
「あ……」 「啊……」
すっとした切れ長の目が、僅かに見開いた。 那双清冽的丹凤眼微微睁大了些。
わざとらしいとは思ったが、ここで話しかけない方がかえって不自然だろう。
虽然觉得有些刻意,但此刻不搭话反而显得更不自然。
久しぶり、飛行機の時間近かったんだな。 好久不见,飞机快起飞了吧。
何事もなかったかのように、これまで通りに声をかけよう。
装作若无其事的样子,像往常一样打个招呼吧。
そう思い、凛に近づこうと足を進める。 这么想着,洁迈步向凛走去。
けれど凛はそんな潔の様子に気付きながらも、フイと視線をそらし、そのままズンズンと建物の中を進んでいってしまった。
然而凛虽然注意到了洁的举动,却倏地移开视线,径直大步流星地走进了建筑物。
思わず呆然として、一瞬立ち尽くす。 不由得愣在原地,一时呆立不动。
え? もしかして、無視された? 诶?难道说,被无视了?
あからさまな態度に、動揺してしまう。 面对如此露骨的态度,内心不禁动摇起来。
自分を避けた凛の気持ちは、わからなくもない。潔だって、まだ心の準備が出来ていなかった。
凛刻意回避的心情,也不是不能理解。就连洁自己,也还没做好心理准备。
出来れば、このまま顔を合わせずにやり過ごしたい。
要是可以的话,真想就这样避开不见面。
けれど朝昼晩と顔を合わせる合宿でそれが出来るわけがないし、しかも自分たちは今の日本代表の攻撃の核でもある。
但在朝夕相处的集训中这根本不可能,更何况他们俩还是当前日本代表队进攻的核心。
プライベートな問題でチームに迷惑をかけるなんて出来なかったし、潔自身も不本意だ。
因私人问题给队伍添麻烦实在说不过去,而且洁自己也心有不甘。
いや、凛だってプロなんだ。さすがに、合宿中は大人の対応をしてくれるだろう。
不,凛毕竟也是职业选手。集训期间应该会保持专业态度吧。
そう思いなおし、潔の建物の中に入ると、先にカンファレンスルームに向かってしまったのか、凛の姿は見あたらなかった。
想到这里,洁走进大楼时,发现凛已经先行前往会议室,不见踪影。
ナショナルフッドボールセンターには宿泊施設が併設されていないので、合宿中は近隣にあるホテルを使用することになる。
由于国家足球中心没有配备住宿设施,集训期间队员们需使用附近的酒店。
最終予選前ということもありホテル名は勿論非公開、客室も関係者以外立ち入り出来ない貸し切りにされていた。
考虑到正值最终预选赛前夕,酒店名称自然不予公开,客房也实行非相关人员禁入的包场制。
報道もシャットアウトされているため、これ以上ないほどサッカーに集中出来る環境だった。
媒体采访亦被全面隔绝,堪称最理想的足球备战环境。
数ヶ月ぶりの代表戦ではあるが、今の代表メンバーのほとんどは元ブルーロックのメンバー、勝手知ったる中であるため、
时隔数月再度参加国家队比赛,不过现在的国家队成员大多都是原蓝色监狱的成员,彼此早已熟稔,
午前中のうちに連携はあうようになってきた。 上午的训练中大家就找回了配合的节奏。
サッカーに関しては、今のところ全く問題ない。けれど、それ以外のところでは問題が発生していた。
足球方面目前完全没问题。但其他方面却开始出现问题。
ため息を押し殺しながら潔がホテルに戻ると、ちょうどロビーに凛の姿を見かけた。
洁强忍着叹息回到酒店时,恰巧在 lobby 看见了凛的身影。
潔は絵心とトレーニングに関する相談をしていたためいつもより遅くなったが、凛も最後まで練習していたため
洁因为咨询绘画技巧和训练计划的事耽搁了,比平时离开得晚了些,而凛也一直练习到了最后
この時間になったのだろう。他のメンバーは既に客室に戻っているのか、周囲に人は見当たらない。
这个点其他队员应该都回客房了,周围不见人影。
迷っている時間などなかった。潔は早足で凛に近づくと、思い切りその腕を握った。
根本没有犹豫的时间。洁快步走近凛,一把攥住了他的手腕。
いかにも不快だ、という表情で凛は振り返ったが、潔の顔を見ると僅かに眦が下がった。
凛满脸写着不悦地转过头,但在看清洁面容的瞬间,眼角却微微垂了下来。
「話、あるんだけど」 "我有话要说"
有無を言わせぬ表情でそう言えば、凛がこれ見よがしなため息をついた。
凛用不容拒绝的表情说完这句话后,故意夸张地叹了口气。
潔が凛を連れていったのは、ロビーから少し離れた場所にあるカフェスペースだった。
洁世一带凛去的地方,是距离大厅稍远的咖啡区。
カフェといっても、向かい合って座る気にはなれなかったため、立ち話となった。
虽说是咖啡区,但两人都没心情对坐交谈,最终变成了站着说话。
ちょうどロビーからは見えないよう死角になっているため、人目にはつかない。
这个位置正好是大厅视线的死角,不会被旁人注意到。
一般客はいないため、ウエイターの姿も見えなかった。
由于没有普通顾客,连服务生的身影都看不见。
夕食の時間までまだ一時間ほどあるし、少し話すくらいなら十分だろう。
距离晚餐时间还有一个小时左右,稍微聊会儿应该没问题。
壁を背にして並んで立つと、ガラスに映った凛とちょうど視線が合ったような気がして、慌てて剃らす。
当我们背靠墙壁并肩站立时,玻璃倒影中的凛似乎正好与我四目相对,我慌忙移开视线。
「あのさ」 "那个啊"
「なんだよ」 "干嘛"
凛からの返事があったことに、内心ホッとする。 听到凛的回应,洁内心暗自松了口气。
合宿が始まって二日目、フィールド上以外で凛と会話をするのは、初めてだった。
集训进入第二天,这还是他们第一次在训练场之外进行对话。
思うところはあったとしても、凛だってプロなんだから大人の対応をするだろう。
即便心中有所想法,但凛毕竟是职业选手,应该会成熟应对吧。
そんな潔の考えは甘かった。 洁的这种想法实在太天真了。
フィールド以外、つまりミーティングや食事中その他、普段だったら何かしらのやり取りをしているだろう場で、悉く凛は潔のことを無視し続けた。
在训练场之外——无论是战术会议、用餐时间还是其他本该有所交流的场合,凛始终对洁视若无睹。
元々凛は積極的に他の選手とコミュニケーションをとる方ではないが、潔に関しては別だった。
虽说凛向来不主动与其他选手互动,但对洁的态度却截然不同。
一見興味がないというような態度をとっていながら、しっかりと潔の話を聞いていた。
表面上摆出一副毫无兴趣的态度,却把洁的话一字不落地听进去了。
だからこそ、今回の凛の態度に潔は困惑した。 正因如此,洁才对凛这次的态度感到困惑。
「もうちょっと、普通に出来ない?」 "你就不能稍微表现得正常点吗?"
「普通?」 "正常?"
「だからその……他の選手と同じように」 "所以那个……和其他选手一样"
練習中は最低限のコミュニケーションをとっているため、今のところ支障はないし、他の選手も気付いてはいない。
训练期间保持着最低限度的交流,目前还没什么问题,其他选手也都没察觉。
他人にそれほど興味がない性格の者が多いとはいえ、長く続けばさすがにいつも様子が違うことはわかるはずだ。
虽说队里多是些对他人不太感兴趣的性格,但时间久了总会发现两人相处模式不对劲。
二人が付き合っていた事を知るものは冴以外にはいないが、それなりに仲が良いとは思われているはずだ。
除了冴之外没人知道他们交往过,但旁人应该都觉得他们关系还算不错。
世界中にいるファンからは二人が一緒にいるところを目撃されているし、互いの試合を見に行っていることも知られている。
全世界的粉丝都目击过两人在一起的场景,也知道他们会互相观看对方的比赛。
「他のモブ共と同じように? ヘラヘラ笑ってお前に肩組んだり、くだらねえ話をペラペラ話せって事か?」
"要我和其他路人甲一样?嬉皮笑脸地勾肩搭背,喋喋不休地说些无聊废话?"
あからさまな凛の表現に、ムッとする。 面对凛如此露骨的表态,洁不由得心头火起。
「久々に会うんだし、ヘラヘラ笑って肩組んだり、ペラペラ話をすることだって必要だろ?」
"难得久别重逢,嬉皮笑脸地勾肩搭背、喋喋不休地聊天不也是必要的吗?"
「あ? うぜえんだよ、視界の端でちょろちょろされんのが」
“啊?烦死了,别在我视线边上晃来晃去的”
「はあ? ちょろちょろなんてしてないし。だったら見なきゃいいだろ!」
“哈?谁晃来晃去了。不想看就别看啊!”
「だから見てねえんだろ」 “所以我没在看啊”
凛の言葉に、ハッとする。一瞬納得しかけて、いやそうじゃないと口を開く。
凛的话语让我心头一震。差点就要认同,却又立刻意识到不对而开口反驳。
「そうじゃなくて、もっとこう、前みたいに出来ないのかよ?」
"不是这样的,就不能像以前那样相处吗?"
前みたい、というのは自分たちが付き合う以前のことを指したつもりだった。まだブルーロックにいた頃。
他所说的"像以前那样",本意是指两人交往之前的时光。还在蓝色监狱的那段日子。
潔が話しかける度、凛は面倒くさそうな顔をしていたが、それでも凛なりに真面目に応じてくれていた。
每当洁主动搭话时,凛总会露出嫌麻烦的表情,但即便如此他也会以自己的方式认真回应。
「前みたい? お前がどう思ってるのかは知らねえが、俺たちが仲良しこよしだった事なんて一度もないだろ」
"以前那样?我不知道你怎么想的,但我们从来就没有过什么亲密无间的时候吧"
「それは、そうだけど」 "话是这么说没错"
「出会って殺し合って付き合って別れた、それだけの関係だろ」
"相遇相杀相爱相离,不过就是这样的关系吧"
「殺し合ってって……そこは友達になってとか、仲良くなってが入るんじゃねえの?」
"相杀什么的...这里不该是成为朋友或者关系变好之类的展开吗?"
殺し合って、といいうのはおそらくサッカーにおいて競い合ったことを指しているのだろう。
所谓"相杀",大概指的是在足球场上互相较量的那段经历吧。
けれど潔の言葉に、凛は何の反応も示さなかった。 然而凛对洁的话语没有任何反应。
「確かに出会って殺し合って付き合って別れたけど、別れた後に友達にだってなれるかもしれないだろ?」
"虽然确实相遇相杀交往又分手,但分手后说不定也能做朋友吧?"
「無理だろ」 "不可能"
鼻で笑って、凛が言った。 凛嗤笑着回答道。
「他のモブ共と同じようにお前とぬりぃ関係になるなんて、想像するだけで気持ち悪ぃ」
"要我和其他路人一样跟你保持普通关系,光是想象就让我恶心"
心底苛立ったというような、低い声だった。 那低沉的声音里透着发自内心的烦躁。
「じゃあ、俺たちの関係は……その、サッカーにおける関係は置いておいて。それ以外だと、何になるんだよ」
"那我们之间的关系...先抛开足球层面的关系不谈。除此之外,我们还能算什么关系?"
「他人以外の、なんでもねえだろ」 "除了陌生人,我们什么都不是"
言外に、別れたってのはこういうことだろ、と言われたような気がした。
言外之意,这大概就是所谓的分手吧——洁世一恍惚间产生了这样的错觉。
確かに自分と凛の間には、友達だった時期は一度もない。潔は仲間だと思っていた時期もあるが、凛は否定するだろう。
确实,自己和凛之间从来就没有过所谓的朋友时期。虽然洁曾一度将对方视为伙伴,但凛大概会矢口否认吧。
そんなの寂しい、と思ったが、言葉には口には出さなかった。
"这样未免太寂寞了"——这样的念头在脑海中闪过,却终究没有说出口。
別れを切り出したのは潔の方で、それで別れた後も仲良くしましょうなんていうのはあまりにも都合が良い。
提出分手的是洁,事到如今再说"分手后继续做朋友"之类的话,未免显得太过自私。
凛の性格を考えれば、友達のように仲良くなるのは難しいとは思っていたが、それでも何か別の関係を築ければ、と思っていた。
考虑到凛的性格,我早该想到很难像朋友那样相处融洽,但内心仍期盼着能建立某种特殊关系。
「終わったなら戻るぞ」 "结束了就回去吧"
潔が何の言葉も返せずにいると、それだけ言って凛はカフェを出て行った。
洁还未来得及回应任何话语,凛只留下这句便离开了咖啡馆。
自業自得とはいえ、ここまで拒絶されるとは思わず、言葉が出てこない。
虽说自作自受,但没想到会被拒绝到如此地步,一时语塞。
やっぱり別れなければ……とそんな考えが頭に過り、慌てて打ち消す。
果然还是不该分开吧……这样的念头闪过脑海,又慌忙将其打消。
決して短くない時間、何度も悩んで考えて、選んだ別れだった。
这绝非仓促的决定,是经过漫长反复的思虑后,最终选择的分手。
未練がないと言えば嘘になる。嫌いになって別れたわけじゃない、むしろ好きだからこそ別れるしかなかった。
若说毫无留恋那是谎言。并非因厌恶而分开,正因深爱才不得不放手。
「他人……か」 "陌生人......吗"
改めて口に出すと、その熱のない響きに驚く。 再次说出口时,那不带温度的回响令人心惊。
サッカーの試合であれば、どんな劣勢に立たされてもパズルを組み立て、再構築することが出来る。
若是足球比赛,无论陷入何等劣势都能重组拼图、重构阵型。
けれど凛との関係を再構築する方法は、見つけることが出来なそうだ。
但与凛的关系重建之法,似乎无从寻觅。
フィールド上、サッカーにおいては自分たちの関係は今まで通り変わらない。
在绿茵场上,足球世界里的我们依然如故未曾改变。
味方になったときには連携し、敵対すれば相手の動きを読み合い、その上へといこうとする。
成为同伴时就默契配合,若是对手便互相预判动作,还要更胜一筹。
これからも凛との繋がりを持ちたかったら、フィールド上で無様な姿を見せるわけにはいかない。
若想继续保持与凛的联系,就绝不能在球场上露出狼狈相。
そう、割り切ったからだろうか。寂しさを感じながらも、表面的には自分と凛の関係は上手くいっていた。
没错,或许正是因为想通了这点。虽然内心感到寂寞,表面上我和凛的关系倒是进展顺利。
けれど合宿最終日の前日。食事が終わった後に潔が部屋に戻ろうとすると、ちょうどレストランの出入り口に立っていた冴に声をかけられた。
然而在集训最后一天的前夜。洁用完餐正要回房时,恰巧在餐厅门口遇见了伫立的冴,被他叫住了。
「次の試合の布陣について気になるところがあるんだが、ちょっと時間あるか?」
"关于下一场比赛的阵容安排我有些在意的地方,现在方便聊聊吗?"
「うん、もちろん……先に戻っててもらえる?」 "嗯,当然可以……能请你先回去吗?"
一緒にいた蜂楽や氷織に声をかけると、当然のように頷かれた。
向一同在场的蜂乐和冰织打了声招呼,他们理所当然地点了点头。
「作戦会議だね」 "是要开战术会议吧"
「後で内容、ちゃんと教えてや~」 "待会儿可要好好告诉我内容哦~"
合宿中、冴とは何度もフォーメーションは勿論、戦術に関しては話していた。
集训期间,冴和我不仅反复讨论阵型,战术方面也进行了多次交流。
今のところグループリーグは全勝、無失点で突破しているからこそ、相手国はガチガチの守りに入ってくるはずだ。
目前小组赛我们以全胜零失分的战绩突围,正因如此,对手国家肯定会采取铜墙铁壁般的防守策略。
いかにそれを突破できるか、というのが課題で、そのための対策をあれこれと考えていた。
如何突破这种防守正是当前课题,我们为此绞尽脑汁构思了各种应对方案。
けれど、レストランのすぐ近くにある個室に入ると、扉を閉める。
然而,走进餐厅附近的包厢后,她关上了门。
向かい合って椅子に座ると、開口一番に冴が言った。
在面对面落座的瞬间,冴开门见山地问道。
「で、凛と何があったんだ?」 "所以,你和凛发生什么了?"
「え? なんで?」 "啊?为什么这么问?"
「なんでもなにも、お前ら明らかにいつもと様子が違うだろ。お前は凛に何か言いたそうな顔をしてるし、あいつはあいつでお前が他の奴らと話してるのを見て刺し殺しそうな顔をしてるし」
"说什么没事,你们俩明显和平时不一样吧。你一副有话要对凛说的表情,那家伙看到你和别人说话时也满脸写着想捅死你"
「俺はともかく凛は不穏すぎだろ? さすがに刺し殺しそうな顔はしてないでしょ」
"先不说我,凛那样子也太吓人了吧?不过应该还不至于露出想捅人的表情"
そもそも、刺し殺しそうな顔ってどんな顔なんだ。 说到底,想捅人的表情到底是什么样的啊。
思わず吹き出せば、冴の表情も少しだけやわらかくなった。
我不禁笑出声来,冴的表情也随之稍微柔和了些。
「それで? 喧嘩でもしたのか?」 "然后呢?你们吵架了吗?"
「あ、いやそうじゃなくて……。俺たち、別れたんだ」
"啊,不是那样的......我们分手了"
「は?」 "哈?"
珍しく、冴が驚いたような顔をした。 冴难得露出了惊讶的表情。
その表情から察するに、凛は冴に自分たちのことを話していなかったようだ。
从那个表情来看,凛似乎没有向冴提起过他们的事。
「まさか、ファイナルの後のタレントとのゴシップが原因じゃないよな?」
"该不会是因为决赛后和那个艺人的绯闻吧?"
「違うよ、そういえばあの時はありがとう。わかってたけど、やっぱり心がざわっとしたから、嬉しかった」
"不是啦,说起来那时候谢谢你。虽然早就知道,但心里还是咯噔了一下,所以很开心"
そう言うと、ますます冴が困惑したような顔をする。
说完这话,冴脸上困惑的神色愈发明显了。
「なんで振ったんだ?」 "为什么是你提的分手?"
「いや、冴はなんで俺が振ったって思うの?」 "不,冴哥为什么会觉得是我提的分手?"
潔は別れた、としか言っていない。凛の方から振った可能性だってある。
洁只说了"分手了"这句话。也可能是凛主动提出的分手。
「凛がお前を振るなんて、ありえないからな」 "凛怎么可能甩了你,绝对不可能"
凛と同じ色の、真っ直ぐな瞳で見つめられ、少し胸が苦しくなった。
被那双与凛同色的、笔直凝视的眼眸注视着,胸口微微发闷。
冴の方が、若干目元が柔らかいが、兄弟なだけありよく似ている。
冴的眼角线条略显柔和,但毕竟是兄弟,两人十分相像。
「そういう顔で見るのはやめろ。俺があいつに刺される」
"别用那种表情看我。那家伙会捅我的。"
言いながら、冴が手を伸ばして潔の顔を少しだけ背ける。
说着,冴伸手将洁的脸稍稍别开。
「あいつを嫌いになった、ってわけじゃないんだろ?」
"你并不是真的讨厌那家伙吧?"
「うん。嫌いになったわけじゃないよ」 "嗯。并不是讨厌他"
苦い笑いを浮かべて、否定する。 他浮现出苦涩的笑容,摇了摇头。
「今でも好きだよ。だから、一緒にいるのが辛かった」
"直到现在也喜欢着。所以,待在一起才更痛苦"
「そうか」 "这样啊"
冴は、静かに潔の言葉を受け止めてくれた。 冴静静地接受了洁的话语。
「言いづらかったら言わなくてもいいが、その辛かった理由を聞いていいか?」
"如果难以启齿可以不说,但能告诉我你痛苦的原因吗?"
「ごめん、ちょっと言えない」 "抱歉,现在有点说不出口"
凛の兄であり、そして自分のこともよく知る冴に話すのには、さすがに抵抗があった。
作为凛的哥哥,又对自己知根知底的冴,要向他坦白确实需要些勇气。
「いや、無神経だったな。悪かった」 "不,是我太迟钝了。抱歉"
冴の言葉に、首を振る。 听到冴的话,他摇了摇头。
「ただ、別れたことにお前も凛も納得できてねえみたいだな」
"只是,你和凛似乎都没能真正接受分手这件事啊"
「え? 凛も?」 "诶?凛也是?"
潔はともかく、凛の方はもう気持ちを切り替えられていると思っていた。
暂且不论洁,我以为凛那边已经调整好心情了。
「でも、別れたいって言ったらすぐに凛は納得したよ?」
"但我说想分手的时候,凛立刻就同意了啊?"
「あいつがゴネたら、別れなかったのか?」 "要是那家伙闹起来的话,是不是就不会分手了?"
「それは……」 “那个……”
「お前のそういう性格を知ってるから、素直に聞き入れたんじゃないのか。とりあえず、一旦別れてやろうって。その後のことは、また考えればいいって」
“正因为了解你这性格,我才爽快答应的。想着先暂时分开也好。至于之后的事,可以慢慢再考虑”
「いや、でも凛はそんなこと言わなかったし……」 “不,可是凛根本没说过这种话……”
「あいつの性格を考えてみろ、そんな気の利いたこと、言えるわけねえだろ?」
“你想想那家伙的性格,怎么可能说出这么体贴的话?”
五年も付き合ってわからないのか、といったような表情で冴が言う。
冴露出一副"都交往五年了还不明白吗"的表情说道。
「それは、そうだけど……」 "话是这么说......"
だけど、あの時凛は言っていた。もう二度と気持ちを伝えることはないと。
但那时凛确实说过。再也不会表明心意了。
それは、もう自分への想いがないということではないのだろうか。
这不就意味着他已经对我没有感情了吗。
「お前はよく知ってると思うが」 "你应该很了解吧"
そこで、冴が一旦言葉を切った。 这时,冴突然中断了话语。
「俺の弟はしつこいし、一途なんだよ」 "我弟弟可是很固执又专一的"
真摯な、真っ直ぐな瞳で冴がつげた。 冴用真挚而直率的眼神说道。
その言葉に感じたのは、希望と喜び。それから、不安。
那句话带来的感受是希望与喜悦。而后,又转为不安。
凛が今でも自分のことを思ってくれるなら嬉しい。 如果凛至今仍惦记着自己,那确实令人欣喜。
けれど、もう元の関係には戻らない方がいいこともわかっている。
但我也明白,或许不该再回到从前的关系了。
「まあ、しばらくは荒れてるだろうし、碌な態度とらねえと思うけど。あいつのお前への気持ちは変わらないから、それは否定しないでやってくれ」
"不过那家伙最近应该会暴躁一阵子,估计没什么好脸色。但他对你的心意从未改变,这点还请你别否定"
「うん。ありがとう、冴」 “嗯。谢谢你,冴”
潔が例を言えば、冴が頷いた。 洁刚举出例子,冴就点了点头。
さすがにこの話題だけだと後で蜂楽や氷織に聞かれた時に決まりが悪いため、一応冴が持っていたタブレットで相手国の分析も行った。
单聊这个话题待会儿被蜂乐或冰织问起来确实尴尬,于是他们顺便用冴的平板分析了对手国的数据。
けれど、それが悪かった。 但这个决定糟透了。
こんな風に膝をつき合わせて話す機会はなかなかないこともあり、気がつけば一時間以上時間が経っていた。
像这样促膝长谈的机会实在难得,不知不觉竟已过去一个多小时。
さすがにそろそろ部屋に戻った方がいいだろうと、エレベーターに乗って客室階へと向かう。
想着差不多该回房间了,便乘电梯前往客舱楼层。
そしてエレベーターを降りたところで、ちょうど廊下を歩いていた凛と鉢合わせることになった。
刚走出电梯,恰巧与正在走廊踱步的凛打了个照面。
ポジションも近く、フォーメーションによっては潔もMFとして登録されるため、冴と話す機会は多い。
由于场上位置相近,根据阵型安排洁有时也会以中场身份注册,因此与冴交流的机会相当频繁。
だから二人でいることは不自然ではないし、後ろめたさを感じることもないのだが、あの話をした後だとなんだか気まずい。
两人独处并不显得不自然,也不会感到愧疚,但在那番对话之后总觉得有些尴尬。
潔の部屋はエレベーターからも近かったし、このまま冴に声をかけてやりすごそうとする。けれど、その前に冴が口を開いた。
洁的房间离电梯很近,他正打算就这样和冴打个招呼蒙混过去。然而冴先开口了。
「なんだ?」 "怎么了?"
自分たちに訝しげな視線を送る凛に、真っ正面から話しかける。
面对向他们投来疑惑目光的凛,洁直接了当地搭话道。
「別に。こんな時間までコソコソと、随分仲が良いんだな」
"没什么。都这个点了还鬼鬼祟祟的,你们关系可真好啊"
「え、いやそれは……」 "哎、不是那个意思......"
何やら、変な誤解をしていないだろうか。ここ最近では珍しい二人のピリついた空気に、戸惑う。
总觉得她是不是产生了什么奇怪的误会。面对两人之间最近罕见的紧张氛围,我感到困惑不已。
「久々に会うわけだし、積もる話もあるからな」 "毕竟久别重逢,积攒了不少话要说嘛"
「は、普段は他のモブとのコミュニケーションなんて一切とらない兄貴が?」
"平时从不和其他路人交流的老哥居然...?"
「お前は知らないが、俺にとって潔はモブじゃないからな」
"你不懂,对我来说洁可不是什么路人"
「そうだったな、兄貴は昔からそいつがお気に入りだったもんな?」
"说起来,老哥你从以前就特别中意那家伙吧?"
「嫉妬か? ガキの頃ならともかく、その年齢でみっともねえぞ」
"吃醋了?小时候倒也罢了,这个年纪还这样太难看了"
言った瞬間、凛の表情がこれ以上無いほど歪み、そのままエレベーターの方へ足を進めていった。
话音刚落,凛的表情扭曲到无以复加的程度,径直朝着电梯方向迈步走去。
「刺し殺しそうな顔、してただろ?」 "那表情简直像要捅死人对吧?"
凛の姿が見えなくなった後、冴が言った。 凛的身影消失后,冴开口说道。
「確かに、刺されるかと思った……」 "确实...我还以为要被捅了......"
顔を引きつらせてそう言えば、冴がふっと鼻で息をするように笑って言った。
只见凛绷着脸说出这句话时,冴突然从鼻腔里哼出一声轻笑。
「殺したいほどお前に執心なんだろ。だから言っただろ、俺の弟は一途だって」
"那家伙对你执着到想杀了你的地步吧。所以我早说过了,我弟弟是个死心眼。"
何故か楽しそうな冴に対し、潔はため息をつくことしか出来なかった。
面对莫名愉悦的冴,洁只能报以一声叹息。
今日って、主に調整だけだって話だったよな……。 今天不是说来做适应性训练的吗……。
翌日に最終予選を控えた合宿最終日。 集训最后一天,明天就是最终预选赛。
午前最後の紅白戦は、明日が試合とは思えないほど白熱していた。
上午最后一场红白对抗赛激烈得让人忘记明天还有正式比赛。
原因は、わかっている。凛と冴でチームが別れ、さらに潔が冴と同じチームになったことだ。
原因显而易见——凛和冴被分在不同队伍,而洁又与冴同队。
U-20W杯の事前合宿中にも、こういうことは多々あった。
在 U-20 世界杯集训期间,这种情况就屡见不鲜。
当時の、まだ冴とぎくしゃくしていた凛からしてみれば、潔と冴を同時に相手にすることに思うところはあったのだろう。
对于当时还与冴关系紧张的凛来说,同时面对洁和冴想必内心是有所顾虑的。
感情は高ぶり、集中力も研ぎ澄まされていたように思う。
情绪高涨得仿佛连专注力都被磨砺得异常敏锐。
あの時は決して悪いように作用しなかったが、今回は状況が違う。試合前日に、これはやり過ぎだろう。
那次倒没有造成负面影响,但这次情况不同。比赛前一天,这样做实在有些过头了。
そうどこかで冷静に考える自分はいたが、潔自身も本気の凛や、それに影響されて動きが良くなった他のメンバーとの試合は楽しく、いつの間にか夢中になって身体を走らせていた。
虽然某个角落的理智这样提醒着,但洁自己也沉醉在与全力以赴的凛、以及受其感染而状态飙升的队友们的比赛中,不知不觉就忘情地奔跑起来。
フィールドの外で見ている帝襟は気が気ではない様子だったが、絵心の方は特に止めようとはしなかった。
场外观战的帝襟显得坐立不安,但绘心却丝毫没有要叫停的意思。
今のところどちらも三点ずつとっており、あとワンプレーで笛はなるはずだ。
目前双方各得三分,再打一球就该吹哨了。
さすがに接触プレーにはみな気をつけていたが、これだけぶつかりあっても負傷者が一人も出なかったのは本当に良かったと思う。
虽然大家都刻意避免了身体冲撞,但如此激烈的对抗竟无一人受伤,实在是万幸。
まだ試合は終わっていないというのに、そんな風に思ったのが悪かったのだろうか。
明明比赛还未结束,我这样想或许不太妥当吧。
ペナルティエリアから少し距離はあったが、冴のフリーキックはきれいにゴール前へと入ってきた。
虽然距离禁区还有一段距离,但冴的任意球精准地飞向了球门前。
足で受け止められれば良かったが、残念ながら高さが足りない。
如果能用脚停住就好了,可惜高度不够。
跳躍力にもヘディングにも自信はないが、ボールに合わせて飛ぶことは出来る。
虽然对弹跳力和头球都没什么自信,但至少能配合来球起跳。
しかも蹴ったのが冴なら、ボールの動きも読むことが出来た。
更何况如果是冴踢出的球,连球的轨迹都能预判到。
思い切り飛び上がり、ボールが潔の頭に触れる。けれど残念ながら、潔のヘディングは思った方向には飛ばなかった。
他全力跃起,球触碰到洁的头顶。但遗憾的是,洁的头球并未飞向预想的方向。
……凛!
自分と冴の動きを、しっかり見ていたのだろう。潔がゴールの中へと運ぼうとしたボールを、凛が同じように飛び上がって阻んだ。
他一定仔细盯着自己和冴的动作。当洁试图将球顶向球门时,凛同样跃起拦截。
え……? 诶……?
ボールの行方を見ることは、出来なかった。 没能看清球的去向。
ほぼ同じ位置で凛と飛び上がったからだろう、どちらもバランスを崩し、互いの頭が接触する。
大概是因为和凛几乎同时起跳的缘故,两人都失去平衡,脑袋撞在了一起。
落ちる……と思ったが、想像していたような衝撃はなかった。
要摔倒了……正这么想着,却并没有预想中的冲击。
身体がぶつかった瞬間、凛が潔の身体の下敷きになるように、先に地面へと落ちたようだ。
在身体相撞的瞬间,凛似乎抢先一步摔向地面,成了洁的肉垫。
「潔!」 "洁!"
「凛!」 "凛!"
他の選手たちが、自分たちの名前を叫ぶように呼んだ。
其他选手们呼喊着他们的名字。
痛みは感じなかったが、意識が朦朧とする。凛のことが気になったが、起き上がることは出来ない。
虽然感觉不到疼痛,但意识逐渐模糊。虽然很在意凛的情况,却无法起身。
バカ、なんで庇ったんだよ。お前の体になんかあったらどうするんだよ。
笨蛋,为什么要护着我。要是你身体出了什么事怎么办。
言いたいことはたくさんあった。だけど、それを言葉にすることは出来ず。
想说的话有很多。但,却无法将其化作言语。
そのまま、潔の意識は途絶えた。 就这样,洁的意识中断了。
***
2
サッカーで接触プレーなんて、珍しいことじゃない。
足球场上发生身体接触再平常不过。
特にゴール前の攻防では多くの選手が集まるし、基本的に皆ボールの動きを追うのに精一杯だ。
尤其在球门前的攻防战中,众多球员聚集于此,大家基本都只顾着紧盯球的动向。
冴が蹴ったボールが、潔の方へ向かっていくのはあらかじめ予測していた。
糸师冴踢出的球会飞向洁世一的方向——这早就在预料之中。
ラストワンプレーという場面で冴が選ぶのは潔以外ありえなかったし、どちらもそれはわかっていたのだろう。
在最后一击的关键时刻,冴的选择除了洁不可能有第二人选,想必两人都心知肚明。
凛には見えていない景色が、二人には見えている。 凛所看不见的风景,正清晰地映在两人眼中。
勿論、それ以外の力が凛にはあるが、その点だけは認めざる得なかった。
当然,凛还拥有其他才能,但唯独这点不得不承认。
風もあったからだろう、他の選手の合間を縫った位置にいれたボールに合わせるのは簡単なものではなかった。
或许是因为有风的缘故,要接应那个穿过其他选手间隙传来的球并非易事。
足では処理しきれず、クリアするにはヘディングしかない。
用脚已无法完全控制,要解围只能选择头球。
そう思った凛が飛び上がったのと、すぐ隣にいた潔が飛び上がったのは、ほぼ同じ瞬間だった。
凛这样想着跳起来的瞬间,几乎同一时刻,站在她身旁的洁也跃了起来。
いや、少しだけ潔の方がはやかった。 不,洁的动作要稍微快那么一丁点。
ボールはどちらの頭にもぶつかったが、同時に自分たちの体もぶつかった。
排球同时砸中了两人的脑袋,而他们的身体也撞在了一起。
落ちる……! 要摔倒了……!
僅かに潔の方がはやく落ちていくのが見えた。 隐约看见洁下落的速度更快些。
そう思ったとき、体の位置を変えていた。 刚这么想着,身体已经改变了姿势。
潔は自分よりも小柄だし、凛が上に覆い被さったら怪我をするのは潔の方だ。
洁的体型比自己娇小,如果凛从上方压下来,受伤的肯定是洁。
自分の体よりも、潔の身体を守るために、無意識に体が動いていた。
为了保护洁的身体而非自己,身体已不自觉地行动起来。
他の選手たちが、自分たちの名を呼ぶ声が聞こえる。
其他选手呼喊自己名字的声音传入耳中。
うるせえ、黙れ。 吵死了,闭嘴。
そう思いながらも、勿論それを口に出すことは出来ない。
虽然心里这么想着,但当然不可能说出口。
ただ、潔の身体への負担は少なくなったはずだ。無事を確認したかったが、残念ながら頭を、視線すら動かすことが出来ない。
不过,洁的身体负担应该减轻了才对。本想确认他是否平安,可惜现在连转动头部、移动视线都做不到。
「ドクター呼んで! 動かさないで!」 "快叫医生!别动他!"
ああ、うるせえな。 啊,吵死了。
自分たちの周りが、どんどん騒がしくなっていく。 周围的声音变得越来越嘈杂。
凛の意識はゆっくりと落ちていった。 凛的意识逐渐沉入黑暗。
***
「凛さん、凛さん?」 「小凛?小凛?」
自分を呼ぶ声が、遠くに聞こえる。 呼唤自己的声音,听起来那么遥远。
「凛さーーーん! そろそろ起きた方がいいっぺよ~~~!」
「小凛————!该起床啦————!」
うるさい、と思いながらも、そう思った瞬間ハッとして凛は自分の目を見開いた。
虽然心里想着"真吵",但在产生这个念头的瞬间,凛猛然睁大了眼睛。
上から、自分を覗き込む七星の顔が見える。よく言えば善良そうな、悪くすると間抜けな面だなと思いながら、口には出さない。
从上方能看见七星窥视自己的脸。虽然心里想着这张脸往好了说是善良,往坏了说就是蠢相,但并没有说出口。
凛が七星を見ると、ホッとしたような顔をした。 凛看向七星时,对方露出了安心的表情。
そこで、凛は少しの違和感を覚える。 这时,凛感到了一丝违和感。
「お前……今回、選ばれてたか?」 "你……这次入选了吗?"
現在七星はヨーロッパリーグで活躍しているが、今回の代表には招集されていなかったはずだ。
虽然七星目前在欧洲联赛表现活跃,但按理说这次国家队名单里并没有他。
七星のレベルが低いのではなく、それくらい代表争いは熾烈な争いになっている。
并非七星水平不够,而是国家队名额的竞争实在太过激烈。
「えええ!? それはないですよ凛さん! ちゃんと俺、ギリギリだったけどランキング入りましたから!」
"哎哎哎!?怎么可能没入选啊凛前辈!我可是好不容易才挤进排名末班车的!"
「あ?」 「啊?」
ランキング? 一体、何をこいつは言ってるんだ? 排行榜?这家伙到底在说什么啊?
そう思い、凛は素早く上半身を起き上がらせた。それにより視界が広くなり、部屋の中を見渡せるようになる。
这么想着,凛迅速支起了上半身。这样一来视野变得开阔,能够看清整个房间。
は……? 哈……?
部屋の中を確認した凛は、大きく目を瞠る。 凛环视房间,惊讶地瞪大了眼睛。
接触プレーの後、意識がなくなたのだ。てっきり救護室か、悪くすると病院に運ばれたと思っていた。
在身体接触后失去了意识。本以为肯定会被送到医务室,最坏的情况也该是医院。
けれどそこは、そのどちらでもなかった。 然而这里却两者都不是。
なんで……。 为什么……。
凛が目覚めたのは、ブルーロック、その施設内の寝所だった。
凛醒来时,发现自己身处蓝色监狱——那座设施内的寝室。
朝の賑やかな食堂を、呆然と凛は見つめる。 凛茫然地望着清晨喧闹的食堂。
「朝からそんなに食うのか?」 "大清早就吃这么多?"
「筋肉を維持するには、タンパク質が必須だからな」 "要维持肌肉,蛋白质可是必需品啊"
「ちぎりんはもうちょっと食べたら?」 "凛要不要再吃点?"
「ウエイトを増やして、走るのに違和感が出るのが嫌なんだよ」
"增重的话,跑步时会感觉不舒服的"
目の前で交わされていく、見知った選手たちの会話。
眼前不断交错着熟识选手们的对话。
それだけならいつもの日本代表合宿とそう変わらないのだが、皆どことなく幼く見える。
若仅是如此,与往常日本代表队的集训并无二致,但不知为何大家都显得格外稚嫩。
いや、ありえねえだろ……。 开什么玩笑,怎么可能……。
あの後七星を先に食堂へ向かわせると、凛はタブレットを開き、現在の状況を確認した。
之后让七星先去食堂后,凛打开平板电脑确认了当前状况。
そこには2019年という冗談みたいな年が表示されており、データも全てその頃のものになっていた。
屏幕上显示着 2019 年这个荒谬的年份,所有数据也都变成了那个时期的记录。
頭に浮かんだのは、タイムリープというSFめいた単語。
脑海中浮现出"时间回溯"这个科幻感十足的词。
しかし、時を遡るとしたら現代の凛が過去へいくはずだが、今の凛は過去の、あの頃の姿をしている。
但如果要回溯时间,本该是现代凛前往过去,可现在的凛却保持着过去那个年代的模样。
髪型も当時と一緒で身長も幾分か小さく、筋肉量も少ない。絶妙な差ではあるが、体を動かしただけでそれはわかった。
发型与当年一致,身高也稍矮了些,肌肉量更少。虽是微妙差异,但只要活动身体就能察觉。
つまり、戻ったのは凛ではなく、世界そのものだと考えた方が妥当だろう。
也就是说,更合理的解释是并非凛回到了过去,而是整个世界本身发生了倒流。
混乱はしたが、ここで取り乱したところでどうにかなる問題でも無かったし、とりあえず五年前の自分がそうしたように、食堂へ足を運んだ。
尽管感到混乱,但此刻惊慌失措也解决不了问题,凛决定像五年前的自己那样,先迈步走向食堂。
日付的に、新英雄大戦-ネオエゴイストリーグが終わり、U-20日本代表のメンバーが決まったあたりだろう。
从日期推算,这应该是新英雄大战——新利己主义者联赛结束后,U-20 日本代表队成员刚确定下来的时期。
追加招集される選手の発表、会場も本来予定されていたポーランドではなく、ブルーロック内でそのまま継続して行われることも告知された後だ。
在宣布追加征召选手名单后,赛事举办地也从原定的波兰改为继续在蓝色监狱内部进行。
ブルーロックTVの収益の多さと影響の強さを、国際サッカー連合(PIFA)も無視できなかったのだろう。
蓝色监狱 TV 带来的巨额收益和强大影响力,恐怕连国际足球联合会(PIFA)也无法忽视。
他の選手は驚いていたが、試合会場がどこであろうと凛がやることは変わらなかったし、追加招集された選手の名前には戸惑いはしたが、より気持ちが強くなっただけだった。
其他选手都显得很惊讶,但无论比赛场地在哪,凛要做的事都不会改变。虽然对追加选手的名单感到困惑,但这反而让他的斗志更加昂扬。
大会までブルーロック内で合宿が行われることも伝えられ、選ばれたメンバーはそのまま一つの棟へ集められた。
在正式比赛前,蓝色监狱内部将举行集训的消息一经公布,被选中的成员们便立即被集中到同一栋建筑中。
次から次へよく考えるものだとは思いながらも、追加招集された選手のこともあり、あの頃の自分がナーバスになっていたように思う。
虽然心里想着他们还真是接二连三地搞出新花样,但由于还有追加召集的选手,那时的自己似乎变得有些神经质。
そういった心境が、顔にも出ているのだろうか。 这样的心境,大概也表现在脸上了吧。
避けられているわけではなかったが、食堂に並んでいてもわざわざ自分に声をかけているような選手もいない。
虽然并没有被刻意回避,但即使在食堂排队时,也没有选手会特意过来跟我搭话。
いや、確かあの時には……と思った時、自分のちょうど前、蜂楽たちのグループに一緒にいるはずの潔がいないことに気付く。
不对,明明那时候应该……正这么想着时,凛突然发现本该在蜂乐他们队伍里的洁此刻并不在自己眼前。
自分の勘違いか、とも思ったがそんなはずはない。 虽然怀疑过是否自己记错了,但绝无可能。
合宿初日。苛立っている自分に、脳天気に、いつも通りに潔が話しかけてきて、表情こそ変わらなかったが僅かに気持ちが和らいだ記憶が確かにあった。
集训首日。当烦躁的自己被乐天派的洁如常搭话时,尽管表情未变,记忆中那份微妙的情绪缓和确实存在。
認めたくはないが、凛にとっていつも変わらずそこにいる潔の存在はある種の精神安定剤のようなものになっていた。
虽不愿承认,但对凛而言始终如一的洁早已成为某种精神安定剂般的存在。
五年前とはいえ、他の事はぼんやりとしか覚えていないが、不思議なほどに潔とのやりとりはよく覚えていた。
虽说已是五年前的事,其他细节都模糊不清了,但与洁的互动却不可思议地记得格外清晰。
それもそのはずだ。この合宿期間中に、凛は自分の中にある潔への気持ちを自覚し、大会が終わった後にその気持ちを伝えるに至ったのだ。
这也难怪。正是在这次集训期间,凛意识到了自己对洁怀有的感情,并在大赛结束后将这份心意倾诉而出。
あいつ……大丈夫だったのか。 那家伙……应该没事吧。
最後に目にした潔の姿を思い出す。悪くない落ち方だったし、どこかやった、怪我をした可能性は少ないだろう。
回想起最后见到的洁的身影。坠落姿势不算糟糕,应该不至于受什么重伤才对。
それでも互いに強く頭をぶつけたのは確かで、そのあたりは気になった。
即便如此,两人确实曾激烈地碰撞过,这点令人在意。
ただ、凛が考えたことで確かめようが無いことは明白だった。
只不过,凛心里清楚,这些想法根本无法验证。
いや、なんでこの状況であいつの心配してんだ俺は。
不对,为什么在这种状况下我还在担心那家伙啊。
記憶を残したまま過去の自分に戻るという、とんでもない状況に出くわしているといるのに、冷静になった頭に浮かんだのは潔のことだった。
明明遭遇了保留记忆回到过去这种荒唐事,冷静下来后脑海中浮现的却净是洁的身影。
出会った時から、よくわからないやつだった。 从相遇那刻起,他就是个让人捉摸不透的家伙。
視界に入れる必要も無いモブだと、そう口にしながらもいつの頃からか凛の中の潔の存在は日に日に大きくなっていった。
明明说着"这种路人甲根本不值得入眼",不知从何时起,凛心中洁的存在却与日俱增。
単なる執着かとも思ったが、それだけじゃなかった。潔にはできうる限り優しくしたいと思ったし、自分に向かって笑ってくれると嬉しかった。
原以为只是单纯的执念,但远不止如此。想要竭尽所能对洁温柔以待,看到他对自己展露笑颜就会雀跃不已。
だからこそ、別れを切り出されたときには憤りを覚えたし、同時にショックも受けた。
正因如此,当对方提出分手时才会怒火中烧,同时深受打击。
ここのところ以前に比べて関係がうまくいっていない自覚は凛にもあった。だからといって、別れるという選択肢は凛の中にはなかった。
凛自己也意识到,最近两人的关系不如从前融洽。但即便如此,"分手"这个选项从未出现在她的考虑范围内。
互いにとって自分たちはなくてはならない存在。そう凛は思っていたのに、潔はそうではなかったのかと、強い憤りも覚えた。
明明她坚信彼此是对方不可或缺的存在,可洁世一却似乎并不这么想——这个认知让凛感到强烈的愤怒。
そもそも、自分のものだと思っていた存在が自分からいなくなろうとしているのだ。
说到底,那个她原以为永远属于自己的人,现在正试图从她身边逃离。
あの瞬間、無理矢理その身体を暴こうとしなかった自分の忍耐力は大したものだったと思う。
那一刻竟能强忍着没有粗暴地占有那具躯体,连她自己都觉得这份自制力堪称奇迹。
そういった感情を抑え、僅かに残った理性で別れを受け入れた。五年も付き合ったのだ、ある程度相手の性格だってわかっている。
我压抑着这些情感,用仅存的理性接受了分手。毕竟交往了五年之久,对彼此的性格多少还是了解的。
別れを口にした時点で、潔の中でもう別れることは決定事項となっているはずだ。
当洁说出分手的那一刻,在他心里这应该已经是板上钉钉的事了。
切り捨てたのは潔の方なのだから、自分だって潔のことは切り捨ててやる。こちらの方からは絶対相手を欲したりはしない。
既然是洁先抛弃了我,那我也会彻底放下他。我绝对不会主动去渴求他的回头。
そう思ってはみたものの、自分の中の潔への感情は消えることはなかった。
虽然这么想着,但心中对洁的感情却始终无法消散。
強い怒りや憎しみを抱えながらも、それ以上に強い潔への想い。
怀揣着强烈的愤怒与憎恨,却仍无法超越对洁的思念。
凛がそういった感情を持て余しているというのに、何事もなかったかのように振る舞おうとする潔にますます苛立った。
明明凛已被这些情绪压得喘不过气,洁却仍装作若无其事的样子,这让他愈发焦躁。
そうだ、せっかく時が戻ったのだ。 没错,既然时光好不容易倒流。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。 愚者从经验中学习,智者从历史中领悟。
歴史上の誰かが言っていた言葉だが、凛は愚者ではない。
历史上曾有智者说过,凛绝非愚者。
最初から、自分たちの関係をなかったことにすればいい。サッカーにおいては誰よりぶっ潰したい好敵手。
从一开始,就该把彼此的关系彻底抹去。在足球场上,他是最想彻底击溃的劲敌。
歪んだ関係ではあったが、それが自分たちにはやはり相応しかったのだ。
虽然这段关系扭曲畸形,却恰恰适合我们这样的人。
気持ちを伝え、付き合ったりしなければ、こんな風にやり場のない消えない感情を抱えることもなかった。
若不表明心意,不开始交往,就不会像现在这样怀抱着无处安放又挥之不去的感情。
そう、固く決意したときだった。 就在他下定决心的时候。
「あれ~? 潔寝坊した? 遅いじゃん」 "咦~?小洁睡过头了?好慢啊"
ふいに目の前にいた蜂楽が、凛の後ろの方向へと話しかけた。
突然出现在眼前的蜂乐,朝着凛身后的方向搭话。
さり気なく凛も視線を向ければ、潔が黒名と氷織と連れだって食堂に入ってくるところだった。
凛若无其事地顺着视线望去,正看见洁和黑名、冰织结伴走进食堂的身影。
こんなやりとりあったか? 忘れているだけか? 有过这样的对话吗?还是说只是我忘记了?
凛が知る五年前の合宿初日は、潔は蜂楽や千切、國神たちと一緒にいたはずだ。
凛记忆中的五年前集训第一天,洁本应和蜂乐、千切、国神他们在一起的。
記憶違いだろうかと思っていると、歩いてきた潔が少し気まずそうに視線を逸らした。
正怀疑是不是自己记错了,走过来的洁却略显尴尬地移开了视线。
「あ~、そんなと……」 "啊~,那个……"
「夜遅くまで彼氏と電話しとったからね」 "因为和男朋友打电话到很晚呢"
……は? ……哈?
さらりと答えた氷織の言葉に、顔が引きつった。 面对冰织轻描淡写的回答,我的脸抽搐了一下。
「え~? 何々どういうこと?」 "诶~?什么什么情况?"
興味津々、とばかりにクワガタを探す夏休みの子供のような表情を蜂楽がする。
蜂乐露出像暑假里兴致勃勃寻找锹形虫的孩子般的表情。
「彼氏って、いやそんなんじゃないから!」 "男朋友什么的,才不是那样啦!"
焦ったように潔が否定する。 洁慌忙否认道。
「え? だけど付き合ってって言われたんやろカイザーに」
"诶?可是凯撒不是向你告白了吗"
「コクハク、コクハク」 "告白,告白"
二人に言われた潔が、だからそうじゃなくて……と額に手を当てる。
被两人这么说的洁,扶额辩解道不是那样的……
「へ~潔がモテるのは知ってたけど、そういうことになってたんだ」
"诶~虽然知道洁很受欢迎,没想到是这种情况啊"
「いいんじゃね? ドイツは同性婚も出来るって話だし」
"不是挺好的嘛?听说德国同性也能结婚"
半ば冗談で言っているのだろうが、凛にしてみれば不愉快以外のなんでもないやりとりだった。
虽然知道对方多半是在开玩笑,但对凛而言这对话只让人感到不快。
あのクソ薔薇……! 那个该死的玫瑰男……!
気障ったらしい台詞とにやけた面を思い出し、拳に力が入る。
回想起那做作的台词和嬉皮笑脸的表情,拳头不自觉地攥紧了。
次にマッチアップすることになったらファウル覚悟で思い切り当たりに行ってやる、つーか絶対抜く、股抜きしてやる。
下次对上的时候就算犯规也要狠狠撞飞他,不、绝对要过他,穿他裆过掉他。
潔は別に付き合ってはいないと言っているが、周囲の意見を聞く限りなんらかのアプローチをされたことは確かなようだ。
洁虽然坚称自己并没有在交往,但根据周围人的说法,他确实受到了某种程度的追求。
舐めた行動をとったクソ薔薇にも腹が立つが、潔も潔だ。てめえ、どうしてあいつに告白されるような隙を作ってるんだ。
虽然对那个做出轻浮举动的混蛋玫瑰男感到火大,但洁也有责任。你这家伙,为什么要给那混蛋留下可乘之机让他告白啊。
ミヒャエル・カイザーが潔に対して強く執着していることは知っていた。
我早就知道米歇尔·凯撒对洁有着强烈的执念。
最初は見下し、小馬鹿にしていたようだがいつしか認めるようになり、潔自身もカイザーを口では嫌っていながらも、無関心ではいられないようだった。
起初他看似轻视嘲弄洁,但不知不觉间开始认可对方。而洁虽然嘴上说着讨厌凯撒,却也无法对他保持无动于衷。
ブルーロックでドイツ棟だった頃は潔との関係は決して良いとは言えなかったが、同じチームでプレイするようになってからはそういった関係は徐々に変わっていった。
在蓝色监狱德国栋时期,凛和洁的关系绝对称不上融洽,但自从成为同队队友后,这种关系逐渐发生了变化。
同じチームでポジションも一緒となれば、一緒にいる時間は当然多くなる。
同队又打相同位置,相处时间自然大幅增加。
仲が良いと周りから言われる度に潔は否定していたが、雑誌の対談やCMとドイツ国内では引っ張りで、まるで二人で一組の、ペアのように扱われていた。
每当被周围人说关系好时,洁总会矢口否认。但无论是杂志对谈还是广告拍摄,他们在德国国内都成了黄金搭档,简直像被当成了一对组合。
ミュンヘン空港を降りたった時など、空港の中央に二人の広告が大きく貼られており、苦々しい気持ちでそれを見つめた。
特别是降落在慕尼黑机场时,航站楼中央赫然张贴着两人的巨幅广告,凛盯着看时心里泛起阵阵苦涩。
けれどそれは、これから先の未来の話だ。五年前、ネオ・エゴイストリーグが終わった直後、U-20W杯の段階では二人の関係にこれといった変化はなかったはずだ。
然而那都是未来的事了。五年前,新自我主义联赛刚结束那会儿,在 U-20 世界杯期间两人的关系应该还没发生什么特别变化。
元ドイツ棟のメンバーから関係を茶化されると、心底嫌そうに顔を顰めていた。
每当被原德国楼成员调侃他俩关系时,凛总会嫌恶地皱紧整张脸。
それこそ、カイザーから告白されたなんて潔からは聞いたことすらない。
更别提从凯撒那里收到告白这种事——我压根没听洁提起过。
つーか、なんで断ってねえんだよ。クソ薔薇からの告白なんか、その場で拒否するだろ。
话说你为啥不拒绝啊?那种垃圾玫瑰的告白,当场就该回绝才对吧。
潔が内心どう思っているのかはわからないが、否定しながらも少しだけ恥ずかしそうな表情も、夜遅くに電話していたという事実も何もかもが気に入らない。
虽然不清楚洁内心真实想法,但他那副嘴上否定却带着几分羞赧的表情,连同深夜来电这个事实本身,都让我莫名烦躁。
今すぐ潔から連絡手段を取り上げて、カイザーからの通知を拒否設定にしたいくらいだった。
恨不得立刻没收洁所有的通讯工具,把来自凯撒的来电统统设为拒接。
お前は俺の告白を受け入れて、俺と付き合うんだろうが!
你既然接受了老子的告白,就该老老实实跟老子交往啊!
苛々は最高潮に達し、周囲の様子を見る余裕すらなくなっていた。
焦躁感攀升至顶点,连观察周围状况的余裕都消失殆尽。
「凛、お前の番だけど」 "凛,该你了"
「うぜぇ、話しかけんな!」 "烦死了,别跟我说话!"
声を荒げたところで、ハッとする。 刚提高嗓门吼完,突然意识到什么似的一愣。
目の前には、驚いたような顔をしてこちらを見ている潔がいた。
眼前是满脸错愕望着这边的洁。
見上げるようにこちらを見ている潔は、戸惑い、少し傷ついたような顔をしている。
抬头望向这边的洁世一,脸上浮现出困惑又略带受伤的神情。
声が大きかったからだろう、周囲の視線も自分たちに集まっているのがわかる。
或许是刚才声音太大了,能感觉到周围的目光都聚集在他们身上。
「あ、じゃあ先にとるから……」 "啊,那我先去拿了......"
潔はそう言うと、凛の順番を抜かし、トレイを手に進んでいった。
洁说完便越过凛的排队顺序,端着餐盘快步走开了。
呆然と立ち尽くしているうちに、氷織と、そして黒名が凛を抜き、潔の後に続いていった。
就在他呆立原地时,冰织和黑名已经越过凛,追随着洁的背影离去。
さすがにあの態度は無い。それくらいのことは、凛にだってわかる。
那种态度确实过分。这点道理,凛还是明白的。
潔の方を見れば、既に先ほどのことはなかったことのように、氷織や黒名と何か楽しげに話している。
望向洁的方向,对方早已若无其事地和冰织、黑名愉快交谈着,仿佛方才的冲突从未发生。
失敗した、と思ったときには遅かった。 当意识到"搞砸了"的时候,已经太迟了。
「オウンゴールに気をつけてね、凛ちゃん」 「小心别自摆乌龙哦,凛酱」
既に朝食をトレイに乗せた蜂楽が、凛にこっそりと話しかけてきた。
已经将早餐放在托盘上的蜂乐,悄悄对凛说道。
ムッとして言い返そうとしたところで、蜂楽は千切や國神たちの座る席の方へと向かっていった。
正当凛气鼓鼓地想要回嘴时,蜂乐已经朝着千切和国神他们坐的座位方向走去了。
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