絶対冴潔になる(?)世界VS潔に片想いしてる糸師凛
绝对清醒(?)的世界 VS 单恋洁的糸师凛
タイトルの通りです!!プロ時空、糸師兄弟和解一歩手前ぐらいの感覚のお話です!
正如标题所示!!这是一个关于职业时空背景下,糸师兄弟距离和解仅一步之遥的故事!
いくつか弁解をさせてください!! 请允许我解释几句!!
私は冴潔を書くことはありませんが大好きで素敵なカプだと思っていますし、凛も潔も大好きです!!
虽然我不会写冴洁同人,但我觉得这对 CP 超级棒超有爱!!我也超喜欢凛和洁!!
表現上貶していると受け取られるであろう部分が多数ございますし、誰かの好きを否定しているように見えてしまう部分があるかもですが、決して私がそう思っている訳でもそうしたい訳でもないことだけ伝えさせてください…。
文中可能存在许多看似贬低他人的表述,或许某些部分会让人误以为我在否定他人的喜好,但请允许我澄清——这绝非我的本意,也绝非我想要传达的意图……。
少し書き方を変えたからか妙に愛のないトゲトゲした文になってしまっていてすごく悲しいです。
或许是因为稍微改变了写作方式,文章变得莫名缺乏爱意且带刺,实在令人难过。
ギャグ(??)を目指そうとしただけだったのに、ほんとに…なんで……。
明明只是想写个搞笑(??)故事而已,结果真的……为什么会变成这样……。
それはそうと、アニメがあまりにも良すぎてトびました。ラストマッチがかっこよすぎてずっと叫びっぱなしで…。3期の放送決定の朗報を心待ちにしています…!!
话说回来,动画实在太精彩让我完全沉迷了。最终对决帅到爆表,全程都在尖叫…。衷心期盼着第三季开播的好消息…!!
過去作への反応などありがとうございます! 感谢大家对前作的喜爱与反馈!
予想以上にみなさんに気に入っていただけたみたいで嬉しかったです…!
没想到大家会这么喜欢,真是太开心了…!
今回は自分でも投稿するかかなり悩んで、なんなら今でもずっと悩んでいるので、こちらにご意見など頂けるとすごく助かります…!!
这次投稿我自己也相当犹豫,甚至到现在都还在纠结,所以如果能在这里得到大家的意见就太感谢了…!!
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楽しんでいただけますように!! 希望您能享受阅读!!
お借りした表紙→illust/97616898 借用的封面→illust/97616898
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糸師凛は恋をしていた。 糸师凛陷入了恋爱。
この一文を読めば、かつてのブルーロックの同期たちは散々小馬鹿にして、まるで腹筋が割れてしまう(そもそも割れているけど)ほど爆笑したのち、その文言を連ねた人間の頭の健常さを心配するのだろう。きっとそれは彼が現在活動するフランスのチームメイトたちや同業者たちも同じで、もちろん、その反応は数多の人間が集うインターネットでも然り。
读到这句话时,那些曾经的蓝色监狱同期生们大概会极尽嘲讽之能事,笑到腹肌抽痛(虽然本来就有腹肌),然后开始担忧写下这串文字的人精神是否正常。想必他现在效力的法国队友们和同行们也会是同样反应,当然,互联网上聚集的无数网民也不例外。
糸師凛という男に熱愛報道が流れたとしても、大抵の人間は「面がいいやつは大変だな」「分かりきったデマ記事をトップにするセンスどうよ」等のちょっと出版社の予想とは外れた反応を並べる。
就算爆出糸师凛的恋爱绯闻,多数人也只会摆出"帅哥真不容易啊""这种一眼假的谣言也敢放头条"之类完全偏离出版社预期的反应。
そうして結局、ショート動画で流れる衝撃映像集のように日々の暇つぶしのための面白コンテンツとして消費されていくのだった。
最终这些消息就像短视频里轮播的猎奇画面一样,沦为人们消磨时间的趣味消费品。
とまあ、それほど糸師凛という男と恋愛などという甘くてふわふわとしたピンク色の文字は似ても似つかなかった。どう頑張っても、あの糸師凛という男に恋という文字は関連づけることができない。
说到底,"恋爱"这种甜蜜轻飘的粉色字眼,与名为糸师凛的男人根本毫不相称。无论怎么努力,都无法将"恋爱"这个词汇与那个糸师凛联系在一起。
凛を街の広告で見かけただけの、ちょっとネットや流行りに疎い人間ならまだ結びつけることができたかもしれない。
如果只是个在街头广告上瞥见过凛的路人,或许还能把他和网络流行联系起来。
だが、彼のその冷ややかさと共に名前の通り凛とした雰囲気を醸し出す容姿とは対照的に、なんともドロドロとした執着の塊のようでいてかつ社会性というものが根絶している性格を知る者ならば、全員が応と答えるのは必然だった。
但凡是了解他那与冷峻外表形成鲜明对比的、如同黏稠执念凝结体般且彻底丧失社会性的性格的人,都会不假思索地给出肯定答案。
どちらかといえば殺しなどという物騒な言葉の方が似合うし、完全犯罪のスクープとしてその名が踊った方が、「あぁ…あいつ、いつかやると思ってました…」とあっさり納得することができるほどである。
倒不如说"杀人"这种危险词汇更适合他,就算哪天报纸头条出现完美犯罪报道时写着他的名字,人们也只会恍然大悟地说"啊...那家伙终于动手了啊..."。
だが、そんな凛は恋をしていたのだ。 然而这样的凛,竟然陷入了恋爱。
辞書を開けば「特定の人に強くひかれること。また切ないまでに深く思いを寄せること。」と表記されている、好きだとか愛だとかそういう言葉と並ぶ恋というものを。
翻开字典就能看到"对特定对象产生的强烈吸引力。或是深切到令人心痛的思念之情。"这种与喜欢、爱意等词汇并列的、名为恋慕的情感。
「凛選手が恋ね…5回ぐらい生まれ変わったらやっとその意味知るぐらいじゃね?」「糸師凛選手にとっては女性ファンからの歓声=羽虫の音って感じする」「羽虫以下もあり得るぞwww」とまあ、誹謗中傷スレスレのなかなかな偏見が飛び交っている外野をよそに、凛はとある一人の男に強く惹かれ、切ないまでに深く思いを寄せていた。
"凛选手会恋爱...大概要转世五次才能理解这个词的意思吧?""对糸师凛选手来说女粉丝的欢呼声大概和蚊虫嗡鸣差不多""说不定连蚊虫都不如 www"——就在场外这些近乎诽谤的偏见言论满天飞时,凛却对某个男人产生了强烈吸引力,怀抱着深切到令人心痛的思念。
その名も潔世一。 其名为洁世一。
同じくブルーロック出身の選手で、現在はフランスで活動する凛に対してドイツで相変わらずなサッカーをしている男。適応能力というなかなかに珍しい頭脳派な武器を持ち、悪役としてフィールドを蹂躙する凛に対してヒーローのような立ち位置で食らいついてくる選手。
同样出身蓝色监狱的选手,当凛在法国大放异彩时,这个在德国继续踢着足球的男人。凭借罕见的适应能力这项智慧型武器,总以英雄姿态对抗着作为反派蹂躏球场的凛。
時たまあまりにも切れ味の良すぎるレスバを繰り広げ同業者のメンタルをぽっきり折ったり、はたまた不思議な高等テクニックで蜘蛛の糸のような救いを与える。
偶尔会展开过于犀利的论战,把同行者的心态彻底击溃;又或是用不可思议的高超技巧,给予蛛丝般的救赎。
自分を潔にとって特別な人間だと、唯一の存在だと思わせるのが上手い。その全てが恐らく少女漫画の鈍感主人公ですら顔を青くするほどの天性の無自覚ムーブだというのだから、あまりにもたちが悪かった。
他特别擅长让人误以为自己在洁心中是特别的存在、独一无二的存在。而这一切恐怕连少女漫画里迟钝的主角都会脸色发青——浑然天成的无意识举动实在太过恶劣。
まあ、本人にそう問い質したところで、「え?そんなことないけどな…あ、てかさ、前の試合のあれって…」と、相変わらずなサッカー馬鹿っぷりを見せてくれるのだから、結局は皆絆されてしまうのだ。潔に寄りつく人間は、大体サッカーを愛している者たちであるので。
不过就算当面质问本人,他也只会露出那副一如既往的足球痴模样:"诶?没这回事啊...啊对了,上次比赛那个...",最终大家还是会被他俘获。毕竟聚集在洁身边的人,多半都是热爱足球的家伙。
だからそのうち、その勢いで世界征服(※主にサッカー界の)をしてもおかしくない。
所以照这个势头发展下去,哪天他征服世界(主要是足球界)也不足为奇。
とは言え、潔のテンプレの性格はお人好し・純粋・優しいの三拍子で、どれも好感度◎要素となるしかないものばかりだ。それによって、純粋にその性格にハマり込む者も居れば、サッカーをしている野性的な姿勢とのギャップに胸を撃ち抜かれる者も数多いる。
话虽如此,洁世一的模板性格就是老好人、纯粹、温柔这三要素,全都是好感度拉满的必备属性。因此既有纯粹被这种性格吸引的人,也有不少被他踢球时的野性姿态与性格反差击中心脏的观众。
他にも、「なんかブルーロックって顔面審査も選考の一つだったんじゃね?」と名高いブルーロック出身者ということもあり、顔面が非常に強い。
再加上"蓝色监狱该不会把颜值也纳入选拔标准了吧?"这种广为流传的说法,作为知名蓝锁出身的选手,他的颜值同样极具杀伤力。
美形の筆頭には千切や玲王と言った王道なメンツが並び、凛も膨大な数のファンがその顔の良さに屈しているのだが、潔も漏れなかった。パッと見は普通に近い容姿をしているのに、よく見ればピントが合ったとでも言うかのように、下手すればそこら辺のアイドルも言葉通り顔負けな愛嬌と不思議な魅力を持ち合わせているため、通称潔世一顔ファンなるものも存在する。
说到美男代表自然少不了千切和玲王这类正统派,凛也凭借出众外貌征服了大量粉丝,而洁世一同样不遑多让。乍看只是普通帅哥的长相,细看却像突然对焦般令人惊艳,甚至拥有让路边偶像都自愧不如的亲和力与神秘魅力,因此还衍生出"洁世一脸粉"这一专属粉丝群体。
潔世一世界征服説、なかなかに強力である。 "洁世一世界征服论"——这个说法确实相当有说服力。
とまあ、そんな感じでフィールド上でも外でも場所なんて関係なく人に囲まれ全世界にコアなファンを増やし続け、今日も今日とてどこかの誰かのナニカをねじ曲げている男。
总之,无论在球场内外都毫无顾忌地吸引人群、持续在全球范围收割核心粉丝,今天也依然在某个角落扭曲着某人三观的这个男人。
そんなあまりにも罪すぎる男、潔世一に凛は今生最大の恋と言っても過言ではないほどのどデカい矢印を飛ばしていたのだった。
而面对这个罪孽深重的男人——洁世一,凛正投射着堪称今生最强烈爱意的巨大箭头。
凛と潔の関係性を第三者的な目線から見て知る者ならば、「それって殺意との間違いでは…?」と首を傾げかねないが、もちろん凛がそう思い至らなかった訳ではない。
若有第三者视角了解凛与洁关系的人,恐怕会歪头疑惑"这该不会是杀意的误认吧...",当然凛本人并非没有产生过这种怀疑。
まずまず自分が恋愛感情というものを人に抱けると思っても見なかったし、その解に辿り着くまでには幾度となく繰り返された自己否定と自己解釈の不一致がある。
毕竟他从未想过自己会对他人怀有恋爱感情,在得出这个结论前,已经历过无数次自我否定与认知偏差的反复纠葛。
「これは…まさか…恋……?」と少女漫画お決まりのセリフが脳内に浮かんだ時は、本気で死のうかと思ったし、数日は不眠で寝付けなかった。そもそも、潔という男が凛の中で輪郭を成すまでの凛の世界には、兄である冴しかいなかったのである。よって、幼少期の短いようで長い貴重な時間が冴とサッカーで構成されていた凛は、恋という恋をしたことがなかった。
"这该不会是...恋爱...?"当这句少女漫画标配台词浮现在脑海时,凛真的想过要不要去死,接连好几天都失眠到无法入睡。毕竟在洁这个男人的轮廓于凛的世界成形之前,那里始终只存在着兄长冴的身影。因此,由童年看似短暂实则漫长的珍贵时光构筑而成、只与冴和足球相伴的凛,从未体验过所谓的恋爱滋味。
元より、凛には特定の人物に対して執着しやすいきらいがあるため、一時期は兄に対して抱いていたそれと同じものではないのかと思い悩んだ時期もあった。
原本凛就容易对特定人物产生过度执着的倾向,为此他甚至苦恼过这份感情是否与曾经对兄长抱持的执念如出一辙。
見てくれは百戦錬磨の男に見えるかもしれないが、蓋を開けてみれば宙でベッドメリーがくるくる回っているぐらいには幼い恋愛歴だったのだ。あくまで、見てくれのみなのである。
虽然外表看起来像身经百战的男人,但揭开盖子就会发现他的恋爱经历幼稚得如同悬浮旋转的床单精灵。说到底,那副模样终究只是表象罢了。
告白されたことはあれど、サッカーの練習に遅れるためその行為を若干嫌悪していた時もあったし、バレンタインのチョコにはよくわからない毛髪が混入していた時点で受け取れなくなってしまっている。
虽然收到过告白,但曾因耽误足球训练而对这种行为产生过厌恶;情人节收到的巧克力里混着来历不明的毛发时,更是彻底断绝了收礼的念头。
時に人はモテる人間にやっかみや羨望の眼差しを向けたりするが、モテる人間にはそれ相応のそれなりの苦労があるのだ。人に好かれれば良いという単純な世の中ではない。
有时人们会对受欢迎的人投以嫉妒或羡慕的目光,但受欢迎的人也有他们相应的烦恼。这世界可不是只要被人喜欢就万事大吉那么简单。
そう思い至った凛にとって、恋愛というものは切り捨てる対象へと成り下がった。まだ中学生の身にして、ある種の悟りを開いたのである。
对于想通这点的凛而言,恋爱已然沦为应当舍弃的对象。尚在初中年纪的他,竟已参透了某种人生真谛。
別にサッカーをするにあたってその存在は必然ではないし、凛の私生活もどちらかといえば個人で完結しているため、愛してくれる人が欲しいという要望も、共に過ごしてくれる人が欲しいという要望もない。
反正踢足球也不需要这种存在,况且凛的私生活本就倾向于独来独往,既不需要渴望被爱的人,也不需要寻求共度时光的伴侣。
きっと、自分は今世ではもう生涯独身スタイルを貫くことになるのだろう。独身貴族万歳だ。誰にも文句なんて言わせない。
想必自己这辈子注定要贯彻独身主义了吧。单身贵族万岁。绝不让任何人说三道四。
親には悪いが齢十五にして早々にそう確信し、ただ憎き兄への復讐としてサッカーをこなしている時だった。
对父母虽感抱歉,但十五岁的我早已确信——自己不过是将足球当作向可憎兄长复仇的工具罢了。
ヤツ……潔世一が、凛の人生に無遠慮にもズカズカと割り込んできたのは。
那个家伙……洁世一,就这样蛮横无理地闯进了凛的人生。
最初、潔というい男はそこら辺にうじゃうじゃと湧いている名前もないモブの一人でしかなかった。凛に蹂躙され、冴を潰すための肥料となるだけの人材。それがいつしか名前がつき個として宿敵として形を徐ろにしはじめ、気づけば凛の心にある限られた『特別』の椅子にどかりと座り込んでいたのである。
起初,这个叫洁的男人不过是随处可见的无名龙套之一。本该是被凛碾压、成为击溃冴的肥料罢了。不知何时起,他竟拥有了姓名,作为个体逐渐具象化为宿敌,等凛回过神来,这家伙已大剌剌霸占了他心中为数不多的"特别"席位。
兄用の一つしかなかったはずのその椅子を、どこから持ってきたのか凛の許可もなく二つにしていた。
那把本该专属于兄长的独座,不知从哪又搬来一把,未经凛允许就擅自变成了双人位。
晴天の霹靂。春に鳴る雷。まるでそんな言葉がぴったりな一目惚れみたいなもの…と言うわけでもなかったが、長期的に見ればそうとも考えられる存在が、凛にとっては潔だったのだ。
晴天霹雳。春日惊雷。用这种词藻来形容一见钟情或许并不完全贴切…但从长远来看,这种说法倒也成立——对凛而言,洁世一就是这样的存在。
なんでも潔が脳内に浮かんでくるようになった時、凛はついに自分の頭がぶっ壊れたのだとあっさりと事実を受け止めようとした。人生に二度や三度はある、ちょっと自分でも予測できないエラー中のエラー。きっと馬鹿みたいにサッカーに全てを賭けていたから、ついに頭の大事なネジが一、二本ぐらいどこかで外れて落としてきたのだと。
当洁的身影开始在脑海中挥之不去时,凛干脆利落地接受了这个事实:自己大概是脑子坏掉了。人生中总会出现两三次连自己都预料不到的致命错误。肯定是因为像个傻瓜似的把一切都押在足球上,终于让脑袋里关键的螺丝钉松动脱落了一两颗。
それでも、その馬鹿になった頭で導き出されるのは『潔世一に恋をしている』という事実で、サッカーから離れてもなお、凛の意識の薄らとした場所には憎たらしいほど生意気でかわいいその顔が立っている。
即便如此,这个坏掉的脑子得出的结论却是"我恋上了洁世一"。即便远离足球场,在凛朦胧的意识角落里,那张嚣张到可恨却又可爱至极的脸依然固执地存在着。
潔を今世ずっと凛の隣に縛り付けて置きたい。というか、普通に自分がこれだけ好きになって愛しているのだから、好きになり返してほしいし愛し返してほしいし。潔に同じぐらい好きになってほしかったし、愛して欲しいと思った。
好想这辈子都把洁世一拴在身边。不,应该说既然自己已经喜欢到这种地步、爱到这种程度,当然希望对方也能回应同等的喜欢与爱。渴望洁能用同等炽热的感情喜欢自己,用同样深沉的爱意拥抱自己。
なんなら、今世だけとは言わずに来世でも、来世のその次でも、はたまた数多の人間たちを蹴落としてきた凛たちを待ち受けているであろう地獄でも。
不如说,不仅是今生,就连来世、再来世,甚至是历经无数轮回后等待着凛他们的地狱里。
その権利を得るには、潔の恋人になるしかない。 要获得这个权利,唯有成为洁的恋人。
ふらふらと移り気な潔を凛の隣に縛り付けておくには、それしかない。
要让飘忽不定的洁留在凛身边,除此之外别无他法。
そして、その凛が抱えている欲望はチープなものに成り下がってしまうが、凛の中で恋と分類せざるを得なかった。
尽管凛心中怀揣的欲望已沦为廉价之物,却不得不被归类为恋爱。
だが、ここで一度思い返してほしい。モテにモテまくってきた凛ではあるが、うざったいほどの好意は向けられど、その逆の立場に立つことは非常に稀であったのである。なんなら、今回が最初で最後の記念すべき第1回となるのだろう。
但请在此稍作回想。虽然凛向来备受追捧,但向来只有他嫌弃别人过分热情的份,鲜少会置身于相反的立场。甚至可以说,这次恐怕会成为值得纪念的第一次也是最后一次。
つまりは、彼は初恋を迎えたばかりの、歴とした恋愛初心者だったのだ。
换言之,他不过是个刚迎来初恋、彻头彻尾的恋爱新手。
俺以外の隣に収まるなんてこの俺が認めねぇ。 敢坐在除我之外的家伙身边——老子绝不承认。
そう大層な大口を叩いている凛だが、所詮サッカーはプロレベルであれど恋愛はド素人なわけで、自身の恋心を受け入れて2年が経過した今でも、おおっぴらに潔に好意という好意をアピールすることができていなかった。
虽说凛摆出这副不可一世的架势,但足球水平是职业级恋爱段位却是菜鸟级,即便接纳这份恋心已逾两年,至今仍无法落落大方地向洁表达直球般的好意。
自身の潔への恋心を自覚する前に長い間ブルーロックという監獄でそこそこの期間共に生活を過ごしていたのもあって、それは輪をかけてしまっている。
在意识到自己对洁的感情之前,他们已经在蓝色监狱这个牢笼里共同生活了相当长的时间,这使得这份感情愈发难以自拔。
言ってしまえば、長年共に過ごしていた近所に住む幼馴染に恋していたことを自覚したのと同じようなものなのだ。何かそれらしい態度を取ろうと、今更気恥ずかしいし今の関係性があっけなく儚く崩れてしまうことが怖い。
说白了,这就像突然意识到自己爱上了从小一起长大的青梅竹马。虽然想表现出相应的态度,但如今只觉得难为情,更害怕现有的关系会因此轻易破碎。
適当に行動してその関係をぶち壊せるほど、凛の中で潔は軽くなかったのだ。
在凛心中,洁的分量重到让他无法随意行动来破坏这段关系。
突然潔に対して甘く優しくなる自分なんて想像もつかないし、想像したとことで鳥肌が止まらなくなってしまうのが全てのシュミレーションのオチである。蝶のように気まぐれに他方を誑かす(※本人に意図はない)潔なので、さっさと好きだのなんだの言ってしまえばいいのだが、凛は今の今になっても「す」の一文字も口にすることができていなかった。口下手かつ絶妙に捻くれた性格へと成長してしまった自分が恨めしい。
突然对洁温柔以待的自己简直难以想象,而每次模拟这种场景都会让他起一身鸡皮疙瘩——这就是所有假想演练的结局。虽然洁像蝴蝶般随心所欲地撩动着他人(本人并无此意),凛本可以干脆地表白心意,但直到现在,他连"喜"字都说不出口。他痛恨这个不善言辞又别扭至极的自己。
そうやけに高いプライドや難しい性格と喧嘩をしているうちに、一丁前に独占欲だけが増していくのである。
就这样,在与那高傲自尊和别扭性格的不断交锋中,唯独独占欲愈发膨胀起来。
『お前は俺の一番近くで俺が世界一になるのを見届けろ』
你要站在离我最近的地方,亲眼见证我成为世界第一
『お前は俺を死ぬまで殺しに来る義務がある』 你有义务追杀我到死为止
傍から見ればなかなかに重く、「え、君たちサッカーの話だよね…?」と言われてしまいそうな発言こそは監獄時代にしていたものの、それはまだ潔のことを好きだと自覚する前で、試合中のドーパミンによって頭が少々イカれて(元からだろとか抜かすやつは潰す)いる時のハイな気持ちから出てきている言葉であって。
这些在旁人看来相当沉重的发言——"等等,你们是在聊足球对吧...?"——虽然确实是监狱时期说过的,但那还是在意识到自己喜欢洁之前,比赛时多巴胺分泌导致脑子有点不正常(敢说"本来就不正常吧"的家伙会被揍扁)的亢奋状态下脱口而出的台词。
今の凛は「若さってすげー」と開き直って大の字に寝転がり過去の自分に畏敬の念を抱くと共にドン引くぐらいしかできず、今日も今日とて潔への曲がりに曲がりまくった独占欲と執着心と、それから少々のコットンキャンディのような淡く甘い想いを持て余していたのだった。
现在的凛只能以"年轻真好啊"的心态自暴自弃地摊成大字形躺平,一边对过去的自己肃然起敬一边又嫌弃得要命。今天也依旧被对洁扭曲到极致的独占欲和执念,以及些许棉花糖般淡而甜的恋慕之情折腾得无所适从。
だが、そんな凛でも最近はまだじわじわと距離を詰めることに地味に尽力しており、明日は一人では気になっているカフェに入りずらいという言い訳を餌に、潔と出かける約束を取り付けることに成功していた。
但即便是这样的凛,最近也在默默努力逐步拉近距离,并以"一个人去在意的那家咖啡店会不好意思"为借口,成功约到了洁明天一起出门。
こうした流れで約束を取り付けるのは、実に五回目である。
这已经是第五次用类似套路约到对方了。
凛にしてはかなりの功績だ。 对凛来说堪称丰功伟绩。
相変わらず想いを告げることもそれらしい行動を取れているわけでもなかったが、潔を目の前にすると反抗期の息子のように暴言を吐くことはおろかろくに目線すらわせられなかった時期を思い返せば、ずいぶん進歩しているだろう。もはやダーウィンの進化論で言う魚から人になったレベルの進歩である。凛をよく知る肉親たちに詳細を細かく伝えれば、感極まって泣かれてしまうかもしれない。
虽然依旧没能表白心意也没采取什么像样的行动,但回想起那个在洁面前像叛逆期儿子般口出恶言、甚至连视线都不敢相对的时期,确实已经进步不少了。这简直是达尔文进化论里从鱼类进化到人类级别的飞跃。要是让熟悉凛的亲戚们知道细节,说不定会感动得哭出来。
別に凛は前述したが一人行動に抵抗があるわけでもないし、なんなら高校時代からろくにつるむ相手のいなかった凛の休日の過ごし方は大半がホラー映画の鑑賞か気になっていた店や馴染みのある店に食べにいくというものだった。意外に思われがちではあるが、欲望に忠実な凛にとって食べたいものを食べるというのは当たり前だった。もはやその一連の流れは習性じみている。多少のカロリー制限はすれど、欲は尊重してなんぼである。それは縦に伸びた彼のフィジカルにも十分現れているため、間違ってはいないと言えるだろう。好きなだけ食べれば、それ相応のトレーニングをすればいいだけ。もちろん、全てが必然的にぼっち行動ではあるのだが。持ち合わせた性格ともいうのか、女性客が多いところでも少々学生には敷居が高い店でも、まあ気にすることなく遠慮なく入ることができていた。
凛倒也不是抗拒独处的人,不如说高中时代起他的假期多半就是看恐怖电影,或是去种草已久的店和常去的店吃饭。虽然常让人意外,但对忠于欲望的凛来说,想吃就吃是天经地义。这套流程早已成为习惯。虽说会稍加控制卡路里,但口腹之欲必须尊重。这点从他纵向发展的体格就能充分证明,倒也不算错。想吃就吃,相应加强训练就行。当然,这一切必然都是独自完成。或许是性格使然,无论是女性顾客多的店还是对学生党门槛稍高的店,他都能毫不在意地坦然进入。
それは、こうして海を越えフランスの地に留まるようになってからも変わらず。そんな凛にとって、ただの最近話題のカフェなんて入りづらいも何もありはしない。いつものように適当に空いた時間でさっさと訪れ、目的のものを食べてさっさと帰宅するだけでいい。それでも、潔を誘うために凛が頭を捻ったなりに出たのがこの口実しかなかった。
即便漂洋过海来到法国,这个习惯也未曾改变。对这样的凛而言,区区网红咖啡馆根本谈不上什么拘束。照例找个空闲时间速战速决,吃完目标餐点立刻回家就行。但为了邀请洁,他绞尽脑汁也只能想出这个借口。
別に潔は監獄前の凛の習性を知らないため、凛が今まで嘘をついているという真実などに辿り着くなんてことはないだろう。フィールドから降りた瞬間、「その試合中の勘の良さはどこに行ったのか?お得意の迷子か?」と問いたくなるほどの鈍感さを披露するため、今更気づかれることもミリとして心配していない。
反正洁不知道入狱前凛的习惯,根本不可能识破他在说谎。毕竟这家伙下场后迟钝得让人想质问"你比赛时的敏锐度去哪了?又迷路了吗?",所以丝毫不担心会被看穿。
本音を言えば、もう既に凛の中では潔と出かけること=デートという方程式が成り立っていたのだが、もちろん凛と潔は付き合えていないため皮を剥げば一方的な思い込みが露呈してしまう。そんなトンチキ頭お花畑野郎にもならないために、あくまで遊ぶ約束という体のいい言葉で包んで、凛は明日を少し前からずっと楽しみにしていた。
说实话,凛的心里早已将"和洁出门"="约会"这个等式成立,但毕竟两人还没交往,剥开表象就会暴露出这只是单方面的妄想。为了避免成为那种自作多情的花痴男,凛始终用"只是约好出去玩"这种体面的说法包裹着心思,其实从几天前就开始期待明天的到来。
デートではなく、あくまで友人(どちらかと言えば宿敵)としてのただの出かける約束。
不是约会,说到底只是作为朋友(或者说宿敌更贴切)的普通外出约定。
それでも仮にも好きな子とのお出かけなため、珍しくも若干浮かれる気持ちを抑えつつ明日着ていくとっておきのコーデを激選していれば、不意に凛のスマホがピコンと通知音を知らせた。
即便如此毕竟是和喜欢的人出门,难得压抑着雀跃的心情在精心挑选明天要穿的珍藏搭配时,凛的手机突然"叮"地响起了通知音。
シンプルなグレーのコートか、はたまた黒のジャケットか…いや、逆にダークブラウンのダウンか…?そんな凛の締めのアウター選びに熱中していた思考を唐突に掻き乱した音は、紛れもない潔からのものであった。
是选简约的灰色大衣,还是黑色夹克...不,反过来选深棕色的羽绒服...?正当凛全神贯注纠结着最后的外套选择时,这阵突如其来的提示音毫无疑问来自洁。
凛と連絡先を交換している相手なんて、両手で数えても十分に足りてしまうほどだったのだが、潔は凛の中でも一応は(というか普通に)特別枠にいるため、通知音を一人だけ変更している。もちろん、凛が下手に潔以外からの通知に落胆してしまわないようにするためという意味合いも兼ねていたが。
和凛交换过联系方式的人,用两只手都数得过来还有富余。但洁在凛心中好歹(或者说理所当然地)属于特别分组,所以单独为他设置了专属提示音。当然,这也包含着避免凛因收到非洁的消息而莫名失落的小心思。
明るくなった画面上に表示された分かりやすい双葉のアイコンをタップすれば、昨日最終的な集合時間を確認したメッセージで止まっていたはずのトーク画面に切り替わる。
点击屏幕上突然亮起的显眼双叶图标,本该停留在昨天确认最终集合时间的聊天界面就会跳转出来。
もしかして明日のキャンセルの連絡だろうか…と少しだけ不安になりつつも、好きな子からのメッセージに浮かれながら左側の吹き出し部分を覗いた時だった。
该不会是来取消明天的约定吧...正暗自忐忑时,他雀跃地点开左侧对话框查看心上人发来的消息。
『凛!!急でごめん!』 『凛!!突然联系真抱歉!』
『冴もこっち来てるらしくて、明日のカフェせっかくだから一緒にどうって話になってるんだけど、凛は大丈夫?』
『听说冴也会过来,难得明天去咖啡厅,要不要一起?凛你觉得呢?』
『撮影が早く終わって1日余るんだって!』 『听说拍摄提前结束,多出一天空闲时间!』
パサリ。手にしていたグレーのコートが、寂しげに床に落ちた音がやけに大きく聞こえる。
啪嗒。手中那件灰色外套孤零零落在地板上的声音,此刻听起来格外刺耳。
凛のデート認識が見事に本気で崩壊した瞬間であった。
这是凛对约会认知彻底崩塌的瞬间。
見間違いや何かの送り間違いかと思い、ベッドに腰掛け一度落ち着いてスマホの画面をゆっくり深呼吸してから見てみたり、送信取り消しがされるのを待ってみたりするが、いくら待てど結果が変わることはない。
我以为是看错了或是发错了消息,坐在床上先让自己冷静下来,对着手机屏幕深呼吸几次再看,又等着看对方会不会撤回消息,但无论等多久结果都不会改变。
「はぁ……」 「唉……」
こんなこと、あっていいんだろうか。 这种事情,真的可以发生吗。
なんだか一人馬鹿みたいに浮かれていたのが情けなくなってきて、凛はそれはそれは大きな溜め息を一つ溢し、ぼふりとベッドへと倒れ込んだ。ベッドに候補から外れた服をいくつか広げていたため、ぽすりと層にになった布が凛の体を優しく受け止める。だが、そんな生易しい配慮よりも何よりも二人きりのお出かけというシチュが欲しかった。シワになるかもという考えはもはやない。
感觉自己像个独自兴奋的傻瓜实在可悲,凛长长地叹了一口气,整个人重重倒进床铺。因为床上还摊着几件被淘汰的候选服装,蓬松堆叠的布料温柔地接住了他的身体。但比起这种微不足道的缓冲,他更渴望的是两人独处的约会场景。衣服会不会起皱这种念头早已抛到九霄云外。
見上げた天井は凛の真っ黒な心とは真反対に真っ白で、蛍光灯の強い光がジリジリと凛の目を焦がし、涙が滲んでくるような気がする。
抬头看见的天花板与凛漆黑的心截然相反,白得刺眼。荧光灯的强光灼烧着凛的眼睛,让他觉得眼泪都要渗出来了。
潔からのメッセージには、「大丈夫?」などとご丁寧に疑問符がつけられているが、元から凛に与えられた返答は一つしかないのである。大丈夫な訳がない。全く大丈夫じゃない。
洁发来的消息里还体贴地加上了"没事吧?"的问号,但凛从一开始就只有一个答案。怎么可能没事。完全一点都不好。
せっかくの潔との二人きりの出かける約束なのに、冴が参戦するだと?中学生の授業参観じゃあるまい。凛のデート(仮)は見せもんじゃないのに。
好不容易和洁约好两人单独出门,结果冴也要来?这又不是中学生的家长公开课。凛的约会(暂定)才不是给人看的表演。
冴も冴だ。普通断れよ。察しろ。サッカー馬鹿ならばサッカー馬鹿らしく、他人の恋路にちょっかいなんてかけてないでさっさとスペインに帰って球蹴りでもしとけ。
冴也是够可以的。正常人都该拒绝吧。懂点眼色行不行。既然是足球白痴就好好当你的足球白痴,别来插手别人的恋爱,赶紧滚回西班牙踢你的球去。
だが、冴はかなり前から潔というエゴイストを随分と気に入っている様子であるし、何より彼の辞書に「察する」や「空気を読む」などの言葉は天地がひっくり返っても載ることがない。それゆえに、冴の中に断るなんて選択肢は端からないであろうことがありありとわかった。凛は腐っても冴の弟であるため、それが十分に理解できる。きっと凛だってそう潔から持ちかけられたら表面上ではウジウジ言いつつも断るなんて選択肢は取らないし、ちゃっかりその幸運に身を任せるのだろう。皮肉ながらも流石は同じ血を引く者である。
但冴显然很早以前就对洁这个自我主义者青睐有加,更何况他的字典里就算天翻地覆也找不到"察言观色"这类字眼。因此谁都看得出来,冴的选项里根本不存在"拒绝"这一栏。凛毕竟是冴的亲弟弟,对此再清楚不过——要是洁向自己提出同样请求,表面上或许会扭捏作态,但最终肯定也会半推半就接受这份幸运。讽刺的是,血脉相连者终究如出一辙。
切実に断りたい。潔との二人きりのデート(仮)がいい。
(好想拒绝。和洁单独约会明明更好)
それでも、好きな子とのせっかくの約束を兄ごときを理由に取り消しにはしたくないため、10分ほどたっぷり放心してから、凛はしばらく沈黙で止まっていたメッセージ欄に「わかった」と短く打ち込み、重々しい気持ちで送信ボタンをタップする。
可终究不愿因兄长的缘故取消与心上人难得的约定,呆滞十分钟后,凛终于在停滞许久的对话框里简短输入"知道了",怀着沉重心情按下发送键。
数秒して「おっけー!急だったのにサンキュな!」と潔から送られてきたメッセージと伊勢海老が喜んで?いるスタンプに返事がわりに既読のみをつけ、スマホの画面を暗くする。そこにはやけにしけた顔の自分が映っていて、むしゃくしゃとした気持ちがさらに倍増した。
数秒后已读标记代替回复,静静躺在洁发来的"太好啦!突然约你真是谢啦!"和那只莫名欢脱的龙虾表情上。锁屏时,屏幕映出自己格外阴沉的脸,郁躁情绪顿时又翻了一倍。
凛と潔。それから、冴を交えたお出かけ。 凛和洁。再加上冴,三人一起出门。
改めて言葉にしても、ちょっとよく意味がわからない。
即便重新用语言描述,还是有点搞不清其中含义。
あの青臭い青春時代とは違い大人になった今でも、いまだに少々緊迫した関係性が続く兄弟を思っての潔の配慮だったのかもしれないが、さすがに過去最高に不必要すぎる配慮であった。さすがは「自分に向けられた矢印とか全部見えてないんだろな…」「あれほどの天然無自覚鈍感キャラいるのか?」「おるやんそこに」とネットで騒がれている潔である。もはや察するとかいう次元ではない。
或许这是洁考虑到那对兄弟——与青涩青春时代不同,即便长大成人后关系依然有些紧张的兄弟——而做出的体贴之举,但实在是过去最不必要的体贴。不愧是网络上热议的"根本看不见指向自己的箭头吧...""居然存在这种浑然不觉的天然迟钝角色?""这不就在眼前嘛"的洁。这已经超出察言观色的范畴了。
とは言え、潔が善意で提案してきているのであろうことは明白で。全ては凛が冴と未だに仲直りしていない(もはやする気もない)せい…なのか…?
话虽如此,洁显然是出于善意才提出这个建议。一切都是因为凛和冴至今仍未和好(或者说根本没打算和好)的缘故...吗...?
(…クソ兄貴、明日は三回ぐらい大衆の面前でみっともなくこけちまえ。それでネットで拡散されておもちゃにされろ)
(…混蛋老哥,明天最好在公众面前摔个狗吃屎三次。然后被传到网上当笑料吧)
空気の読めない(というか、空気を読むことを求めるのが間違いなのだが)兄にイライラと身勝手ながらもやり場のない怒りをぶつけ内心で呪詛を吐きながら、某SNSに糸師冴の名前を打ち込んで検索をかける。
对着这个不会读空气(或者说,要求他读懂空气本身就是个错误)的哥哥,虽然既烦躁又自私却无处发泄怒火,只能在心里咒骂着,同时在某个社交平台上输入糸师冴的名字进行搜索。
どうせ今日の仕事だって広告系の仕事だろうし、必然的にマネージャーが運営している公式アカウントに情報が上がっているだろうと目論んでのことだった。オフショットのどれかに、少しでも腹いせに嫌味を言えるものがないかと思ってのほんの純粋な出来心。
反正今天的工作肯定又是广告相关,估计经纪人运营的官方账号上会更新信息吧。他盘算着能不能在那些幕后花絮照片里找到点什么,好让自己稍微出口恶气说几句风凉话——纯粹是一时兴起罢了。
間違っても兄に直接予定を尋ねるなんて負けたようなもんなので、頻繁にマネージャーによって動かされている冴の公式アカウントが主な凛の冴についての情報源だった。
要是直接去问哥哥的行程安排就相当于认输了,所以主要由经纪人打理的冴的官方账号,就成了凛获取冴相关信息的主要渠道。
検索ボタンを押せば瞬きする暇もなく、すぐさま画面にはハッシュタグが付けられた冴関連の投稿がずらりと並ぶ。
按下搜索键的瞬间,连眨眼的功夫都不用,屏幕上立刻整齐排列出带有冴相关标签的帖子。
その溢れんばかりの大量な投稿の中でも一番上に表示されていた糸師冴(のマネージャー)のアカウントをタップし、望んだものを見ようする。だが、タイミングが悪いのか今日行われた撮影はファンへのサプライズ的なものだったのか、表示された最新の投稿は三日前のもので止まっていた。
在这泛滥成海的众多帖子中,他点击了置顶显示的糸师冴(经纪人)账号,试图寻找想要的内容。但或许时机不巧,今天进行的拍摄可能是给粉丝的惊喜企划,最新动态停留在三天前。
今日は何から何までツいてない。 今天真是诸事不顺。
思わず癖のようにして染み付いてしまった舌を打つ音が、鋭く部屋に響く。
下意识发出早已成为习惯的咂舌声,尖锐地回荡在房间里。
結局凛は仕方なく公式アカウントから離れ、再び検索結果の画面にと戻ってくる。変わらず膨大な量の糸師冴に関連する投稿。そうして適当に流れてきた投稿がたまたま目に入り、凛はついそれらの投稿を流し見する。本人すら無自覚だが、ちょっぴり凛の中で興味が湧いていたのだった。もはや目的からは逸れているが、エゴサならぬパブサをすることにしたのだ。
最终凛还是无奈地退出了官方账号,重新回到搜索结果页面。屏幕上依然充斥着大量与糸师冴相关的投稿。就在随意浏览时,某条偶然映入眼帘的推送让凛不由自主地滑动屏幕看了起来。连他自己都没意识到,内心深处其实萌生了一丝兴趣。虽然早已偏离最初目的,但他决定把这次搜索当作公开情报收集而非自我检索。
前述したが、凛は腐っても冴の弟なのであった。幼い頃は冴にべったりなお兄ちゃんっ子なだけあって、凛すらも知らない心の奥の奥の方には根本的な兄への好意が潜んでいる。そんなことを凛が聞けば、発言者に中指を立てるだけでは足りず地の果てまで追い回し言葉通りあの世送りにするだろうが、そんな命知らずは士道ぐらいで他には存在しない。だからこそ、凛は冴の投稿を流し見する凛にとっては無駄なはずの時間を無意識のうちに許してしまったのだ。
前文提过,凛毕竟是冴血脉相连的弟弟。幼时整天黏着哥哥的跟屁虫属性,让他灵魂最深处埋藏着对兄长本能的亲近感。若有人当面指出这点,凛恐怕不止会比中指,还会追杀对方到天涯海角送他见阎王——世上除了士道也没人敢这么找死。正因如此,凛才会放任自己浪费时间去浏览那些关于冴的帖子。
なかなかに自分の兄に対する他者の眼鏡を通した発言の数々を見るには面白く、鼻で笑うような内容から、もしかしなくても過去の自分達を知っているのか?と背筋がヒヤリとする内容のものまであり、つい次から次に流れてくる投稿に目を通してしまう。最初はじとりと這わせていた視線のスピードが上がり、スワイプをする手が止まらない。
通过他人滤镜窥视兄长的评价意外地有趣,从令人嗤之以鼻的言论到"该不会认识过去的我们吧?"这种让人脊背发凉的推测,凛不知不觉就沉浸在一篇篇推送里。最初缓慢游移的视线越来越快,滑动屏幕的手指根本停不下来。
そうして、時たま兄を小馬鹿にしたり内心ドキリとしたりを繰り返しているうちに、不意に凛の目に飛び込んできたワードがあった。
就在这样时而嘲笑兄长时而心头一紧的循环中,某个词汇突然刺进凛的视野。
「冴…潔?」
糸師凛、本日二回目の爆死案件である。 糸师凛,今日第二起暴毙案件。
冴潔。その単語は凛の兄である糸師冴と片想い相手である潔世一を指し示す言葉であった。まあ、それだけなら普通によくあるファンからの略称みたいなものと納得することができる。だって凛だって不服ながらも「コミュ障兄弟」や「最良コンビ」などのあだ名みたいなものをつけられているので。ところが、凛が見つけたソレはまた違った種類のものであったらしい。よく知る名前のその羅列には、凛が思いもしなかったあまりにも衝撃的すぎる意味が込めらていた。
冴潔。这个词语指向凛的兄长糸师冴与他单恋的对象洁世一。若仅是如此,倒还能当作普通粉丝常用的简称来接受。毕竟凛自己也被冠以"社恐兄弟""最佳搭档"这类虽不情愿却不得不认的绰号。然而凛发现的这个词汇显然属于另一种类型——那串熟悉名字的组合里,竟蕴含着远超他想象的震撼含义。
「は…?」 「哈…?」
まあ簡単に言えば、糸師冴と潔世一は付き合ってたり、恋愛感情的なものをお互いに抱いているという可能性を示唆する意味…凛にとっては吐き気を通り越して眩暈を催すものだったが、とりあえずそういった類の意味が込められたものらしい。そのワードに続く内容が中々に辻褄の合わないものてま疑問に思った結果某有名検索サイトにその単語を打ち込み、導き出された解答を前に、凛はあんぐりと口を開いた。
简单来说,这个标签暗示着糸师冴和洁世一正在交往,或者彼此怀有恋爱感情的可能性...对凛而言这已经超越了反胃程度直接引发眩晕,但总之似乎就是蕴含着这类意味的词汇。由于后续内容实在难以自圆其说而产生疑问,结果在某知名搜索引擎输入这个词后,面对跳出来的答案,凛惊愕得张大了嘴。
凛には初めてすぎる世界だったが、こういったような思考に至るものは少なくないらしく、もう一度某SNSに戻り、そのままになっていた例の投稿をタップすれば、AIによって選別されたおすすめ欄には言葉にするのも悍ましいその二単語が刻み込まれた数多の投稿で溢れかえる。ちょっと信じられないが、一定数そういった考えの仕方をする層がいるらしい。
对凛而言这完全是未知领域,但似乎产生这种联想的人并不少见。当他再次返回某社交平台,点开那篇被搁置的帖子时,AI 筛选的推荐栏里充斥着无数用那两个令人毛骨悚然的词汇标注的投稿。虽然难以置信,但确实存在相当数量持有这种想法的人群。
同性同士の恋愛だとか、少々込み入った要素が凛に引っ掛かることはないし、否定するつもりもない。奇遇にも、凛は潔に恋をしている当事者であったし、近年の恋愛は自由がモットーだ。
同性恋爱或是稍微复杂的要素并不会让凛感到抵触,他也没有否定之意。巧合的是,凛本人正是单恋着洁的当事人,况且近年来的恋爱观本就崇尚自由。
だがそれはそうとして、問題はそこではなかった。肝心な、その「恋愛」をしているとされる二人。凛は今まで、冴と潔が付き合うだなんて可能性は微塵も考えたことがなかったのだ。流石は究極の監獄一の自己中と名高い(一応褒め言葉だとして受け取っている)凛といえばいいのか、潔が自分以外といい感じになっているなんて思考がそもそも微塵たりともなかった。
但问题根本不在这里。关键在于被认定正在"恋爱"的那两个人——凛至今从未设想过冴和洁交往的可能性。该说是号称终极监狱第一自我中心(姑且当作褒义接受)的凛的本色出演吗,他压根就没考虑过洁会和自己以外的人发展感情这种可能性。
潔ももちろん人であり(たまに疑われはするが)本人は気づいていないが引く手数多なため、いつ恋人を作ってもおかしくないのだが、自分と付き合うか付き合わないかの二択で、凛の中に三個目の自分以外と付き合うという選択肢はすっかり抜け落ちていたのだ。こういうところが糸師凛を弟たらしめているところなのだが、本人が気づくことは一生ないだろう。
洁当然也是普通人(虽然偶尔会被质疑这点),他自己没意识到的是追求者众多,随时交个恋人都不奇怪。但在凛的认知里,只有"和自己交往"或"不和自己交往"两个选项,完全忽略了"洁和其他人交往"这第三种可能性。这种思维死角正是糸师凛作为弟弟的可爱之处,不过他本人这辈子都不会察觉吧。
「…………」
絶句、絶句、そしてまた絶句。 无语凝噎,无语凝噎,再度无语凝噎。
その後も続く、冴と潔を恋人だと仮定しているファンたちの多種多様な投稿を見ていた凛は、切実に死にたくなっていた。何が悲しくて、実の兄と自分の片思い相手が結ばれている(かもしれない)証拠をありありと見せつけられなければならない。
当凛继续浏览那些把冴和洁当成情侣来创作的粉丝们五花八门的投稿时,他真切地感受到了求死的欲望。究竟造了什么孽,非要让他亲眼目睹亲哥哥和暗恋对象(可能)终成眷属的种种证据。
嫌ならば見なければいいという話ではあるのだが、なんだかここまで来て目を逸らすというのは、すごく負けたような謎の敗北感があって嫌だった。もはや意地と得体のしれない義務感で、数多の投稿に目を通していく。
虽说不想看的话不看就好,但事到如今还要移开视线,总有种莫名认输的败北感让人不爽。如今全凭倔强和说不清的责任感,硬是浏览着大量投稿。
流石はファンというのかその内容はなかなかに的を得ていて、単純でほんのちょこっとだけ頭が弱い凛にとってはまるでその行為は自分で自分に洗脳をかけるようで。
不愧是粉丝创作,内容相当一针见血,对于单纯又有点笨拙的凛来说,这种行为简直像在自我洗脑。
最初は何を言ってるんだと中々に厳しい顔を浮かべていたのに、次第に時間が経つにつれ逆にそうとしか思えなくなってきていた。
起初还皱着眉头心想"这都什么啊",但随着时间推移反而逐渐被这种想法同化。
冴と潔はフィールドでもフィールド外でも運命…? 冴和洁在球场内外都是命中注定…?
(確かに、冴と潔はサッカーも含めて色々と思考の仕方が似ている気がする)
(确实,冴和洁在足球等各方面思维方式都很相似呢)
あの2人が結ばれるのは時間の問題…?? 那两个人走到一起只是时间问题…??
(そういえば、この前二人で仲良くランチに行っているところがSNSに投稿されてた)
(说起来,之前他俩一起愉快吃午餐的照片还被发到社交网络上了)
凛くんはブラコンだし、潔くんも大好きだからどっちもに嫉妬して情緒がめちゃくちゃになるんだろうな…???
凛是个兄控,又那么喜欢洁,怕是要嫉妒得情绪崩溃了吧…???
(……は?) (……哈?)
思わず、手にしていたスマホをぎりぎりと握りしめてしまう。ミシミシと不安になる音が手元からしていても、さらに心の傷が深まった凛は気づきもしなかった。
凛不自觉地死死攥紧了手中的手机。即便掌心传来手机不堪重负的咯吱声,内心伤痕累累的他却浑然未觉。
受けた傷はもはや致命傷レベルのものばかりなので。 因为此刻承受的伤痛早已达到致命级别。
こんなことで負った傷で死にたくない。 他绝不愿为这种荒唐事赔上性命。
せめて尊厳死をさせろ。いや、それよりもフィールドの上で潔を潰して気持ちよく死にたい。
至少让我死得体面些。不,比起这个我更想在球场上把洁碾碎然后痛快地死去。
そんな凛の死生観は一旦そばに置いておいて。 暂且先把凛这种生死观搁置一旁。
普通になぜか自分と潔の組み合わせがいくら探しても出てこないことにも、さらに悲しくなった。
更令人沮丧的是,不知为何无论怎么搜索都找不到自己和洁的组合内容。
なんでドイツの青薔薇やイングランドの白いのとの組み合わせはうじゃうじゃ出てくるのに、俺のはないんだ。俺こそが最良で運命だろうが…?
为什么德国青蔷薇和英格兰白玫瑰的组合铺天盖地,却唯独没有我的?我明明才是最佳命运伴侣啊…?
そう問いかけたところで、唐突に凛と潔の組み合わせが溢れんばかりに出てくるわけでもなく、凛は一度パンクしかけな脳を休めようと、今度こそスマホを閉じ、ベッドの側に置いてあるサイドテーブルに軽く放り投げた。ガゴとやや不穏な音がしたが気にしない。なんだかんだ今までもやや暴力に走りがちな持ち主の理不尽な八つ当たりに耐えてきた凛のスマホであるため、今回も無傷を貫くだろう。
即便这样自问,也不会突然涌现出大量凛和洁的组合画面。凛决定让快要当机的大脑休息,这次真的关上了手机,随手扔到床边的侧桌上。手机发出"哐当"一声不太安稳的声响,但他并不在意。毕竟这部手机早已习惯主人稍显暴力的迁怒行为,想必这次也能安然无恙。
時計を見ればもう寝るには十分すぎるぐらいの時刻で、どう転がるにせよ明日を万全な状態で迎えたい凛は結局アウターはグレーのコートに決める。混乱した頭のまま早々にベッドに広げていた衣服をクローゼットへと仕舞い、ベッドへ潜り込んだ。少々らしくもなく雑に仕舞ってしまったが、別に日常のほとんどはスポーツウェアで過ごしているため、特に問題はない。
看了眼时钟早已过了该睡觉的时间。无论明天发生什么,想以最佳状态应对的凛最终选了那件灰色外套当外出服。他将胡乱摊在床上的衣物草草收进衣柜,钻进被窝。虽然收拾得有点不像他风格的潦草,但反正平时大多时间都穿运动服,倒也无所谓。
考えすぎるのは良くないし、何よりどちらかと言えば感情的に動く方が性に合っている凛が熟考したところで見えてくるものなど端からないのだ。もうそれならば、寝るに限る。
过度思考并非好事,更何况对天性更倾向感情用事的凛来说,就算绞尽脑汁也想不出什么名堂。既然如此,睡觉才是上策。
寝ることは偉大なのだ。寝れば大抵のことを忘れられるとも言われているのだし。
睡眠是伟大的。都说睡一觉就能忘记大半烦恼。
睡眠という人体の偉大な仕組みが凛の寝る直前に舞い込んできた二つのショックな事件を吹き飛ばしてくれることを信じながら、凛はゆっくりと目を閉じた。
凛相信睡眠这个人体伟大的机制能驱散入睡前突然降临的两桩冲击性事件,缓缓闭上了眼睛。
そうして、なんとも言えぬ気持ちのまま迎えた翌日。 就这样怀着难以名状的心情迎来了第二天。
まあ結論を言えば。一度睡眠を挟んで頭がすっきりさせることができた…という訳でもなく。よく暗記科目は寝る前に勉強すると定着するなんてことが巷で囁かれているが、まさにそのような状況が凛の脳内で巻き起こっていた。
要说结论的话。倒也不是说睡一觉就能让头脑彻底清醒…坊间总流传着睡前背诵能增强记忆力的说法,而此刻凛的脑海里正上演着这般情形。
昨晩より更に染み付いてしまったような気がする例の認識に混乱しつつも時間は過ぎるものであるため、とりあえず約束通り待ち合わせ場所に指定していた駅前へと向かう。
虽然对昨晚烙印般加深的认知感到更加混乱,但时间终究会流逝,他决定先按约定前往碰头地点——站前广场。
地下鉄から地上へと続く階段を登りきれば、すでに潔と冴は到着していたらしく、少し離れた場所でなにやら仲良く並んで同じ画面を見つめながら言葉を交わしていた。
从地铁通往地面的阶梯尽头,洁和冴似乎早已抵达,两人隔着些许距离亲密地并肩而立,凝视着同一块屏幕交谈。
別に凛がどこかの面倒くさがりのように遅刻をしたわけではないため、二人がたまたま早く着いただけなのだろう。
倒不是凛像某些怕麻烦的人那样迟到,想必只是他俩碰巧到得早些。
いわゆる偶然というやつである。 这就是所谓的偶然吧。
それでも、昨日の夜にまるで宇宙人の襲来のように衝撃的な思考を頭にぶち込まれた凛にとってその光景は偶然など単純なものではなく、もっと裏になにか難しいことが絡み合っている必然に見えてくるような気がして、少しだけ眉を寄せた。ただ同じ画面を覗き込みながら話しているだけだというのに、不思議と許された者にしか許されない絶妙な距離感に見えてきて凛は目を擦る。
然而对于昨夜刚被外星人袭击般冲击性思维砸中的凛而言,这幅景象绝非简单的偶然,更像是某种暗藏玄机的必然——他不由得微微蹙眉。明明只是普通的共看屏幕交谈,却莫名呈现出唯有被许可者才能享有的微妙距离感,凛揉了揉眼睛。
おかしい。 不对劲。
一昨日までの凛なら、その兄と潔の二人の組み合わせになんの疑問を持つこともなくズカズカとその間に割り込んでいくぐらいの気概でいたというのに、どうにも今こうして二人を前にすると足が動かない。
若是前天的凛,面对哥哥和洁这样的组合根本不会产生任何疑问,反而会气势汹汹地直接插进两人之间。但此刻站在他们面前,双腿却像灌了铅般动弹不得。
どうにか早く二人の元へ行こうとしても、潔が何か言ったのか、珍しく冴が口元を緩めて笑っているのが見えて、ピタリと動かそうとした足が止まる。そんな珍しい冴の笑顔に驚きつつも潔は笑って、その朗らかな笑顔を見てしまえば、止めた凛の足を何かがキリリと引っ張る。凛が見たことのない、初めて見る種類の潔の笑顔だった。
即便努力想快点走到两人身边,却看见洁不知说了什么,向来冷淡的冴竟罕见地放松嘴角笑了起来。刚想迈出的脚步顿时僵在原地。洁对冴罕见的笑容先是惊讶,随即也跟着笑起来——当看到那个灿烂笑容的瞬间,某种无形的力量猛地拽住了凛刚停住的脚步。那是凛从未见过的、崭新类型的洁的笑容。
数メートル先に、なんともサッカーファンたちからすれば手を叩いて喜ぶであろう微笑ましい光景が出来上がっている。だがそんな光景に反して、凛のテンションはしゅるしゅると下がっていく。
几米开外,正上演着足以让足球迷们拍手称快的温馨画面。但与此形成鲜明对比的是,凛的情绪正哧溜哧溜地往下坠。
(寂しさ…?拗ね?嫉妬?それとも…まさか…遠慮?)
(寂寞…?闹别扭?嫉妒?还是说…该不会…在顾虑?)
ぐるぐるとそんなことを考えている凛を置いて、冴と潔はまた仲良さそうに画面を覗き込んでいる。
把陷入这种思绪翻涌的凛晾在一边,冴和洁又亲昵地凑在一起盯着屏幕。
(遠慮…この俺が?何に?) (顾虑…我这种人?对什么?)
…これもあのファンたちが見れば、相性がいいことへの確証へと繋がってしまうのか。思考がどんどん沈んでいき、なんだか自分だけ仲間はずれないような気がして、凛はほんのりと暗い気持ちになる。そんな自分がいることにも気付いて、凛は少しだけ驚いた。
…要是被那些粉丝看见这种场景,又会成为他们相配的佐证吧。思绪不断下沉,莫名有种只有自己被排除在外的感觉,凛的心情微微黯淡下来。而察觉到这样的自己存在,凛也感到些许惊讶。
他人の意見に左右されるなんてことは凛の暴君人生において限りなく少ないが、やはり恋というものは人を変えるのだろうか。頭の中にぐるぐると回転しているあのワードをどうにか振り切ろうとしながら、そう思う。
在凛的暴君人生中,很少会被他人意见左右,但恋爱或许真能改变一个人吧。他一边试图甩开脑海中不断盘旋的那个词,一边这样想着。
だが、凛は潔と恋人になりたいのだ。こんなところで立ち止まっている場合ではない。それに、あまりにも最凶すぎる相手が恋敵(?)になるのなら、更に。
但凛确实想和洁成为恋人。现在可不是驻足不前的时候。更何况,如果连那个最凶恶的家伙都成了情敌(?),那就更该行动了。
そうして、二人の元へ歩き出そうとしたところだった。
正当他准备迈步走向两人时。
「あの…凛選手…ですよね?」 "那个...您是凛选手...对吧?"
「あ?」 “啊?”
フランスの地ではあまり聞くことのない、馴染み深い日本語が凛を呼び止めた。女性らしい高いソプラノで紡がれる懐かしい響き。きっと、観光客か留学生かのどちらかだろう。遠慮がちにそう問いかけてきた声の方を向けば、凛の顔を見て確信したのか、二人の若い女性が揃って黄色い声を上げる。
在法国这片土地上,一句耳熟能详的日语让凛停下了脚步。女性特有的高亢女高音编织出令人怀念的声线。想必是游客或留学生吧。当他转向那个怯生生发问的声音来源时,两位年轻女性看清他的脸后同时发出兴奋的尖叫。
「やっぱり言った通りじゃん!!フランスだし、凛選手以外あり得ないって!」
“果然和我说的一样!!在法国除了凛选手还能有谁啊!”
「エグい…会えるとか思ってなかった…」 “太离谱了…没想到真能遇见…”
「えっと…!その、一緒に写真撮ってもらうことってできますか…?」
"那个...!请问可以和你一起拍张照吗...?"
そう興奮した様子で女性たちはキラキラとした顔でスマホを差し出すが、まあその相手はファンへの対応がカスだと言われている凛なのである。
虽然这些女孩们满脸兴奋地举着手机,但她们面对的可是一向以对粉丝态度恶劣著称的凛。
むしゃくしゃとした気持ちを振り切ってようやく行動に移そうとしていたところ出鼻をくじかれ、超がつくほどに不機嫌になった凛にとって、彼女らは唐突に目の前に現れたサンドバッグも同然。
好不容易甩开烦躁情绪准备行动,却在起步阶段就遭遇阻碍,此刻正处于超级不爽状态的凛眼里,这群突然出现在面前的女孩简直就像送上门的沙包。
「死ねよカス、俺は今(想い人と兄が結ばれそうでパンクしてる頭をどうにかするのに)忙しいんだよ」そう素直に口にしようとした瞬間だった。
"去死吧垃圾,我现在(正忙着处理暗恋对象可能要和老哥在一起的爆炸性消息)没空理你们"——就在他准备脱口而出的瞬间。
「あーーー!!!ごめんなさい!プライベートでの写真撮影は禁止されてるんですよ!」
"啊——!!!对不起!私人场合是禁止拍照的!"
いきなりそう叫ばれたかと思えば、ドタドタと足音を立てながら潔がこちらに突進してくる。
还没反应过来,就听见咚咚的脚步声,洁已经朝这边冲了过来。
「は、」 "哈、"
「え、潔選手?!」 "诶,洁选手?!"
「すみません、クラブでの決まりで…。また撮影会とかでぜひお願いします!」
"不好意思,这是俱乐部的规定...下次摄影会请务必再来参加!"
気づけば、潔は凛と女性の間に入り込むようにして立ち、頬をかきながらそう謝罪を口にしている。
回过神来时,洁已经插进凛和女性之间站着,一边挠着脸颊一边这样道歉道。
ふわりと運ばれてきた風からした爽やかな久しぶりに嗅ぐ潔の匂いが、凛の鼻をくすぐる。以前香水は体質上苦手だからつけないと言っていたから、きっと潔の使うシャンプーの香りなんだろう。
随风飘来的清爽气息——那是凛久违闻到的洁的体香,轻轻搔弄着他的鼻腔。记得洁说过因为体质原因从不用香水,这肯定是他洗发水的香味吧。
「あ、そうなんですね…お楽しみのところお邪魔しました…!これからも応援してます!」
"啊、这样啊...打扰您享受时光了...!今后也会继续支持您的!"
「はい!ありがとうございます!」 “好的!非常感谢!”
唐突に頭にぶち込まれる久しぶりな好きな子の情報にショートする凛を置いて、潔は女性と話しており何やらあっさり終わったようだった。
突然接收到久违的暗恋对象的信息,凛的大脑当场宕机。而洁那边似乎已经三言两语结束了与女性的交谈。
潔の言葉をするりと飲み込み、女性二人はそそくさと去っていく。その後ろ姿をにこやかに見送る潔の横顔を凛はポカーンと見つめる。
两位女性爽快地咽下洁的说辞匆匆离去。凛呆望着洁微笑目送她们离开的侧脸。
お前、あっちで楽しそうに話してたじゃねぇか。そう口にしようとした言葉は、音になる前にゆっくりとこちらに向かってきたらしい冴によってかき消されてしまった。
你这家伙,刚才不是聊得很开心吗?这句几乎要脱口而出的话,却被缓缓朝这边走来的冴无声地碾碎在空气里。
「おい愚弟。それぐらい自分で対処しろ」 "喂蠢弟弟。这点小事自己处理"
「は?」 "哈?"
「ちょ、冴!これはその、咄嗟に俺がしちゃったことだからさ…」
"等、冴哥!这个是因为我突然就那样做了所以..."
「まあそうだろな。でも凛。いつでも潔が一緒にいるわけじゃねぇんだから、上手いこと対処法覚えとけよ。お前のことだから、また適当に暴言吐いて終わらせようとしただろ」
"确实是这样吧。不过凛。洁可不会永远陪着你,给我好好记住应对方法。以你的性格,肯定又想随便说些难听话就糊弄过去吧"
「チッ」 “啧”
「俺はトップニュースがお前のファンへのゴミ対応への苦情で飾られるとこなんざ見たくねぇぞ」
“我可不想看到头条新闻全是你那些对粉丝敷衍了事的投诉”
「……」 “……”
兄からのありがたいお小言を頂き、おろしたてのスニーカー水溜りに突っ込んでしまったような気分になる。せっかく潔が何やら助けに(頼んではないが)来てくれ、自分のことを気にかけてくれたのだと喜んでいたのに。
收到兄长这番“宝贵”的训斥,心情就像刚穿上的新球鞋一脚踩进水坑。明明难得洁主动(虽然没被拜托)来帮忙,正为他在意自己而暗自高兴。
凛の気分を急速に下げた言葉のその実は非常にわかりにくすぎる純度100パーの冴の凛という弟を思う気持ちの表れであったのだが、凛は知る由もないだろう。なんせ、この兄弟は絶望的に言葉が足りていないので。
凛的心情瞬间跌至谷底的这句话,其实是糸师冴对弟弟那份难以言表的纯粹感情的体现——纯度百分百的关心。但凛恐怕永远都不会明白吧。毕竟这对兄弟的沟通能力简直绝望到令人发指。
「ま、まぁ、冴も心配してだったんだろ?今回俺が勝手に言っちゃっただけだし…てか、もうこんな時間じゃん!!」
"嘛、嘛...冴哥也是担心你才这么说的吧?这次是我擅自多嘴了...话说都这个点了啊!!"
潔が不意にスマホの画面を見て、そう叫ぶ。 洁突然瞥见手机屏幕,失声惊呼。
確かにそうだった。凛が潔に誘ったのは最近フランスでかなり有名な日本の和を基調としたスイーツを提供するカフェで、そこそこ人気が増えてきたこともあって予約制になっていたのだった。
确实如此。凛邀请洁去的这家咖啡馆最近在法国相当火爆,主打日式和风甜点。由于人气骤增,店家早已改为预约制。
もちろん、凛は潔に連絡し約束を取り付ける前から予約を取っている(最悪断られたら渋々一人で行くので)が、確か入店は予約した時間の10分前後までだったはずだ。凛も左手に巻きつけていた時計を確認するが、おそらく入店予定時間の5分前。今行って、ちょうど席に通されるぐらいだろう。予約はテーブル制なため、冴が一人増えたところで問題はない。
凛早在联系洁敲定约会前就订好了位置(最坏情况被拒绝就自己一个人去),记得预约时段允许前后十分钟到店。凛低头看了眼缠绕在左腕的手表,距离预约时间还有五分钟。现在过去应该刚好能入座。因为是桌位预约制,就算临时多带个冴也完全没问题。
顔を上げれば、能面な冴と楽しみにしているのを隠さずにしている潔。昨日の夜散々吐こうと思っていた呪詛は頭から吹き飛んでいった。なんだかんだこの二人が大好きな凛なのだ。
抬头看见面无表情的冴和藏不住期待的洁,昨夜辗转反侧想骂的脏话瞬间烟消云散。说到底这家伙就是无可救药地喜欢着这两个人。
冴が謎に合流したのはちょっとよく分からないし不服だが、もう今日は楽しむことに割り切ろうと思い直す。せっかくの話題のスイーツもようやく食べることができるのだし。
虽然搞不懂冴为什么莫名其妙加入约会,但凛决定今天要好好享受。毕竟终于能吃到心心念念的网红甜品了。
「カフェ確か予約制だったよな…?」 "这家咖啡厅是预约制的吧...?"
「あぁ」 "啊"
「行こうぜ、凛!」 "走吧,凛!"
そう思い直した矢先だった。 就在他刚这么想的时候。
凛の言葉ににっと笑ってみせた潔はあろうことか、冴の手を握ったのだ。
洁对着凛的话语咧嘴一笑,竟然握住了冴的手。
「!?!?」
凛の頭の中でビックバンが起こる。まさにそれは先ほど吹き飛ばしたはずの最凶概念(?)の再来だった。
凛的脑海中爆发了宇宙大爆炸。这简直就是刚才明明已经击溃的最凶概念(?)的卷土重来。
わなわなと震える手で凛は指差す。 凛用颤抖的手指指向对方。
「いさぎ…それ…」 「洁...那个...」
もちろん、指差す先は相変わらず無表情な冴とそんな冴の手をナチュラルに握る潔の二人。奇しくも、昨日の夜凛が流し見していた投稿に紛れていたイラストと全く同じような構図だった。確か水族館デートだかなんだかそういうシチュエーションだったはず。凛だって、潔と水族館に行ったことなんて今までなかったのに。
果然,他手指的方向依然是面无表情的冴和自然而然握着冴手掌的洁。奇妙的是,这构图与昨晚凛随手刷到的投稿插画如出一辙。记得应该是水族馆约会之类的场景。明明凛至今都没和洁去过水族馆。
なんだ?ここに来て凛に今まで味方していた運の女神は愛想を尽かしてしまったのか?
搞什么?难道连一直站在凛这边的幸运女神都开始厌烦了吗?
そう思う他なかった。ちょっとこれは不意打ちすぎた。
除此之外别无他想。这波偷袭实在来得太突然。
確実にゲームのキャラだとしたら、今の瞬間で一つ残機が消えている。
如果这是游戏角色的话,此刻绝对已经消耗了一条命。
「ん…?って、わー!!ごめん冴!てっきり凛の手かと!」
"嗯...?啊!!抱歉冴!我还以为是凛的手呢!"
「別に構わねぇよ。それよか、あいつに訂正しなくてもいいのか」
"无所谓。比起这个,你不去跟那家伙解释清楚没关系吗"
「訂正なんかしたら俺が凛と手繋ごうとしてたのバレちゃうじゃん!ほんと最悪…」
"要是解释的话不就暴露我想和凛牵手的事了吗!真是糟透了..."
「最悪なのは俺を巻き込むお前らなんだが…」 "最糟的是把我也卷进来的你们俩好吧..."
凛はショックと言葉にできないほどの絶望や嫉妬が相混ぜになった感情に翻弄されていたため、もちろんそんな二人の会話は聞いていなかった。
凛被震惊、无法言喻的绝望与嫉妒交织的复杂情绪所困扰,自然没有听见那两人的对话。
◯
(潔が……兄ちゃんと手を繋ごうとしてた…) (洁居然...想和哥哥牵手...)
そう凛が意気消沈しているうちに気づけば3人は目的のカフェの扉を開いており、テーブル席へと案内されていた。
就在凛意志消沉之际,三人不知不觉已推开目标咖啡馆的门,被引导至餐桌就座。
これで正方形のテーブル席に案内されていれば座席問題で壮絶な争い(※主にどちらが潔の隣に座るか)が繰り広げられたのかもしれなかったが、奇遇にも円形のテーブルであったため、無駄な争いはせずに済んだ。
若被安排到方形餐桌,或许会爆发一场关于座位归属(主要是谁挨着洁坐)的惨烈争夺战。但巧合的是圆形餐桌的布局,让他们免去了这场无谓的纷争。
それぞれ適当な席に座り、店員に頼みたいものを注文する。冴はお汁粉セット、潔は抹茶タルト、せっかく来たからには楽しもうと心を入れ替えた(ダメージはそのままな)凛は和栗モンブランを頼み、ひと段落着く。
众人随意落座,向店员点单。冴选了红豆汤套餐,洁点了抹茶挞,而勉强打起精神(内心创伤依旧)的凛则要了和栗蒙布朗。点餐环节暂告段落。
そこからは思っていたよりも平穏な時間が流れ、各々好きなように店内を眺めたりこの前の試合について話しているうちにそれぞれが頼んだ食べ物とセットで付いてきたドリンクが運ばれてきた。
随后时光流逝得比预想中更为平和。有人漫不经心打量着店内陈设,有人聊着先前的比赛。不多时,各自所点的餐食与配套饮品便陆续呈上。
凛と潔はケーキ系のものであったためカフェオレが運ばれてきたが冴のものは奇遇にも塩昆布茶であり、ことりと冴の前にだけ二人と違った器が置かれた時点で凛は冴がそれ目的に頼んだことを悟る。
由于凛和洁点的是蛋糕类甜点,配的是咖啡欧蕾。而冴那份恰巧是盐昆布茶——当与众不同的茶器唯独摆在冴和那位女孩面前时,凛瞬间明白兄长是冲着这个才点的单。
「注文されたお品は以上でしょうか?」 「您点的餐品已全部上齐了吗?」
「はい」 “好的”
「それでは、次のご予約の関係でこのお席は一時間限りになりますが、どうぞお楽しみください」
“由于下一位顾客预约的关系,这个座位限时一小时,请您尽情享用”
そう日本らしく会釈して去っていった店員から冴に目を滑らせれば、やっぱり凛の予想通り心なしか浮かれたような顔をしている。凛の目の前には久しぶりに目にするテーブル上や店内に散りばめられた日本要素に喜んでいる潔もいて、ほんのちょっぴりだけ凛の中で荒ぶれていた気持ちは落ち着いたのだった。
看着店员以典型的日式鞠躬礼离去后,冴的目光不经意间扫过凛,果然如凛所料,他脸上隐约浮现出兴奋的神情。久违地在桌面上和店内各处看到日本元素的洁也显得格外开心,这让凛心中那丝躁动的情绪稍稍平复了下来。
絶妙に和洋折衷で、やや和が勝っているような店内の家具や雰囲気。客層はやはり若い人が中心で和を売りにしているだけに現地の人間が多いかと思えば意外にも日本人らしきアジア系の客が多い。もしかすると、この店を見つけたときに凛が感じた郷愁をこいつらも感じたのかもな…と思いながら凛は潔の蜂楽が最近世界一周旅行を計画立てているらしいという話を聞き流す。
店内家具与氛围完美融合了和洋风格,且和风略占上风。本以为主打和风特色的顾客群体会以当地年轻人为主,却意外发现日裔亚裔客人占多数。凛一边想着“或许这些人和我当初发现这家店时一样怀有乡愁吧…”,一边心不在焉地听着洁谈论蜂乐最近似乎在筹划环球旅行的事。
「旅行も悪くねぇな」 "旅行倒也不赖嘛"
「だよなー!別にフットワークが軽いってわけでもないけど、蜂楽の話聞いてるだけでもなんか行きたくなってきてる」
"就是啊!虽然我算不上行动派,但光是听蜂乐讲这些就莫名想去了"
思いの外ポンポンとテンポよく繰り返されるそんな会話を聞きながら、凛は目の前にある和栗モンブランにフォークをブッ刺し、思考する。
听着两人意外流畅的对话节奏,凛将叉子狠狠插进眼前的日式栗子蒙布朗,陷入沉思。
もちろん、例の冴と潔の関係についてだ。 当然,思考的正是冴与洁那段众所周知的特殊关系。
兄がいるとはいえ、せっかく想い人が目の前にいるのだからそれに集中た方がいいとはわかっていても、意識せずにはいられなかった。
虽说有兄长在场,但难得心上人就在眼前,明明知道应该集中精力在他身上,却还是忍不住在意。
一口大にしたモンブランを口に含んで、もぐもぐと咀嚼しながらじとりとした目線を送る。
将切成一口大小的蒙布朗含进嘴里,一边咀嚼一边投去湿漉漉的目光。
やはり、この二人は少なからず想い合っているのだろうか。
果然这两人多少是互相有意的吧。
(思い出したくもないけど、さっき手繋ごうとしてたし…やっぱ相性いいのか?)
(虽然不愿回想,但刚才他们还试图牵手...果然很合拍吗?)
一口、また一口とモンブランを口に入れていけば、凛の舌の上で渋いながらも上品な甘みが転がる。日本にいた時も何度かモンブランは食べていただけあって、なんだか懐かしい感じがした。
一口接一口地将蒙布朗送入口中,苦涩中透着优雅的甜味在凛的舌尖流转。在日本时也曾多次品尝过蒙布朗,莫名涌起一股怀念之情。
確か、ブルーロックに行く前に送られてきた冴の試合を見るか迷っていた時もモンブランを食べていたっけ。よく考えれば、まだその時は潔と出会ってこうも人生が変わるとは思っていなかったのか。未来ってやっぱりよくわからない。
记得在去蓝色监狱前,犹豫要不要看冴的比赛转播时,吃的也是蒙布朗。仔细想想,那时候还没遇见洁,更没想到人生会有如此巨变。未来这东西果然难以预料。
皿に落としていた視線を上げれば、比較的朗らかに話している冴と潔がいる。別に、二人が仲良くしているのはいいのだ。ちょっとだけモヤつくけど、まだ許容範囲。
抬起落在餐盘上的视线,看见冴和洁正聊得相当热络。其实他俩关系好倒没什么。虽然心里有点发堵,但还在容忍范围内。
「凛美味しい?」 "凛,好吃吗?"
「あぁ」 "啊"
「よかったな」 "太好了呢"
こうやって、二人で話していたかと思えば時たま凛に話しかけてくる時だってあるし。
本以为两人就这样交谈着,但偶尔凛也会主动搭话。
非常に難しい性格の持ち主である凛でも弟属性も兼ね揃えているため、構われるのは嫌いじゃない。鬱陶しいぐらいしつこく付き纏われるのは嫌いだし即凛の中のブラックリストにぶち込むが、そんな凛の素性をある程度把握している冴と潔は意外にもちょうどいい距離感を保ってくれる。非常に難しい塩梅ではあるが、この二人は上手くそれを掴んでいるのだ。
虽然凛是个性格极其复杂的人,但兼具弟弟属性,所以并不讨厌被人关心。只是厌恶那种烦人又纠缠不休的接近方式,会立刻把对方列入凛的黑名单。而意外的是,多少了解凛本性的冴和洁却能保持恰到好处的距离感。虽然这种微妙的平衡很难把握,但这两个人却很好地掌握了分寸。
非常に認めたくないが、居心地がいい。 非常不想承认,但感觉很舒服。
認めざるを得ない。口に出すことはないが、そう思っているのば事実だった。でも、それでも。
不得不承认。虽然不会说出口,但心里确实是这么想的。不过,即便如此。
そんな二人が付き合うというのは絶対に嫌だ。凛が潔に恋しているという事実を除いても、なんだかそれでは本気で凛が触れることのできない二人になってしまうような気がする。
这样的两个人交往是绝对不行的。就算抛开凛暗恋洁这个事实不谈,总觉得这样下去凛就真的再也触碰不到他们俩了。
そう色々忙しく考えながらも口を動かしていれば、気づけばモンブラン目がけて落としたはずのフォークがカチリと皿と擦れた。見ればモンブランは跡形もなく消えており、凛は食べ終えたことを悟る。見れば冴と潔の皿にはまだ半分ほど残っていて、凛は少々残っていたカフェオレを飲みきり、フォークを皿に置いた。二人よりも減りが早かったのはあまり喋っていなかったのもあるし、考え事をしながら食べていたのもあるだろう。一口が特別デカいとかではないと思うし。
一边忙着想这些有的没的一边机械地动着嘴,等回过神来时,本该戳向蒙布朗的叉子咔哒一声擦过了盘子。定睛一看蒙布朗已经消失得无影无踪,凛这才意识到自己吃完了。转头看见冴和洁的盘子里还剩着一半左右,凛把剩下的半杯咖啡欧蕾一饮而尽,放下了叉子。吃得比那两人快大概是因为没怎么说话,也可能是因为边想事情边吃的缘故。倒不是说每一口都特别大就是了。
なんだか勿体無いような気もするが、まあ久しぶりにスイーツを楽しめたのだからヨシとしよう。
总觉得有点可惜,不过难得久违地享受了甜点,就这样吧。
それはそうと、あの頃のようにしょっぱいものを求め始めている自分がいることに気づいて、凛は少々肩を落とした。なぜならここはフランスである。気軽に鯛茶漬けを食べることができる店などないからだ。
话虽如此,凛发现自己又开始像从前那样渴望咸味食物,不由得有些沮丧。因为这里是法国。根本找不到能随便吃鲷鱼茶泡饭的店。
(あーくそ、これなら日本食の店も探しとけばよかった)
(啊可恶,早知道就该找家日料店的)
そんなことを考えながら、目の前の潔の皿を見つめる。あと一欠片ほどになっているタルト。
一边这么想着,一边盯着眼前洁的餐盘。那块塔派只剩最后一口了。
ピピ、と店の回転効率を上げるために置かれたタイマーが離席10分前を知らせた。凛はもう既に食べ終わっているし、二人ももうすぐ食べ終わりそうな雰囲気だ。ちょうどいいぐらいだろう。
店里为了提高翻台率设置的计时器"哔哔"响起,提示离席还有十分钟。凛早已吃完,看氛围另外两人也快用餐完毕。时机刚刚好。
そうして最後のその一欠片にフォークを伸ばしていた潔は、凛の視線に何を思ったのか思いついたと言わんのばかりの表情で口を開いた。
正将叉子伸向最后一块蛋糕的洁,突然像是注意到凛的视线般露出灵光一闪的表情。
「あ、凛もこれ食べたかった?最後の一口になるけどいる?」
"啊,凛也想吃这个吗?虽然是最后一口了,要尝尝吗?"
そう言いながら潔はフォークに乗せた一欠片のタルトを差し出してくる。和栗モンブランをすでに食べ終え、暇そうに潔のタルトを見つめていた(脳内は忙しくしていたが)凛のことを思ってなのだろう。
说着便将叉子上那块蛋糕递了过来。想必是注意到凛早已吃完和栗蒙布朗,正百无聊赖地盯着自己盘中蛋糕的模样(虽然大脑正忙得不可开交)吧。
差し出す銀色にピカピカと輝くフォークには、タルトの一番美味しい部分と言っても過言ではないサクサクのクッキー生地の部分に、わずかに抹茶生チョコが乗っていて、その量でも十分潔が食べたタルトの味を共有することはできるであろうことが窺えた。
递出的银色叉子闪闪发光,上面盛着堪称塔派最美味部分的酥脆饼干底,还点缀着一抹抹茶生巧克力。仅凭这分量,就足以让人想象到与洁共享这款塔派滋味的可能性。
「どう?」 "怎么样?"
潔は淡く微笑みながら、そう首を傾げる。そのたった一仕草が凛にとっては眩しいほどあざとかわいくて、思わず「ワザとやってんのか?」と問い詰めたくなる。
洁微微笑着偏头问道。就这简单一个动作,在凛眼中却耀眼得近乎狡猾的可爱,让他忍不住想质问"你是故意的吧?"。
だが、潔はこの全てが天然物なのだ。その微笑の裏に難しい恋の駆け引きのようなややこしい計算などは潜んでいない、純粋な愛すべき無自覚野郎なのであった。
但洁的一切都是浑然天成的。那抹微笑背后并不存在复杂的恋爱博弈或精于算计,他就是个纯粹可爱而不自知的天然呆罢了。
追加で食べたいものがあるとはいえ、別に人のタルトを食べたいと思うほどは食い意地が張っている訳ではなかったが、貴重な潔からの提案だ。幸い凛の胃はまだまだ空き容量があるし、潔が食べているものを共有するというのはなんとも素敵なことに思える。
虽说还有想吃的东西,但倒也没馋到非要抢别人蛋挞的地步。不过既然是洁难得提出的建议——所幸凛的胃袋还有余裕,而且能和洁共享食物这件事本身就很美妙。
本当は、喜んで食らいつきたい。 其实内心早就欢天喜地扑上去了。
やっぱり態度に出せはしないけれど、それでも好きな子「いさぎ」からの甘やかしは思う存分受容したい。
虽然终究没法表现在态度上,但来自心上人「洁」的宠溺还是想全盘接受。
潔は凛の目前に皿ではなくわざわざフォークを持ち上げているため、いわゆるあーんなるものをしなくてはいけないのだろう。きっと潔にとっては意図的ではないにしろ、この状況において、凛がそのフォークからタルトを食べる方法はそれ以外になかった。
由于洁没把盘子而是特意将叉子举到凛面前,看来必须进行所谓的"啊——"式喂食了。就算对洁而言并非有意为之,但此情此景下,凛要吃上那块蛋挞确实别无他法。
だが、肝心なのはその『好きな子からのあーん』だけではない。
但关键不仅在于那句"来自喜欢的人的'啊——'"。
潔が差し出しているフォークはもちろん、先程まで潔が使っていたフォークであり、それが凛の口に含まれるというのはつまり。『好きな子との間接キス』というあまりにも恋愛初心者な凛にとっては色々とハードルが高いプラス要素。
洁递来的叉子当然是他刚才用过的,而它即将进入凛的嘴里。这意味着"与喜欢的人间接接吻"——对恋爱新手凛而言实在是个难度过高的附加选项。
食べたい、けれど間接キスをしてしまう。 想吃,却又会变成间接接吻。
潔本人は気づいているのか知らないが、凛は気づいてしまっている。
不知洁本人是否察觉,但凛已经意识到了这点。
それに、実の兄である冴も多分見ている。 而且,他的亲哥哥冴很可能也在看着。
表情は冷静でありつつも、凛の脳内は非常にヒートアップしていた。コンピューターならば触れた瞬間やけどするかと思うほど熱くなっていたのかもしれないが、ありがたいことに凛は生身の人間であったので、うまいことその照れからの異変は周囲に悟られずに済んでいる。
虽然表情冷静,但凛的内心已经沸腾到极点。如果是电脑的话,恐怕触碰的瞬间就会烫伤,但幸运的是凛是血肉之躯,所以巧妙地没让周围人察觉到他因羞赧而产生的异常。
心臓はうざったらしいぐらいドキドキなっているし、じわりと体温が上がっているけれども。
心脏正烦人地怦怦直跳,体温也在逐渐升高。
(行くか…行くしかねえ) (去吧...只能去了)
そう決心して、少しだけ口を開こうとする。 下定决心后,微微张开了嘴。
本当のことを言えば凛は気づいていないだけで、懐かしのブルーロックで一度凛と潔は間接キスを経験済みなので、そこまで畏まる必要もなかったのだが。
其实凛根本没注意到,早在蓝色监狱时期他俩就间接接过吻了,根本没必要这么紧张。
あとは潔のフォークに顔を寄せるだけ…。 现在只要把脸凑近洁的叉子就……
そんな時、まるでカニパンを盗むトンビのように凛と潔の間をすり抜けた者が居た。
就在这瞬间,有个家伙像偷面包的海鸥般从凛和洁之间窜了过去。
「もう出ねぇといけねぇからもらうぞ」 "再不出手可就要被抢走了啊"
そう。 没错。
凛が警戒を緩めていた(恋)敵、冴だった。 让凛放松警惕的(情)敌,正是冴。
「あ!!冴!」 "啊!!冴哥!"
「は…………?」 "啊…………?"
テンパる潔の前で、凛はモゴモゴと口を動かす冴を見つめながら放心する他なかった。
面对慌乱失措的洁,凛只能呆愣地望着支支吾吾的冴。
あまりにも唐突すぎる出来事でうまく脳が理解できていないが、確かにピキリと凛の自尊心にヒビが入った音がする。
这过于突然的变故让大脑一时无法处理,但确实能听见"咔嚓"一声——那是凛的自尊心出现裂痕的声音。
「そういや、これお前が使ったやつの使い回しか…」 "说起来,这该不会是你用过的二手货吧..."
ごくりと飲み込んだあと、後押しするかのように冴がそう口にする。
冴说完这句话后,像是推了他一把似地咽了咽口水。
潔は項垂れたように顔を赤くしながら渋々といったように頷いた。
洁红着脸低下头,不情不愿地点了点头。
間接キスが、公知のものになる。 间接接吻这件事,即将公之于众。
(知ってる…これ、兄ちゃんが他のやつに優しくする潔に嫉妬して横取りするやつだ…)
(我知道的...这是哥哥因为嫉妒洁对别人温柔,所以横刀夺爱的桥段...)
頭の中に『冴くんは鈍感な潔くんが誰かに無意識にあーんとかしてたら、相手が誰彼かまわず普通に自分から我先にあーんされに行くと思うんだよね…まぁ妄想なんだけど』という、昨日見た投稿が過ぎる。
脑海中闪过昨天看到的帖子内容:"我觉得要是迟钝的小洁无意识地对别人做出'啊——'的喂食动作,冴君肯定会不分对象地第一个冲上去抢着被喂呢...虽然是妄想啦"
誰かの妄想が、現実になってしまった。 某个人的妄想,竟成了现实。
妄想が現実…?冴潔は、現実だった…?? 妄想成真...?冴洁 CP,居然是真的...??
今度こそ、本気でもうダメだった。 这次真的完蛋了,彻底没救了。
凛のHPはみるみる削られ、もうゼロになって回復できない。
凛的血量飞速下降,转眼间就归零无法恢复了。
「潔、お前なかなかに計算高けぇじゃねぇか」 "洁,你小子还挺会算计啊"
「だ、断じて弟さんとの、か、間接キスを狙ってた訳では…」
"我、我绝对没有想要和你弟弟间、间接接吻的意思..."
「その…悪かったな、邪魔して。せっかくの機会だったろ」
"那个...抱歉打扰了。难得的好机会吧"
「うぅ…冴……」 「呜…冴……」
人が自分の許容できる以上の限界を迎えるとどうなるか。
当人承受的负荷超出极限时会发生什么。
答えは無である。 答案是一片虚无。
だから冴と潔はその後そんな会話をしていたのだが、凛の脳はそれを言葉だと認識できずにただ右から左へと聞き流していた。
所以冴和洁之后虽然进行了那样的对话,但凛的大脑已无法将其识别为语言,只是左耳进右耳出地听着。
空っぽになった凛の頭に、失恋だなんて金輪際一切縁のないとたかを括っていた二文字がどしんと押しかかったのだった。
凛那空空如也的脑海中,突然重重压下了"失恋"这两个字——他原本笃定自己这辈子绝对与这种字眼无缘。
その後は、まるで魂が抜けたも同然に言葉通り生気を失ってフラフラと歩く凛を二人が心配して、予定していたよりも早めの解散となった。カフェを出た後、いつもなら近くの見晴らしのいい観光地やウィンドウショッピングに繰り出していたのだが、もはや凛にそこまでの余裕はなかった。
之后的情形简直像被抽走了魂魄,凛真的如同字面意思般失去生气,步履蹒跚的模样让两人忧心忡忡,聚会比预定时间提早解散。离开咖啡馆后,按惯例本该去附近视野开阔的景点观光或逛街,但此刻的凛早已没有这般余裕。
『凛、あんま体調良くなかった?ごめんな、しんどい時に連れ出して』
凛,你身体不太舒服吧?对不起啊,在你难受时还硬拉你出来
『無理して悪化なんかが一番最悪だ。早く帰って寝とけ』
勉强硬撑导致恶化就糟透了。快回去休息
そう心配そうに凛の背中を擦る潔と分かりにくくも凛の身を案じた言葉を掛けてくる冴の優しさが、その時の凛にとっては痛かった。口が裂けても「あなたたちのそれっぽいムーブに嫉妬して失恋を確信しちゃって落ち込んでいるだけです」なんて言えるわけがない。
洁担忧地擦拭着凛的后背,而冴用难以察觉却饱含关切的话语问候着——这份温柔对当时的凛来说反而刺痛。就算撕烂他的嘴也绝不可能说出"我只是在嫉妒你们暧昧的互动,确信自己失恋了才这么消沉"这种话。
「一人で帰れる?俺の泊まってるホテル近いし休んでく?」という、一昨日までなら飛びついていたはずの潔の誘いもほぼ真っ白な頭で断り、早々に凛の城へと帰ってきた。
面对洁"能自己回去吗?我住的酒店很近要不要休息下"的邀请——这本该是前天之前会让他雀跃扑上去的提议——凛用几乎空白的大脑回绝了,早早逃回了自己的城堡。
「はぁ……」 "哈啊……"
バタンと後手でドアを閉め、ドアを背にずるずると滑り落ち、冷たい玄関のタイルの上に情けなくも体育座りの状態で座り込んで俯く。じんわりとコート越しに伝わってくるタイルの冷たさが、凛を嘲笑っているようでさらに凛を惨めな気分にさせた。
反手砰地关上门,背靠着门板缓缓滑坐在地,在冰冷的玄关瓷砖上蜷缩成体育坐姿颓然垂首。透过外套渐渐渗入的瓷砖寒意仿佛在嘲笑着凛,让他愈发感到凄惨。
こんな世界はクソだ。 这世界真他妈操蛋。
ここまで凛に都合の悪い世界なんて、裏で誰かが仕組んでいるんじゃないだろうか。
一个对凛如此不利的世界,该不会是有人在背后搞鬼吧?
唇をギュッと噛み締める凛の脳内には、今日一日で十分と見せつけられた冴と潔の好き同士(?)ムーブの数々が脳内に高速でくるくると回っていた。
凛紧咬着嘴唇,脑海中不断闪回今天目睹的种种场景——那些足以证明冴和洁两情相悦(?)的亲密互动正以高速在脑内循环播放。
やけに親しそうに近距離でスマホ画面を覗き込んでいた冴と潔。
冴和洁异常亲昵地凑在极近距离共看手机屏幕的画面。
冴の手を握り、その後離してはいたがやけに照れた様子を見せた潔。
握住了冴的手又慌忙松开,露出异常害羞神情的洁。
潔が凛に差し出していたケーキを横取りした冴。 抢走了洁正要递给凛的蛋糕的冴。
更に、昨日から凛の頭に充満している投稿の数々まで浮かんでくる。
再加上,从昨天起就充斥在凛脑海里的种种投稿内容又浮现出来。
冴と潔はフィールドでもフィールド外でも運命で、あの2人が結ばれるのは時間の問題で…凛はそれを端から見て、悔しい思いをするしかない。
冴和洁无论在球场内外都是命中注定,那两人终成眷属只是时间问题…而凛只能在一旁看着,不甘心地咬紧牙关。
…まぁ、そうなのかもしれない。 ...也许确实是这样吧。
例のファンたちが言っていたように、冴と潔が結ばれるのが世界の真理ってやつで、それがあらかじめ用意されている正解なのかもしれない。
就像那些粉丝们说的,冴和洁的结合是世界的真理,这或许就是早已注定的正确答案。
それでも、凛はそれを優しく見守っていられるほど情緒が育ってもいなかったし、利他主義者でもなかった。
即便如此,凛的情感发育还远未成熟到能温柔守望的地步,他也绝非什么利他主义者。
腐ってもブルーロック産のエゴイスト。サッカー界でも名だたる自己中の代表格だ。
烂透了也是蓝色监狱出品的利己主义者。足球界鼎鼎有名的自我中心代言人。
分かっている。 我明白的。
凛は腐っても糸師冴という男の弟で、兄である彼にはおそらく逆らえない。弟として生まれたからの潜在意識とでも言うのか、潔が冴のものになってしまっても、上手いこと寝取るなんてことは計画立ててもきっと中断を余儀なくされるだろうし、冴ならきっと潔を不穏な隙の一つも見えないぐらいに幸せにするのだろう。そして、自分はなんだかんだあの二人の幸せそうな様子を見ればぶち壊そうとしても手が震えてしまうのだ。
凛毕竟是糸师冴的弟弟,作为弟弟的他恐怕无法违抗兄长。或许该说是与生俱来的潜意识作祟吧,就算洁真的成了冴的人,就算周密策划了横刀夺爱的计划,最终也必定会半途而废。而如果是冴的话,想必会让洁幸福得连一丝不安的缝隙都不存在吧。到时候,自己若是看见那两人幸福的模样,就算想破坏也会颤抖着下不了手。
ならば。 既然如此。
それならば、まだ潔が兄でも誰のものにもなっていない今しか、時間はない。もう手遅れなのかもしれないけど、それでも。
那么只有在洁尚未成为兄长或任何人所有的此刻,才是我最后的机会。或许为时已晚,即便如此。
頭に飽和していた思考を振り払うように、コートのポケットからスマホを取り出し、一番上にピン留めされている電話番号をタップする。迷っている暇はない。当たって砕けろ精神だ。砕けたくはないけど。
像是要甩开脑中那些饱和的思绪般,他从外套口袋掏出手机,点击了置顶在最上方的电话号码。没时间犹豫了。就当是破釜沉舟吧——虽然并不想真的摔得粉身碎骨。
お決まりのコール音の後、そこまで間を空けずに通話が繋がったことを確信した途端、凛は潔の第一声も聞かずに、その閉じていた口を開いた。
当熟悉的呼叫音结束后,几乎没等间隔时间,凛在确认通话接通的瞬间,没等洁开口就率先打破了沉默。
「お、凛!体調だいじょ…」 "喂,凛!你身体还..."
「お前は一生俺のサッカーに殺されて、俺の隣でヘラヘラしてろ。異論は認めねぇ」
"你这辈子就给我死在足球场上,永远嬉皮笑脸地待在我身边。有意见也给我憋着"
「は?ちょ、り…」 "哈?等、玲..."
潔はなにやら戸惑ったような声を出しているが、無視だ無視。凛の初恋が無事に成就するかは、全て事(告白)を終わらせるまでの時間に懸かってくる。電話に出てもらうという第一関門は突破したが、ちんたらしているとあっという間にあのファンたちの妄想のようにあっさりと冴やモブどもに掻っ攫われてしまうのだ。凛の恋の寿命は一刻を争う。
洁世一似乎发出了困惑的声音,但无视就好。凛的初恋能否顺利实现,全取决于在事态(告白)结束前的这段时间。虽然接听电话这个第一道关卡已经突破,但要是磨磨蹭蹭的话,转眼间就会像那些粉丝妄想的那样被冴和路人甲乙丙丁轻易抢走。凛的恋情寿命正在分秒必争。
初恋は叶わないなんて諸説はぶち壊す。どうやって統計を取ったのかは知らないが、世の中の初恋は僅か8%だけは叶っているらしい。
说什么初恋不会实现之类的各种说法统统粉碎。虽然不知道是怎么统计的,但据说世上的初恋仅有 8%能够实现。
凛は運の女神に見放されかけているのかもしれないが、豪運の持ち主である。絶対に、8%という勝者側へと着くのだ。
凛或许正被幸运女神暂时遗忘,但他可是拥有强运之人。绝对会,站上那 8%的胜利者阵营。
「いつも身勝手に俺の気持ちを弄びやがって。どんな気持ちでお前のこと誘ってるか知ってるか?俺はお前にメッセージひとつ送るだけでも数時間は送信ボタン押せないんだぞ?なのに兄貴なんか呼んで…舐めやがってクソが。どうせお前のことだから無神経に俺に友人代表のスピーチとか押し付けてきたりもすんだろ?死んでも嫌だ。俺は絶対受けねーからな。即答で断ってやる。お前がクソモブとか…間違っても兄貴と幸せになろうとするなんて、この俺が許さねぇ!そんな式、俺がめちゃくちゃにしてやる。お前は俺と出会った時点で俺と一緒に墓に入ることが決まってんだよ!!だから、」
「你总是自私地玩弄我的感情。知道我怀着怎样的心情约你出来吗?光是给你发条消息我都要犹豫几个小时才敢点发送?结果你居然叫上我哥...少瞧不起人了混蛋。以你的性格肯定还会没神经地把什么友人代表致辞硬塞给我吧?死都不要。我绝对不接。当场就给你拒了。你要是敢和那些路人甲...更别说和我哥幸福美满的话,我绝不答应!那种婚礼,我会亲手给你砸个稀巴烂。从你遇见我那刻起,就注定要和我埋进同一个坟里!!所以——」
「凛!!」
俺と付き合え。 和我交往。
そう続けようとして、潔が凛の名前を呼び、凛は柄にもなく忙しなく動かしていた口を止める。
正当他准备继续时,洁一声「凛」的呼喊让难得语速飞快的凛突然噤声。
走ってもいないのに、呼吸が荒れて心臓はバクバクと鳴っていた。
明明没有奔跑,呼吸却变得急促,心脏也砰砰直跳。
「その…」 "那个..."
しばらく、お互いの息の音だけが響く。 片刻间,只有彼此的呼吸声在回荡。
人生でこれほどはないというほど喋ったからか、喉や口角がじんわりと痛みを訴えてくるような気がする。地味にキツい。
或许是因为说了这辈子最多的话,喉咙和嘴角都隐隐作痛。真是够呛。
それでも、凛の全神経は潔がこれから紡ぐであろう何かに向けられていた。心の準備はできているため、それが否定でも拒絶でもいい。全然よくはないけど。
即便如此,凛的全部神经都集中在洁即将编织的言语上。他做好了心理准备,哪怕是拒绝或否定也无所谓——虽然实际上根本不可能无所谓。
例えこの世界が冴と潔が結ばれることを応援しているのだとしても、凛は抗ってみせる。その先に、自分と潔が結ばれる未来があることを信じて。
即便这个世界都在为冴和洁的结合摇旗呐喊,凛也要抗争到底。他坚信前方存在着自己与洁相系的未来。
たっぷり1分ほどの間を持って、潔が恐る恐るといった調子で言葉をゆっくり紡いでいく。
经过足足一分钟的沉默,洁终于以战战兢兢的语调缓缓编织起话语。
「ま、まずは…」 "那、那个先..."
まずは…? 首先……?
「恋人、からで……」 「从恋人、那里……」
こいびと…からで………?? 恋人……那里………??
コイビトカラデ………恋人からで?!?! 从恋人那里………从恋人那里?!?!
「………は?」 "……哈?"
照れたような口調で続いた音の羅列が、凛の鼓膜を揺らす。
带着几分羞赧的断续音节震颤着凛的鼓膜。
それは、凛が世界に勝利した瞬間であった。 这一刻,凛战胜了整个世界。
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