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【7/13新刊サンプル②】双剣湯けむりドッキリTV/有栖川的小说

【7/13新刊サンプル②】双剣湯けむりドッキリTV
【7/13 新刊样本②】双剑温泉惊魂 TV

23,145字46分钟

7/13 ブルーローズの浄潔 星願2025  7/13 蓝色玫瑰的净洁 星愿 2025
西3ホール B48b キャラメルスカッチ  西 3 展厅 B48b 焦糖贴纸

「双剣湯けむりドッキリTV」B6/84p/全年齢  《双剑温泉惊魂 TV》B6 尺寸/84 页/全年龄向
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温泉ロケ企画と言われてやってきたカイ潔が、山奥の村で起こる怪奇連続失踪事件に巻き込まれて、事件を調査したり相部屋で添い寝したりちょっと意気投合したりする話。ギャグです!!!ロケスタッフなどのモブがそこそこ出ます。
被邀请参加温泉外景企划的凯洁,在深山村落遭遇连环离奇失踪事件,一边调查案件一边同房共枕还稍微擦出火花的故事。是搞笑剧!!!会有较多外景工作人员等路人角色出场。

一応noeg終了後のつもりで書いてますが全体的に謎時空の謎時系列っぽいです。ふんわり読んでいただけますとさいわい……!
虽然设定在 noeg 事件结束后,但整体处于谜之时空的混乱时间线。若能轻松阅读便是我的荣幸……!


サンプルでは見やすいように改行多めですが、実際の本ではわりと詰まり気味のレイアウトになっています。
样本中为便于阅读增加了换行,实际成书排版会较为紧凑。


当日は何卒よろしくお願い致します!  当天还请多多关照!

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 湯けむり温泉ロケ! それがこの企画の当初の謳い文句だった。
 烟雾缭绕的温泉外景!这就是企划最初的宣传口号。


「もうやだ! これで三人目!! なんなの!? 呪われてんの!?」
"受够了!这已经是第三个了!!到底怎么回事!?是被诅咒了吗!?"

 俺、潔世一は恥も外聞もなく村の真ん中で叫んでいた。そう、村の真ん中である。俺たち——BLTVの企画に参加している五人は、日本のどこかにある秘境(企画の趣旨により住所非公開)の温泉ロケにやってきて、そして、
我,洁世一,毫无羞耻之心地在村子中央大声喊叫。没错,就在村子的正中央。我们——参加 BLTV 企划的五个人,来到日本某处秘境(根据企划要求不公开具体地址)进行温泉外景拍摄,然后——

「クソうるせぇ、騒ぐな世一。ただ、ADの田中が消えたってだけの話だ。それより注目すべきは、田中の部屋には例の〝手毬唄〟の置き手紙がなかったってことの方だろうが」
"吵死了别嚷嚷,世一。不过是 AD 田中失踪了而已。更值得关注的是,田中的房间里没有出现那首'手球歌'的留言纸条吧?"


 ——連続怪奇失踪事件に巻き込まれていた。  ——就这样被卷入了连环离奇失踪事件。


 俺はガクッと壊れたブリキ人形のように声がした方に振り返り、しゃがみ込んでいる男をじっと見る。やけに冷静な語り口でベラベラ喋りながらとっとと現場検証をはじめているのはクソ薔薇タトゥーのドイツ男ことミヒャエル・カイザー。つい先日新英雄大戦ネオ・エゴイストリーグでボコボコにしてやったばかりの俺の最高道化マイベストピエロである。
我像生锈的锡皮玩偶般僵硬地转向声源,死死盯着蹲在地上的男人。这个用异常冷静的语调喋喋不休、已经开始现场勘查的混蛋,正是那个纹着玫瑰刺青的德国佬米歇尔·凯撒。前几天在新英雄大战中刚被我揍得满地找牙的——我的人生最佳小丑。

 ところで俺は、あれ以来カイザーはちょっとだけ殊勝になった、と思っていた。何故ってこのイカれたBLTV企画に参加しているのがその証拠。こんな企画、理由がなければ普通は参加しない。ちなみに俺は絵心さんに弱み握られてるようなもんで、青い監獄ブルーロックの経営資金をどうにかするために送り込まれた。入札ランキング一位になった俺は注目の的だから金になるそうだ。青い監獄(*ブルーロック)が無くなると俺としても困る。でも言われたとおり集合場所に来てみたら同率一位のはずの凜はいなかった。詐欺!
话说,我原本以为凯撒从那件事之后稍微变得懂事了点。证据就是这家伙居然参加了这个疯狂的 BLTV 企划——要是没点特殊原因,正常人根本不会来参加这种企划。至于我嘛,算是被绘心先生捏着把柄,为了给蓝色监狱(*Blue Lock)筹措运营资金才被塞进来的。据说身为竞标排名第一的我很有商业价值。毕竟要是蓝色监狱倒闭我也会很困扰。但按约定来到集合地点时,本该并列第一的凛却不见人影。欺诈!

 ともかく。カイザーは殊勝になった、はずだった(俺調べ)。
总之。凯撒本该变得懂事了(我调查的)。

 一昨日も、それに昨日だって、なかなか寝付けない俺に意外にも優しく話し掛けてくれてたし……。
前天也是,昨天也是,他都意外地对失眠的我温柔搭话……

 でもその考えはどうやら甘ったれた勘違いに過ぎなかったみたいだ。三日前に知り合ったばかりとはいえ知人が失踪してこの冷徹さ、ヒトの心が通っていないとしか思えねえ。
但现在看来这种想法不过是天真的误会。虽说三天前才相识,但对熟人失踪都能如此冷酷,这家伙根本没有人性吧。

「いくら被害者が田中さんだからってお前冷たすぎねえ?」
"就算受害者是田中先生,你这态度也太冷漠了吧?"

 それで俺がキッパリ言ってやると、カイザーは荒んだ瞳でこう言った。
当我斩钉截铁地这么说完,凯撒用浑浊的眼瞳这样回应道。

「世一。世の中起こってしまったことはどうにもならない。時間は元には戻らないし、人は簡単に死に、決して生き返らない。ぬるま湯育ちのjapanisch(*ヤパーニッシュ)にはわからないかもしれないが、死者を前にしてまずやるべきは取り乱して醜態を晒すことではなく、弔ったのちは素早くその原因を究明することだ。その方が死者も浮かばれる」
"世一。这世上已经发生的事无可挽回。时间不会倒流,人死不能复生。你们这些在温水中泡大的日本人或许无法理解——面对死者时,首先要做的不是失态地哭天抢地,而是在吊唁后迅速查明死因。这才是对逝者最大的告慰。"

 カイザーの瞳に誇張は無く、嘲りもなく、そこにはただまっさらな真実だけがあった。つまりめちゃくちゃ真面目な顔をしてヤツはそう言っていた。俺はカイザーのこんなマジな顔を他に見たことがない。試合中に神を罵っていたときだってもっとクソ感情的だった。つまり——つまりヤツのこの言葉は真実なのだ。
凯撒眼中没有夸张,亦无讥讽,唯有赤裸裸的真相。也就是说这家伙正以极其严肃的表情说着这番话。我从未见过凯撒如此认真的面孔——即便在比赛中辱骂神明时,他都比现在更情绪化。换言之——他此刻的话语就是真相。

 でも。  但是。

「田中さんはまだ失踪しただけで死んだとは限らねえんだけど…………」
"田中先生只是失踪了,还不能确定已经死了…………"

 とりあえず前提を正すべくそう伝えてやると、カイザーは曇りなき眼でこう言い切る。
我正想先纠正这个前提,凯撒却用毫无阴霾的眼神斩钉截铁地说道。

「バカ、死んでるに決まってるだろ。古びた田舎の因習村で手毬唄になぞらえた事件のまっただ中——これは間違いなくYOKOMIZOだ!」
"笨蛋,肯定已经死了啊。在陈腐乡下的陋习村落里发生与手球歌相仿的事件——这绝对是 YOKOMIZO 风格!"

「あ、ウン、そっか……」  "啊,嗯,这样啊……"

 俺はその迫力に何も言い返せなかった。  我被这股气势压得说不出话来。
 さっきのクソ真面目な真顔から一転してちょっと興奮気味だからだった。
因为刚才还一本正经的严肃表情突然变得有点兴奋起来。

 なあ、もしかしてお前さ、この状況をちょっと楽しんでねーか?
喂,你该不会有点享受这种状况吧?

 失踪者連続三人目、ヘンな置き手紙あったりなかったり、出口なし封鎖された山奥、頼みの綱は十日分の食糧と太陽光発電式の自家発電機のみ、打つ手なしの絶体絶命のこの閉鎖空間を——VR謎解きゲームみたいな感覚で、ちょっと楽しんでるんじゃないか? マジでさ?
这已经是第三个失踪者了,时而出现时而消失的诡异留言,被完全封锁的深山老林没有出路,唯一的指望就是十天的口粮和太阳能发电机——在这种走投无路的绝境里,你该不会是用玩 VR 解谜游戏的心态在享受吧?认真的吗?

「マジでなんでこんなことになっちゃったんだ……」  "到底为什么会变成这样啊......"

 俺は頭を抱えて天を仰いだ。  我抱头仰天长叹。
 なんでこうなっちゃたっかって、言ってはみたものの、まあ理由は——ひとつしかないのである。
虽然嘴上这么问,但其实原因——只有一个。

 こんな企画に参加しちゃった三日前の俺が浅はかだったから! それ以外何もねーよ、うわ〜ん!
三天前会答应参加这种企划的我真是太天真了!除此之外啥都没有啊,呜哇~!


◇ ◇ ◇


 遡ること三日前。  事情要追溯到三天前。

 BLTVのロケバスに揺られ、俺たちは日本のどこかの山奥にあるという秘境の温泉村——鬼泣村へとやって来た。
我们乘坐 BLTV 的外景巴士一路颠簸,来到了位于日本某处深山里的秘境温泉乡——鬼泣村。

 俺たち、というのは、ウッカリポンとBLTVの企画に参加を承諾してしまったカモ五人と、ADの田中さん率いる数名の撮影スタッフたちのことだ。誰が来るかは顔合わせ当日まで秘密だったため、一部参加者は集合場所に来るなりメッチャ揉めて、それを早速カメラに撮られ、え? あれ編集すんの? みたいな空気になって自然鎮火して、そのまま無言で八時間ほどバスに揺られてここに来た。おわかりいただけるかと思いますがこの時点で空気は最悪。特に俺とカイザーの間の空気がね。
我们这群人,指的是稀里糊涂答应了《BLTV》企划的五只待宰肥羊,以及由 AD 田中带领的几名摄影组成员。由于直到碰头会当天才公布参与者名单,部分成员刚抵达集合地点就爆发激烈争执,结果立刻被镜头捕捉——诶?那段真要剪进去?——在这种微妙氛围中冲突自然平息,随后大家一言不发地在巴士上颠簸了八小时来到此地。想必各位已经明白,此刻的气氛糟糕透顶。尤其是我和凯撒之间的氛围。

「マジでクソどこなんだここは……」  "这鬼地方到底是哪儿啊......"

 バスを降りるなり、鬱蒼と茂りすぎている森と、その中にいきなりドンと広がっている古めかしい日本家屋たちの群れを見てカモその1——ミヒャエル・カイザーがぼやいた。ちなみにコイツがなんでこのロケに参加したのかはまったくわからない。
刚下车就看到遮天蔽日的密林,以及林中突兀矗立的成片古旧和式建筑,待宰肥羊一号——米海尔·凯撒忍不住抱怨。顺带一提,完全搞不懂这家伙为什么会参加这次外景拍摄。

「待ってカイザー、すぐマップアプリで調べるよ。……あれ? GPS使えません……」
"等等凯撒,我马上用地图 APP 查......奇怪?GPS 没信号......"

 その隣でスマホを持ったまま呆然と固まっているのがカモその2——アレクシス・ネス。コイツは多分カイザーのお守りで来たんだと思う。巻き込まれて正直可哀想。てかあんなことがあったあとなのにカイザーの世話してんのえらすぎるよね。俺がまとめてボコったせいで一致団結したのかもしんないけど。
在他旁边握着手机呆若木鸡的是二号冤大头——亚历克西斯·尼斯。这家伙八成是来给凯撒当保镖的。被卷进来实在可怜。话说经历了那种事还来照顾凯撒也太伟大了。说不定是因为我把他们一锅端了反而让他们团结起来了。

「あれ、ホンマや、電波来てへんみたいやね。このへん整備されてないんかな? あとで村の人にWi-Fiないか聞こ」
"咦,真的耶,好像收不到信号呢。这附近没整修好吗?待会问问村民有没有 WiFi"

 同じくスマホを取り出して圏外表示を確認し、あたりを見回しているのがカモ3——氷織羊。氷織はなんか空き時間で実家に帰されるのがすげーイヤとかいう理由でここに来たらしい。三泊四日の予定だし、温泉旅行ならちょうどええね〜とのことだった。
同样掏出手机确认无信号状态并环顾四周的是三号冤大头——冰织羊。听说冰织是因为不愿在空闲时间被叫回老家才跑来这里的。说是反正要住三晚四天,当作温泉旅行刚好合适。

「相談、相談。スマホ使えないのにはまあ慣れてる……けど、親に連絡出来ないのは困るぞ」
"麻烦啊麻烦。手机不能用倒是习惯了……但联系不上父母可不行"

 しょんぼり顔でスマホをカバンにしまっているのがカモその4——黒名蘭世。黒名は俺が参加するなら自分も行くぞ、とついてきてくれた。こんなかわいい黒名をカモなんて言うのはかなり気が引けるけど、でもここにいる時点で俺もみんなも等しく絵心のカモなのだ。悲しい話すぎるよな。俺もそう思うよ。
蔫头耷脑把手机塞进包里的就是目标其四——黑名兰世。黑名说如果我参加他也要跟着来。把这么可爱的黑名称作目标实在过意不去,但既然站在这里,我和大家都不过是画师笔下的猎物罢了。太悲伤了吧。我也这么觉得。

「俺も父さんと母さんについたら電話するって言ってたからな……てかロケスタッフが移動基地局とか持ってたりしないの?」
"我也跟爸妈说过到了会打电话……话说外景组没带移动基站之类的设备吗?"

 そして最後のカモ5こと俺、潔世一がブツブツ言いながら振り向くと、ロケバスから機材を降ろしていたADの田中さんがニコニコと笑って口を開いた。
当最后的目标五号——我·洁世一嘟嘟囔囔转过身时,正在从外景车卸器材的场务田中先生笑眯眯地开口道。

「うん、あるある、大丈夫だよ〜。というかこのバスにその設備が入ってるから、起動すればオッケー。荷物降ろしたらすぐセットするから安心して! とりあえず先に村に入っててくれるかな? 明日からの撮影に備えて、鬼泣村のみなさんが準備をしてくださってるみたいだから」
"嗯嗯有的有的,没问题~其实这辆巴士就搭载了那套设备,启动就能用。卸完器材马上架设,放心吧!你们要不先往村子里去?为了明天开拍,鬼泣村的各位好像正在做准备呢"

 そう言って田中さんがひょこりと指さした方を見ると、初老の人の良さそうなおじさんが嬉しそうに手を振っているのが見える。
田中先生这么说着突然伸手一指,只见一位面容和善的中年大叔正兴高采烈地朝我们挥手。

 俺たちは頷き合い、言われるまま、おじさんが立っている村の中へと進んでいった。
我们相视点头,依言朝着大叔所在的村落方向走去。


 おじさんはこの村の現村長らしく、実に堂々としたたたずまいで俺たちを屋敷の中に案内してくれた。やけに長くて立派な廊下を後ろについて歩いているあいだ、村長さんはBLTVのファンで特にドイツチームを熱心に応援していたから今回の撮影はすごく嬉しいと話し、俺たち五人にサインをせがんだ。そしてそれを聞いた途端、それまでずーっといかにもな日本建築に夢中になっていたカイザーが、ものすごい綺麗な営業スマイルで「モチロン、ミスター」とちゃんと日本語で返事しやがったのでかなりビビった。発音こそ訛っているものの母国語判定されたのでイヤホンが素通りさせてきたらしい。お前いつの間に日本語修得したの?
大叔似乎是本村的现任村长,气度不凡地将我们引进宅邸。穿过那条长得离谱的豪华走廊时,村长兴奋地说自己是 BLTV 的忠实观众,尤其热衷支持德国队,这次拍摄让他特别开心,还向我们五人索要签名。话音刚落,原本一直沉迷研究日式建筑的凯撒突然切换成完美营业微笑,用标准日语回答"当然可以,先生",吓得我够呛。虽然带着口音但被耳机判定为母语直接放行——你小子什么时候学会的日语?

「世一に煽られてから」  "被世一刺激之后"

 らしいです。俺への返しはドイツ語だったらしくイヤホンに変換されて滑らかだった。悪意をハッキリ伝えようという意志を感じる。結局、いつからなのかはわかんねぇけど。
据说给我的回复原本是德语,经过耳机转换后变得很流畅。能明显感受到对方刻意要传达恶意的意图。虽然搞不清到底是从什么时候开始的。

 だって最初にいつ煽ったのか全然覚えてねーし。  因为我完全不记得最初是什么时候开始挑衅的。

「ハァ……お前は本当に…………」  "哈......你这人真是......"

 そう言うと、カイザーはかなり憮然とした顔で俺の小脇を肘で小突いた。
说完这话,凯撒就一脸不悦地用胳膊肘捅了捅我的侧腹。

 俺はムカついて小突き返した。そしてそのままシームレスに小突き合い合戦に突入しかけた頃、ちょうど広間に通されて、醜い小競り合いは自然消滅を見た。
我气呼呼地回推了一把。就在我们即将无缝衔接地展开推搡大战时,恰好被领进了大厅,这场丑陋的小摩擦便自然消弭了。

 などと一悶着ありつつ、広間でめちゃめちゃ美味しいお茶とお茶菓子(きんつばがある! 俺のファンだから仕入れてくれたんだって、サイコー!)を出してもらい、ダラダラと待つこと三十分ほど。遅くなってごめんね〜とチャラい雰囲気でロケスタッフたちがやってきて、そこでようやく、企画の全体説明が始まる。じつは俺たち温泉ロケをするということしか知らされてなくて、全然詳細もわかってなかったのだ。
就这样闹过一场后,我们在厅里享用了超级美味的茶点(居然有金锷烧!听说是因为我是粉丝才特意准备的,太棒了!),懒散地等了约莫三十分钟。随着工作人员们以轻快的口吻说着"抱歉来晚啦~"登场,企划的整体说明终于开始。其实我们事先只知道要来温泉外景,对具体细节完全不了解。

 とにかく——AD田中さんが説明することには、行程としてはこんな感じらしかった。
总之——根据 AD 田中先生的说明,行程大致是这样的:

 まず一日目。つまり今日は、前乗りで現地入りしただけなのでメインの撮影はなし。村の人たちがおもてなしを用意してくれているので、それを堪能したら各自割り当てられた部屋で明日に備える。
第一天也就是今天,只是提前抵达现场的预热环节,不进行主要拍摄。村民们准备了招待活动,享受完毕后大家就到分配好的房间为明天做准备。

 次に二日目。午前は村にある伝統の温泉に入浴している俺らをロケ撮影。午後は村の特産品を食べながら紹介するコーナーを撮影。なんかこれを切っ掛けに村おこしをしたい、みたいな感じらしい。
第二天上午,摄制组拍摄了我们泡在村里传统温泉的画面。下午则录制了品尝当地特产的介绍环节。听说节目组想借此机会振兴乡村经济什么的。

 そして三日目。午前で最後に村の観光名所を紹介し、午後は撮影予備の空き時間。何事もなければこの日の夜に最後の宴会を楽しませていただき、翌日、四日目の朝にこの村をお暇する。
到了第三天。上午最后拍摄了村里的观光景点,下午预留了机动拍摄时间。如果一切顺利的话,当晚我们将参加最后的欢送宴,第四天早晨正式告别这个村庄。

 ただし、ガチのロケ撮影を行っていないフリーの時間帯にも、俺ら選手の生の姿——素の状態でのコミュニケーションなんかを見せてほしいとかいう話で、広間や庭、各自の部屋などにはカメラが設置されている。というか集合場所から移動のバス、そして今に至るまでも、カメラマンがちょこちょことカメラを回している間は撮影が行われている。この点のみ了承してもらえると嬉しい。
不过需要说明的是,即便在没有正式拍摄任务的自由活动时段,节目组也希望捕捉选手们最真实的状态——比如我们日常交流的模样。因此在客厅、庭院乃至个人房间都安装了摄像机。准确来说从集合地点的大巴开始,直到现在都有摄像师在跟拍。希望各位能理解这一点。

「とはいえ、今回の番組は、きみたち五人の新鮮なリアクションや、仲良く観光してる様子なんかを撮らせてもらえれば大丈夫だから。生放送じゃないからね〜、ある程度編集も効くし、あんまり身構えないでいつも通りに過ごしてほしいな」
"话说回来,这次节目只要能拍到你们五个人真实的反应,或是友好观光的样子就足够了。毕竟不是直播嘛~后期还能剪辑,所以不用太紧张,保持平常心就好啦"

 田中さんの説明が終わったあと、そう補足してくれたのはカメラマンの山田さん。ほかの小物とかライトとかのスタッフさんたちも、うんうんとにこやかな感じで頷いている。しかも聞くところによると、山田さんはこの村の出身で、村人のみなさんとはすごく親しいそうだ。だから安心してゆったりと秘境温泉ライフを過ごしてくれ——というのが、総じて番組側の意見だった。
田中的解说结束后,摄像师山田先生这样补充道。其他负责道具和灯光的 staff 们也笑盈盈地连连点头。而且听说山田先生就是这个村子出身,和村民们关系特别亲密。所以节目组的总体意见就是——请你们安心享受悠闲的秘境温泉生活。

 うん。青い監獄ブルーロックで年がら年中撮影されている生活に慣れきってしまった俺たちにとっては、大して苦じゃない仕事だ。寝る部屋まで撮影されるってのは流石に初だけど、まあどうせ三日だけの話だしな、そのぐらいならカメラに映っても困らない生活を維持出来るはず。
嗯。对我们这些早已习惯在蓝色监狱全年无休被拍摄生活的人来说,这算不上什么辛苦的工作。虽然连睡觉房间都要拍摄确实是头一遭,不过反正就三天而已,这种程度的话应该能维持住不怕被镜头拍到的生活状态。

 まあ問題は、俺らがまったく一ミリも、仲良く観光する仲じゃないことなんだけどな……。
问题在于我们之间根本连一毫米的友好观光同伴关系都算不上啊……

 正確には、日本組とドイツ組の仲が全然良くない。なにしろ最後に試合をしたフランス戦の顛末がアレなのだから和やかな雰囲気になるはずもない。俺なんか、ネスにはもっとブチ切れられていいはずだと思ってたし、カイザーにも顔合わせられない可能性あると思ってたからね。想像より態度いいのは、俺がパレード行ってる間とかにふたりの間で何かしらあったからなのかもしれない。知らんけど。
准确来说,是日本组和德国组的关系完全没好到哪去。毕竟法国战最后闹成那样,怎么可能会有和睦气氛。我甚至觉得内斯应该对我发更大火才对,也做好过可能没法正眼看凯撒的心理准备。他俩态度比预想中好,说不定是我参加游行期间发生过什么吧。谁知道呢。

 とにかく。今回の企画では自然と、俺氷織黒名チームとカイザーネスチームに分かれてバラバラに食レポとか水質レポとかすることになるだろう。申し訳ないが番組側が期待しているような映像は撮れないと思うが、そこは呑み込んで欲しい。だって仲悪いんだもんよ!
总之。这次企划中我们自然分成了冰织黑名队和凯撒内斯队,各自进行美食测评和水质报告。虽然很抱歉可能拍不出节目组期待的画面,但还请多多包涵。毕竟我们关系不好嘛!

「潔くん、なんか百面相してるけど大丈夫?」  "小洁,你表情怎么变来变去的,没事吧?"

 な〜んてうだうだと考え込んでいると、田中さんが心配そうに声をかけてくる。
正当我这样胡思乱想时,田中先生忧心忡忡地搭话道。

 えっ、俺そんなに顔に出てた……? そう思ってちらりと友人たちの方を振り返ると、氷織も黒名も、ニコニコと頷いていた。
诶、我的表情这么明显吗......?这么想着偷偷回头看向朋友们,只见冰织和黑名都笑眯眯地点头。

 潔くん、メッチャ顔に出やすいもんなぁ。わかるわかる、潔こーゆーとき顔に全部出るぞ。えっそんなに!? ビックリしてさらにその対面に目をやるとカイザーとネスも同じ顔をしていた。えっそんなに!?
小洁的表情也太好懂了吧。我懂我懂,小洁这种时候所有想法都会写在脸上。诶真的假的!?惊讶地看向对面,发现凯撒和内斯也是同款表情。诶真的假的!?

「ADタナカ、心配はクソいらん。単に世一は考え事が全て顔に出てしまう撮れ高最強の道化ピエロだというだけだ、放置で良い」
"AD 田中,根本不需要担心。只不过世界第一是个所有心思都写在脸上的最强综艺咖罢了,放着别管就行"

「あ!? なんだコイツ、道化ピエロはお前だってこの前の試合で格付け完了しただろーが」
"啊!?这家伙说什么呢,上次比赛不是已经证明你才是小丑吗"

「世一くんはお子ちゃまね〜、仕事の進行止めてるガキはどっちだよ。いーから説明を続けさせろ」
"世一君真是个小孩子呢~到底是谁在耽误工作进度啊。少废话赶紧继续说明"

 おまけに驚きの俺に一切寄り添う気皆無のカイザーが、しっしと手を振ってコッチを煽ってくるもんだからムカつくことこのうえない。
更可气的是,那个完全没打算配合我、一脸事不关己的凯撒,居然还"嘘嘘"地挥手挑衅我,简直让人火冒三丈。

 とはいえ、スタッフを心配させているのは事実ではある。それ以上突っかかることも出来ず、俺はフン、と思いっきりカイザーに向けて鼻を鳴らした。そしてスタッフと村長さんに向けてぺこりと頭を下げる。
不过让工作人员担心确实是事实。我也没法再继续纠缠下去,只能冲着凯撒"哼"地重重喷了个鼻息。随后向工作人员和村长深深鞠了一躬。

「うん、なら早速、今日から君たちが泊まる部屋とかを説明させてもらうね。多田羅さん」
"好的,那我这就带你们去看看今天要住的房间吧。多田罗先生"

 すると田中さんは、不仲タレントとかでこの手の遣り取りには慣れてる——とばかりアッサリと流し、サッと話を次に回した。
田中先生则表现得驾轻就熟——仿佛处理艺人闹不和这种事早已司空见惯,轻描淡写地带过话题,迅速推进到下一环节。

「はいはい、今ちょっと表屋敷の見取り図を拡げますねえ」
"好好好,我这就把表屋敷的平面图展开给您看啊"

 そしてすぐに、タタラさん……どうやら村長はそういう名前だったらしい……がてきぱきとケースを取り出し、大きめのコピー用紙を拡げはじめる。「ちょっと机の上場所取りますよぉ」村長さんは相変わらずニコニコと穏やかな笑みを浮かべてその作業を進めているんだけど、その姿を見て、何故かカイザーが、ふと、首を捻ってみせる。
只见铁器先生——看来村长是叫这个名字——利索地取出文件盒,开始摊开一张大号复印纸。"会稍微占点桌面空间哦"村长依旧挂着那副和蔼可亲的笑容进行着准备工作,可看到这幅情景,凯撒不知为何突然歪了歪脑袋。

「——タタラ?」  "——铁器?"

 こてんと真横に倒れたカイザーの顔は、「どこかで聞いたことがあるような響きだな……」と言いたげでどうにも神妙な感じだった。
砰地一声歪倒在旁的凯撒露出"这发音总觉得在哪听过..."的微妙表情,整张脸都写满了难以言喻的严肃。

 え? なんで? タタラって日本人でも滅多に聞かない苗字だと思うんだけど。もしかしてドイツにも似たような苗字あるのかな……?
咦?为什么?我觉得"多田罗"这个姓氏就算在日本也很少见啊。难道德国也有类似的姓氏吗……?

「なぁ、おい……」  "喂,我说......"

 ついうっかり気になって、俺はコソコソとカイザーの肩を叩ことう手を伸ばす。
一个不留神在意起来,我鬼鬼祟祟地伸手想拍凯撒的肩膀。

 ——けどその手は、多田羅村長さんが口を開いた瞬間、秒で跳ね飛び、決してカイザーの肩に届くことはなかった。
——但那只手在多田罗先生开口的瞬间就猛地缩了回来,终究没能碰到凯撒的肩膀。

「はい、準備できとります。これがこの屋敷の見取り図、それから、みなさんにお泊まりいただく部屋の割り振りですじゃ」
"好的,已经准备妥当。这是宅邸的平面图,以及为各位安排的客房分配方案。"

 村長さんが言った。  村长说道。
 いくつか並んだ客間の一角をしっかり指し示しながら。
他一边说着,一边用力指向并排的几间客房中的一角。

 そこには「カイザー選手、潔選手、『春の間』」という文字がしっかり書き込まれていた。
那里清晰地写着"凯撒选手、洁选手、'春之间'"的字样。

「おい、どうなってんだこの部屋割りは……!」  “喂,这房间分配是怎么回事……!”

 次の瞬間、カイザーはキレており、俺はビビって手をはね除けていた。
下一秒凯撒就暴怒了,我吓得赶紧缩回了手。

 そのキレようといったら、もう瞬間湯沸かし器なんてメじゃない程の瞬発力だった。さっきまで俺に「仕事の妨害はガキ」などと偉そうに宣ってたくせに、マジのガチギレだったのだ。すげえ! 舌が二枚付いてんのかな? お前が言うなの見本にされたって文句言えないぞ、そのキレっぷりは。
他那暴怒的架势,简直比瞬间热水器的爆发力还夸张。明明刚才还对我摆出一副"妨碍工作是小鬼把戏"的傲慢嘴脸,转眼就彻底破防了。太绝了!这家伙是有两张嘴吗?就你这暴跳如雷的德行,被人当成"你才没资格说"的典型范例也怨不得谁啊。

 ともかく、カイザーは秒でブチ切れ、しかしそれを思いっきりぶつけることのないよう済んでのところで踏みとどまり、ギリギリ理性を保っているという様子でドンドンドンと『春の間』の文字を指さしていた。すげー、コイツ、マジで日本語読めるんだ。でなきゃこの間取りは理解出来ないはずなのに、ガチで必死に詰めようとしてるもんな。俺とカイザーが同室で割り振られていることを………………
总之凯撒瞬间就炸了,但又在爆发的边缘硬生生刹住车,勉强维持着理智咚咚咚地猛戳写着『春之间』的门牌。牛逼,这家伙居然真看得懂日文。否则根本不可能理解这个房间布局,现在却死命较真地要讨个说法。关于我和凯撒被分到同一间房这件事………………

 えっ!? 俺とカイザーが同室で割り振られてんの!? アホか!?
什么!?我和凯撒被分到同一个房间!?开什么玩笑!?

「なんで俺とカイザーが同室なんすか!? どー考えても2と3で割るならドイツ2日本3で分けるべきでしょ!!」
"为什么我要和凯撒同住啊!?按 2 和 3 分组的话,明明该德国队 2 人日本队 3 人分开住才对啊!!"

 そして遅れて事実を理解した俺は、気付いた時にはカイザーと一緒になって、一生懸命にふたりで抗議をぶちかましてしまっていた。
等我终于反应过来这个事实时,已经和凯撒一起拼命抗议起来了。

 隣から、黒名の心配そうな視線と、氷織の微笑ましそうな視線が飛んでくる。ついでに斜め対角のネスから世一テメェみたいなピリついた視線が飛んできているような気もしたが、それはとりあえず無視する。ネスにキレられるよりカイザーと同室であるほうが絶対に一大事だから。
旁边传来黑名担忧的目光和冰织忍俊不禁的视线。斜对角似乎还投来内斯"世一你这混蛋"般火辣辣的瞪视,不过这个先不管。比起惹恼内斯,和凯撒同住绝对是更严重的事态。

 けれどそんな俺の必死の抗議にも関わらず、AD田中さんはマジの目をして首を横に振る。
然而即便我如此拼命抗议,AD 田中先生仍一脸认真地摇头拒绝。

「その方が……再生が回るから!」  "那样做......点击量才会上去啊!"

 現実はかくも非情であった。  现实就是如此残酷。

「マジで言ってんのか!? 俺と世一が乱闘起こして翌朝片方死体になっててもいいってのか!」
"你认真的吗!?就算我和世一打起来第二天早上变成一具尸体也无所谓吗!"

「それでも……再生が回るから!!」  "即便如此……直播还在继续啊!!"

 カイザーが爆裂抗議をしても非情だった。「というか一晩中カメラ入ってるから仮に片方死体になっててもすぐ犯人分かって逮捕されるよ」という冷静な突っ込みまで返ってきたが、ここでカイザーが言いたいのは実際に死人が出るどうこうではなく、そのくらいマジで俺たちは仲が悪いという話の方なのだ。
即便凯撒激烈抗议也无人理会。"倒不如说整晚都有摄像机在拍,就算真有一方变成尸体也能立刻锁定犯人逮捕归案"——甚至有人冷静地吐槽到这种程度。但此刻凯撒真正想表达的,其实不是真的会闹出人命这回事,而是想强调"我们关系差到这种地步"的事实。

 うん、わかるわかる、今この瞬間は、プレー中と同じぐらいお前の考えてることがよく分かるよ。
嗯嗯我懂我懂,现在这个瞬间,我完全能理解你的想法,就像比赛时一样清楚呢。

「もしくは俺が寝ている世一に手を出し、放送不可能な映像になるぞ」
"或者等我向熟睡的世界第一下手,就会变成不能播出的画面了"

 ごめんやっぱわかんねーかも。  抱歉,我可能还是搞不懂。

「念のため聞いておくけどそれは寝ている潔くんにグーパンを繰り出すという意味では無く?」
"为防万一确认下,你说的不是要对熟睡的小洁反复出拳吧?"

 ほら田中さんも混乱してんじゃん。   你看田中先生不也搞混了嘛。

「帰国する前にそろそろ既成事実のひとつでも作っておきたいと思っていた。この際いい機会だ、利用させてもらう」
"回国前我就想着至少要先制造个既成事实。现在正是好机会,让我好好利用一下"

「まあ…………この際…………それも再生数稼げそうだからアリかな…………!」
"嘛…………这种时候…………感觉也能赚点击率…………好像也不错!"

 しかしカイザーが懇切丁寧に追い説明をすると、熟考の末田中さんはグッと親指を突き出してOKを出した。後ろで他のスタッフたちもパチパチと拍手をして決定を盛り上げてきている。嘘だろ。この番組まともなスタッフどこにもいねーのかよ。
然而当凯撒耐心细致地追加说明后,经过深思熟虑的田中先生猛地竖起大拇指表示同意。身后其他工作人员也噼里啪啦地鼓掌烘托气氛。不是吧。这节目组就没一个正经工作人员吗?

 え? お前マジで何言ってんの? 既成事実ってどういう意味? ガチでわかんない。
啊?你认真的吗?既定事实是什么意思?完全搞不懂啊。

 ネスが顔面真っ青にして、氷織がすげーワクワクした顔してるから多分ろくなことじゃないと思うんだけど、マジで、どういうこと? あっちょっとしてから黒名も青ざめはじめた。何ソレ? 分かってないの俺だけってこと?
涅斯脸色铁青,冰织却一脸兴奋,估计没啥好事,但真的,到底什么情况?啊等一下黑名也开始发青了。那啥?难道只有我没搞懂状况?

「そっか〜、カイザー選手、それで参加してくれたんだ。僕達としても撮れ高あるほうが助かるから有り難いよ〜。……あれ? じゃあなんでさっきは殺人……の可能性みたいなことを聞いたの?」
"原来如此~所以凯撒选手你才来参加的啊。对我们来说有更多拍摄素材也帮大忙了,真是太感谢啦~......咦?那你刚才为什么问杀人......可能性之类的事?"

 そんな俺の困惑と動揺を余所に、嬉しそうにウンウン頷いていた田中さんが、もののついでみたいな感じにそんなことを訊ねる。
田中小哥完全无视我的困惑与动摇,开心地连连点头,随后像顺口一提般抛出这个问题。

 もう俺としては質問の意味も何も分からないんだけど、対するカイザーはフッと笑っていつものムカつく笑みを目尻に浮かべ、
此刻的我连问题含义都搞不明白,而对面的凯撒却嗤笑一声,眼角浮现出那抹令人火大的惯常笑意,

「愛しさ余って憎さ百倍、コイツだけは確実に最後は俺の手で息を止めてやらねば……と思っているから」
"爱之深恨之切,唯独这家伙必须由我亲手终结生命......我是这么想的"

 滅茶苦茶格好付けた雰囲気でそう言い放った。  他用一种装模作样的语气甩出这句话。
 コイツ、カメラ意識してんな……って感じだった。   这家伙...明显在镜头前刻意表现啊...就是这种感觉。
 お願いだから絶対にオンエアでは使われないでほしいと思った。
 我内心疯狂祈祷这段千万别被播出去。

「あ、そ、そうなんだ……」  "啊、这、这样啊......"

 俺はもう突っ込む気にもならなかったし、それは田中さんも同じだったみたいで、へえ〜と引き気味の感じで頷くと、「あんまり縁起悪いことしないでね」と思い出したように注意をする。
我已经懒得吐槽了,田中先生似乎也和我一样,只是敷衍地"诶~"了一声点点头,又像是突然想起来似的提醒道:"可别做什么不吉利的事啊。"

 もしそんなことが起こったら縁起悪い通り越して警察沙汰なんだよね。
要是真发生那种事,可就不只是不吉利的问题了,直接得报警处理了吧。

 そんな俺の想いも虚しく、結局部屋割りはそのまま変更されず、説明は続いていった。俺の心の中に謎のしこりを残したまま。
可惜我的想法完全白费,最终房间分配方案还是维持原样,说明会继续进行着。只在我心里留下个莫名的疙瘩。

 俺寿命以外で死ぬんならせめてサッカーで果てたいんだけどな……。
要是我非得死于非命的话...至少让我在踢足球时壮烈牺牲也好啊......

 ていうかそもそも冗談でもそんなこと言うなよ、この村がめちゃくちゃ山奥にあるのとか、村の名前が妙に怖いのとか、そういうのが急に気になってきちゃうじゃん、なんか。
话说回来就算是开玩笑也别提这种事啊,这个村子位于深山老林里啊,村名诡异得吓人啊,这些细节突然就让人在意起来了不是?

 思わず、そんなことにばっかり考えが逸れていってしまう。せっかく温泉ロケで来てるのに、なんでこんな不穏なことばっか考えちゃうのか、我ながらイヤんなるよな〜、ってぐらいに。
不知不觉间,思绪总是往这些地方飘。明明是难得来温泉外景拍摄,为什么净想这些不吉利的事,连自己都开始烦起来了。

 ——けど。  ——不过。
 あとにして思えば、たぶんそれが、フラグみてーなもんだったのだ。
事后回想起来,那大概就是所谓的死亡 flag 吧。

「……説明はこれで全部ですが、ああ、そうだ。ひとつだけご忠告を」
"……以上就是全部说明了,啊对了,还有最后一句忠告。"

 あれこれと注意事項を説明してくれた村長さんが、最後、思い出したようにそう呟く。俺はその声にバッと顔をあげた。何か妙な雰囲気を、その口ぶりから感じたからだ。
详细说明完各种注意事项的村长,最后像是突然想起什么似地低声说道。我猛地抬起头,因为从他说话的语气里感受到某种异样的氛围。

「夜中に、歌だけは歌わんといてくださいなぁ」  "半夜里,可千万别唱歌啊。"

 村長さんは、聞き間違えなど起こりようもないほど、ゆっくり、はっきりと、念を押すようにそう話した。
村长用缓慢而清晰的语调强调着,仿佛生怕我们听错似地重复了这句话。

「この村にむかぁしから伝わる言い伝えですな。夜中に歌を歌うと、鬼神さまがそいつを欲しがって迎えにくる言うんです。けんども、誰が歌ったかわからんもんだから、それを突き止めるまで手当たり次第、ひとり、ふたりと、村人を攫っていく……そう言われとります」
"这是自古流传在我们村的传说啊。据说半夜唱歌的话,鬼神大人会想要那歌声而前来迎接。但因为不知道是谁唱的,在查出来之前就会见一个抓一个,把村民一个个掳走……老人们都这么说。"

 後生ですから、こればっかりは、破らんといてくださいよ。さもないとお客人方もどうなるかちいともわかりゃしませんから…………。
求求您了,唯独这条规矩请千万别打破。不然连各位客人会遭遇什么,咱们也完全没法预料啊…………

 そう言い残した村長さんの目つきは異様なほど尖っていて、だからなのか俺は咄嗟に縮こまって——まるで蛇に睨まれているみたいに全身をビリビリと震えさせてしまう。
村长说完这话时眼神锐利得吓人,或许正因为如此,我瞬间蜷缩起身子——就像被蛇盯住的青蛙般浑身瑟瑟发抖。

 ちらりと覗き見ると、黒名も、氷織も、何か言い様のない気配を感じているようだった。ネスもだ。スタッフたちも、ざわざわと戦いている。そんな話聞いてないよ、とでも言うみたいに。
偷瞄四周时,发现黑名和冰织似乎也感受到了某种难以名状的气息。连涅斯也是。工作人员们全都躁动不安地交头接耳,那副模样活像是在说"根本没听过这种规矩啊"。

「鬼泣村に伝わる鬼神の言い伝え、ね……」  "关于鬼泣村流传的鬼神传说啊……"

 そんな中、カイザーだけが、顎に手を当てて考え込んでいた。
就在众人议论纷纷时,唯独凯撒托着下巴陷入沉思。

 まるで何か思い当たることでもあるかのように。  仿佛突然想起了什么似的。
 これから先、数日のあいだに起こる〝怪事件〟に——ひとりだけ、勘付いていたかのように。
似乎只有他一人——预感到接下来数日内即将发生的"离奇事件"。


◇ ◇ ◇


 説明が終わった直後、あわや薄暗い雰囲気になりかけたところを救ってくれたのは、お部屋の案内が終わりましたと顔を出してくれた村長さんの奥さん率いる村のおばさんたちだった。
就在说明会刚结束、现场气氛即将陷入尴尬之际,村长夫人带领的村妇们及时出现,告知我们房间已安排妥当,瞬间化解了微妙的氛围。

 それを渡りに船とみたらしい田中さんが、パンと手を叩いて場の空気を変え、おばさんたちに案内を任せる。そのまま各自部屋に通され(入った瞬間、既に敷いてあった布団のどっちに寝るかで十秒揉めたがジャンケンで解決し、俺が窓際をもぎ取った)、そこでしばしダラダラとサッカー談義で暇つぶしをしていると、氷織たちがやって来て、「ネット通ったらしい」「あと夕飯とお風呂の準備出来たって」と連れ出してくれた。
田中先生见状立即拍手转换话题,将引导工作交给村妇们。我们随即被带往各自房间(进门时因争夺靠窗铺位僵持了十秒,最终用猜拳解决,我成功抢到窗边位置),懒散地闲聊足球打发时间。不久冰织他们过来通知"网络通了""晚餐和澡堂也准备好了",便领着我们出发。

 その後、もてなされるままに豪勢な夕食をいただき、天然温泉だという露天風呂へ。俺たち日本勢からすれば温泉地ではポピュラーな設備って感じだけど、カイザーとネスにとっては見るものすべてが新鮮で面白かったらしく、今まで見たことないぐらい興奮し、はしゃいで、露天風呂を堪能していた。
之后我们享用了丰盛晚宴,又前往天然温泉露天浴场。对日本游客而言这是温泉乡的标配设施,但凯撒和内斯却对所见一切都充满新奇,表现出前所未有的兴奋,在露天浴池中尽情嬉戏享受。

 だって、うん、湯に入る前に指突っ込んで「おお……」とか言ってるカイザー、たぶんかなり興奮してる部類に入ると思う。その後もおそるおそる全身を湯船に入れて、ふっ……とか笑ってたし。それに気付いたネスが目を輝かせていたので多分レア現象だったはず。
因为,嗯,凯撒在泡汤前把手指伸进去发出"哦……"的感叹时,大概属于相当兴奋的类型。之后又战战兢兢地把全身浸入浴池,还发出"呼……"的轻笑。注意到这点的涅斯眼睛都亮了,想必是罕见场景吧。

 まあでも今日は温泉にカメラ入ってないって話だったから、このへんのリアルな反応は動画に乗らないんだよな。
不过听说今天温泉里没装摄像机,所以这些真实反应不会出现在视频里呢。

 もったいないなあ、初温泉にはしゃぐカイザーなんて二度は撮れないのに。まあいいか、なんて思いながら、髪すらネスに乾かされていたカイザーをぼーっと待ち。
真可惜啊,难得拍到凯撒第一次泡温泉这么兴奋的样子。算了无所谓——我一边这么想着,一边发呆等待连头发都被涅斯擦干的凯撒。

「なんだかんだあっという間の一日だったな〜……」  "感觉这一天转眼就过去了呢~……"

 ——で、それも終わった今、俺たちは部屋に戻り、支度をととのえて早くも布団に身を任せているのだった。
——就这样,当一切结束后,我们回到房间整理行装,早早地钻进了被窝。

「着いた頃には夕方だったからな。すぐ夜になるのは当然だ」
"抵达时已是傍晚,转眼入夜也很正常"

 常夜灯に切り替わった薄暗い部屋の中、慣れない様子で敷布団に横たわりながらカイザーが呟く。敷き布団の距離は妙に近く、隙間は三センチぐらいしかなかった。必然、カイザーの距離もやけに近くなる。なんで? という感じだけど、きっとこれも撮れ高のためなんだろう。改めて思うと本気でろくでもない企画だ。
在切换成夜灯的昏暗房间里,凯撒以生疏的姿势躺在铺盖上喃喃自语。两床被褥的距离近得反常,中间仅有三厘米空隙。自然,与凯撒的距离也近得离谱。虽然满心疑惑"为什么?",但想必又是为了节目效果吧。仔细想想这企划真是糟糕透顶。

(……あ、そういえば説明の時の……)  (……啊,说起来说明会那时……)

 と、その異様な距離感にふと数時間前の遣り取りを思い出し、俺はなんとはなしにこう尋ねる。
面对这种异常的距离感,我突然想起几小时前的对话,便随口问道。

「……なあ、そういえばさ、既成事実ってなに?」  "……那个,说起来,既成事实到底是什么?"
「…………ここでそれを聞くかお前は…………」  "…………你居然在这种时候问这个…………"

 するとカイザーは何故かギョッとしたように顔を赤らめ、それからのそり、と布団から上体を起こした。
 凯撒不知为何突然涨红了脸,慌慌张张地从被窝里支起上半身。

「……カイザー?」  "……凯撒?"
「クソ黙ってろシャラップ、世一」  "给我闭嘴,世一"

 あれ? と枕の上で首を傾げる俺のリアクションを丸無視し、カイザーがのそのそと両腕を布団について、こちらへ近づいてくる。ばかりか、そのまま寝っ転がっている俺(with布団)の上にがばりと覆い被さると、フッと口の端を持ち上げて、薔薇でかたどられた手のひらを俺の顔に伸ばしてくるではないか。
"咦?"我枕在枕头上歪着头露出困惑表情,凯撒却完全无视我的反应,慢吞吞地用双臂撑着被子向我靠近。不仅如此,他直接压在了裹着被子的我身上,嘴角扬起一抹笑意,那只纹着玫瑰图案的手掌径直朝我的脸伸了过来。

「な、なに…………」  "你、你要干什么…………"

 仰向けになった顔の、三十センチ真上で、カイザーの顔が揺らめいている。
仰面朝天的脸庞上方三十厘米处,凯撒的面容在微微晃动。

 思わず「ぁ、」と、息を呑んだ。初対面からやけに馴れ馴れしく距離が近かったとはいえ、いつも一瞬で離れていくなりはね除けるなりしていたので、この至近距離でまじまじとヤツの顔を見たのは多分初めてのことだ。
 我不由得"啊"地倒抽一口气。虽说从初次见面起这家伙就异常自来熟地拉近距离,但往常都会瞬间躲开或直接推开——像这样在极近距离端详他的脸,恐怕还是头一遭。

「なんだよ…………」  "搞什么啊......"

 知らず、唇が震える。改めて直視させられたカイザーの顔は西欧人らしく掘りが深く、鼻が高くて、誇張抜きでとんでもなく整っていた。雪宮とか世間的にも美形のヤツは周りにちらほらいたけど、いかにもな西洋顔の美形にここまで至近距離に迫られたことは一度もない。
 双唇不受控制地颤抖起来。被迫重新直视的凯撒有着典型的西欧人特征:轮廓深邃,鼻梁高挺,毫不夸张地说简直俊美得惊人。虽然身边也不乏像雪宫那样公认的美男子,但如此近距离直面这种标准西式美颜还真是破天荒头一回。

 フツーに仲悪いし、質問に機嫌を損ねて無視ぐらいはあるかと思ってたけど……この展開はさすがに予想外だ。
本来以为他们关系不好,被问到问题可能会不高兴地无视……但这样的发展实在出乎意料。

「何のつもりで、」  “你这是什么意思,”
「——世一」  “——世界第一”

 それで慌てて頭を振り、カイザーの身体を押しのけようとする。けど、相手は俺よりずっと体格も体幹もいい大男だ。いくら押してもびくともせず、代わりに、指先でスリスリと頬を撫でさすりながら、ゆっくり、ゆっくりと、唇をこちらに近づけてくる。
于是慌忙摇头,试图推开凯撒的身体。但对方是个体格和核心力量都远胜于我的大块头。无论怎么推都纹丝不动,反而被他用指尖轻轻摩挲着脸颊,缓缓地、缓缓地,将嘴唇向我靠近。

 一秒ごとに、近くに。  每一秒,都在靠近。
 鼻と鼻がくっついて、吐息が頬に掛かる。   鼻尖相触,吐息拂过脸颊。
 そしていよいよ、唇と唇がくっついてしまいそうになったその時、
 就在双唇即将相触的瞬间,

「なっ、ぁっ、おまっ、何考えて、——あれ?」  「等、啊、你、在想什——咦?」

 ——気がつけば、カイザーの顔は、パッと俺から離れて、ヤツは勢いよく上体を起こしていた。
——等我回过神来,凯撒的脸已经猛地从我面前抽离,那家伙正气势汹汹地支起身子。

「チッ、やはり本当にカメラが仕掛けられているな。視線がクソうぜぇ」
「啧,果然装了摄像头啊。这视线真他妈烦人」

 無造作に髪を掻きあげながら、ハア、とバカデカい溜息を漏らして首を捻る。いやなに!? なんすかその、白けたな……みてーなツラは!? 溜息吐きてーのはコッチの方ですけど!? 俺は白けたっていうか、息の根止まりそうだったんだけど!
他随手抓了抓头发,发出「哈啊」一声夸张的叹息后歪着脖子。搞什么啊!? 那张满脸扫兴的表情算什么!? 想叹气的是我这边才对吧!? 与其说是扫兴,我差点连气都喘不过来了啊!

 マジでキスされるかと思った……。  刚才真的以为要被亲了……。

「マジでキスされるかと思った……」  "还以为真的要被亲了……"

 それで動揺のあまり思わず思ったことと同じ言葉を口から零すと、カイザーがハッと笑った。
当这句与内心动摇时不经意闪过的念头完全一致的话语脱口而出时,凯撒突然噗嗤笑出了声。

「この程度で怖じ気づいてるベイビー世一くんには、まだ既成事実の意味は教えられないな。それと安心しろ、四六時中録画されてる空間で本当に手を出すほど俺は悪趣味じゃない」
"对这种程度就吓破胆的世界第一小朋友来说,现在讲解既定事实的含义还太早呢。另外放心好了,在 24 小时监控的空间里真动手——我还没恶趣味到那种地步"

「え? 何? どーゆー意味……」  "诶?什么?这话到底什么意思……"
「なんでもかんでも質問すれば答えてもらえると思ってるんじゃねーよ。俺は見られてやる趣味はないし、お前をそこまでヘンタイにするつもりもない」
"别以为随便问什么我都会回答。我可没有被人围观的癖好,也没打算把你调教成那种变态"

「だから何…………」  "所以呢…………"

 むぐむぐと手の甲で唇を拭き、ぐむむと唸る。マジでコイツなに……。嫌がらせでキス仕掛けてくるとかどんな神経してんの? 流石に意味不明すぎて首を振ると、いつの間にか自分の布団にもぞもぞ戻っていってしまったカイザーの方へごろりと寝返りを打った。
他用手背胡乱擦了擦嘴唇,发出含糊的呜咽声。这家伙到底...故意强吻别人是什么脑回路?实在太过莫名其妙,我摇着头翻了个身,发现恺撒不知何时已经蠕动着钻回自己被窝里了。

 そして掛け布団をさっと引っ被るヤツの手を掴み、布団を剥がそうとしたところで、
正当我抓住那家伙准备掀被子的手时,


 ——ドンッ!  ——咚!


 今度は思いっきり何かをぶっ叩いたかのような派手な音が鳴る。
这次传来的是仿佛用力砸碎什么东西般的巨大声响。

「えっ!? ナニナニ、何この音!?」  "咦!?怎么回事,这什么声音!?"

 俺はその思いも寄らぬ衝撃音に今度こそ完全に動転してしまい、勢いあまって、伸ばしていた手で思いっきりカイザーの肩を引っ掴んでしまった。
这突如其来的巨响让我彻底慌了神,情急之下伸出的手竟狠狠抓住了凯撒的肩膀。

「いってぇな何しやがるよい、ち……」  "疼死了...搞什么鬼..."

 突然の衝撃に舌打ちをしたカイザーの文句を遮り、またもや、ドン、というバカでかい音が響く。更に二度目は、それに続けて突然——激しい豪雨の音まで聞こえてくるではないか。
突然的冲击打断了凯泽的抱怨,紧接着又是一声"咚"的巨响。更令人震惊的是,第二声巨响过后——竟突然传来了暴雨倾盆的声音。

「…………ッ!!」  "......!!"

 その空恐ろしい現象に、俺はギョッとして息を呑み、縮こまった。
面对这骇人的异象,我倒吸一口凉气,浑身蜷缩起来。

 え? 嘘? 嘘だよな? なんか、え? しちゃいけない音、してません?
诶?骗人的吧?开玩笑的吧?那个,呃?是不是听到了不该有的声音?

 しかもこの音、耳を澄ませてみた感じ、何故かこの部屋の壁でも床でも天井からでもなく窓の外(*・・・)から響いているみたいなんだけど……。
而且仔细听这个声音,不知为何似乎不是从房间的墙壁、地板或天花板传来,而是从窗外(*・・・)回荡进来的样子……

 え? じゃあカイザーと引き離されて隣室に収監されたネスによる、怒りの壁ドンの線はないってこと?
啊?那也就是说,这不可能是被隔离到隔壁监禁室的奈斯出于愤怒而捶墙的动静咯?

「「————!!」」

 逡巡のうちに、恐らくふたりとも、似たような結論に至ったのだろう。或いはピッチ上と同様に、俺の思考に同調して理解ったのか。俺たちはバッと振り返って顔を見合わせ合うと、すぐさま、一斉に窓の方へ振り向き直した。そこには何の変哲も無い障子越しの窓だけがあって、格子状の影以外は何も映り込んでいない。
在犹豫不决中,恐怕我们俩都得出了相似的结论。又或者像在球场上那样,他们同步理解了我的想法。我们猛地回头对视一眼,随即同时重新转向窗户。那里只有一扇毫无异常的纸窗外框,除了格栅状的影子外什么也没映现。

 そのはずなのに。  本该如此才对。
 そのはずなのに——この全身に走る怖気、悪寒は……一体何なんだ?
本该如此才对——可这股窜遍全身的恐惧、恶寒……究竟是什么?

「……おい、世一」  "……喂,世一"
「……なんだよ、お前その先に続く言葉一言でも口にしてみろ、タダじゃ済まねーからな」
"……怎么着,你敢把后面那句话再说一个字试试,看我不收拾你"

「この村の名前は〝鬼泣村〟だったな」  "这个村子名叫'鬼泣村'"
「おい! 聞いてんのか!?」  "喂!听见没有!?"
「やけにおどろおどろしい名だと思わないか? 村長も鬼神がどうこうと言っていたじゃないか」
"不觉得这名字阴森得过分吗?村长不也说什么鬼神之类的"

「その先を口にすんなっつってんだよ!!」  "不是说了别把那种话说出口吗!!"

 震え上がる俺をよそに、カイザーはひどく冷静に、……いやちょっとワクワクしてそうな調子で、ペラペラとろくでもない仮定を述べはじめた。
完全不顾瑟瑟发抖的我,凯撒异常冷静……不对,甚至带着几分兴奋的语调,开始滔滔不绝地抛出那些荒谬的假设。

「つまりこの村に伝わる伝承は〝本物〟の可能性がある」
"也就是说这个村子流传的传说有可能是'真货'"

 おいやめろっつってんだろ。マジでやめろ。  喂都叫你住口了吧。真的快给我闭嘴。

「お前はそう思っているから恐れているわけだな世一ぃ、日本人はアニミズム思想が強く無宗教だなんだと抜かすわりには信心深いと聞いていたがよもや事実だったとは」
“你小子就是因为这么想才会害怕吧世一,我听说日本人虽然整天把无宗教泛灵论挂在嘴边,骨子里却迷信得很,没想到居然是真的”

 けど最早そう反論する元気すらもなく震えて縮こまり、耳を塞ごうとすると、それに気がついたかのようにふっとカイザーが俺に手を伸ばし、やけに力強く抱き寄せてくる。
 但我早已连反驳的力气都没有,只是颤抖着蜷缩身体,正想捂住耳朵时,凯撒仿佛察觉到般突然伸手,以惊人的力道将我拽进怀里。

「そんなに怖がるな、可愛らしく見えてきてしまうだろう。お前は全然ちっとも爪の先ほど、いや毛ほども可愛らしくない最強最悪のエゴイスト野郎で——つい先日も俺の鼻を明かして有頂天になった挙げ句、はね除けられるために握手の手を差し出して、キレられたらガッツポーズを決めていた異常者だというのに……」
“别怕成这样啊,会让我觉得你可爱起来的。你明明是个从指甲尖——不,从头发丝都跟可爱沾不上边的极端利己主义混蛋——前几天才让我吃瘪得意忘形,为了甩开我伸出的握手还摆出胜利姿势的怪胎……”

「宥めてんのか罵倒してんのかどっちかにしてくれねーかなぁ!?」
“你他妈到底是在安慰人还是在骂人啊!?”

「あいあい、世一くんはワガママねぇ。ともかくこの俺がいるうちは幽霊騒ぎなんて起きねーよ、さっきの音もラップ音でもなんでもない、庭にあった竹のなんかが動いただけだろ」
"哎呀呀,世一君真是任性呢。总之有本大爷在的地方根本不会闹鬼,刚才的声音既不是敲击声也不是别的什么,不过是院子里竹子的动静罢了。"

 そうしてカイザーは俺の世をポンポンと撫でさすりながら、あの青い目を真っ直ぐこちらへ向けながらそう言った。
凯撒边说边轻轻拍抚我的后背,那双蓝眼睛直直望过来。

「竹ぇ……?」  "竹子......?"

 俺は最早なんかカイザーにハグされてんな……ということまで頭が回らず、ぽかん、と首を傾げることしか出来なかった。
我连被凯撒搂住这件事都来不及反应,只能呆呆地歪着头。

 え、そんなのあったっけ……?  哎,还有这种东西吗……?
 庭なんて屋敷の中に通されるときにチラッと目にしただけだから全然覚えてないんだけど。
庭院什么的只是在被带进宅邸时瞥了一眼,完全没印象啊。

 ……でもこんだけ古めかしくて立派な屋敷だから、あってもおかしくないかもな。あのなんか……竹の中に水が通ってカンカン言うやつ。
……不过既然是这么古色古香又气派的宅邸,有也不奇怪吧。就是那种……竹子中间流水会发出叮咚声响的装置。

「シシオドシと言うらしい」  「据说叫做鹿威(惊鹿)」

 首を捻ってたら枕元のスマホで検索したらしいカイザーがそう呟いて教えてくれた。あ、そうそう、鹿威しね。前に家族で泊まった旅館で母さんが教えてくれたのにスッカリ忘れてた。
正歪着头思考时,凯撒似乎用枕边的手机搜索了一下,然后这样嘀咕着告诉了我。啊对对,是鹿威(惊鹿)啊。之前全家住旅馆时妈妈明明教过我的,结果完全忘光了。

 そっかあ、ならしょうがないか、真夜中でもカンカン言うのが風情なんだよな〜、なんて……。
 这样啊,那也没办法呢,就算大半夜叮叮当当响也算是一种风情嘛~,之类的……

「……ってそれでも怖いもんは怖いんだけど!? 俺は凜と違ってホラー映画嫌いなんだよ! 特に和製のじめっとしたホラー!!」
「……话虽如此该怕的还是怕啊!?我和凛不一样,最讨厌恐怖片了!特别是日本那种湿漉漉的恐怖片!!」

 いややっぱダメだった。   不行果然还是受不了。
 つーか本当に夜中もカンカン言うものなのか知らねーし、怖いもんは怖いわ! なんかあの一瞬の冷え切った村長さんの声とか妙に耳に残っててさあ! 背中から追いかけてくる! クソバカが……!
话说半夜里真的会叮叮当当响吗?不知道啊!可怕的东西就是可怕嘛!村长那一瞬间冰冷的声音莫名其妙地一直在耳边回响!感觉会从背后追上来!这该死的蠢货……!

「世一……お前正直この手の番組のカモすぎるぞ……」
"世一……你这家伙真的太容易被这种节目套路了……"

 腕の中でバタバタやり始めた俺を見ていよいよ打つ手なしと思ったのか、カイザーが思いっきり溜息を吐いてまた俺の背をさすった。「そんなに怖いなら歌でも歌えよ、うるささに幽霊とやらも逃げてくんじゃないか」そうして漏らされたのは半ば呆れ果てるような調子の声だったんだけど、俺はその呟きに一縷の望みを見いだす。
看着我开始在臂弯里扑腾挣扎,凯撒可能觉得实在没辙了,重重叹了口气又开始拍我的后背。"要是怕成这样不如唱个歌,吵得连幽灵都会逃走吧"虽然他说这话时带着半是无奈的语调,但我却从这句嘀咕里抓住了一线希望。

「それだな……!」  "就这么办……!"
「あ?」  "啊?"
「一番、潔世一、はちみつき○かんのどあめのCMソングいきます——!」
"第一棒,洁世一,蜂蜜柑橘喉糖广告歌开始——!"

 そして俺は、いつもついつい口ずさんでしまうお気に入りのあのフレーズをのびのびと歌った。
然后我自然而然地哼唱起那个总是不自觉挂在嘴边的喜爱旋律。

 15秒もかからず歌い終わった。  不到 15 秒就唱完了。
 一瞬で開いて閉じた俺の口に、カイザーがあからさまに眉を顰めて「なんだそれ……」みたいな溜息を吐く。
我瞬间张合的双唇让凯撒明显皱起眉头,发出"这算什么啊……"般的叹息。

「おい世一、Aメロしかねーじゃねぇか。一番で止まるな、歌を途中でやめるんじゃない」
"喂世一,怎么只有 A 段旋律啊。别在最精彩的地方停下,哪有唱歌唱一半的道理"

「うるせ〜メロディはメロディだろ! CMソングだからこれしかないんだよ!」
"吵死了~旋律就是旋律啊!因为是广告曲所以只有这段啦!"

「そんな一瞬じゃ幽霊だって気が削がれねーよ。チッ、仕方ない、俺が歌ってやる。子守歌にでもしてさっさとねんねしな、お子ちゃま世一」
"这么短的瞬间连幽灵都提不起劲。啧,没办法,老子来唱吧。就当摇篮曲赶紧睡你的觉去吧,小鬼世一"

「ハァ!? うるせー余計なお世話だわ、……って、え!?」
"哈啊!?烦死了要你多管闲事......等等,诶!?"

 そうして都合何度目かわからない溜息を零すと、ヤツは首を振り、大きく息を吸い込む。
就这样不知第几次叹气后,那家伙摇了摇头,深深吸了一口气。

「————え?」  "————诶?"

 カイザーは朗々と歌い始めた。  凯撒开始放声高歌。
 しかも何故か俺の耳元で歌い始めた。  而且不知为何开始在我耳边唱起歌来。
 あまりに意味不明な展開で(いやなんで耳元!?)普通ならぶん殴ってるところなんだけど、あまりに歌が上手すぎるせいで普通に聞き惚れてしまい、指一本動かなかった。
这发展实在太莫名其妙了(话说为什么要在耳边唱啊!?)换作平时早就一拳揍过去了,但因为唱得实在太好听,我竟听得入迷,连一根手指都动弹不得。

 そう、カイザーは、歌が上手かったのだ。  没错,凯撒的歌声确实惊艳。
 何言ってるかは全然わかんないにもかかわらずお前ってもしかして歌手? ってぐらいメッチャ上手かったんだけど、俺の記憶が正しければ新世代世界11傑に歌手兼業はいなかったはずだ。
虽然完全听不懂歌词在唱什么,但你这水平该不会是职业歌手吧?唱功简直好到离谱,不过根据我的记忆,新生代世界十一杰里应该没有兼职歌手的人才对。

 じゃあコイツ単に素で歌が上手いだけなのか。  这家伙单纯就是天生唱歌好听啊。
 ってか、今までムカつきすぎて全然意識したことなかったけど、もしかしてカイザー……めっちゃ声いいな…………。
话说回来,之前因为太火大完全没注意到,说不定凯撒……声音超级棒啊…………。

「何の曲…………?」  "这是什么歌…………?"

 それでついウッカリ気になってそう訊くと、歌い終わったカイザーは真顔のまま答える。
我不小心在意起来这么问道,唱完歌的凯撒依然板着脸回答。

Deutschlandliedドイツ国歌  《德意志之歌》

 嘘だろ。カラオケで君が代歌うみたいなチョイスじゃん。
 开玩笑吧。这选曲简直就像在 KTV 唱日本国歌一样离谱。

「好きな歌は他にあるが、ちゃんと歌ったことがあるのはこれだけだ」
"虽然还有其他喜欢的歌,但认真唱过的只有这首"

 あ〜、流石のカイザーでも国家は歌うワケね。国際試合とかだと最初に歌うしね。ってそれでこの美声はバグだろ! ふざけてんのかコイツ!
 啊~果然连皇帝陛下也要唱国歌呢。国际比赛之类的开场都要唱嘛。话说这美声根本是开挂吧!这家伙在耍人玩吗!

「なんだ、そんなに興奮して。嬉しいならもっと歌ってやろうか」
“怎么,这么兴奋啊。高兴的话我再多唱几首给你听?”

「いや別に……」  “不用了……”
「もののついでだ。子守唄にでもしておけ」  “反正顺手。就当摇篮曲凑合听吧”
「頼んでねぇ〜〜〜!」  “谁要听啊~~~!”

 なんか普通にカイザーが美声なのがムカつくのでやんやと手を上げてみるものの、このアホ皇帝、人の話をまったく聞かずに次の歌を歌い始める。
明明凯撒这家伙嗓音普通却这么好听真让人火大,我试着举手起哄抗议,但这个白痴皇帝根本不理人,自顾自地开始唱下一首歌。

 つーか一番得意なのが国家ってだけで、全然他の歌も歌えるじゃん!
 话说你最擅长的不是国歌吗?明明其他歌也都能唱得很好啊!

 今度は英語っぽいけどなに? ですぺ……いや全然聞き取れない。ていうか今更だけど歌だって認識すると自動翻訳止めるんだなこのイヤホン。
 这次好像是英文歌?德式……不对完全听不懂。话说现在才发现,这耳机一旦识别到歌声就会自动关闭翻译功能啊。

 さすが世界のMIKAGE、俺が思ってる数倍ぐらい技術が進んでいるのかもしれない。そのうちネコ型ロボットとか作りかねないよな。いやマジであの会社ならやりかねないと思ってるよ俺は。
 不愧是世界的御影集团,技术先进程度可能比我想象的还要高出好几倍。搞不好哪天连猫型机器人都能造出来。不,我是认真的,那家公司绝对干得出来这种事。

「ぅ……んん……ん…………」  "嗯……唔……嗯…………"

 などとゴチャゴチャ考えている間にも、カイザーの歌はしっとりと続いていく。そして普通に美声なのとローテンポの弾き語りみたいな歌い方だったせいで、意志に反して、ゆっくりと眠気が襲ってくる。
就在我胡思乱想之际,凯撒的歌声依然温柔地持续着。由于是标准的优美嗓音配合慢节奏的吉他弹唱,不知不觉间睡意便违背意志地缓缓袭来。

 ……こうなると、もういい時間だし、若干悔しい気はするけど、正直ここで寝ておくのが正解かもしれない。
……事已至此,虽说时间确实不早了,心里多少有点不甘心,但老实说在这里睡下或许才是正确答案。

 明日はいよいよ温泉ロケ仕事があるわけで、幽霊が怖くて眠れませんでしたなんて言うわけにもいかないしさ。
毕竟明天终于要开始温泉外景拍摄工作,总不能说自己因为害怕幽灵而失眠吧。

「ぐぅ……おやすみ……カイザー…………」  "嗯……晚安……凯撒…………"

 そういうわけで、俺は今日このときばかりは負けを認め、大人しく意識を手放すことにした。
就这样,此时此刻我决定认输,乖乖地放弃意识。

 何故かカイザーは俺をハグしたままだったし、そもそも耳元で歌われているという状況はどう考えても異常だったんだけど、色々な意味で疲れていたのである。
不知为何凯撒依然抱着我,而且本来在耳边唱歌的状况怎么想都很异常,但我在各种意义上都已经精疲力尽了。

「——ああ、お休み、世一」  "——啊,晚安,世一"

 薄れていく意識の中で、最後に俺は歌い終わったカイザーの小さな囁きを聞いた。
在逐渐模糊的意识中,我最后听见了凯撒轻声的呢喃。

 ……あれっ? ていうか、歌い終わったって……歌、歌っちゃいけないんじゃなかったっけ?
……咦?等等,唱完了歌……不是说不可以唱歌的吗?

 最後にほんの一瞬、そんな考えが脳裏を過ったけど、眠気に負けてそれ以上のことは何も考えられず……すやすやと穏やかな眠りに落ちていった。
在最后一瞬间,这样的念头闪过脑海,但终究敌不过睡意,再也无法思考更多……就这样安稳地沉入了梦乡。


 ——思えばこのとき、俺たちはまだ何も分かっていなかったのだ。
——回想起来,那时候的我们还什么都不明白。

 この企画が、どれほど恐ろしいものなのかということを。
这个企划究竟有多么可怕。

 本当の意味では——これっぽっちも理解していなかった。
从真正意义上来说——我连一丁点儿都没能理解。


◇ ◇ ◇


 翌朝俺の目を醒ましたのは、夜のうちに仕掛けたスマホのアラームではなく、バタバタという激しい足音だった。
次日清晨将我惊醒的,并非夜间设置的手机闹铃,而是一阵慌乱的急促脚步声。

「…………うぇ? 誰だよ、朝っぱらから……」  「…………啊?谁啊,一大清早的……」

 予想外の音に鼓膜を叩かれ、のそのそと布団から起き上がる。目元をゴシゴシと手の甲でこすりながらあくび混じりに隣の布団を見ると、カイザーは埴輪みたいなポーズをしてまだ寝こけているうえ、寝癖がとんでもないことになっていた。コイツもしかして毎朝あの髪型になるまでセットしてたのか……。
被突如其来的声响震得耳膜发颤,慢吞吞从被窝里爬起来。用手背揉着惺忪睡眼打哈欠时,瞥见隔壁被窝里的凯撒像埴轮人偶般蜷着身子酣睡,那头乱发简直惨不忍睹。这家伙该不会每天早晨都要把头发折腾成这副德行才罢休吧……

「っつか、カイザーじゃないなら誰だよこのクソ迷惑な足音……?」
「话说要不是凯撒,这烦死人的脚步声到底是谁的……?」

 ぼんやりと当たりを見回すのと同時に、足音が限界まで近づいてきて、バン、と部屋の戸が開く。驚いてそちらを仰ぎ見ると、入り口に、血相変えて走ってきたと言わんばかりの様子の氷織、黒名、そしてネスが立っていた。ネスは未だ夢の中にいる様子のカイザーを認めると、ピュッと飛んできてものすごく慣れた手つきでカイザーを夢の国からしばき倒し、目を醒まさせる。
正当茫然环顾四周时,脚步声已逼近门前,随着"砰"的巨响,房门被猛地推开。惊愕抬头望去,只见冰织、黑名和涅斯三人气喘吁吁地杵在门口,脸色难看得活像刚经历生死时速。涅斯发现尚在梦乡的凯撒后,一个箭步冲上前,以娴熟到令人发指的手法将凯撒从梦境国度暴揍回现实世界。

「……おいネスなんだよ、まだ練習時間じゃ……」  "……喂内斯,现在还不是训练时间……"
「クソ起きてくださいカイザー! ここはミュンヘンでも青い監獄ブルーロックでもなく日本のどこかにある謎の村です! そのうえ……とんでもないことが……!」
"混蛋快给我醒醒凯撒!这里既不是慕尼黑也不是蓝色监狱,而是日本某个莫名其妙的村子!而且……出大事了……!"

 ぐずるカイザーの頬をパシパシしばき、なんとか起こさせて、ネスが荒い息を吐く。単に走ってきたからというのもあるだろうけど、ぜえぜえと胸を喘がせるネスの様子には、それ以上の何かを感じさせるモノがあった。それでもネスは懐からクシを取り出すと、やっとのことで起き上がったカイザーのボサボサの寝癖を整えはじめる。そしてそれを認めた黒名と氷織が、順繰りに頷きあい、俺とカイザーに向けて唇を開く。
内斯啪啪拍打着凯撒赖床的脸颊,总算把人弄醒后粗重地喘着气。虽然也有刚跑完步的缘故,但内斯这副上气不接下气的模样显然还藏着更严重的事态。即便如此,内斯仍从怀里掏出梳子,开始给勉强爬起来的凯撒整理那头乱蓬蓬的睡翘头发。目睹这一幕的黑名和冰织交替点头后,对着我和凯撒开口道。

「緊急、緊急。潔、落ち着いて聞いて欲しい」  "紧急情况,紧急情况。洁,希望你冷静听我说"
「な、なんだよ、みんなして……?」  "你、你们这是怎么了,大家都……?"

 それにものすごく嫌な予感がして、俺は冗談だろ? とでも問いかけるようにふたりの顔をまじまじと見上げる。
一股极其不祥的预感涌上心头,我死死盯着两人的脸,仿佛在质问"这该不会是在开玩笑吧?"

「——えらいことになったで、潔くん。驚かんでよう聞いてほしいんやけど、…………村長さんの奥さんが失踪してしまったんよ。この村のどこにもおらん、村長さんは——〝神隠し〟やって」
"——出大事了,洁君。希望你能冷静听我说...村长的夫人失踪了。找遍全村都不见踪影,村长说这是——'神隐'"

 けれどその問いに氷織が返した答えは、想像を遙かに超えて非情で——そして最悪で。
然而冰织给出的回答,远比想象中更加残酷——而且糟糕透顶。

 その言葉に俺とカイザーは思わず力なく唇を開いて、顔を見合わせ、それから——揃って間抜けな声を漏らしてしまった。
听到这句话,我和凯撒不由得无力地张开嘴,面面相觑,然后——同时发出了愚蠢的声音。


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