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【7/13新刊サンプル②】双剣湯けむりドッキリTV/有栖川的小说

【7/13新刊サンプル②】双剣湯けむりドッキリTV
【7/13 新刊样图②】双剑温泉整蛊 TV

23,145字46分钟

7/13 ブルーローズの浄潔 星願2025  7/13 蓝色玫瑰的净洁 星愿 2025
西3ホール B48b キャラメルスカッチ  西 3 展厅 B48b 焦糖贴纸

「双剣湯けむりドッキリTV」B6/84p/全年齢  《双剑温泉整蛊 TV》B6 尺寸/84 页/全年龄向
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温泉ロケ企画と言われてやってきたカイ潔が、山奥の村で起こる怪奇連続失踪事件に巻き込まれて、事件を調査したり相部屋で添い寝したりちょっと意気投合したりする話。ギャグです!!!ロケスタッフなどのモブがそこそこ出ます。
被邀请参加温泉外景企划的凯洁,在深山村落遭遇连环离奇失踪事件,展开调查、同房共寝、渐生默契的故事。纯属搞笑!!!会有较多外景工作人员等路人角色登场。

一応noeg終了後のつもりで書いてますが全体的に謎時空の謎時系列っぽいです。ふんわり読んでいただけますとさいわい……!
虽然设定在 noeg 事件结束后,但整体时间线比较混乱模糊。若能轻松阅读便是我的荣幸……!


サンプルでは見やすいように改行多めですが、実際の本ではわりと詰まり気味のレイアウトになっています。
样本中为便于阅读增加了换行,实际成书排版会较为紧凑。


当日は何卒よろしくお願い致します!  当天还请多多关照!

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 拝啓、お父さん、お母さん。   敬启,父亲大人、母亲大人。
 俺は今BLTVの企画で鬼泣村という場所に来ていますが、そちらに帰れるのはいつになるのか、ちっとも予想が付きません。
我现在因为 BLTV 的企划来到了一个叫鬼泣村的地方,但完全不知道什么时候才能回去。

 何故かというと、とんでもない山奥のお屋敷で突然、怪奇現象としか言いようのない失踪事件が起こり、電波は完全に遮断され、おまけに帰る道すらなくなってしまったからです。
因为在这深山老宅里突然发生了只能用灵异现象来形容的失踪事件,信号完全被切断,连回去的路都找不到了。

 ——俺はこれからいったいどうなるんでしょうか?  ——我接下来到底会怎么样啊?


「ここや、ふたりとも! 奥さんが失踪したと思しき場所は——!」
"就是这里,你们两个!夫人失踪的地方应该就是——!"

 氷織に先導されるまま、屋敷の中を急いで移動する。あまりに氷織たちの様子がマジなもんだから、眠いなんてとても言っている場合ではなく、俺もカイザーも、走っているあいだにすっかり目が醒めてしまっていた。ネスによってとりあえずのセットを施されたカイザーの髪はいつもよりもやや膨らんでいるが、そこを面白おかしくからかっている暇すらない。とにかく一大事だ。
被冰织引领着,我们在宅邸中匆忙穿行。由于冰织他们的神情实在太过严肃,根本顾不上说什么困倦之类的话,我和凯撒在奔跑途中已经完全清醒过来。虽然凯撒的头发被涅斯临时打理得比平时略显蓬松,但现在连调侃这个的闲情都没有。总之情况非常紧急。

「村長さん——!」  "村长——!"

 扉が開けっぱなしの部屋の中に、みんなしてドタドタと上がり込む。けれど部屋の中に座り込んでいた村長さんは、それを咎める素振りすら見せなかった。
众人咚咚咚地闯进敞着门的房间。但坐在屋内的村长连责备的意思都没有显露。

 その理由は村長さんの視線の先を見れば聞くまでもなく明らかだ。
原因只要顺着村长的视线方向望去便不言自明。

「なんだよこれ……」  "这到底是什么啊……"

 視線の先、畳の、真ん中。そこには大きな釘で、一枚の紙が縫い付けられている。
视线前方,榻榻米的正中央。那里用大钉子钉着一张纸。

 紙には、新聞の文字を切り貼りして作った無機質なメッセージが記されていた。
纸上是用剪报拼贴而成的冰冷讯息。


 山のなかばら奥庭に  山间庭院深处
 からすが三羽とまって  三只乌鸦停驻枝头
 ひとつからすが言うことにゃ  其中一只开口言道
 おらが在処の祠の鬼さ  吾等栖身祠堂的鬼怪啊
 わけて欲しさがうた唄い  渴望分享便唱起歌谣
 まずはひとりめ欲しがった  第一个想要的是
 蔵の前にはこうがいひとつ   仓库前只剩一个空酒瓶


「……いつもは朝一番に窯を見に来る女房がおりませんで、探しに行ってみたら、部屋の中、この有り様で……」
"……平时总是第一个来看窑的妻子不见了,我去房间找她时,发现里面竟是这般模样……"

 言葉を失ってしまった俺たちを見て、村長さんが切れ切れに言う。無理もない。奥さんがいなくなってしまったのだ。「いつも真面目で、こんな悪戯をするような性格じゃあ……」丸まった背中に掛ける言葉がない。こんなの……こんなの、まるで悪い冗談みたいだ。
看着哑口无言的我们,村长断断续续地说道。这也难怪——毕竟他的妻子失踪了。"她向来认真,根本不是会开这种玩笑的性格……"望着他佝偻的背影,我实在找不出安慰的话。这简直……简直就像个恶劣的玩笑。

「今朝から村の者が総出で探しとりますが、どこにも見つかっていないそうな。そん代わり、蔵の前にこんなものが」
"从今早起全村人就都在找了,可哪儿都没找着。不过呢,仓库前头倒是发现了这个物件"

 そう言って村長さんがそっと差し出したのは、花の飾りが綺麗にあしらわれたかんざしだった。
村长说着轻轻递来的,是一支点缀着精美花卉纹样的簪子。

 それは俺の記憶が正しければ、昨日見かけた奥さんの頭についていたはずのものでもあった。
若我记忆无误,这分明是昨日所见那位夫人发间佩戴之物。

「三十年前に女房に贈ったもんです。……〝こうがい〟言うのは昔の言葉でかんざしのことでして、…………女房はあの紙にある詩の通りになったんじゃあないかと」
"三十年前送给内人的物件。......所谓'笄'是古时候对簪子的称呼,......内人怕是应了那张纸上写的诗谶啊"

 あの詩も、鬼泣村に伝わる伝承のひとつ——手毬唄です。
那首诗歌也是鬼泣村传承的民谣之一——手鞠歌。

 村長さんの言葉に、俺はゾッとして振り返った。  村长的话让我毛骨悚然,猛地回头。
 氷織も黒名もネスも、たぶん、俺と同じような顔をして突っ立っていた。そんな中にあって、カイザーだけが、冷静な顔をして何か考え込んでいる。
冰织、黑名和涅斯大概都和我一样僵在原地。唯独凯撒保持着冷静的表情,似乎在沉思什么。

「——警察は?」  "——警察呢?"

 それからややあってカイザーがそう訊ねると、村長さんは力なく首を横へ振った。
片刻之后,当凯撒这样询问时,村长无力地摇了摇头。

「それが……さっき確かめたところ、村全体に供給されとる電線が設備の根本で切断されとって……。そうなるとネットも繋がらん、手詰まりです」
"问题是......刚才确认过,给整个村子供电的电缆在设备根部被切断了......这样一来网络也连不上,完全束手无策了"

 最悪の返答に、思わずウッと声を漏らしてしまう。いやだってしょうがないじゃん、こんな状況名探偵コ○ンでしか見たことねーよ! 動揺して当然だってマジで!
听到最糟糕的回答,我不由得"呜"地漏出声音。但这也没办法吧!这种状况只在名侦探柯○里见过啊!会慌乱也是理所当然的吧!说真的!

「ロケバスに設置された衛星通信機は?」  "那辆外景巴士上装的卫星通讯设备呢?"

 そんな中、ひとりだけ冷静なカイザーが淡々と確認のために口を開く。するとその問いに、今度は村長さんでは無く予想外の方角から返事が戻って来た。廊下の方からまたバタバタと足音が響いてきて、ADの田中さんが慌てた様子で部屋に駆け込んできたのだ。
就在这混乱中,唯有凯撒保持着冷静,他淡淡开口确认情况。然而回应这个问题的并非村长,而是从意想不到的方向传来。走廊再次响起慌乱的脚步声,只见 AD 田中慌慌张张地冲进了房间。

「それもダメだ! 夜中の間に何者かに破壊されてたらしくてボコボコに……ブッ壊れて使い物にならないうえ、……ろ、ロケバス停めてた村の入り口が土砂崩れで塞がってる……」
"那个也不行!半夜好像被什么人破坏得坑坑洼洼......彻底报废没法用了,而且...停着转播车的村口因为山体滑坡被堵住了......"

 そしてもたらされた想像を絶する最悪の答えに——さすがのカイザーもそこで舌打ちを漏らした。
面对这个超出想象的最坏消息——就连凯撒也不禁咂了下舌。


◇ ◇ ◇


 まずはここで状況を整理してみよう。  首先让我们在这里梳理一下现状。
 最初に説明を受けた広間に、この村に今いる人たちを全員集めてもらって、話し合った結果わかったことは以下の通り。
最初被告知情况的厅堂里,聚集了目前村里所有的人,经过讨论后得出以下结论:


・昨夜の村には、外から来た俺たち+スタッフの十一人と、失踪した奥さんを入れた村人二十五人、計三十六人が滞在していた
・昨晚村里共有从外部前来的我们+工作人员 11 人,以及包括失踪妻子在内的村民 25 人,总计 36 人滞留

・村と麓をつなぐ唯一の道が土砂崩れで潰れてしまったため、現在この村から出る手段はない
・由于连接村庄与山脚的唯一道路因山体滑坡被毁,目前没有离开这个村子的方法

・電話やインターネットも復旧の望みが持てないほどに設備破壊し尽くされており、外部との自発的な連絡は望めない
・电话和网络设备已完全损毁到无法指望修复的程度,无法主动与外界取得联系

・電線は切れたが、停電対策として村に自家発電機があるのと、食料の買い置きがそれなりにあるので、三十六人いても五日間くらいはどうにかなるだろう
・虽然电线断了,但村里备有应急发电机作为停电对策,食物储备也相当充足,即使有三十六人也能勉强维持五天左右

・本来の予定ではあと三日で撮影チームが帰宅する予定なので、何も出来なくても早ければ五日目くらいには救助が来る可能性はある
・按原计划拍摄团队三天后就会返程,所以即便束手无策,最快第五天左右也可能等来救援

・だがそれはそれとして失踪事件の犯人がわからないので四日待ってれば安全とは言えない
・但话说回来,由于失踪案的真凶尚未查明,不能断言等待四天就绝对安全

・村長さんの奥さんが最後に目撃されたのは昨日の就寝時、証言は村長さんによるもの
・村长夫人最后一次被目击是在昨晚就寝时,证词由村长提供

・奥さんの部屋に残されていた手紙の文面は、この鬼泣村に古くから伝わる伝承——手毬唄の一番を引用したもの
・留在夫人房间的信件内容引用了这个鬼泣村自古流传的传说——手球歌的第一段

・手毬唄は三番まであるが、古い口伝のため、村長さんも記憶が曖昧
・手球歌共有三段,但由于是古老的口头传承,村长记忆也很模糊


 うん。詰みだ。完全に詰んでいる。   嗯。死局了。完全是死路一条。

「な、なんてことしてくれてやがるんですか——!?」
"你、你这是在干什么啊——!?"

 その証拠に現状を把握したネスが頭を抱えて発狂し始めたけど、正直この状況では無理もないと思う。
作为证据,意识到现状的涅斯抱头开始发狂,不过说实话这种状况下也情有可原。

「世一たちはいーですよ、世一たちは! カイザーと僕は五日後の飛行機で帰るんですよ!?」
"世一他们没问题啦,世一他们!我和凯撒可是五天后就要坐飞机回去的啊!?"

 前言撤回。あんなことがあってまだちゃんとカイザーを心配してるのは人ができてると思うけど、その代償に俺たち三人の安否を全投げしたので差し引きでマイナス一億点だ。
我收回前言。虽然经历了那种事还能好好担心凯撒说明他为人不错,但代价是把我们三个的安危完全抛之脑后,所以综合评定负一亿分。

「便もとっくに予約済みなんです! 一生この村に閉じ込められたらどーするつもりですか!? もしこんなところでドイツの未来を担うカイザーの選手生命が絶たれたら……! BLTVは責任取れるんです!?」
"房间早就预订好了!要是被一辈子困在这个村子里可怎么办啊!?要是德国未来之星凯撒的职业生涯在这种地方断送的话……!BLTV 负得起这个责任吗!?"

 とはいえネスの言うことにも一理はある。  不过尼斯说的话也不无道理。
 特にBLTVの責任を追及した点なんかは素晴らしい、花丸百点だ。そう思ってふっとスタッフたちの方を振り返ると、あわわと頭を抱えたまま固まっているAD田中さんの代わりに、隣に座っていたカメラマンの山田さんが口を開く。
尤其是追究 BLTV 责任那段简直精彩绝伦,我给满分。这么想着转头看向工作人员时,发现本该回应的 AD 田中正抱头僵在原地,反倒是邻座的摄像师山田先生开口了。

「責任は……取らせます!」  "这个责任......我们一定会负!"

 山田さんは必死だった。ネスの気迫にだって負けてない。
山田先生拼尽了全力。那份气势甚至不输给涅斯。

「上のやつらをどつき回して市中謝罪会見行列にしてでも取らせます! 僕、山田太一の命を賭けて!」
"就算要把上面那群家伙揍个遍,让他们排着队在市中心开道歉发布会,我也一定要拿到!我山田太一赌上这条命!"

 山田さんそんな名前だったんだ。  原来山田先生叫这个名字啊。

「集合場所での顔合わせの時言ってたぞ世一ぃ」  "在集合地点碰头的时候就说过了啊,世一"

 思わず口から零してしまっていたのか、隣から肘打ちとセットで小言を言われた。クソすぎるので肘を打ち返したら頭を引っ掴まれそうになり、しかしすんでのところで、衝撃映像をスクープしてやるぞという気合いに満ちまくった山田さんと目があい、一瞬で乱闘はお開きとなった。
不知何时脱口而出的抱怨,换来了邻座一记肘击外加碎碎念。这他妈太糟心了,我反手回敬一肘子时差点被揪住头发,却在千钧一发之际与干劲爆棚的山田四目相对——那家伙满脑子都是要抢拍劲爆画面的执念,于是这场混战瞬间偃旗息鼓。

 つーかネスは完全に放り投げてくれやがってるけど、俺たちもフツーによかないんだよ。絵心さんにもらった修行メニューがあるし、そもそもU−20W杯があんの! 勝ち進んでお前らドイツをぶっ倒すんだよ! そのための資金繰りでこんなワケわかんねーロケに参加するハメになってんだからさぁ!
 话说涅斯那混蛋完全把我们当弃子了吧?但咱们也不是好惹的!既有绘心先生特训菜单加持,更别说 U-20 世界杯就在眼前!老子们要一路杀进决赛干翻你们德国队!要不是为了筹措经费,谁他妈要来参加这种莫名其妙的鬼外景啊!

「ハァ……こうなりゃ俺たちに出来るのは、このクソ怪事件の真相をどうにかして突き止めることだけだな」
"哈......事到如今,咱们能做的只有想办法查明这桩诡异事件的真相了"

 そんな俺の声なき叫びを知ってか知らずか、カイザーが深く溜息を吐いてあたりを見回した。その言葉に俺たちはぽかんと顔を見合わせ、村人達がザワつく。スタッフたちは企画の内容を変えようかとごにょごにょ小声で話しあっている。マジでこの人達のこの根性だけは見上げたもんだと思う。普通この状況の中でそんな気分になれる? ある意味プロだ。
 不知是否听见了我无声的呐喊,凯撒深深叹息着环视四周。这番话让我们呆愣着面面相觑,村民开始骚动。工作人员正窸窸窣窣商量着是否要更改企划内容。说真的就凭这帮人的专业精神,我打心底佩服——正常人谁能在这种状况下保持工作状态?从某种意义来说确实是职业级。

 そんな周囲の動揺を確かめながら、再び溜息を吐き、カイザーが口を開く。
他一边观察着周围人的动摇反应,再次叹了口气,凯撒开口道。

「そのためにも現場の徹底的な検証とこの村の伝承に関する調査は絶対に必要だ。警察が来られないことも考慮して現場は保存する必要がある。村長、悪いが寝泊まりは別の部屋でしてくれ。出来れば相部屋でな」
"为此必须对现场进行彻底勘查,并调查这个村子的传承。考虑到警方无法前来,必须保护好现场。村长,不好意思请你们到别的房间就寝。最好是能同住一间。"

「あ、はあ、それは……そうですな」  "啊,好、好的...确实应该这样"
「その上で、先ほどの詩について話を聞きたい。この村に伝わる手毬唄だそうだが、歌詞に改変などは認められないんだな?」
"另外我想了解刚才那首诗的情况。听说这是村里流传的手球歌?歌词应该没有经过改动吧?"

 そうしてテキパキと述べられた内容に、村長さんはこくりと頷いた。
村长听完这番干脆利落的陈述,轻轻点了点头。

 カイザーはそれを受け、頭を抱えて首を振る。  凯撒闻言抱头摇晃。

「であればやはりこれは、見立て殺人の類と見て間違いないだろう」
"既然如此,这果然还是应该归类为预谋杀人案吧"

 ひどく静かな声でカイザーが言った。  凯撒用极其平静的声音说道。
 その言葉にあたりの人々——ネスや氷織も含む——が更なるざわめきを起こしたけど、俺と黒名は告げられた単語があまりにも突拍子なさ過ぎたせいでぽかんとしていた。
听到这句话,周围的人们——包括涅斯和冰织在内——都发出更大的骚动声,但我和黑名因为被告知的词汇实在太离谱而呆若木鸡。

 え、何、どゆこと?  诶,什么,怎么回事?

「殺人!? なんで!?」  "杀人!?为什么!?"

 それで間抜けでも構わないと思いっきり動揺して説明を求めると、カイザーは「ハァ〜……」と教本に載せられそうなぐらいお手本通りの嫌味声を漏らし、肩を竦めて見せる。
于是我顾不上显得蠢笨,拼命慌乱地要求解释时,凯撒发出"哈啊~……"一声教科书般标准的嫌恶叹息,耸了耸肩膀。

「見立て殺人ってのは、推理小説でよくあるヤツで——歌詞に合わせて殺人ないしは犯行を行うタイプの事件をこう呼ぶ。こんなYOKOMIZOみてぇな事件、現実でも起こるとは思っていなかったが……」
"所谓比拟杀人,是推理小说里常见的套路——就是根据歌词内容实施杀人或犯罪行为的案件类型。虽然横沟正史式的案件,我没想到现实中真会发生……"

「は? 何それ?」  "哈?这啥玩意儿?"
「お前は自国の本すら読んでないのか世一」  "你连自己国家的书都不看吗世一"
「いやサッカー以外のことはよくわかんなくて……」  "呃除了足球以外的事情我都不太懂……"
「名著だ、読め、オススメは『悪魔の手毬唄』」  "这是名著,快读,我推荐《恶魔的手球歌》"

 今の状況に一番合ってるからな、まあここにはインターネットすらないからたぶん読む術はないが。カイザーがものすごい早口で捲し立てた。なんかちょっとオタクっぽかった。そう、たとえるならば……推理モノオタク。
因为最符合现在的状况嘛,不过这里连网络都没有估计也没法读。凯撒语速飞快地滔滔不绝起来,莫名有点宅男气质。没错,要说的话...就像个推理宅。

 もしかしてコイツ、こういう推理ごっこが趣味なのでは? 愛読書、ホームズ(これなら俺でも知ってる)とかだったりしない?
这家伙该不会是把这种推理游戏当爱好吧?难道爱读的书是福尔摩斯(这个连我都知道)之类的?

 まあコイツが感情移入できそうなのはどっちかというとモリアーティ教授の方だと思うけど。
不过要说他能共情的角色,我觉得更像是莫里亚蒂教授那边呢。

「とにかく今朝の事件で特筆するべきは、歌詞に含まれていた『わけて欲しさは唄うたい』という部分だろう」
"总之今早事件最值得注意的,是歌词里那句'想要分离却唱着歌'的部分吧"

 この詩が正しければ、結びつく話がある。  如果这首诗属实,那就有与之关联的线索。
 俺の頭のなかの色々をどこかへ押しやるように、カイザーの淡々とした声が推測を続けていく。ってかコイツ、当然のようにあのメモの内容を前提にしてるけど、思いっきり手書きの日本語なのにめっちゃ正確に把握して暗記してるな……。ホントに日本語勉強したのか、しかもたぶん、監獄にいるあいだに?
凯撒用平淡的声音继续推理,仿佛要把我脑中杂念全部推开。话说这家伙,居然理所当然地把那张便条内容当作前提,明明是用日语手写的却记得一字不差……真学过日语啊?而且大概率是在蹲监狱期间学的?

 つまりさ……俺を煽るためだけに常用漢字から外れた漢字もキッチリ勉強したってこと……?
也就是说……他为了挑衅我,连非常用汉字都认真钻研过……?

 コイツの情熱もなんなんだよ。BLTVスタッフ並だよその執念。
这家伙的热情是怎么回事啊。简直和 BLTV 工作人员不相上下的执念。

「昨日の説明の終わりに村長が話していた警句だ。『夜中に歌うな。鬼神がソイツを欲しがって連れて行く。歌った張本人がどいつかを突き止めるまで手当たり次第に』——つまり誰かが夜中に歌ったのが、この事件のトリガーになった可能性がある」
"这是昨天说明会结束时村长说的警句。'半夜别唱歌。鬼神会想要那家伙并带走他。直到查出唱歌的是谁之前会随机抓人'——也就是说有人半夜唱歌可能是这起事件的导火索"

 そしてカイザーは俺の胡乱な現実逃避を無視してテキパキと現状を整理し終え、俺の意識を現実に戻し、周囲に緊張感を走らせまくった。
然后凯撒无视我混乱的逃避现实行为,利落地整理完现状,把我的意识拉回现实,让周围瞬间充满紧张感。

「そ、それは……」  "那、那个......"
「まさかそんな……」  "不会吧……"

 話を聞いて、スタッフ達がコソコソと何かを話し込み出す。あ、この反応、俺でも分かりますよ。このスタッフたち、歌ったな、昨日の夜。顔に脂汗とか滲んでるもん、全然隠し切れてないよ。村人の人たちもえっ……マジで……みたいな顔してるし。
听完这番话,工作人员们开始交头接耳地嘀咕起来。啊,这种反应连我都看懂了。这些工作人员昨晚绝对唱了歌。脸上都渗出油汗了,根本藏不住嘛。村民们也都露出"诶...真的假的..."的表情。

 ——まあ俺とカイザーも歌ったんですけどね!  ——不过我和凯撒也唱了就是了!

 てかやっべえよ……見た感じ俺とカイザー入れたら五人ぐらいは歌っちゃってるじゃん!
话说糟了...看这情况连我和凯撒算进去的话,至少有五个人唱过了啊!

 そりゃ〜、伝承通りのことが起こったって仕方ないよな——ってんなわけあるか! いくら山奥つったって、ここは現代日本だぞ!
说什么"既然是传说中会发生的事那也没办法"——开什么玩笑!就算是在深山老林,这里也是现代日本啊!

「ああ、俺もだからといって鬼神とやらの仕業だなんざ言うつもりはない。ほぼ確実に人の手による犯行だろうな」
"啊,我也不是说这就是什么鬼神作祟。几乎可以肯定是人为的犯罪吧"

 そんな俺の声なき叫びを代弁するかのように、顎に手を当てて考え込んでいる様子のカイザーが呟く。「だいたい『鬼神様』なんて存在がファジーすぎる、非科学的だ」顎に手をあてて考え込み、そしてややあって、力なくふるりと首を振る。
仿佛代替我发出无声的呐喊般,正托着下巴沉思的凯撒低声说道。"说到底'鬼神大人'这种存在太模糊了,根本不科学"他托着下巴陷入沉思,片刻后无力地摇了摇头。

「あくまで、見せかけるための最低限の条件に伝承を用いただけだろう。コレが事件の始まりにすぎないと俺たちへ示すために。……だがそうなると問題がひとつ残る。犯人の思惑がまったく分からない」
"说到底,凶手只是利用传说来制造最低限度的伪装条件罢了。为了向我们表明这不过是事件的开始。......但这样一来就留下一个问题。完全猜不透犯人的意图"

「確かに……まず村長さんの奥さんを失踪させた動機がわかんないよな」
"确实……首先搞不懂村长夫人失踪的动机啊"

 その戸惑いが見え隠れする声に俺が小首を傾げると、カイザーは何故か俺の肩に手を置いて頷いた。
听到这带着困惑的声音,我微微歪头,凯撒不知为何把手搭在我肩上点了点头。

「その通り、世一くんにしては賢いな」  "说得对,世一君这次倒是挺机灵"
「カメラがあったことに感謝しろよお前」  "你小子该感谢有摄像头在"
「分からないのは動機だけじゃないって話だ」  "搞不明白的何止是动机啊"

 そもそもだ、わざわざ十一人も余所者がいる状態でやる理由もわからない——肩に載せた手をするすると動かしながら(なんだろこの動き……)カイザーが息を吐く。「部外者の仕業に見せかけるためか? それとも後々俺たちに手をかけてその狙いをぶらすため? 或いはカメラに撮らせること自体が目的か? 推理の材料が乏しいせいでどの説にも説得力が出ない……」そこから続けて告げられる言葉になるほど確かになーと頷いていると、氷織と黒名がちらっと俺ら——やけに俺の肩見てる気がするけど多分気のせいで、たぶん用があるのは推理しているカイザーの方だろう——を見て、顔を見合わせあう。
说到底,我实在想不通为什么非要挑有十一个外人在场的时候下手——凯撒一边缓缓移动搭在我肩头的手(这动作什么意思啊...)一边叹气。"是为了伪装成外人作案?还是打算之后对我们下手时转移目标?又或者让摄像头拍到本身就是目的?线索太少导致每种推测都缺乏说服力..."听他继续分析着,我不由得点头附和"确实啊",这时冰织和黑名突然瞥向我们——总觉得他们特别关注我的肩膀大概是错觉吧,应该是有话要对正在推理的凯撒说——两人交换了个眼神。

「……分からないことだらけで嫌んなるなぁ。僕ら、この状況でどないしたらえぇの?」
"...全是未解之谜真让人烦躁。我们这种处境到底该怎么办?"

「不安、不安。犯人の手がかりもないとなると、身動きが取れないぞ。せめて村にいるのかふもとに降りたのかが分かっていれば……」
"不安,太不安了。连犯人的线索都没有,根本无从下手。至少该弄清楚对方还在村里还是已经下山了..."

 ふたりの言うことはもっともだった。  两人的话确实有道理。
 せめて……せめて犯人がこの村から消えていてくれれば。
至少……至少希望犯人已经离开这个村子。

 これ以上の・・・・・事件を起こす気がない場合、犯人は一刻も早く現場から離れたいと考えるはず。であれば少なくとも、助けが来るまでの間、怯えて過ごす必要はなくなるのではないか……。
如果犯人无意再制造更多事端,应该会想尽快逃离现场。这样的话,至少在我们等到救援前,就不必一直提心吊胆地过日子了吧……

「——いや、それはないだろうな」  "——不,应该没这种可能"

 けれどそんな俺たちのか細い希望も、カイザーの言葉によって両断され消えていく。
然而我们这微弱的希望,也被凯撒的话语斩断消散。

「土砂崩れが起きたと思われるのは、十中八九『ドン!』という爆音が響いたときだ。俺のスマートウォッチが狂ったのでなければ午前一時頃。そんな時間に、しかも豪雨のなか下山するのは自殺志願者ぐらいのものだ。わざわざ見立て殺人を起こすような輩がひとり処分してそのまま消えるとは俺には思えないな」
"推测山体滑坡发生的时间,十有八九是在听到'轰!'的爆炸声时。如果我的智能手表没出故障,那应该是凌晨一点左右。那种时间点,再加上暴雨天气下山,除非是存心想自杀的人。我不认为会有人处心积虑制造伪装杀人案后,处理掉一个人就消失无踪"

「つまり……カイザー、キミはこの小さな村の中に犯人がまだいると確信しているの?」
"也就是说...凯撒,你确信凶手还藏在这个小村庄里?"

「ああ。無論、犯人がこの場にいる三十五人の誰も知らない全くの第三者という可能性もあるが」
"没错。当然也存在凶手是现场三十五人都完全不认识的第三者的可能性"

 呆然とした様子でネスが訊ねると、カイザーは静かに頷いた。
当尼斯茫然发问时,凯撒只是静静点了点头。

 なんにせよその見解については変わりないと、低く、低く、静かな声音で、人間のあくどい部分など見慣れているとでも言わんばかりに。
 无论如何关于这个见解都不会改变——他用低沉又低沉、平静得近乎冷酷的声音说着,仿佛在宣称早已看透人类所有的卑劣之处。

「どちらにせよ、共にこの山奥に閉じ込められている状況に変わりはあるまい。相手が人間である限りな……」
"反正,我们同样被困在这深山里的处境不会改变。只要对方还是人类的话......"

 そうしてひどく冷え切った声音で囁かれた台詞に、言い返せる人間は誰もいなかった。
面对这句用极度冰冷的声音低语出来的台词,没有任何人类能反驳。

 俺も、氷織も、黒名もネスも、田中さんや山田さん、スタッフたち、村長さん、すべての村人のみなさん、その全てに至るまでが、なにひとつ告げるべき言葉を持たず——おぞましい事件の幕開けを予感し、ただ身震いしていることしかできなかったのだ。
无论是我也好,冰织也好,黑名也好,尼斯也好,田中先生、山田先生、工作人员们、村长先生,乃至全体村民——所有人都找不出任何合适的言辞,只能战栗着预感这场骇人事件的序幕即将拉开。

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