ソルジャーフロアの最奥に位置する、英雄セフィロスの執務室に、アポイントも取らずに訪れた客がいた。神羅カンパニー総務部調査課、通称タークスの主任ツォンだ。
在士兵楼层的最深处,英雄萨菲罗斯的办公室里,来了一位不速之客,他没有预约。他是神罗公司总务部调查科,通称塔克斯的主任曾。
「セフィロス、いい加減にこれ以上の職権乱用は止めて貰えませんか? 」
“萨菲罗斯,你能不能适可而止,不要再滥用职权了?”
明らかに苦情を訴えに来た黒服姿の彼を前にして、この部屋の主は、口元に余裕の笑みを浮かべたまま、仕事の手を休めようともしない。極力冷静さを保とうとしているツォンも、その無礼さにピクリと片眉を吊り上げた。
面对这位明显是来投诉的黑衣男子,这间屋子的主人嘴角挂着从容的笑容,丝毫没有停下手中的工作。曾努力保持冷静,但也被他的无礼气得挑起了半边眉毛。
とは言え、こんな事は日常茶飯事。だから彼は無駄な労力を省いて、英雄に直球を投げ続けた。
话虽如此,这种事已是家常便饭。所以他省去了不必要的力气,继续向英雄直言不讳。
「貴方が何も答えないなら、我々は今直ぐにこの件から手を引きます。こちらも貴方の不正を証明するだけの証拠を揃えましたので」
“如果您不作任何回应,我们现在就会立刻从这件事中抽手。我们也已经收集到了足以证明您不正当行为的证据。”
ストレートな脅しが功を奏したのか、セフィロスは忙しなく叩いていたキーボードの手を、ようやく止めた。
或许是这直白的威胁奏效了,萨菲罗斯终于停下了他那忙碌敲击键盘的手。
「何をそうカリカリしている、ツォン? 今はタークスも、特別忙しい時期ではあるまい。これは持ちつ持たれつと言うやつだ。素直に協力しろ」
“你为什么这么急躁,曾?现在塔克斯应该也不是特别忙的时候吧。这叫互惠互利。老实合作。”
「【持ちつ持たれつ】などと言う殊勝な言葉を、神羅の英雄が知っていたとは驚きですね。だが残念ながらその言語は、相互協力があった時に使うものです。これまで貴方が、我々タークスを助けてくれたことなどありましたか? 」
“真没想到神罗的英雄竟然会知道‘互惠互利’这种高尚的词语。但很遗憾,这个词是在双方有合作时才使用的。您以前有帮助过我们塔克斯吗?”
「俺はいつでもタークスと相互協力したいと思っているが、残念ながらお前達から助けを求められた事がない。だからわざわざこちらから求めてやった。それこそ【持ちつ持たれつ】の始まりだろう? 」
“我一直都想和塔克斯相互合作,但很遗憾,你们从未向我寻求过帮助。所以我才特意主动提出要求。这才是【互帮互助】的开始,不是吗?”
ようやくこちらを向いたかと思えば、セフィロスから出て来る言葉は、正に屁理屈のオンパレード。だからツォンは英雄の前で、わざとらしく大きな溜息を吐き出して、不快感を露にした。
好不容易才转过头来,萨菲罗斯说出的话却完全是一派强词夺理。因此曾特意在英雄面前,故意长长地叹了口气,流露出不悦。
日頃は常に無表情を決め込んでいる彼が、こんな風に感情を表に出すのには、それなりの深い訳があったのだ。
平日里总是面无表情的他,会这样表露情感,是有其深层原因的。
実はセフィロスは、わざわざ偽造した指令書を作成して、さもソルジャー部門が指令元であるかのように装い、タークスを監視任務に駆り出した経緯があった。しかもその内容は、クラウド?ストライフと言う15歳の少年兵と、彼と同室の五人の同僚を監視して報告せよと言う、セフィロスの超個人的なもの。
实际上,萨菲罗斯曾特意伪造了指令书,假装指令源自士兵部门,从而将塔克斯调去执行监视任务。而且其内容,是萨菲罗斯超乎寻常的个人指令:监视并报告一个名叫克劳德·斯特莱夫的 15 岁少年兵,以及与他同室的五名同事。
しかしタークスはその偽造を見抜けないまま、調査員のレノとルードを任務に当たらせてしまったという訳だ。
然而,塔克斯却没能识破伪造,就让调查员雷诺和路德去执行任务了。
五人の少年兵達がどんな人物なのか。
那五名少年兵都是些什么样的人。
彼らは普段、どんな暮らしをしているのか。
他们平时过着怎样的生活。
そしてクラウド?ストライフとどんな関わりを持っているのか。
以及他们和克劳德·斯特莱夫有什么关系。
彼らの住まいに最先端の小型カメラまで取り付けて、一ヶ月に渡り行われた調査。その内容を見てセフィロスは満足し、タークスはまんまと騙されたことに気付いた。
在他们的住处安装了最先进的微型摄像头,进行了一个月的调查。萨菲罗斯看了调查内容后很满意,而塔克斯们则意识到自己被彻底骗了。
当然ながらツォンは、すぐさま彼に抗議した。しかし神羅の英雄は、謝るどころか開き直ってこう言い放った。「俺は、偽造一つ見破れないタークスの無能さを証明しただけだ。勿論この事を上に報告しなくてはならないが、ガキ共の監視を続けるなら、揉み消してやってもいい」と……。
曾立刻向他抗议。然而,神罗的英雄非但没有道歉,反而理直气壮地说道:“我只是证明了塔克斯连一个伪造都识不破的无能。当然,这件事我必须向上级汇报,但如果你们继续监视那些小鬼,我可以帮你们把这件事抹平。”
正に職権乱用。
这简直是滥用职权。
悔しい事に、クラウド?ストライフが、セフィロスの恋人である事が判明したのは、この直後だった。だが時すでに遅く、結局タークスは現在に至るまで、この不毛な任務に付き合わされている。
令人懊恼的是,克劳德·斯特莱夫被证实是萨菲罗斯的恋人,正是在这之后不久。但为时已晚,结果塔克斯们直到现在,都还在被迫执行这项毫无意义的任务。
ツォンはもう一度深くの溜息を吐いて、開き直っているセフィロスをジロリと睨んだ。
曾又一次深深地叹了口气,瞪着态度突然强硬起来的萨菲罗斯。
「いいでしょう。貴方のプライベートに付き合う件と、我々タークスの失態をチャラにする件で、今回は貴方の言葉通り【持ちつ持たれつ】が成立したと言う事にします。但し、今後の貴方の出方によっては、今回の調査内容の全てを、クラウド?ストライフ本人に公表しますから、そのおつもりで」
“好吧。这次就当是,我方配合你的私人事务,与我方塔克斯的失职功过相抵,如你所说【互惠互利】成立了。但是,根据你今后的表现,我方会把这次调查的所有内容,都公之于克劳德·斯特莱夫本人,你可要做好心理准备。”
「ふん、そう来たか。タークスは調査内容を、依頼主以外に漏らさないのではなかったか? 」
“哼,原来如此。塔克斯不是不会向委托人以外的人泄露调查内容吗?”
「我々だけが痛手を負うのは理不尽でしょう? こんな姑息なやり方で、タークスを動かしたのですから、貴方にもリスクを負って頂きます。もし今回の件をストライフが知る事になれば、貴方は間違いなく大切な恋人を失う事になる。何しろ貴方が彼にしたことは、盗撮?盗聴?監視……お世辞にも褒められる事ではありませんからね」
“只有我方蒙受损失,这不合理吧?你用这种卑劣的手段,让塔克斯为你行动,所以你也要承担风险。如果斯特莱夫知道了这件事,你无疑会失去你珍爱的恋人。毕竟你对他做的事情,是偷拍、窃听、监视……怎么说都不是值得称赞的事情。”
「……つまりお前は、俺に期限を決めろと言いたいのだな? 」
“……所以你是想让我定个期限?”
「さすがに理解が早い。そうして頂ければ、我々も黙って任務にあたりますよ。どうです? お互いに損はないと思いますが? 」
“不愧是理解得很快。如果您能那样做,我们也会默默地执行任务。怎么样?我觉得对我们双方都没有损失,您觉得呢?”
強かなのはタークスも同じ。さすがのセフィロスも、これには苦笑するしかなかった。
塔克斯也同样精明。就连萨菲罗斯也只能苦笑。
「分かった。ならばあと一週間、レノ達を貸せ。それで任務は終わりにする」
“知道了。那就再借雷诺他们一周。之后任务就结束。”
「一週間ですね? その間、タークスは何を? 」
“一周是吗?那这段时间,塔克斯要做什么?”
「一先ず監視を続けろ。あとはあいつら次第だ」
“暂时继续监视。剩下的就看他们了。”
「あいつら……と言うと、ストライフと同室の少年達ですか? 」
“他们……是指和斯特莱夫同寝室的少年们吗?”
「ああ。なかなかに面白いガキ共だと思わんか? 探究心も半端ない。フフ…クラウドの恋人が誰なのか、何としても知りたくて堪らないらしい」
“啊。你不觉得他们是群相当有趣的小鬼吗?求知欲也非同一般。呵呵……他们似乎无论如何都想知道克劳德的恋人是谁,好奇得不得了。”
含み笑いを漏らす英雄の姿など、なかなかお目にかかれるものではない。ツォンはターゲットにされている少年達を、心底気の毒に思った。
英雄露出含蓄笑容的模样,可不常见。曾真心实意地替那些被盯上的少年们感到可怜。
「完全に楽しんでいますね」
“您可真是乐在其中啊。”
「まあな。クラウドは必死になって俺との付き合いを隠しているが、俺としては、あのガキ共の望みを叶えてやるべきではないかと思案している」
“那是当然。克劳德拼命地想隐瞒他和我交往的事,但我寻思着,是不是该满足一下那群小鬼的愿望呢?”
「遊び半分でそんな事をするのは、止めた方が良いのでは? 貴方がどれ程あくどい人間であれ、【セフィロス】は神羅の英雄であり、我社の歩く広告塔です。この社内だけでも、貴方を独占したがっている熱狂的ファンは大勢いる。ストライフが貴方との交際を公にしたがらないのは、懸命な判断だと思いますよ。下手をすれば、おかしな輩に襲われ兼ねない」
“半开玩笑地做这种事,还是别了吧?无论您多么恶劣,【萨菲罗斯】都是神罗的英雄,是我们公司的活招牌。光是公司内部,就有大批狂热粉丝想独占您。我觉得斯特莱夫不愿公开与您交往,是个明智的判断。搞不好,他会被奇怪的家伙袭击的。”
「あのガキ共が、クラウドに牙を剥くと言うのか? 」
“那些小鬼,会向克劳德亮出獠牙吗?”
「そうは言っていません。しかしそこまで行かなくても、貴方達の関係を知った時点で、彼らがストライフに一線を引いてしまう可能性は大きい。仲間と楽しくやっている貴方の恋人が、そんな結末を望んでいると思いますか? 」
“我没这么说。但就算不至于到那种地步,一旦他们知道了你们的关系,他们很有可能会和斯特莱夫划清界限。你觉得你那和同伴们玩得很开心的恋人,会希望看到那样的结局吗?”
説教染みたツォンの言葉に、セフィロスはどこか愉快そうにニヤリと笑った。
面对曾带有说教意味的话语,萨菲罗斯带着几分愉悦,咧嘴笑了。
「……何です? 」
“……怎么了?”
「お前は、クラウドを見くびり過ぎている」
“你太小看克劳德了。”
「……? 」
“……?”
「クラウド?ストライフは、お前達が言う【神羅の英雄】を、ここまで動かした人間だぞ」
“克劳德·斯特莱夫,可是能让你们口中的【神罗英雄】为之行动的人啊。”
「ッ! 」
“!”
「まあ、あいつにその自覚がないのが、問題と言えば問題なんだがな。ツォン、クラウドが【クラウド】である限り、あのガキ共との間に亀裂が入る事などない」
“嘛,那家伙没有那种自觉,要说是个问题的话,确实是个问题。曾,只要克劳德还是【克劳德】,他就不会和那些小鬼们产生裂痕。”
「…………」
“…………”
「お前達が持ってきた情報は、それを裏付けた。その事に関しては、タークスに感謝している」
“你们带来的情报,证实了这一点。关于这件事,我很感谢塔克斯。”
揺るぎのない自信をもってセフィロスが吐いた言葉は、饒舌だったツォンを黙らせた。
萨菲罗斯带着坚定不移的自信说出的话,让原本能言善辩的曾沉默了。
調査を始めてから二ヶ月。レノ達が持ってきた調査結果の全てに目を通していたツォンだったが、クラウド?ストライフに対して、セフィロスが言うほどの特別なイメージは、何一つ沸いてこなかった。彼はごく普通の少年。ごく普通の兵士。それ以下でもそれ以上でもない存在。そう思っていたからだ。
调查开始两个月后。曾把雷诺他们带回来的所有调查结果都看了一遍的曾,对克劳德·斯特莱夫却没产生任何塞菲罗斯所说的特殊印象。他只是个非常普通的少年。非常普通的士兵。不多不少,仅此而已。曾是这么认为的。
何故セフィロスは、クラウドを選んだのか?
塞菲罗斯为何会选择克劳德?
彼の言葉を聞いて、今更ながらに湧き出て来た疑問は、調査課主任としてのツォンに、僅かな後悔を抱かせていた。
听了他的话,曾作为调查课主任,对现在才涌现出来的疑问抱有了一丝后悔。
セフィロスに騙された事ばかりに目が行き、この調査の本筋を知るチャンスを逃がした。それはタークスとして、一番犯してはいけない過ちだった。
只顾着塞菲罗斯欺骗他的事,错失了了解这次调查主旨的机会。这作为塔克斯,是绝不能犯的错误。
そんなタークス?トップの気持ちを知ってか知らずか、セフィロスは尚も笑みを深めて、ツォンに新たな指令を出す。
不知是知晓还是不晓得塔克斯头头的这份心情,萨菲罗斯的笑容愈发加深,向曾发出新的指令。
「今晩のクラウドの監視は必要ない。久しぶりに俺の下に来るからな。レノ達には、【種を蒔く】から、ガキ共の動きに注意しろと伝えておけ」
“今晚没必要监视克劳德。他久违地要来我这儿了。你告诉雷诺他们,就说我要【播种】了,让他们注意那群小鬼的动向。”
「……わかりました」
“……明白了。”
波を立たせなくなったツォンの返答に満足しながら、セフィロスはこの後に待つ逢瀬に、密かに心躍らせていた。
曾的回答不再激起波澜,萨菲罗斯对此感到满意,他暗自为接下来等待的幽会而心潮澎湃。
***
ギィィ……バタン!
吱呀……砰!
建て付けの悪いドアの開閉音が、寮の部屋の片隅から聞こえてきたのは朝の八時。既に食堂で朝食を済ませ、それぞれの自室に籠っていた少年達が、その音を合図にそろりと部屋から顔を覗かせた。
早上八点,宿舍房间的角落里传来门扇不灵的开合声。少年们已经在食堂吃过早饭,各自待在自己的房间里,听到这个声音,便以此为信号,悄悄地从房间里探出头来。
「クラウド帰って来た! どうする? 突入する? 」
“克劳德回来了!怎么办?要冲进去吗?”
いつもより9割減の小声で仲間に合図を送ったのは、テンション高めで小太りの少年だ。しかしスナック菓子を片手に部屋から出ようとすれば、何もない所で躓いて、周囲を慌てさせた。
一个情绪高涨、矮胖的少年用比平时低了九成的声音向同伴发出信号。然而,当他手里拿着零食正要走出房间时,却在平地上绊了一跤,把周围的人都吓了一跳。
「しーっ! 静かに! クラウドが起きるだろ。いいか、みんな絶対に物音を立てるなよ。前回の深夜デートから、約一ヶ月ぶりにやって来たチャンスだ。今日こそこのミッションを成功させるぞ! 」
“嘘!安静!会把克劳德吵醒的。听着,大家绝对不要发出声音。这是我们上次深夜约会后,时隔近一个月才等来的机会。今天一定要让这个任务成功!”
すぐさまリーダシップを取ったのは、この部屋のメンバーの中で一番頭の良い秀才少年だ。他の誰よりも頭の回転が速く、常に冷静沈着である。
迅速掌握领导权的是这个房间里最聪明的少年。他比任何人都思维敏捷,总是冷静沉着。
「うむ。やはり深夜二時交代の夜勤が、一番彼女と逢う確率が高いようだ。統計上、昼間逢っている可能性は0%。更に前回の朝帰りから一ヶ月も経っている事を考えると、恐らくクラウドの彼女は、かなり多忙で年収の高い人間に違いない。だからあの時間帯にしか逢う事が出来ないんだ。そして全てのデータから推察するに、朝帰りした日のクラウドは、必ず部屋の中で爆睡する! 」
「嗯。果然还是凌晨两点换班的夜班,和她见面的概率最高。从统计学上来看,白天见面的可能性是 0%。再考虑到上次他早上回家已经过去一个月了,恐怕克劳德的女友,一定是个非常忙碌、年收入很高的人。所以他们只能在那个时间段见面。而从所有数据推断,早上回家的那天,克劳德一定会窝在房间里睡大觉!」
数学を得意としている計算少年は、全ての分析を数字から考える変わり者だ。二か月前、クラウドに【彼女】がいる事を白状させてからというもの、彼の行動を数字化して、統計を取り続けている。
擅长数学的计算少年是个怪人,他所有的分析都从数字出发。两个月前,自从他让克劳德承认有【女友】后,他就一直将克劳德的行为数字化,并持续进行统计。
「御託は良いからさ、早くクラウドを見に行こうぜ! 朝帰りした男の姿を拝んでやらないと! でさ、今日こそ何か突っ込みどころ見つけて、彼女の真相を吐かせるんだよ」
“少废话了,快去看看克劳德吧!不看看那个彻夜未归的男人可不行!然后呢,今天一定要找到什么槽点,让他把女朋友的真相吐出来!”
同室の六人の中で、一番背の高いのっぽの少年は、神羅の英雄に近い長身が自慢だ。この長身を武器にして、あわよくばクラウドから、彼女の友達を紹介してもらおうと目論んでいる。
同屋的六个人中,最高挑的少年,以接近神罗英雄的身高为傲。他打算利用这个身高优势,如果可以的话,让克劳德给他介绍女朋友的朋友。
「ほ、ホントにクラウドの部屋に忍び込むの? 勝手に部屋に入るのは、ちょっと悪いよ。疲れているのに、もし起こしちゃったら可哀想だし……」
“真、真的要潜入克劳德的房间吗?擅自进房间有点不好吧。他那么累,要是吵醒他了多可怜啊……”
誰よりもまともな意見を述べているのは、クラウドの次に小柄なメガネ少年だ。彼はこの仲間内の中で一番温厚で優しい性格である。だが口達者の秀才少年や計算少年にそそのかされて、結局いつも、彼らと行動を共にする羽目になっていた。
发表着比任何人都正常意见的,是仅次于克劳德矮小的眼镜少年。他是这群伙伴中最温厚善良的。但总是在能言善辩的优等生少年和精于算计的少年唆使下,最终总是和他们一起行动。
「心配しなくて大丈夫。彼を起こさないようにするから。それに朝帰りの男の姿がどんなものか、俺達に教えられるのはクラウドしかいない。きっと笑って許してくれるよ。ああ見えて、人一倍優しい奴なんだから」
“不用担心,没事的。我们会尽量不吵醒他。而且,能告诉我们彻夜不归的男人是什么样子的,只有克劳德了。他一定会笑着原谅我们的。别看他那样,他可是个比谁都温柔的人。”
ちっとも大丈夫じゃない理由も、秀才少年が語るとそれらしく聞こえるから不思議だ。根が素直で単純なメガネ少年は、もうそれだけで、何だか本当に大丈夫な気がしていた。
明明一点都不好,可天才少年说出来,听起来就好像真的有道理一样,真是不可思议。本性单纯的眼镜少年,光是这样,就觉得好像真的没问题了。
そうして五人の少年兵は、息を潜めながら抜き足差し足で歩を進め、クラウドの部屋の前でピタリと止まった。
于是,五个少年兵屏住呼吸,蹑手蹑脚地往前走,在克劳德的房间前停了下来。
クラウド達が生活している寮は、六人の兵士で暮らす共同部屋だ。部屋の真ん中に小さなリビングが配置され、それを囲むようにして、小さな六つの個室が左右に並んでいる。それぞれの部屋の中にあるのは、粗末な簡易ベッドと縦長のロッカーだけ。
克劳德他们住的宿舍是六名士兵共同居住的房间。房间中央有一个小客厅,围绕着客厅,左右两边排列着六个小单间。每个房间里只有一张简陋的简易床和一排细长的储物柜。
正に寝に帰って来るだけの質素な寮ではあったが、それでも田舎出身の六人は、この二年間、何だかんだと仲良くやって来た。
そんな少年達が今一番興味を持っている事と言ったら、当然ながらエッチな話題。
彼らは思春期真只中で、大人の階段を昇りたい時期で、そして是非ともチェリーボーイから卒業したい年頃だった。
ところが彼らの願望とは裏腹に、この六人の中で彼女が出来たのはクラウドただ一人。だから彼らは二ヶ月前、嫌がるクラウドをどうにかこうにか説得して、恋人の存在を聞き出した。
だが知り得た情報は、10歳以上年上の熟女で、髪が長い美人だと言う事くらい。以来どれ程クラウドに質問しても、「うるさい」「知らない」「…………(無視)」の繰り返し。
だが知り得た情報は、10 歳以上年上の熟女で、髪が長い美人だと言う事くらい。以来どれ程クラウドに質問しても、「うるさい」「知らない」「…………(無視)」の繰り返し。
頑なに話すことを拒むクラウドに対して、だがしかし、少年達も諦めなかった。
計算少年の特技を生かして、クラウドのスケジュールを調べ上げ、彼が再び朝帰りをする日を待ち続けたのだ。
他利用计算少年的特长,查清了克劳德的日程,然后一直等待着他再次彻夜不归的那一天。
そうしてついに今日、待ちに待ったその日がやって来た。
终于,今天,他期待已久的那一天到来了。
最初に五人は狭い戸口に耳をくっつけ、部屋の中で物音がしないかどうかを確かめた。
五人首先把耳朵贴在狭窄的门边,确认房间里有没有声音。
「何の音も聞こえないね」
“什么声音都听不到呢。”
「やはり俺の推測通り、クラウドは部屋の中で熟睡しているのだよ」
“果然如我所料,克劳德正在房间里熟睡呢。”
「何でもいいから、一先ずドアを開けて覗いてみようぜ」
“随便什么都好,总之先打开门看看吧!”
「早く早くっ」
“快点快点!”
「落ち着け。いいか、この扉は一番建て付けが悪いから、必ず開ける時に音がする。練習通り、少し持ち上げ気味にして、静かに……静か~にドアを開けるんだぞ」
“冷静点。听好了,这扇门是最不好开的,开的时候一定会发出声音。按照练习的,稍微抬高一点,安静地……安静地把门打开。”
「「「「うん」」」」
““““嗯””””
秀才少年の号令の元、一番上手くドアを開けられるのっぽの少年が動いた。彼はその長身を生かして、歪んだドアを持ち上げ気味にしながら、クラウドの部屋のドアを恐る恐る開き始める。
在秀才少年的号令下,最擅长开门的瘦高少年行动了。他利用自己的身高,一边将变形的门稍稍抬起,一边小心翼翼地开始打开克劳德的房间门。
キィ……キキィ
吱呀……吱吱呀
微かに軋みながらも無事に開いたドアに、一同がホッと胸を撫で下ろすと、今度はメガネ少年が四つん這いになり、音もなくクラウドの部屋に侵入した。
门虽然发出轻微的吱呀声,但总算顺利打开了,众人松了口气,接着眼镜少年四肢着地,悄无声息地潜入了克劳德的房间。
「……大丈夫。クラウド、ぐっすり寝てる」
“……没事。克劳德睡得很熟。”
小声で中の様子を伝えながら、メガネ少年は腕を部屋の外に出して、GOサインを出した。
眼镜少年压低声音汇报着里面的情况,同时把手臂伸出房间,比了个可以进入的手势。
「よし、潜入するぞ」
“好,潜入!”
「「「「了解」」」」
““““明白””””
人一人が通れる程の幅しかない縦長のスペースに、彼らは壁に背中を擦りつけるようにして、横一列に立ち並んだ。それは反対の壁際に置かれた簡易ベッドを、男五人が並んだまま覗き込むと言う異様な光景だ。
那是一条仅容一人通过的狭长空间,他们背靠墙壁,一字排开。五名男子并排站立,探头看向对面墙边摆放的简易床铺,这景象显得异常怪异。
だが少年達は、そんな滑稽な自分達の姿も忘れて、ベッドの上で横向きになり、蹲って眠るクラウドを喰い入るように凝視した。
但少年们却全然忘记了自己滑稽的模样,只是目不转睛地盯着床上侧卧着、蜷缩着睡去的克劳德。
「……靴、履いたままで寝ている。こりゃ相当疲れているな」
“……他穿着鞋就睡着了。看来是累坏了。”
「帰って来て、そのまま寝落ちって奴か。いつも思うんだけどさ、なんでこんなに寝不足な状態で帰って来るわけ? 」
“是那种回来就直接睡着的情况吧。我总是在想,他为什么每次回来都这么缺觉啊?”
「そりゃあ一晩中、熟女相手に【ナニ】してるからだろ? 」
“那还不是因为他一整晚都在和熟女【做】吗?”
「やっぱり? 」
“果然?”
「俺達がこんなに近くで話していても、全く目を覚ます気配もないんだから、これは相当激しい一夜だったと見た」
“我们离他这么近说话,他却一点要醒的迹象都没有,看来昨晚一定是个相当激烈的夜晚。”
「すげーな、クラウド。こんなちっこい身体のくせして絶倫かよ」
“真厉害啊,克劳德。明明身体这么小,却是个猛男啊。”
「あ、あのさ。でもクラウドって、男っぽいって言うより、何だか滅茶苦茶可愛いよね? 特にこの寝顔とか……」
“啊,那个。不过克劳德与其说是很有男子气概,不如说总觉得他可爱得要命呢?特别是这张睡脸……”
「ああ……。実は俺もさっきから思ってた。なんつーか、普通にちょっと守ってやりたくなる感じ? 」
“啊……其实我刚才也这么想。怎么说呢,就是那种让人很想保护他的感觉?”
「「「「うん」」」」
““““嗯””””
思春期五人組が、生唾をゴクンと飲み込む異常事態が発生していても、爆睡中のクラウドはピクリともしない。仕事着である軍服と靴を脱ぎもせず、帰るなりベッドにダイブして、そのまま数秒で寝落ちたと言う状況だ。
即使青春期五人组发生了吞咽口水这种异常情况,熟睡中的克劳德也一动不动。他连工作服军装和鞋子都没脱,一回来就直接扑到床上,然后几秒钟内就睡着了。
よく見れば、微かに開いた小さな口元からは、普段の無愛想ぶりからは想像も出来ないほど、静かで可愛い寝息が聞こえている。眉尻をほんのりと下げて寝入るクラウドの顔は、15歳の男子とは思えないほど幼く、正に少女のようだった。
【女を抱いてきた男の顔】を一目見てやろうとこの場に来た筈が、全く別の欲望がムラムラと湧き上がって来て、思わず五人とも自分の股間を握り締めてしまう。その欲望は、彼等のエッチ度をグングンと高め、更なるクラウドの異常に気づかせた。
「っ!! 」
「ッ!? 」
「ぁれ……」
“啊咧……”
「……だよな? 」
“……对吧?”
「…………キス…マーク…… 」
“…………吻痕……”
ワイシャツの襟の隙間から見える、幾個もの赤い花。それは大小様々に大きさを変え、まるで少年達に見せつけるかのように、クラウドの真っ白な首元に咲き誇っていた。
从衬衫领口缝隙中,能看到好几朵红色的花。它们大小不一,仿佛在向少年们炫耀一般,在克劳德雪白的颈间盛放。
「ね、ねぇ。もしかして、虫刺されの間違いとか? 」
“呐,呐。会不会是,搞错了,其实是虫子咬的?”
「そんな訳ないだろ? あれはどう見ても、噛み痕じゃんか? 」
“怎么可能?那怎么看都是咬痕吧?”
「ぇ? じゃあ、つまり、あれって全部、熟女さんが付けたって事? 」
“诶?那,也就是说,那些全都是熟女留下的?”
「「「「え? 」」」」
““““诶?””””
小太り少年の何気ない質問に、一同は思わず絶句した。
そう。いっぱしの事を吠えてはいても、所詮彼らの性知識はお子様レベル。先輩から貰ったお下がりのエロ本を見て、SEXの全てを理解した気でいたのだ。だから彼らは想像もしていなかった。
―――― 女が男にキスマークを付けるなんて ――――
そこに自分達の知らない現実を見て、彼らは呆然とした。まずいことに、細く白いクラウドの首筋がやけに艶めかしく見えてきて、少年達は居ても立ってもいられない状況だ。
他们看到了自己所不知道的现实,呆住了。糟糕的是,克劳德纤细白皙的脖颈看起来异常妖艳,少年们再也无法保持冷静。
なのに事態は、更に思わぬ方向へと動き出した。
然而事态却朝着意想不到的方向发展。
「ぅ……ん……」
“唔……嗯……”
「「「「「ッ!! 」」」」」
“““““嘶!!”””””
突然クラウドが寝返りを打ったのだ。五人の心拍が一気に跳ね上がり、気づけば背中が壁にべったりと張り付いている。だがしかし、問題は寝返りなどではなかった。
突然,克劳德翻了个身。五人的心跳猛地加快,回过神来时,发现自己的背已经紧紧贴在了墙上。然而,问题根本不是翻身。
「……ッッッ!!!! あ…あ…あ……あれ」
“……嘶!!!!!啊……啊……啊……那、那个”
クラウドが身体の向きを変えた瞬間、ワイシャツの袖口が僅かに捲れ上がり、幾重もの赤い筋痕がついた細い手首が、彼らの前に姿を現したのだ。
克劳德转身的瞬间,衬衫的袖口微微卷起,露出了他那缠绕着好几道红色痕迹的纤细手腕,呈现在他们面前。
「な……んだよ? あの手首の痣……」
“那……那是什么?他手腕上的那些痕迹……”
「筋状に数本。まるで手首に、何かを巻き付けたような跡だが……」
“几道条状的痕迹。就像是手腕上,缠绕过什么东西的痕迹……”
「何かって何? 」
“什么东西是什么?”
「まさか……ロープで拘束……」
“难道是……被绳子束缚……”
「「「「ッッッ!? 」」」」
““““嘶——!!””””
秀才少年の呟きに、一斉に集まった視線。それはもう、目の前の現実を受け止められない衝撃と、これ以上の生々しさは耐えられないと言う、彼らの無言の合図だった。
秀才少年的一句嘟囔,立刻引来了所有人的目光。那是一种无法接受眼前现实的冲击,以及再也无法忍受这种赤裸裸的真实感的无声信号。
少年達は慌てふためきながら、足早にクラウドの部屋を出ると、再び細心の注意を払ってドアを閉め、そして一気に真向いある秀才少年の部屋になだれ込んだ。
少年们慌慌张张地,快步走出克劳德的房间,再次小心翼翼地关上门,然后一窝蜂地冲进了正对面的秀才少年的房间。
「ああー! 疲れたー!!!! 」
“啊——!好累啊——!!!!!”
「しーっ!!! 壁が薄いんだから、そんな大きな声出したら、クラウドが起きちゃうだろ? 」
“嘘——!!!墙壁很薄的,你这么大声,克劳德会醒的吧?”
「ご、ごめん! つい、ホッとしちゃって! 」
“对、对不起!我、我只是太放松了!”
真っ先に叫んだ小太り少年を注意したものの、実のところ他の少年達も、全身の力が抜けているのは同じだった。
虽然他第一时间就出声制止了那个大喊大叫的胖乎乎的少年,但实际上,其他少年们也同样全身脱力。
ほんの悪戯心のつもりだったのに、彼の身体のそこかしこに見えた艶めかしい情事の痕は、少年達の心に、整理のつかぬ騒めきを残した。
原本只是想恶作剧一下,但他身体上随处可见的那些艳情痕迹,却在少年们的心中留下了难以平复的骚动。
その中でも、最も不安を隠せないでいたのがメガネ少年だ。
其中,最无法掩饰不安的,就是那个戴眼镜的少年。
「あ、あのさ。クラウド……熟女の彼女さんに、虐められているわけじゃ……ないよね? 」
“啊,那个……克劳德……你没有被你那个熟女女朋友欺负吧?”
「まさか。そんな訳ないだろ? クラウドだって、ちゃんと【彼女】だって認めてたじゃん。恋人がそんな事するかよ」
“怎么可能。哪有那种事?克劳德不也承认她是【女朋友】吗。恋人怎么会做那种事啊。”
「う……ん」
“嗯……”
「あれは俗にいうSMと言うやつかもしれない」
“那可能就是俗称的 SM 吧。”
「S…M? 」
「S……M?」
その言葉の意味を知らないメガネ少年は、首を傾げてキョトンとしたが、他の三人に至っては、口にするのも恥ずかしい単語の出現に、思わず顔を赤らめた。
戴眼镜的少年不知道这个词的意思,歪着头一脸茫然,而另外三人则因为出现了羞于启齿的词语,不自觉地红了脸。
平然と口にしたのは計算少年。クラウドの部屋から出て、秀才少年よりも早く通常運転に戻ったらしい彼は、いつもの口調でメガネ少年に説明し始めた。
平静地说出这个词的是计算少年。他从克劳德的房间出来后,似乎比秀才少年更快地恢复了正常状态,用一贯的语气开始向戴眼镜的少年解释。
「SMとは、サディズムとマゾヒズム。つまり加虐性愛と被虐性愛の事だね」
“SM 是施虐癖和受虐癖。也就是说,是施虐性爱和受虐性爱。”
「???? 」
「?????」
純粋な田舎っ子には、まるで分からない計算少年の説明を、誰一人フォローする余力はない。彼らは皆、クラウドの身体に出来た痣を見て、男女の変態染みた行為を想像し、そして心底疲弊した。
没有人有余力去理会计算少年那对纯朴的乡下孩子来说简直是天书的解释。他们都看着克劳德身上的淤青,想象着男女之间变态的行为,然后从心底感到疲惫。
「これから、どうする? 」
“接下来,怎么办?”
「どうするって……どうも出来ないだろ? 」
“怎么办……能怎么办?什么也做不了吧?”
「クラウドが望んであの痣を作った確率は50%」
“克劳德主动弄出那块淤青的可能性是 50%。”
「残り半分は? 」
“剩下的一半呢?”
「無理矢理やられた可能性が50%」
“被强迫的可能性是 50%。”
「む、無理矢理!? 」
“被、被强迫!?”
「その可能性がないとは言い切れないよな。あいつ、小っちゃいし。女の子みたいだし」
“也不能说没有这种可能性啊。那家伙,个子小小的。还像个女孩子。”
「ね、ねえ? 彼女さんって、ほ、ホントにクラウドの事、大事に思ってるのかな? 」
“呐,呐?她、她真的有把克劳德放在心上吗?”
「実は年下の男を、弄んでるだけだったりして……」
“说不定她只是在玩弄比自己小的男人呢……”
秀才少年の一言に、彼等は思わず顔を見合わせた。
听到秀才少年的一句话,他们不禁面面相觑。
もしクラウドが大切な友達でなかったら、彼らはもっとお気楽な妄想に耽って、今回の行動に満足していたに違いない。
如果克劳德不是他们重要的朋友,他们肯定会沉浸在更轻松的妄想中,并对这次行动感到满意。
ところが少年達の中に芽生えた感情は、クラウドの部屋に潜入する以前の邪な気持ちから、ずいぶんとかけ離れようとしていた。
然而,少年们心中萌生的情感,与他们潜入克劳德房间之前的邪念,已经渐行渐远。
「俺達は、クラウドの彼女の事、もっとちゃんと知らないとダメだと思う」
“我觉得我们必须更深入地了解克劳德的女朋友。”
決定的な一声を上げたのは、もちろん秀才少年だ。
当然,做出决定性发言的是那个秀才少年。
「身体中に訳の分からない痣をいっぱい作って、まるで死んだみたいに眠っているクラウドって、やっぱり変だと思わないか? それがあいつの納得の下なら文句はないけど、もしも……もしもだよ、クラウドが相手に逆らえなくて、一方的にあんな痣を作られているんだとしたら……俺達があいつを助けてやらないと! 」
“身体上到处都是莫名其妙的淤青,睡得像死了一样的克劳德,难道你们不觉得很奇怪吗?如果那是他心甘情愿的,那我没什么好说的,但如果……如果克劳德无法反抗对方,被单方面地弄出那些淤青的话……我们必须去帮他!”
「「「「うん! 」」」」
““““嗯!””””
田舎出身の少年達は純粋だった。
来自乡下的少年们是如此纯真。
思春期で、エッチな話が大好きで、背伸びも悪ノリもするけれど、大切な友達が傷つくのを黙って見ている事も出来なかった。
正值青春期,他们喜欢聊些荤段子,也会做些装成熟或恶作剧的事,但他们无法眼睁睁看着重要的朋友受伤。
「一週間後はクラウドの誕生日だ。俺の統計上、恋人同士が誕生日に逢う確率は90%! 因みに誕生日前日のクラウドの勤務は、昨日と同じ深夜交代任務で、翌日は休みときた! 」
“一周后就是克劳德的生日了。根据我的统计,恋人之间在生日当天见面的概率是 90%!顺便一提,克劳德生日前一天的工作,和昨天一样是深夜轮班任务,而且第二天还休息!”
自分の打ち出した統計に、揺るぎない自信を見せる計算少年。
计算少年对自己的统计数据表现出坚定不移的自信。
「つまり、前日の勤務明けを見張れば、クラウドの彼女の正体が分かるってことだな? 」
“也就是说,只要监视他前一天下班后,就能知道克劳德的女朋友是谁了,对吧?”
いつになく引き締まった、真剣な顔ののっぽ少年。
高个子少年脸上是前所未有的严肃表情。
「俺、先輩に勤務交代してもらうよ。俺のおやつ一週間分渡せば、絶対代わって貰えるから! それなら皆と一緒に行ける! 」
“我,我要让前辈跟我换班。只要把一个星期的零食给他,他肯定会跟我换的!这样就能和大家一起去了!”
命の次に大切なおやつを擲つ小太り少年。
小胖子少年掷出了他生命中第二重要的零食。
「俺は元々休みだから、見張り場所を決めとく。決まり次第、皆に連絡するよ! 」
“我本来就休息,所以先去定好监视地点。定好了就联系大家!”
いつになく男気溢れる顔を見せるメガネ少年。
眼镜少年露出了前所未有的男子气概。
「よし、決まったな! まずはクラウドの彼女が誰なのかを知り、次にクラウドが嫌がっていないかを見極めて、必要なら救助する!! 」
“好,决定了!首先要搞清楚克劳德的女朋友是谁,然后判断克劳德是不是不愿意,如果需要的话就去营救他!!”
「「「「了解!! 」」」」
““““明白!!””””
立ち上がって声明を放つ秀才少年に同意するように、他の少年達もいつになく真剣な眼差しを彼に向けた。湧き上がる正義感を止める者は、そこには誰もいなかった。
其他少年们也一反常态地用认真的眼神看着站起来发表声明的秀才少年,表示同意。那里没有人能阻止他们心中涌动的正义感。
***
「いい加減に笑うのを止めろ、レノ」
“够了,别笑了,雷诺。”
「ヒィーヒッヒ!!いや、だってルード、これが笑わずにいられるか? チェリーボーイ、最強だぞ、と! クックックックッ……腹痛いぇぇ」
“嘻嘻嘻!!不,我说鲁德,这怎么能不笑呢?处男,最强了,是吧!哈哈哈……肚子好痛啊”
クラウド達が住む宿舎から、少し離れた場所に位置する駐車場に、その黒づくめで怪しげなバンは停まっていた。遮蔽された車内には、後部座席が全て取り払われた空間に、低い天井まで覆う程の精密機器が詰め込まれている。
在距离克劳德他们所住的宿舍稍远的地方,停车场里停着一辆通体漆黑、形迹可疑的厢式货车。被遮蔽的车厢内,后座全部被拆除,取而代之的是塞满了精密仪器,几乎顶到低矮车顶的空间。
およそ二か月間、レノとルードはこの狭々した空間の中で、寮で過ごす少年兵六人の監視を続けて来た。そして先程の少年達による『クラウドの部屋潜入捜査』も、モニター越しにしっかりと観ていたという訳だ。
大约两个月以来,雷诺和路德就在这狭小的空间里,持续监视着住在宿舍里的六名少年兵。而刚才少年们进行的“潜入克劳德房间搜查”行动,他们也通过监控器看得一清二楚。
主任の話によると、依頼主であるセフィロスから【種を蒔く】と言われたらしいが、どうやら蒔かれたのは彼の恋人……つまりクラウド本人だったようだ。最も当人は何も知らぬまま、一晩中セフィロスに抱かれて続けた挙句、今は疲れ切って自室で爆睡中である。
据主任说,委托人萨菲罗斯告诉他【播种】,但似乎被播种的是他的恋人……也就是克劳德本人。而当事人对此一无所知,被萨菲罗斯抱了一整晚,现在精疲力尽地在自己房间里呼呼大睡。
「変態英雄にはムカつくぞ、と」
“我对那个变态英雄很不爽。”
腹筋まで痛めた笑いがようやく止まると、次にレノの口から突いて出てきたのは、セフィロスへの不満だった。
当笑得腹肌都疼的雷诺终于停下来时,他嘴里吐出的下一句话是对萨菲罗斯的不满。
あの少年達のような純粋さは、とっくの昔に魔晄炉に捨てて来たレノ。だから英雄の変態性癖を、ああもあからさまに見せつけられては、主に羨ましいと言う意味で、腹が立たずにはいられなかった。何しろこの二か月間、彼らは狭い車内での任務が続き、女遊びどころか酒もろくに飲めていないのだ。
雷诺早已将少年们那样的纯真抛弃在魔晄炉里。所以当英雄的变态癖好如此赤裸裸地展现在他面前时,他不禁感到愤怒,主要是因为羡慕。毕竟这两个月来,他们一直在狭窄的车内执行任务,别说玩女人了,连酒都喝不上几口。
「報復はいずれ、ツォンさんがやってくれる。タークスのプライドを傷つけた罪は重い」
“曾先生迟早会报复的。伤害塔克斯的尊严,罪孽深重。”
「おおっと、闇ルード君は怖いぞ、と。……ま、仕方ない。仕事は仕事。一先ず変態野郎に報告だぞ、と」
“哦豁,黑暗路德君好可怕啊。……嘛,没办法。工作就是工作。总之先向那个变态混蛋报告吧。”
水面下で多くの人間が動き始めている事も知らずに、物語の中心にいるクラウドは、今はただひたすら眠り続けている。その様子を映し出した小さなモニターを見つめながら、レノはすっかり覚えてしまった依頼主の電話番号を押した。
故事中心的克劳德并不知道水面下许多人已经开始行动,他只是一个劲儿地睡着。雷诺盯着映出他模样的显示器,拨通了早已烂熟于心的委托人电话号码。
そうして鳴り続ける呼び出し音を耳元に流しながら、彼もツォンと同じことを考える。
听着耳边持续响起的呼叫声,他也和曾想到了同样的事情。
何故セフィロスは、クラウドを選んだのか?
塞菲罗斯为何会选择克劳德?
彼の目的は一体何なのか?
他的目的到底是什么?
コール音が止み、毎日のように聞いている依頼主の声に反応しながら、レノは一週間後にやって来る物語の結末を、妄想し続けていた。
电话铃声停止,雷诺一边回应着每天都会听到的委托人的声音,一边继续幻想一周后即将到来的故事结局。
***
夏のミッドガルは蒸し暑い。
夏天的米德加尔又闷又热。
魔晄炉から吐き出される蒸気が、真夏の太陽で更に蒸され、上層プレート全体を覆い尽くすからだ。それは日付が変わった深夜も同じで、すでに夜の一時を過ぎていると言うのに、湿気を含んだ熱が冷める事はなかった。
魔晄炉中喷出的蒸汽,被盛夏的太阳蒸得更热,弥漫了整个上层盘。即使是过了午夜,湿热也丝毫没有消退,明明已经过了凌晨一点了。
この日クラウドは、深夜二時までの北門警備の任務に当たっていた。とは言ってもあと一時間でその仕事も終わり。門の内側に建てられている守衛室から顔を覗かせると、既に人っ子一人いないその場所から、蒸気で濁った夜空の星を見上げて、任務の終わりを待ち望んだ。
这天克劳德负责北门警卫的任务,直到凌晨两点。话虽如此,这份工作也只剩一个小时了。他从建在门内的警卫室探出头,仰望着空无一人的地方,看着被蒸汽模糊的夜空中的星星,盼望着任务的结束。
「ストライフ、今のうちに日誌を仕上げておくから、交代者が来るまで外門の警備を頼む 」
“斯特莱夫,我现在就把日志写完,你帮我守着外门,直到换班的人来。”
「イエッサー! 」
“遵命!”
共に警備に当たっている分隊長の指示に従い、クラウドは北門の潜戸を開けて、門の外に立った。
遵照一同执勤的分队长指示,克劳德打开北门的暗门,站到了门外。
北門は神羅ビルの裏手に位置するため、物品搬入目的の大型車両が多く通る場所だ。だから他の出入り口よりも、高さと幅のある巨大な鉄門が建てられていた。
北门位于神罗大厦后方,因此是许多用于物品搬运的大型车辆的必经之地。所以,与其他出入口相比,这里建造了一扇更高更宽的巨大铁门。
その見上げる程の鉄柱を背にて直立しながら、少年は退勤後のことを、ぼんやりと考えていた。
少年背靠着那高耸入云的铁柱,笔直地站着,模糊地思考着下班后的事情。
実を言うと、クラウドは1時間前に16歳の誕生日を迎えたばかり。
说实话,克劳德在一个小时前才刚过完他十六岁的生日。
毎日の忙しさで、すっかり忘れていたこの日を思い出させたのは、三日前に連絡をくれたセフィロスだった。その彼からは、休暇が取れたので誕生日を一緒に祝おうと言われている。
是萨菲罗斯三天前联系我,才让我想起这个被每日的忙碌彻底遗忘的日子。他说他休假了,想和我一起庆祝生日。
(誕生日なんて全然忘れてた。セフィロスに言われなかったら、きっとこのまま一日が終わってたな)
(我完全忘了生日这回事。要是萨菲罗斯没说,我肯定就这么过完一天了。)
故郷ニブルヘイムにいる時は、一年の中で一番楽しみな日だった。貧しい母子家庭だったので、材料費がかかるケーキが食べられるのは、クラウドの誕生日だけだったからだ。母親お手製のドライフルーツケーキは、クラウドの大好物だった。
在故乡尼布尔海姆的时候,那是一年中最期待的日子。因为家里是贫困的单亲家庭,只有在克劳德生日的时候才能吃到昂贵的蛋糕。母亲亲手制作的干果蛋糕是克劳德的最爱。
あれ程楽しみにしていた誕生日を忘れるなんて……と、クラウドは思わず苦笑した。
克劳德忍不住苦笑起来,他竟然会忘记自己如此期待的生日……
思い返せばこの二年は、任務と訓練に明け暮れる毎日。街中が大騒ぎするハロウィンやクリスマスでさえ、考える間もなく終わっていたりした。同じ時を刻んでいるはずなのに、故郷とミッドガルでは時間の流れ方が違うと、錯覚するほどだ。
回想起来,这两年每天都沉浸在任务和训练中。就连城里人都在大肆庆祝的万圣节和圣诞节,也都在他还没来得及思考的时候就结束了。明明流逝的是同样的时间,他却错觉故乡和米德加尔的时间流速不同。
だがクラウドは、この忙しい毎日に不満はなかった。
但克劳德对这忙碌的每一天并没有不满。
自分の誕生日も忘れるほど忙しい日々は、夢に近づく早道のような気がしていたから……。
因为他觉得,忙碌到连自己生日都忘记的日子,就像是通往梦想的捷径……
(そう言えば去年も、自分の誕生日を忘れてたんだっけ。でも寮に帰ったら、部屋の奴らがパーティの準備してて……あの時はホントにびっくりしたよな。何で他人の誕生日を知ってるんだろって、不思議でならなかったし)
(话说回来,去年我也忘了自己的生日。但回到宿舍后,房间里的人们正在准备派对……那时候我真的吓了一跳。我一直在想他们是怎么知道别人的生日的,觉得不可思议。)
入社当時の友達の行動は、他人との関係が希薄だったクラウドを、たびたび驚かせた。だから毎日戸惑うばかりで、本心とは裏腹の言葉を吐いてしまった事もあった。それが今では、くだらないバカ騒ぎの中に、いつの間にか自分もいたりする。
刚入职时,朋友们的举动常常让与他人关系淡薄的克劳德感到惊讶。因此,他每天都感到困惑,有时还会说出与真心相悖的话。而现在,他却不知不觉地融入了那些无聊的喧闹之中。
そこから湧き出す感情は、間違いなく嬉しさと楽しさ。今以てそれらを上手く表すが出来ないクラウドではあったが、彼らとの関係はとても大切なものになっていた
从中涌出的情感,无疑是喜悦和快乐。尽管克劳德至今仍无法很好地表达这些情感,但他与他们的关系已经变得非常重要。
そうして故郷を出てから二年目の今日。クラウドにとって16度目の誕生日は、これまでで一番特別な日になりそうだった。
就这样,离开故乡后的第二年,今天。对克劳德来说,他的第 16 个生日,似乎将成为迄今为止最特别的一天。
誕生祝いをしてくれると言うセフィロスとは、先週デートしたばかり。超多忙な彼と、一週間も間を置かずに再会できるのは、彼と付き合ってから初めての事だ。だから意識しないように努めていても、嬉しさが勝手に込み上げて来て、ついついクラウドの頬を緩めてしまう。
萨菲罗斯说要为他庆祝生日,而他们上周才约过会。这是他与萨菲罗斯交往以来,第一次能在一周内与这个超级大忙人再次见面。所以即使他努力不去想,喜悦也还是会情不自禁地涌上心头,让克劳德的脸颊不自觉地露出笑容。
退勤時間になったら、出来るだけ早くセフィロスの下へ行こう。そう心に決めながら、クラウドはいつも以上に背筋を伸ばして、仕事から離れそうになる気持ちを、懸命に引き締めていた。
一到下班时间,就尽可能快地去萨菲罗斯那里。克劳德在心里这样决定着,比平时更加挺直了腰板,努力地收敛住想要离开工作的心情。
***
間もなく深夜二時に迫ろうという頃、守衛室の方では、交代予定の兵士達が出勤してくる声がした。
临近凌晨两点的时候,警卫室那边传来了预定换班的士兵们上班的声音。
(あと20分……)
(还有 20 分钟……)
相変わらず門前で直立しながら、クラウドは腕時計に視線を落として、思わず「あっ」と小声を上げた。外灯に照らされた自分の手首から、赤く残っていた痣が、綺麗さっぱり消えている事に気づいたのだ。
克劳德依旧在门前站得笔直,他垂眼看了看手表,不由得小声“啊”了一下。他发现自己手腕上被路灯照亮的红色淤痕已经完全消失了。
「やっと消えた……」
“终于消失了……”
どんなに暑くても、腕まくりもせずに隊服の袖で隠していた手首の痣。一週間前から赤く筋状に色づいていたソレが消えたのを見て、クラウドはホッと溜息をついた。
无论天气多热,克劳德都用队服的袖子遮住手腕上的淤痕,从不卷起袖子。看到手腕上那道一周前开始变红的条状淤痕消失了,克劳德松了口气。
そもそも痣が出来た原因は、セフィロスにあった。
说起来,淤痕的出现,都是萨菲罗斯的错。
それは先週、クラウドが彼のマンションに出向いた時の事。
那是上周,克劳德去他公寓时发生的事。
玄関に入るなり、担がれるように寝室に連れて行かれたクラウドは、いきなり柔らかな紐で両手首を拘束され、ついでに目隠しまでされて、ベッドの上に転がされたのだ。
一进门,克劳德就被架着带到卧室,然后突然被柔软的绳子束缚住双手手腕,接着又被蒙上眼睛,扔到了床上。
もちろんクラウドにとって、そんな経験は初めてだった。当然ながら少年は混乱し、手首に巻き付いた紐を懸命に解こうと暴れ出した。
当然,对克劳德来说,这样的经历还是头一次。少年理所当然地感到困惑,拼命挣扎着想解开缠在手腕上的绳子。
『セフィロス!? これ解けよ! な、何でこんな事!? 』
“萨菲罗斯?!快解开这个!你、你为什么要这么做?!”
『しーっ! 暴れるな、クラウド。手首に痣が付くぞ。大丈夫だ。怖い事は何もしない。いつもよりもっと気持ち良くしてやるだけだ。お前はただ、俺だけを感じていればいい』
“嘘!别挣扎,克劳德。手腕会留下淤青的。没事的。我不会做任何可怕的事。只会让你比平时更舒服。你只需要感受我一个人就好。”
『な、何言って……ぁ……はうぅん。や、やだ! セフィロスッ、見えない……ヒッ! あっ!ああぁ!ンクッ……や、止め! 』
“你、你在说什么……啊……哈呜嗯。不、不要!萨菲罗斯!看不见……嘶!啊!啊啊啊!嗯咳……不、住手!”
『フフ……止めて良いのか? 』
“呵呵……可以住手吗?”
『ふわっぁあっぁあっ……あっ! ……あ、ああっ』
“呼哇啊啊啊啊啊……啊!……啊、啊啊!”
『そうだ、それでいい。良い子だ。さあ、力を抜け。俺だけを感じろ』
“对,这样就好。乖孩子。来,放松。只感受我。”
『セフィ……だ…け……ぅふ……んんっ』
“萨菲……只……嗯……嗯嗯!”
『そう、俺だけだ』
“对,只有我。”
消えた痣の代わりに、その時の厭らしいやりとりを思い出して、クラウドは思わず赤くなった。
取而代之的是消失的印记,克劳德回想起当时那段令人厌恶的对话,不禁脸红了。
結局そのまま朝まで抱かれ続けていたようなのだが、いつもの如く、記憶は途中でぶっつりと無くなっている。気づけばセフィロスは既に出勤しており、広いベッドで気を失っていた少年の手首には、真っ赤な痣が残っていたという訳だ。
结果他似乎就这样被抱了一整夜直到天亮,但和往常一样,记忆在半途就戛然而止。等他回过神来,萨菲罗斯已经去上班了,而那个在宽敞的床上昏迷的少年手腕上,则留下了一道鲜红的淤痕。
ところでセフィロスの寝室には、いつも数本のポーションが常備してあった。セックスの負担が大きいクラウドを気遣って、彼が用意した物だったが、少年がそれを使用したのは初めの数回だけ。言うまでもなく、回復魔法をかけようとするセフィロスの行動も、強く拒み続けて来た。
顺带一提,萨菲罗斯的卧室里总是常备着几瓶魔药。这是他为了体恤性爱负担过重的克劳德而准备的,但少年只在最初的几次使用过。不用说,萨菲罗斯想要施展恢复魔法的行为,也一直被他强烈拒绝着。
セフィロスとの行為で生まれる痛みと疲労感、そして抱かれるたびに深まる快感。クラウドはそれらの感覚を、薬や魔法で簡単に消してしまうのが嫌だったのだ。
与萨菲罗斯欢好时产生的疼痛与疲惫感,以及每次被拥抱时愈发深切的快感。克劳德讨厌用药物或魔法轻易消除这些感觉。
彼がくれる全てのものを、ちゃんと受け止められる人間になりたい。
他想成为一个能好好接受他所给予的一切的人。
彼に甘えてばかりいたくない。
他不想总是依赖他。
彼のように、もっともっと強くなりたい。
他想变得更强,像他一样。
セフィロスを好きになればなるほど、クラウドの中でその気持ちが高まった。
克劳德对萨菲罗斯的爱意越深,这份感情在他心中就越发强烈。
だから彼のマンションに泊まろうともせず、疲れ切った身体を無理やり動かして寮に戻ることも、クラウドにとっては、夢に向かう為の努力の一つに過ぎなかった。
所以,即使他没有选择留在萨菲罗斯的公寓过夜,而是强撑着疲惫的身体回到宿舍,对克劳德来说,这也不过是为实现梦想所付出的努力之一。
『クラウド、なぜそこまで頑固になる? 俺に抱かれた痕を消したくないと言う、お前の天然自虐体質は悪くないが、だからと言って色々我慢し過ぎるのも考えものだぞ』
“克劳德,你为什么这么固执?你不想消除被我拥抱过的痕迹,这种天生的自虐体质倒也不坏,但话虽如此,凡事都忍耐过度也得好好想想了。”
あまりに甘えないクラウドに、セフィロスいつも苦笑した。
面对克劳德这种不怎么撒娇的性格,萨菲罗斯总是苦笑着。
(天然自虐体質って何だよ? だって普通、男はそんなに甘えないだろ? ……俺が変なのかな? )
(天然自虐体质是什么鬼?因为一般而言,男人不会那么爱撒娇吧?……难道是我比较奇怪吗?)
そもそも恋愛経験が無かったクラウドに、恋人への上手な甘え方が分る筈もない。そこに不器用な性格と、見た目に反した強い男気まで加味されたものだから、少年がセフィロスに甘えなくなるのは当然だった。
克劳德本来就没有恋爱经验,自然不可能懂得如何向恋人撒娇。再加上他笨拙的性格,以及与外表不符的强烈男子气概,少年不再向萨菲罗斯撒娇也是理所当然的了。
クラウドの【天然自虐体質】は、こうして出来上がったという訳である。
克劳德的【天然自虐体质】就是这样形成的。
***
「丁度いい所に車が停まってたよな」
“正好有辆车停在那儿。”
「うん! 」
“嗯!”
「この車、動き出さないか? 」
“这辆车不会动起来吧?”
「大丈夫だろ? 運転席には誰もいなかったし、駐車許可証が貼り付けてあったから」
“应该没事吧?驾驶座上没人,而且还贴着停车许可证。”
「他に隠れる所もなかったから、このバンに感謝だな。ここなら気づかれないし、クラウドの事がよく見える」
“也没有其他可以藏身的地方了,所以还得感谢这辆面包车。在这里不会被发现,而且还能清楚地看到克劳德。”
小声が聞こえて来るのは、クラウドが立っている北門から僅か10m程しか離れていない場所。
传来细微声音的地方,距离克劳德所站的北门仅有约 10 米。
そこには外来者用の駐車場が設けられており、その一番北門寄りの位置に、一台の黒い大型バンが駐車してあった。
那里设有访客停车场,一辆黑色大型面包车停在最靠近北门的位置。
言うまでもなく、声の主はクラウドと同室の、あの少年達だ。
不用说,声音的主人就是和克劳德同住一室的那些少年们。
隠れる場所が何処にもない北門周辺で、クラウドを監視する方法が見つけられずに困っていた少年達は、偶然駐車してあったこの黒い車の下に、上手い具合に潜り込んでいた。
在北门周围没有任何可以藏身的地方,少年们正为找不到监视克劳德的方法而苦恼,恰好钻进了偶然停在那里的这辆黑色车子下面。
黒い車……。
黑色的车……
そう、少年達の頭上でじっとしているこの車体は、レノ達が監視する為に使っていた、あの黒づくめのバンである。タークスはセフィロスから、今日この場所に、車を一台停めておくよう指示されていたのだ。
是的,这辆静静停在少年们头顶上方的车,正是雷诺他们用来监视的那辆全黑面包车。塔克斯曾接到萨菲罗斯的指示,要求今天把一辆车停在这里。
時刻は午前1時45分。
时间是凌晨 1 点 45 分。
これまでの経緯を何も知らされぬまま、いつも通りに仕事に勤しむクラウド。
克劳德对至今为止的经过一无所知,像往常一样努力工作着。
車の下に這いつくばって、友達救出作戦に闘志を燃やす少年五人。
五个少年趴在车底下,为拯救朋友的行动燃起了斗志。
彼らはこれが、英雄によって仕組まれたことだとも気づきもせずに、ジメジメと淀んだ空気が漂う深い闇の中で、その時が来るのを今か今かと待っていた。
他们没有意识到这一切都是英雄所为,在弥漫着潮湿浑浊空气的深邃黑暗中,焦急地等待着那一刻的到来。
***
その大型SUV車は、暗闇の中から突然現れた。
那辆大型 SUV 突然从黑暗中出现。
磨かれたダークグレーのボディを鈍く光らせて、静かに滑り込んで来た大きな車体は、黒いバンから3m程離れた位置にゆっくりと停車した。
它那打磨光滑的深灰色车身泛着暗淡的光泽,庞大的车身悄无声息地滑行而来,缓缓停在距离黑色面包车约 3 米远的地方。
「クソッ! 誰だよ、こんな時間に? そこに駐車されたら、クラウドが見えないじゃん!」
“靠!谁啊,这大半夜的?停在那儿,我可就看不见克劳德了!”
「しーっ! 誰か降りて来る」
“嘘!有人下来了。”
「誰だろ? うわっ! 背が高い、って……ぇ? あれ? え? 」
“是谁啊?哇!好高啊,这……诶?啊咧?诶?”
「「「「「……………………(えええーっ!!! )」」」」」
“““““…………(诶诶诶——!!!)”””””
駐車した車から悠然と降りて来た人物を見て、少年達は声なき叫び声をあげた。
看着从停好的车里悠然走下的人物,少年们发出了无声的尖叫。
つけっぱなしのフロントライトに照らされたのは、均整の取れたボディを持つ長身の男性だ。
被开着的车前灯照亮的,是一位身材匀称的高个男性。
胸元を少し開けたグレーのワイシャツと、黒い細身のスラックスを纏い、一歩足を進める度に、腰まで伸びた銀色の髪が、静かな波のように揺れ動いていた。
他身着领口微敞的灰色衬衫和黑色修身西裤,每迈出一步,及腰的银色长发便如静谧的波浪般随之摆动。
そう! そこに降り立った男こそ、少年達が憧れて止まない英雄。1stソルジャー?セフィロスその人だった。
没错!降临于此的男人,正是少年们憧憬不已的英雄。第一战士萨菲罗斯本人。
(……ほ、ホントに、サー?セフィロス!? )
(……真、真的是萨菲罗斯大人?!)
(や、やばい。やばいよ!! こんな近くで初めて見た! )
(糟、糟了。糟了!!第一次这么近距离地看到他!)
(しかも、超レアな私服姿! ああー! カメラ持って来ればよかったぁ! )
(而且,是超稀有的便服姿态!啊啊啊!要是带了相机来就好了!)
(チクショー! カッコいいなぁ! )
(可恶!好帅啊!)
(生きていて良かったのだよ! そしてもう死んでも悔いはない! 」)
(能活着真是太好了!现在就算死了也没有遗憾了!)
大声で叫びたい気持ちをグッと抑え、超小声で叫ぶ少年五人は、その全部がセフィロスの耳に筒抜けである事も気づかず、狭い車の下でひたすら見悶えた。
五个少年强忍住想要大声尖叫的冲动,用超小的声音尖叫着,他们没有意识到这一切都被萨菲罗斯听得一清二楚,只是在狭窄的车底拼命地扭动着身体。
(でも何でこんな時間に、こんな場所に来たんだろ? )
(不过,他为什么会这个时候来这个地方呢?)
(忘れ物でも取りに来たんじゃないか? )
(是不是来拿什么忘掉的东西了?)
(あ、英雄がクラウドの方に向かって行った)
(啊,英雄朝克劳德那边走过去了。)
一番端に寝そべっていた小太り少年が、隙間からギリギリ見える英雄の様子を仲間に伝えると、無謀にも秀才少年は、セフィロスの車の下に匍匐前進で移動し始めた。
躺在最边上的胖乎乎的少年,将从缝隙中勉强看到的英雄的样子告诉了同伴,鲁莽的优等生少年便开始匍匐前进,向萨菲罗斯的车底移动。
(お、おい! ヤバいだろ、それ!? )
(喂,喂!那也太危险了吧?!)
(皆はそこにいろ! こっちの方がよく見える。英雄が戻るようなら、すぐにそっちに引き返すから! )
(你们都待在那儿!我在这边能看得更清楚。要是英雄回来了,我立刻就回你们那边去!)
(ぼ、ぼ、僕も行く! 皆への伝達役が必要でしょ? )
(我、我、我也去!需要有人负责向大家传达消息吧?)
あとに続いた臆病なメガネ少年の、大胆過ぎる行動に驚きつつも、残った三人は顔を見合わせてそのままバンの下に待機した。
跟在后面那个胆小的眼镜少年,其大胆过头的举动让剩下三人感到惊讶,但他们还是面面相觑,然后就地待在了面包车下面。
こうして秀才少年とメガネ少年の熱い視線に見送られながら、英雄セフィロスは、込み上がってくる可笑しさに耐えつつ、悠々とした足取りでクラウドの元へと足を向けたのである。
就这样,在天才少年和眼镜少年热切的目光注视下,英雄萨菲罗斯忍着涌上心头的笑意,迈着悠然的步伐走向了克劳德。
***
「あ、あの……」
“啊,那个……”
少年達とは別の意味で驚いているのは、北門に立つクラウドだ。
与少年们不同,站在北门处的克劳德是另一种意义上的惊讶。
それもその筈……。何しろセフィロスとは、彼のマンションで会う約束をしていたのだから。その本人が何故か今、自分の目の前に立っている。
这也难怪……毕竟他原本是和萨菲罗斯约好在他的公寓见面的。而现在,他本人却不知为何正站在自己面前。
澄ました顔で自分を見下ろす恋人に、暫く呆気に取られていたクラウドだったが、やがて我に返ると、慌てて教科書通りの敬礼をセフィロスに向けた。合わせた踵をカツンと鳴らし、自分より遥かに背の高い男をヘルメットの中から見上げると、英雄はほんの少し口角を上げただけで、後はクラウドの望み通り、他人のフリをしてくれた。
克劳德被恋人那张冷淡的脸俯视着,一时之间惊得说不出话来,但很快回过神来,慌忙向萨菲罗斯行了个教科书般的敬礼。他双脚并拢,发出“咔哒”一声,从头盔里仰望着比自己高出许多的男人,英雄只是嘴角微微上扬,然后如克劳德所愿,装作不认识他。
「頼みたいことがある。お前の上官を呼べ」
“我有事要你办。去把你的上司叫来。”
「……あ…ぃ、イエッサー! 少々お待ちを! 」
“……啊……是,遵命!请稍等!”
セフィロスが此処に来た目的が分からぬまま、クラウドは足早に潜戸から守衛室に駆け込んだ。そして一分もしないうちに、今度は慌てた分隊長が、北門の外に走り出て来た。
克劳德不明白萨菲罗斯来这里的目的,急匆匆地从侧门跑进了警卫室。不到一分钟,这次是慌张的分队长跑出了北门。
「サ、サー?セフィロス、な、何か御用でありましょうか!?」
“萨、萨菲罗斯大人,您、您有什么事吗!?”
この兵士も、セフィロスを目の前で見るのは初めてなのだろう。酷く強張った敬礼と上擦った声で、突然の来訪者に、しどろもどろでその目的を問うた。
这名士兵大概也是第一次亲眼见到萨菲罗斯。他僵硬地敬了个礼,声音发颤,结结巴巴地询问这位不速之客的来意。
「そいつの名は? 」
“他叫什么名字?”
「ハッ!? か、彼はクラウド?ストライフ二等兵であります! 彼が何か?」
“哈!?他、他是克劳德·斯特莱夫二等兵!他有什么问题吗?”
「実は車のタイヤがパンクしてしまってな。交換するのに手伝いが欲しい。すまんが少しの間、ストライフを借りて良いか? 」
“其实我车胎爆了。想找人帮忙换一下。抱歉,能借用一下斯特莱夫吗?”
セフィロスの言葉を追うように、先輩兵士とクラウドの視線は、後方で静かなエンジン音を鳴らしている車へと移動し、そして納得した。
随着萨菲罗斯的话语,前辈士兵和克劳德的视线也跟着移向后方发出轻微引擎声的车辆,随即恍然大悟。
「勿論であります! おい、ストライフ。サーを手伝って差し上げろ! 交代者への報告は、俺が一人で済ませておくから」
“当然可以!喂,斯特莱夫。去帮帮长官!向接班人报告的事,我一个人搞定。”
「え? ぁ……イエッサー! 」
“诶?啊……遵命!”
疑う事を知らぬ分隊長は、クラウドに向かって頷くと、もう一度セフィロスに敬礼して、守衛室に戻って行った。そうしてだだっ広い空間に残ったのは、英雄と一般兵の二人だけ。
不谙怀疑为何物的分队长朝克劳德点点头,又一次向萨菲罗斯敬礼,回到了警卫室。于是,在这空旷的空间里,只剩下英雄和普通士兵两个人。
セフィロスはここにきてようやく、悪戯っ子のような笑みを見せた。
萨菲罗斯直到此刻才终于露出了恶作剧般的笑容。
「せ、せ、セフィロス……? 」
“萨、萨、萨菲罗斯……?”
「落ち着け、他の奴にバレるのは嫌なんだろう? だったら大人しくついて来い」
“冷静点,你也不想被其他人发现吧?那就乖乖跟我来。”
クラウドの耳元に腰を屈め、わざとらしい小声で命じるセフィロスに、少年は少し顔を歪めた。周囲にはもう誰もいないとは言え、こんな公共の場で、上官であり恋人でもあるセフィロスに、どう反応してよいか分からなかった。
萨菲罗斯弯下腰,在克劳德耳边用夸张的低语下达命令,少年微微皱了皱眉。虽然周围已经没有人了,但在这样的公共场合,面对既是上司又是恋人的萨菲罗斯,他不知道该如何回应。
その感情に直結した少年の重い足取りを、無理やり前進させたのはセフィロスだ。彼は静かに前を歩いていたかと思えば、門前を離れた途端にクラウドの手を握り、まるで愚図る子供を引っ張るように、その手を引っぱり出した。
是萨菲罗斯强行让少年那与情感直接相连的沉重脚步向前迈进的。他本以为萨菲罗斯会安静地走在前面,没想到一离开门前,萨菲罗斯就握住了克劳德的手,仿佛拉扯着一个磨蹭的孩子般,将他拽了出来。
「ちょ、ちょっと、セフィロス! こんな所でっ! 」
“等、等等,萨菲罗斯!在这种地方!”
「気にするな」
“别在意。”
「え? い、いや、気にするよっ! 」
“欸?不、不是,我很在意啊!”
一度巻き込まれたら、セフィロスの強引なペースからは逃れられない。それを充分理解しているクラウドだからこそ、焦りに焦りまくる。しかし当然ながら、掴んだ少年の手を英雄が離してくれることはなかった。
一旦被卷入,就无法逃脱萨菲罗斯的强硬步调。正因为克劳德充分理解这一点,所以才焦躁不已。然而,英雄当然没有放开他抓住的少年的手。
***
(こ、こっちに戻って来た!! )
(他、他回来了!!)
自分達に背を向けていた英雄がこちらを向き直った瞬間に、滑り込むようにバンの下に戻って来たのはメガネ少年だ。しかしもう一人の秀才少年は、何故か未だに英雄の車の下にいた。
英雄背对着他们,转身面向这边的瞬间,眼镜少年便滑溜地回到了货车底下。然而另一个秀才少年,不知为何却还待在英雄的车底下。
(お、おい! 早く戻れ! 見つかるぞ! )
(喂、喂!快回来!要被发现了!)
小声で叫ぶ友達の警告も耳に入らぬかのように、その場に残った秀才少年の視線は、忙しなく動き続けていた。
秀才少年对朋友小声的警告充耳不闻,留在原地的他,视线不停地忙碌转动着。
(さっきパンクって聞こえたけど、どのタイヤもパンクなんかしてない……)
(刚才好像听到了爆胎的声音,但是轮胎都没有爆胎……)
秀才少年は冷静だった。エンジンもライトも付けっぱなしのセフィロスの車。その何処を見ても、故障した箇所など見当たらないのを、不審に感じていたのだ。そうして今一度、こちらに戻って来る二人を見れば、秀才少年の目はこれまでにないほど大きく見開かれた。
秀才少年很冷静。西尔维娅的车引擎和车灯都开着。他环顾四周,没有发现任何故障,这让他感到很疑惑。当他再次看到两人走回来时,秀才少年的眼睛睁得比以往任何时候都大。
「手……繋いでる…………う(わっ!) 」
“手……牵着…………哇!”
彼が信じられない現実を目の当たりにした瞬間、のっぽ&小太り少年の手が、ガシッと秀才少年の両足を掴んでバンの下に引きずり戻し、更に驚いて叫びそうになった秀才少年の口を、すかさず計算少年が塞いだ。
就在他目睹这难以置信的现实的瞬间,高个&胖乎乎少年的手猛地抓住秀才少年的双脚,把他拖回车底,而计算少年则眼疾手快地捂住了秀才少年正要惊叫出声的嘴。
(何やってんだよ、お前らしくない! 見つかんだろ!? )
(搞什么啊,不像你啊!会被发现的吧!?)
(皆、静かに! クラウドとサーがこっちに来る! 隠れて!)
(大家,安静!克劳德和萨菲罗斯要过来了!躲起来!)
仲間の合図に、五人は思わず、車の反対側に足が出る程後退して息を潜めた。
听到同伴的信号,五人不由自主地后退到车子另一侧,几乎要被车子挡住,屏住呼吸。
時を待たずして、SUV車とバンの間に、セフィロスとクラウドと思わしき足が近づき、何故かそのまま、少年の細い足が後方に倒れ込むように、SUV車のボディに押し付けられたのが見えた。
没过多久,SUV 和面包车之间,出现了疑似萨菲罗斯和克劳德的脚步声,不知为何,少年纤细的腿向后倒去,被按在了 SUV 的车身上。
「セフィロス! ちょ、ちょっと、何してるんだよ? 離せったら! 誰かに見られたらどうするんだ? タイヤ交換するんだろ? だったら早くやろうよ! 」
“萨菲罗斯!喂,等等,你在做什么啊?放开我啦!要是被谁看到了怎么办?不是要换轮胎吗?那快点做啦!”
確かに聞こえるクラウドの声。だがその声は、何かに焦ったように酷く上擦っている。
克劳德的声音确实能听见。但那声音,却像被什么事急到了一样,变得非常尖锐。
(クラウド……今『セフィロス』って呼び捨てにしてなかったか?)
(克劳德……刚才是不是直呼“萨菲罗斯”了?)
(う、うん、してた)
(嗯、嗯,是啊)
(と言うか、とても上官に対する言葉遣いではないよな? 相手はあの英雄だぞ? )
(话说回来,这根本不是对上司的用词吧?对方可是那位英雄啊?)
(……あのさ、俺……さっき見ちゃったんだ)
(……那个,我……刚才看到了)
(何を? )
(看到什么了?)
(サーとクラウドが……手、繋いでるとこ……)
(萨菲罗斯和克劳德……牵着手……)
((((??? ))))
足元に隠れている少年達が、酷く混乱している声を聞き取って、セフィロスは微かに肩を震わせた。
听到藏在脚边的少年们那极度困惑的声音,萨菲罗斯的肩膀微微颤抖了一下。
全ては計画通り。
一切尽在计划之中。
タークスに用意させたバンの下に、少年達は狙い通りに隠れてくれた。
少年们如他所愿地藏在了他让塔克斯准备的面包车下面。
そして突然の出来事に動揺した今のクラウドは、目と鼻の先にいる友達の存在に、全く気づかぬままだ。更にわざとかけっぱなしにした車のエンジン音は、そんな少年の聴覚を、上手く邪魔してくれていた。
而此刻的克劳德,因突如其来的变故而心神不宁,完全没有注意到近在咫尺的朋友的存在。更何况,刻意不熄火的引擎声,也恰到好处地干扰了少年的听觉。
戦略を立てるより簡単なこの悪戯が、思った以上に上手く進んでいる事に、セフィロスはほくそ笑む。その可笑しさを、彼はクラウドを更に煽ることで誤魔化した。
比起制定战略,这个恶作剧要简单得多,而它出乎意料的顺利进展,让萨菲罗斯暗自窃喜。他将这份愉悦掩饰在对克劳德的进一步挑衅之中。
「クククッ、パンクなんて嘘だ。お前をここに連れてくるための口実を作ってみた」
“呵呵呵,爆胎什么的都是骗你的。我只是想找个借口把你带到这里来。”
「なっ! 何でそんな事!? あんた、マンションで待ってるって! 」
“什、什么?!你为什么要这么做?!你不是说在公寓等我吗?!”
「一度お前を迎えに来てみたかったのでな」
“我只是想来接你一次。”
「ッ!? ば、バカか!? 何ガキみたいなことやってるんだよ。俺、任務に戻る! 」
“?!你、你白痴吗?!怎么做这种小孩子气的事。我、我要回去执行任务了!”
「どうせもう交代時間だろう? 放っておけ」
“反正也快到换班时间了吧?别管了。”
「そんな訳にはいかないよ! 早く報告終わらせないと! 分隊長達を待たせてるんだぞ? 」
“那怎么行!不快点把报告写完的话!让分队长他们等着可不行啊?”
興奮が混じった二人の声は、それでも音量がかなり抑えられている。だが目と鼻の先にいる少年達には、充分過ぎる程ハッキリと聞こえていた。そしてそれは、彼等がずっと知りたかった真実が、明白になった瞬間だった。
两人混杂着兴奋的声音,音量却压得很低。但对于近在咫尺的少年们来说,已经足够清晰地听到了。而那一刻,正是他们一直想知道的真相大白之时。
(10個以上年上で……)
(比我大十岁以上……)
(髪が長くて……)
(头发很长……)
(SM好きで……)
(喜欢 SM……)
(美人な熟女……)
(美丽的熟女……)
(ク、クラウドの彼女さんって……)
(克、克劳德的女朋友……)
(((((…………………………英……ゆううううううぅぅぅ!? )))))
(((((…………………………英……英雄!?)))))
彼らは薄暗い車の下で暫し絶句した。
他们在昏暗的车底下一时哑然。
とても信じられなかった。信じられるはずがなかった。
简直难以置信。根本不可能相信。
クラウドの恋人が、この会社の社長よりも有名な、あの【英雄セフィロス】で、しかも同性の男だと言う事を。
克劳德的恋人,竟然是比这家公司社长还要有名的【英雄萨菲罗斯】,而且还是个同性男人。
瞬足で少年達のキャパシティを超えたこの事実は、光の速さで彼らをショック状態に陥らせた。それは多弁だった彼らの声と、この場に来た本来の目的をあっという間に消失させ、寝そべっている地面に向かって、少年達を大きく脱力させる程に威力があった。
这个事实瞬间超出了少年们的理解范围,以光速将他们带入了震惊状态。它迅速地抹去了他们原本滔滔不绝的声音,以及他们来到此地的真正目的,其威力之大,足以让少年们瘫软在地。
(……何だよ。これどこから突っ込めばいいんだよ。……て言うか、俺達、ここに何しに来たんだっけ? )
(……搞什么啊。这要从哪里开始吐槽啊。……话说,我们来这里是干什么的来着?)
自失したまま呟いたのっぽ少年の言葉に、あの冷静な秀才少年でさえ、何一つ答えることが出来ない。
面对陷入失神状态的瘦高少年喃喃自语,就连一向冷静的优等生少年也无言以对。
真っ暗な車の下で、今正しく少年達に、あのタークスのツォンが予想した通りの事が起きていた。
漆黑的车底之下,此刻,少年们身上正发生着塔克斯的曾所预料到的一切。
―――― 貴方達の関係を知った時点で、彼らがストライフに一線を引いてしまう可能性は大きい。仲間と楽しくやっている貴方の恋人が、そんな結末を望んでいると思いますか? ――――
——当他们知晓你们的关系时,他们很有可能会与斯特莱夫划清界限。你觉得你那正与同伴们愉快相处的恋人,会希望看到那样的结局吗?——
ツォンが言った通りの反応を、あまりにも素直に少年達が見せたので、セフィロスは思わずクスリと笑った。
少年们对曾的反应表现得太过坦率,以至于萨菲罗斯忍不住轻笑出声。
(ふん、分かっているさ、ツォン。だがここからが本番だ。この二ヶ月間、このガキどもを徹底的に調べ続けた意義は、むしろこれから生かされる)
(哼,我明白,曾。但好戏才刚刚开始。这两个月来,我彻底调查这些小鬼的意义,反而要从现在开始体现了。)
今この時が、クラウドにとって決して好ましくない方向に流れ始めていても、セフィロスは全く動じていなかった。
即便此刻事情正朝着对克劳德而言绝不乐观的方向发展,萨菲罗斯也丝毫未受影响。
彼は一体何故、人の気持ちを弄ぶような、こんな卑劣な行為に走るのか?
他究竟是为什么,要做出这种玩弄他人感情的卑劣行径?
多くの人間を惑わせ、その中心にいるクラウドには、目の前の真実さえ知らせない。正に恋人まで裏切るようなこの計画を、だがセフィロスは微塵の躊躇いもなく先に進めようとしていた。
他迷惑了许多人,却不让身处漩涡中心的克劳德知晓眼前的真相。这个甚至会背叛恋人的计划,萨菲罗斯却丝毫没有犹豫地打算继续推进。
***
「セフィロス! 離せ! 嫌だ!イ…ャ…… 」
“萨菲罗斯!放开我!不要!不……要……”
姿を晒すことも出来ず、狭い車の下で脱力したままの少年達を動かしたのは、酷く狼狽えたクラウドの叫び声だった。
无法现身,在狭窄的车底脱力的少年们,被克劳德那极度狼狈的叫喊声所触动。
彼等はその声にハッと顔を見合わせると、無意識のうちに身体を前進させ、バンの下からその光景を見上げた。
他们听到那个声音,猛地对视一眼,不自觉地向前挪动身体,从货车下方仰视着那番景象。
(((((えッ!? )))))
(((((咦!?)))))
少年達の目に映ったのは、ヘルメットを剥ぎ取られ、首が仰け反る程上を向かされて、英雄からの激しい口付けを強いられているクラウドの姿だ。
少年们眼中映出的,是克劳德的头盔被剥掉,脖子向后仰到极致,被迫仰视着,承受着英雄猛烈亲吻的模样。
「んんっ……ゃ やめ……セフィ……んっ……ふ」
“嗯嗯……不、不要……萨菲……嗯……呼”
明らかにセフィロスの舌を受け入れているクラウドは、それだけで陥落しそうな身体に力を込めて、自由な手を必死に動かし、恋人の身体を突っぱねようと踠いていた。
克劳德显然接受了萨菲罗斯的舌头,他用尽力气,抵抗着这几乎要让他沦陷的身体,拼命地挥舞着空闲的手,挣扎着想要推开恋人的身体。
セフィロスはそんなクラウドの抵抗に、拍子抜けするほどあっさりとキスを中断した。だがそれはほんの一瞬のこと。今度は自分の濡れた唇をクラウドの耳元に移動すると、艶を含ませた声で、身勝手な一言を言い放った。
萨菲罗斯对克劳德的抵抗感到意外,他轻松地中断了亲吻。但这只是一瞬间的事。他将自己湿润的嘴唇移到克劳德耳边,用充满魅惑的声音,说出了一句任性的话。
「フフ……自宅に戻るまで我慢するのが面倒になった。少し味見させろ」
“呵呵……我懒得忍到回家了。让我尝尝味道。”
「なっ!? 」
“什么!?”
セフィロスの意地悪な笑みが、クラウドをたちまち震え上がらせる。少年は更に必死になって、彼から逃れようと暴れ出した。もちろん力のあるソルジャーが、たかが一般兵の抵抗に負ける筈がない。セフィロスは再びに恋人の後頭部を掴むと、少し乱暴に上を向かせて、自然と開いてしまったクラウドの小さな口元を、いとも簡単に塞いでしまった。
萨菲罗斯恶意的笑容,让克劳德瞬间颤抖起来。少年更加拼命地挣扎着,想要从他身边逃开。当然,拥有力量的士兵,不可能输给区区一个普通士兵的抵抗。萨菲罗斯再次抓住恋人的后脑勺,稍微粗暴地让他仰起头,轻而易举地堵住了克劳德自然张开的小嘴。
「んぁっ! んんんっ! やっ……んっ! ふぁ……ぁんんっ」
“嗯啊!嗯嗯嗯!不……嗯!哈……啊嗯嗯!”
洩れて来たのは、これまで聞いたこともないような官能的なの喘ぎ。
泄露出来的,是前所未闻的、充满官能感的喘息。
当然ながら初心な少年達には、刺激の強すぎる光景だった。目の前で繰り広げられる濃厚過ぎる行為は、隣にいる友人と視線を合わせられなくなる程、彼等を羞恥心で一杯にしていく。
当然,对于未经世事的少年们来说,这是刺激性过强的景象。眼前上演的过于浓烈的行为,让他们羞耻得无法与身边的朋友对视。
そうしてその状況に真っ先に白旗を上げたのは、テンションを下げまくった小太り少年だった。気づけば彼は、出っ張った腹を少しずつ引き摺って、後ろへ後ろへと後退し始めている。
最先对这种状况举白旗的,是情绪低落的胖少年。不知不觉间,他拖着微凸的肚子,一点点地向后退去。
(おい、逃げるなよ )
(喂,别跑啊)
(無理だよ。恥ずかしくて、とても見てられない! どうせ俺達には何にも出来ないよ)
(没办法啊。太羞耻了,根本没法看!反正我们什么也做不了)
(で、でも、クラウド、どう見ても嫌がってるよ)
(可、可是,克劳德,怎么看都像是不情愿啊)
(う、うん。やっぱりあいつ、困ってたんだ。英雄にいつもあんな事されて! 何とか助けないと! )
(嗯、嗯。果然那家伙很困扰啊。总是被英雄那样对待!得想办法帮帮他!)
明らかに抵抗しているクラウドの姿は、彼らが此処に来た目的を、再びハッキリと思い出させた。
克劳德明显抵抗的样子,让他们再次清晰地回想起了他们来此的目的。
奮い立たせるように発した秀才少年の言葉に反して、少年達の身体は強張るばかりだ。何しろ相手はあの【神羅の英雄】。小太り少年と同様に、そこにいる誰もが、敵前逃亡したい心境だった。
与天才少年那仿佛在鼓舞士气的言语相反,少年们的身体却只是僵硬着。毕竟对方是那位【神罗的英雄】。和胖少年一样,在场的每个人都恨不得临阵脱逃。
(し、しかしだな、今ここで俺達五人の力を全て足しても、英雄の力の1%にもならない!…‥気がする)
(可、可是啊,就算我们五个人现在把所有力量加起来,也连英雄力量的 1%都不到!……我感觉是这样)
(『気がする』って何だよ!? )
(“我猜”是什么啊!?)
(仕方ないだろ? まさかクラウドの相手がソルジャーだなんて、考えてなかったんだから! )
(那也没办法吧?我可没想到克劳德的对手会是特种兵啊!)
(手っ取り早く言うと、つまりどういう事なんだ? )
(简单来说,到底是什么意思?)
(……勝ち目なし! )
(……没胜算!)
(や、やっぱりぃ? )
(果、果然吗?)
(じゃあ、どうするんだよ? )
(那,该怎么办啊?)
(どうするって言われても……)
(要说怎么办……)
パァン!!!
啪!!!
気持ちばかりが焦って、半ばパニックになりかけている少年達を、いきなり正気に戻らせる音が鳴り響いたのはその時だった。
就在那时,一声巨响突然响起,让那些心急如焚、几近恐慌的少年们猛然清醒过来。
だだっ広い空間に瞬く間に広がったその音は、目の前で起った出来事と共に、少年達を驚愕させた。
那声音瞬间在广阔的空间中扩散开来,伴随着眼前发生的一切,让少年们惊愕不已。
(っ!!!? )
(什!!!?)
(………………クラウドが…)
(………………克劳德他……)
(英雄を……)
(把英雄……)
((ぶっ叩いた―――ッ!? ))
((给揍了——?!))
そこには恋人の頬を叩いた手を固く握り締めて、彼を睨みつけているクラウドと、思いきり平手打ちされた左頬を押さえもせず、じっと恋人を見据えるセフィロスが立っていた。
只见克劳德紧紧握着扇了恋人一巴掌的手,怒视着萨菲罗斯,而萨菲罗斯则没有捂住被狠狠扇了一巴掌的左脸,只是静静地凝视着恋人。
クラウドはおもむろにその手でグッと口元を拭うと、眉間に深い皺を刻み込んで、今度はセフィロスの胸をドンドンと拳で叩き始めた。
克劳德缓缓地用手抹了抹嘴角,眉间刻下深深的皱纹,接着开始用拳头咚咚地捶打萨菲罗斯的胸口。
「ッ!! ッ!! ……んで……何で!!? 何で、こんなことするんだ!? 」
“唔!!唔!!……为什么……为什么!!?为什么,要做这种事!?”
何度も何度も、クラウドはセフィロスの胸に拳を振り下ろした。酷く顔を歪め、大きな瞳を潤ませながら。
克劳德一次又一次地,将拳头挥向萨菲罗斯的胸口。他痛苦地扭曲着脸,大大的眼睛里噙满了泪水。
そしてセフィロスもまた、全く無抵抗のまま、少年の拳を黙って受け続けていた。それはまるで、セフィロスが進んで罰を受けているかのような光景で、先程までの強引で身勝手な英雄の姿は、もう何処にも見当たらない。
而萨菲罗斯也同样,完全没有抵抗,默默地承受着少年的拳头。那景象仿佛是萨菲罗斯主动在接受惩罚,刚才那个强硬又自私的英雄形象,已经无处可寻。
「こんな所でキスなんかして、誰かに見られたらどうするんだ!? 」
“在这种地方接吻,要是被谁看到了怎么办!?”
ようやく拳を開いた少年の両手は、そのままセフィロスの胸倉を掴み、クラウドは眉間に深い皺を寄せて、セフィロスを睨みつけた。
少年终于松开了拳头,双手直接抓住了萨菲罗斯的衣襟,克劳德眉间深皱,怒视着萨菲罗斯。
クラウドをここまで追い込んでしまう事すら、予測済みだったセフィロスでも、恋人のこんな表情を見るのは辛い。それでも彼は、クラウドの強い決意を、どうしても彼自身の口から言わせたかった。直ぐ傍にいる少年達に聞かせるために。
即便对萨菲罗斯而言,将克劳德逼到如此境地也在他的预料之中,但看到恋人露出这样的表情,他仍感到心痛。即便如此,他还是想让克劳德亲口说出他坚定的决心。为了让就在身边的少年们听到。
「俺は一向に困らんぞ。誰に見られたところで、何ら後ろめたい事はない」
“我一点也不觉得困扰。被谁看到,我都没有任何愧疚。”
「俺は嫌だ! 」
“我不要!”
「そんなに俺との関係を、他人に知られることが嫌か? 」
“你这么讨厌我们之间的关系被别人知道吗?”
「嫌だ!! もう何度も言ってきたじゃないか!? セフィロスだって、分かってくれてただろ!? 」
“不要!!我已经说过很多次了不是吗!?萨菲罗斯也,应该理解我的吧!?”
「クラウド……確かにお前の事を悪く言うような、馬鹿な輩が出てくるかもしれんが、そんな奴らからは、俺が守ってやると約束しただろう? 」
“克劳德……确实可能会有说你坏话的蠢货出现,但对于那些家伙,我不是答应过会保护你吗?”
「そうじゃない!! 」
“不是那样的!!”
もう声量なんて構っていられなかった。
他已经顾不上音量了。
クラウドは全力でセフィロスの言葉を否定した。
克劳德全力否定了萨菲罗斯的话。
自分より遥かに背の高い恋人に訴えるために、少年の首は後ろに折れそうな程に仰け反っている。それでもクラウドは、真っすぐにセフィロスを見つめ、必死に己の感情を伝えようとしていた。
为了向比自己高大得多的恋人倾诉,少年仰着头,脖子几乎要折断。即便如此,克劳德仍旧直视着萨菲罗斯,拼命地想要传达自己的感情。
「そうじゃない! セフィロス! 俺の事なんてどうだっていい! 俺は……俺は、まだ何一つあんたに勝てない。ちっぽけ過ぎて何の価値もない! そんな俺を守る為に、セフィロスが色んな奴からとやかく言われるのが嫌なんだ! それに! それに俺は、あんたから『守る』なんて言われたくない! 」
“不是的!萨菲罗斯!我怎么样都无所谓!我……我,我还没在任何事上赢过你。我太渺小了,没有任何价值!我不想萨菲罗斯为了保护我,被各种人说三道四!而且!而且我,我不想听你说‘保护’我!”
「クラウド……」
“克劳德……”
「言っただろ!? いつか絶対、俺があんたを守るんだって!! だから俺が強くなるまで、二人の事は秘密にしようって、約束したじゃないか!? 」
“我说过吧?!总有一天,我一定会保护你!!所以在我变强之前,我们俩的事情要保密,不是约定好了吗?!”
クラウドの透き通った碧の瞳は、とうとう涙で濁ってしまった。少年はそれすらも悔しくて、片袖で必死に目を擦り、流れ始めた涙を無かった事にしようとする。
克劳德清澈的碧色眼瞳,终于被泪水模糊了。少年甚至为此感到懊悔,他拼命用袖子擦拭眼睛,试图让流出的泪水消失。
クラウドは許せなかった。誰もいない場所とは言え、自分から秘密を暴露しようとするようなセフィロスの行動が。そして誰に知られても構わないと言ってくれる彼に、応えらえない自分の無力さが。
克劳德无法原谅。虽然是在无人之处,但萨菲罗斯却试图将自己的秘密暴露出来。而面对那个说“被谁知道都无所谓”的他,自己却无力回应。
いつかセフィロスの横に立つ。
总有一天,我会站在萨菲罗斯身边。
いつかセフィロスを守れる男になる。
总有一天,我会成为能守护萨菲罗斯的男人。
クラウドは彼にずっとそう言い続けて来た。
克劳德一直都这么对他说。
それがどれほど愚かで無謀な夢でも、セフィロスを好きになったその時から、少年の心の中に、【諦める】と言う選択肢はなかった。
无论那是个多么愚蠢而鲁莽的梦想,从喜欢上萨菲罗斯的那一刻起,少年的心中就没有【放弃】这个选项。
***
いつも強引なセフィロスが、どこか躊躇いがちに、赤くなったクラウドの目尻を指先で拭っていく。
一向强硬的萨菲罗斯,却有些犹豫地用指尖拭去克劳德泛红的眼角。
「……すまなかった、クラウド。遊びが過ぎた。すまない……」
“……对不起,克劳德。我玩得太过火了。对不起……”
それがさっきの出来事に対する謝罪だけではない事を、クラウドは知らない。それでも心が籠ったセフィロスの謝罪は、少年の憤りを少しずつ沈めてくれた。
克劳德不知道,这不仅仅是对刚才发生的事情的道歉。即便如此,萨菲罗斯真诚的道歉还是让少年的愤怒一点点平息了下来。
「俺、必ずソルジャーになるから! サードでもセカンドでもない! あんたと同じソルジャー?ファーストになって、セフィロスの横に立つから! そしたら、あんたと一緒に戦いに行ける! もしセフィロスが怪我したら、俺がすぐに治してやれる! そして勝ち戦で帰ってきたら、その時は……その時は堂々とみんなの前で、あんたとキスするからっ! だからっ! だからこんな所ではもうっ……」
“我,我一定会成为特种兵的!不是三等兵也不是二等兵!我要成为和你一样的特种兵·一级,站在萨菲罗斯的身边!那样的话,就能和你一起去战斗了!如果萨菲罗斯受伤了,我能立刻治好他!然后打赢仗回来的时候,那时候……那时候我就能光明正大地在大家面前,和你亲吻了!所以!所以别在这种地方了……”
拭ったはずの涙が、胸の奥から込み上げる嗚咽と共に、再び少年の瞳を濁していく。結局クラウドは、それを隠すために、セフィロスのシャツを掴んだまま、彼の胸元に顔を埋めるしかなかった。
本以为已经擦干的眼泪,伴随着从胸腔深处涌出的呜咽,再次模糊了少年的双眼。最终,克劳德为了掩饰,只能抓着萨菲罗斯的衬衫,把脸埋在他的胸口。
「分かっている、クラウド。分かっている。俺が悪かった」
“我知道了,克劳德。我知道了。是我不好。”
セフィロスは揺れるクラウドの髪をそっと撫で、包み込むよう少年を抱きしめた。
萨菲罗斯轻轻抚摸着克劳德摇曳的发丝,将少年拥入怀中。
二人の足元では、固唾を飲んでこの様子を見守っている少年達がいる。セフィロスが気を集中させれば、彼らの気配の中に、自分に対する恐怖や、クラウドから遠ざかろうとする迷いは、もう感じられなかった。
在他们脚下,有许多少年屏息凝神地看着这一幕。萨菲罗斯集中精神,在他们的气息中,他已经感觉不到对自己的恐惧,以及想要远离克劳德的犹豫了。
(これでいい……)
(这样就好……)
愛しい者を包み込みながら、セフィロスはようやく訪れたこの計画の終わりに、静かな溜息を吐き出した。
萨菲罗斯拥抱着心爱之人,为这个终于到来的计划的终结,静静地叹了口气。
***
一カ月後……。
一个月后……
「そう言えばこの間、【友達】から『男になる』の意味をやっと教えて貰った。ほら、ずっと前にあいつらに言われて、俺もセフィロスも分からなかったやつ」
“说起来,前几天【朋友】终于告诉我‘成为男人’是什么意思了。就是之前他们说,我和萨菲罗斯都不明白的那个。”
「ほう? 何と言っていたんだ? 」
“哦?他们怎么说的?”
「それがさ、『男になるっていうのは、誰かを守りたいと思う時だっ!』って言われたんだけど、ますます意味が分かんなくて……」
“他们说,‘成为男人,就是当你想要保护某个人的时候!’但我更不明白是什么意思了……”
久しぶりに訪れたセフィロスのマンションで、クラウドは相変わらずソルジャー試験の勉強に勤しみながら、突然そんな事を言い出した。
在久违地拜访萨菲罗斯的公寓时,克劳德一如既往地埋头于士兵考试的复习中,突然说出了这样的话。
それを聞いたセフィロスの眉がピクリと上がり、やがて彼は小さく肩を震わせた。
听到这话,萨菲罗斯的眉毛抽动了一下,接着他轻轻地颤抖了一下肩膀。
クラウドが言っているのは、三カ月前にあの少年達に言われた言葉のことだ。
克劳德说的是三个月前那些少年们说的话。
熟女(セフィロス)の恋人がいると告白させられたクラウドに、少年の一人が『男になったんだな』と声をかけたのだ。クラウドはその比喩が分からず、意味を聞かれたセフィロスも、そ知らぬふりをした。
当时克劳德被迫承认自己有了一个熟女(萨菲罗斯)恋人,其中一个少年对他说:“你终于成为男人了啊。”克劳德不明白这个比喻,而萨菲罗斯被问及含义时也装作不知道。
三カ月も経って、再び出て来たこの話題に、セフィロスが思わず思い出し笑いをしてしまったという訳だ。
时隔三个月,这个话题再次被提起,萨菲罗斯忍不住想起了当时的情景,笑出了声。
「あ? セフィロス、今笑っただろ? やっぱりあいつら、嘘教えたんだな? て言うか、あんたホントは知ってたな? 『男になる』の意味」
“啊?萨菲罗斯,你刚才是不是笑了?果然是那帮家伙教了你假话吧?话说,你其实早就知道了吧?‘成为男人’的意思。”
「クククッ……まあな。と言うか、普通は誰でも知っている事だ」
“呵呵呵……算是吧。话说,这本来就是谁都知道的事情。”
「えっ! そ、そうなのか……? 」
“诶!是、是这样吗……?”
いきなり自分の無知ぶりを指摘されて、クラウドは狼狽えた。セフィロスは更に可笑しそうに肩を揺らしながら、隙を作ったクラウドの身体をヒョイと持ち上げて、あっという間に自分の膝の上に抱えてしまった。
突然被指出自己的无知,克劳德慌了神。萨菲罗斯更是好笑地抖着肩膀,趁着克劳德露出破绽,一把将他抱起,转眼间就抱到了自己膝上。
「あ! また、これ! これ嫌だ……恥ずかしい」
“啊!又是这个!我不喜欢这个……好羞耻。”
「却下。ここからは大人の時間だ。ああ、その前に……」
“驳回。接下来是大人时间。啊,在那之前……”
「? 」
“?”
「あいつらの言った『男になるっていうのは、誰かを守りたいと思う時だ』と言う言葉だがな。間違ってはいないな。むしろ良い回答だ」
“他们说的‘成为男人,就是当你想要保护某个人的时候’这句话啊。没错。反而是个很好的回答。”
「……そうなのか? 」
“……是、是吗?”
「ああ」
“啊。”
「へ、へええ」
“嘿,嘿嘿。”
この時のクラウドが何を思ったかなんて、セフィロスには簡単に分かってしまったが、彼は敢えてそれを聞かなかった。セフィロスにとっては、少年が嬉しそうに微笑んだ表情を見る方が、余程大切な事だったから。
萨菲罗斯轻易地就看穿了克劳德当时在想些什么,但他却故意没有问出口。因为对萨菲罗斯来说,能看到少年开心地露出笑容,才是更重要的事情。
***
セフィロスを守りたい
想要保护萨菲罗斯。
純粋で、不器用で、無謀で、愚かで、頑固で、意地っ張りで、ただの世間知らずの子供は、世界一強いと言われている自分を目の前にして、クソ真面目な顔でそう言い切った。
纯粹、笨拙、鲁莽、愚蠢、顽固、执拗,这个不谙世事的孩子,面对着号称世界最强的自己,一脸严肃地断言道。
クラウドのその強い想いを知った時、セフィロスの心も決まった。例え少年の夢が潰える日が来ようとも、この先ずっとクラウドと共に歩んでいこうと。
当萨菲罗斯得知克劳德那份强烈的意愿时,他的心也下定了决心。即便少年梦想破灭的那一天终将来临,他也要从此以后一直与克劳德同行。
だから彼は、数少ないクラウドの友達に、敢えて自分達の秘密を見せた。
所以他,特意向克劳德为数不多的朋友们,展示了他们之间的秘密。
他人に対して素直に甘えることが出来ない恋人を、陰から支える人間を作る為に。
为了给无法坦率地向他人撒娇的恋人,创造一个能在背后支持他的人。
セフィロスのお眼鏡に適ったあの少年達は、さっきのクラウドの話を聞く限り、どうやら充分その役目を果たしてくれているらしい。
那些被萨菲罗斯看中的少年们,从刚才克劳德的话来看,似乎已经充分地完成了这个任务。
不器用ゆえに、どこまでも真っ直ぐなクラウド。しかし彼が彼である限り、少年達はきっとクラウドを慕い続けてくれるだろう。
因为笨拙而无比率真的克劳德。但只要他还是他,少年们就一定会继续仰慕克劳德吧。
いつかこの秘密が何処かに洩れて、自分の目の届かぬところでクラウドが傷つく時があっても。
即便有一天这个秘密泄露出去,克劳德在自己视线之外的地方受到伤害。
これはセフィロスからクラウドへのバースディ?プレゼント。
这是萨菲罗斯送给克劳德的生日礼物。
誰も知らない秘密の贈り物だった。
这是一个无人知晓的秘密礼物。