恋人のお年賀 恋人的新年贺礼
三十歳を超え、磨かれたからこそ丸くなって男振りが上がったrnと、恋人関係が馴染んでまろやかな色気のisgが年始を過ごす話。どらやきを添えて。昨年の書き初め(novel/21315843)の10年後が舞台で、今年の書き初めです。あけましておめでとうございます。
年过三十后,历经打磨反而更显圆融气度的 rn,与相处日久渐显醇熟魅力的 isg 共度新年的故事。佐以铜锣烧相伴。背景设定为去年开篇作品(novel/21315843)的十年后,乃今年新春开笔之作。新年快乐。
表紙は、てんぱる様の素材を複合的にお借りして組み合わせています。
封面使用了てんぱる様的素材进行复合搭配组合而成。
① illust/121613177 ① 插画/121613177
② illust/99744121 ② 插画/99744121
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恋人のお年賀 恋人的新年贺礼
年が明けて二〇三六年。世の中は夏季五輪の年を迎えたことで浮かれきっていた。
2036 年新年伊始。整个世界都因即将迎来夏季奥运会而沉浸在欢腾之中。
次のワールドカップは二〇三八年なのでベテランとなったフットボーラーの大半にとってはオリンピックには我関せず。興味の埒外。見向きもしない。それこそヒリついた空気を醸し出して肩に力がこもっているのはユース年代や若手の層だけだ。
由于下一届世界杯要等到 2038 年,对于大多数已成为老将的足球运动员来说,奥运会根本无关紧要。不在兴趣范围内。连看都懒得看。真正被炙热氛围感染而绷紧神经的,只有青年队和那些年轻选手们。
とはいえオフシーズンにU23代表として有望株たちがオリンピックに出場するとなると、本来は六月頃に標準を併せていたパフォーマンスの〝山〟を七月下旬頃まで維持しなければならない。疲労回復に努められるはずのオフシーズンが短くなってしまい、肉体の負担が抜けきれない可能性があり次のシーズンの秋から冬頃にかけて怪我をする選手がいたりする。
但话说回来,当 U23 代表队的新秀们要在休赛期参加奥运会时,原本在六月左右达到巅峰的竞技状态就必须维持到七月下旬。本该用于恢复疲劳的休赛期因此缩短,身体负担难以完全消除,导致有些选手会在接下来赛季的秋冬时节受伤。
十九歳になってすぐに海外のリーグに所属してからおよそ十四年。三十三歳となった糸師凛は立派なベテランだ。
十九岁就加入海外联赛至今已约十四年。三十三岁的糸师凛已是位出色的老将。
酸いも甘いも知り尽くして、敗北の苦さも好敵手との死線を制してもぎ取った勝利が極上の旨みを含んでいることも知っている。そして難敵こそ、そう簡単には壊れないことも刻み込まれている。
他尝遍人生百味,既懂得败北的苦涩,也明白从劲敌手中夺取的胜利蕴含着无上甘美。更深深铭记着——真正的强敌,绝不会轻易溃败。
幸いにも一緒に死ねる輩ばかりの集まりで、するサッカーは心地よい。その真性が破壊獣である凛はまだフットボールを介してこの世で輝いていた。
所幸身处一群愿同生共死的伙伴中,踢起足球格外畅快。骨子里仍是破坏兽的凛,依然通过足球在这世间闪耀光芒。
そんなベテランの域に達している凛はクラブに所属する若手のフォローに回る側となっている。
达到如此境界的凛,如今在俱乐部里已转为关照年轻队员的前辈角色。
「凛のところはオリンピック出るやついる?」 "凛那边有要参加奥运会的选手吗?"
「二人」 "两个"
凛が答えれば、潔も「俺のところも一人スペイン代表で呼ばれてる奴がいるんだよな」と鷹揚に頷いた。
凛刚回答完,洁也从容地点点头说:"我这边也有个被西班牙国家队征召的家伙呢。"
自分達も若いころはクラブから離脱することが多く、長距離の移動は疲労もかなり溜まって時間があれば眠ることが多かった。そんな時クラブのベテランや中堅からの助言はためになることが多かった。
他们年轻时也经常需要离开俱乐部参赛,长途跋涉积累的疲劳让他们一有空就会补觉。这种时候俱乐部老将和中坚球员的建议往往特别管用。
「……来季大変だ」 "……下个赛季可不好过啊"
何の因果か、凛は現在ドイツのブンデスリーガ一部で強豪にして名門の常勝集団たるバスタード・ミュンヘンでストライカーをしていた。敵として迎え討っていたことが多かったバスタードの一員になるとは異なこともあるものだ。
不知是什么因果报应,凛现在正在德国足球甲级联赛的劲旅兼传统豪门——巴斯塔德·慕尼黑担任前锋。这个曾多次作为对手迎战的巴斯塔德俱乐部,如今竟成了他的归宿,世事真是难料。
ポジションは当然、最前の中央つまりCFだ。フランスからはじまりイングランド、そしてドイツ。プロになってから所属したリーグは三つ目。クラブチームは四か所目だ。フランスのPXG、イングランドで一クラブ、そして再びフランスでプレーして、昨シーズンからバスタード・ミュンヘン。
他的位置自然是锋线最中央的中锋。从法国起步,辗转英格兰,再到德国。成为职业球员后已效力过三个联赛,待过四家俱乐部。法国的 PXG、英格兰某俱乐部、又回到法国踢球,直到上赛季加盟巴斯塔德·慕尼黑。
バスタードでは二年目だ。つまりドイツのチームに所属したまま年を越すのは二度目となる。
这是他在巴斯塔德的第二个年头。也就是说,这将是他第二次以德国球队成员的身份跨年。
既知の通りドイツのブンデスリーガに設けられている数週間のウィンターブレイク。
众所周知,德甲联赛设有为期数周的冬歇期。
休暇とはいえシーズン中であるので体型維持は欠かせない重要事項だが、日ごろからストイックな部類の凛は軽いトレーニングとストレッチを続けていれば問題ない。しみついた感覚は今更失うはずもないが、たまにボールを蹴ることができれば百二十点。パフォーマンスを維持できるのならばどこで過ごしたっていい。
虽说正值假期,但赛季期间保持体型仍是不可或缺的要务。不过对于素来严于律己的凛而言,只需持续进行轻度训练和拉伸便无大碍。那些早已融入骨髓的运动感觉自然不会轻易消失,若能偶尔踢上几脚球更是锦上添花。只要能维持竞技状态,在哪里度过假期都无妨。
慢性的な薄曇りでどことなくどんよりとした空に覆われているドイツにいても冬の季節となるとバカンスという気分にはならない。ならば青く澄み渡った日本の太平洋の眩しい冬空の下で過ごした方がリフレッシュになるだろうと言い訳をして、昨年はクリスマスを終えた二十六日ごろから日本に一時帰国して実家で過ごした。
即便身处常年阴云笼罩、天空总显得灰蒙蒙的德国,到了冬季也难有度假的闲情逸致。于是他以"在碧空如洗的日本太平洋沿岸,沐浴着炫目冬阳更能恢复状态"为由,去年圣诞节刚过的 26 日便临时回国在老家小住。
潔は正月は大抵現地に残っているようなので特に誘わなかったのだが「凛が帰るなら俺も帰ろう~っと」なんて気の抜けた喋り方で帰国についてきたから丁度いいと、恋人を実家に連れていった。
考虑到洁通常新年都会留在当地,凛原本没打算邀他同行。没想到对方用懒洋洋的腔调说着"既然凛要回去~那我也回去吧",反倒正中下怀,便顺势将恋人带回了老家。
両親は凛が人並みに生きて行けているのか不安を感じていたようなのだが、彼らの不安を察した凛は親孝行とまではいかないまでも、両親にとっての安心材料を兄だけに任せっきりするのは何となく癪であったので、三十を過ぎてようやく世間一般の人々がしそうなことを擬えてみる。
父母似乎对凛能否像普通人一样生活感到不安,察觉到父母担忧的凛心想,虽然谈不上孝顺,但把让父母安心的责任全推给哥哥总让人觉得不爽,于是年过三十的他终于开始模仿起寻常人家会做的事。
「手土産きんつばでいい?」「手ぶらでいい」「そうはいかないだろ」と、なんだか緩やかでそれっぽいやりとりをして鎌倉に連れて行き、一方で凛は何度目かになる義実家とも呼べる潔の家を訪問して、お互いの両親へと挨拶を交わす。それが一年前の話。
"伴手礼带金锷烧可以吗?""空手来就行""那怎么行"——就这样进行着莫名松弛又像模像样的对话后,他把人带去了镰仓;与此同时,凛也造访了堪称婆家的洁家第 N 次,双方互相向对方父母拜年。那已是一年前的事。
同時帰国が叶ったのもやはり二人が所属するリーグが同じだからである。
能同时回国也是因为两人所属的联赛相同。
現在、ブンデスリーガで敵同士としてプレーしている恋人の潔はレバークーゼンを本拠地に置くチームに所属している。
如今在德甲作为对手征战的恋人洁,所属球队的主场正设在勒沃库森。
凛は二年目だが、潔はそこでは三年目になる。 凛是二年级生,而洁在这支球队已是第三年。
三シーズンを超えて同一のクラブに所属したことがない潔だが、レバークーゼンに腰を据える気でいるようで、まだ下位ではあるものの指導者としてのライセンスを取得しているらしい。契約もベテランにしては長い五年。夏と冬に移籍市場が開けばいくつかのクラブから移籍交渉が持ちかけられているらしいが、応じていないと本人から私的に打ち明けられている。
虽然洁从未在同一家俱乐部效力超过三个赛季,但他似乎已决心在勒沃库森扎根。尽管球队排名仍处中下游,他不仅取得了教练执照,还签下了对老将而言相当罕见的五年长约。每当夏窗冬窗开启时,总有多家俱乐部前来洽谈转会,但他私下向我坦言从未应允过这些邀约。
次の春で三十四歳の彼はいつ引退してもおかしくない年齢なのだが、ストライカーとしてだけではなくミッドフィールダーやディフェンスとしても評価は一流だ。弱小や中堅のクラブは特に喉から手が出るほど欲しい逸材だろう。
明年春天就将三十四岁的他随时可能退役,但无论是作为前锋、中场还是后卫都保持着顶级水准。这般全能悍将,中小俱乐部自然求贤若渴。
新王者と称されるレバークーゼンは最近ではバスタードの優勝を阻止することが増えてきており、CLでも活躍著しい。潔は様々なクラブを渡り歩いてはそのクラブに成績と偉業を残して立ち去っているので、その功績が今は全てレバークーゼンのものとなっているのでオーナーやサポーターは狂喜乱舞。ファンダムが盛り上がるのも頷ける。
被称为新科冠军的勒沃库森近年屡屡阻击拜仁夺冠,欧冠赛场同样表现抢眼。洁辗转多家俱乐部时留下的赫赫战功,如今全都化为勒沃库森的荣光,难怪老板和球迷们欣喜若狂,粉丝圈的热度持续攀升也在情理之中。
潔の経歴は、プロとなってからバスタードに二年間。その後、凛の兄である糸師冴の同僚としてスペインのクラブで三年間、そして凛がいたPXGで共に一シーズンだけ共闘した。「共闘」といってもその内実はチームを同じくしていながらお互いに闘志を燃やしていた競争状況で、潔本人も「もっと壊すつもりで来いよ」と誘うから、遠慮などせず体当たりで粉々に壊し尽くすかの勢いで高め合った。
洁的职业经历是:成为职业球员后在巴斯塔德效力两年。随后作为凛的兄长糸师冴的同事,在西班牙俱乐部度过了三年时光,又与身在 PXG 的凛共同奋战了一个赛季。虽说是"共同奋战",实则是同队竞技却彼此燃起斗志的竞争关系——因洁本人那句"带着粉碎我的觉悟过来吧"的挑衅,双方毫不客气地以身体对抗的架势相互磨砺,仿佛要将对方彻底击垮般不断突破极限。
PXGに長いこと居た凛の方が先にイングランドのプレミアムリーグに戦地を移してしまったが、潔はその後二シーズン、つまりPXGには合計で三年間いたようだ。
在 PXG 效力更久的凛率先转战英格兰超级联赛,而洁则又留守了两个赛季,算来在 PXG 共计度过了三年光阴。
イタリア、ポルトガル、ベルギーと最長三年から短ければ一年と渡り歩き、再びドイツの地に戻った。潔、三十一歳の秋である。
从意大利、葡萄牙到比利时,长则三年短则一年地辗转各地后,三十一岁那年的秋天,他再度踏上了德意志的土地。
その際に所属したのがレバークーゼンのクラブだった。そこはブンデスリーガ史上初の無敗優勝を成し遂げたことがあるチームで、その年には潔も所属してエースストライカーとして大奮闘。古巣バスタード相手でさえも白星を許さなかった。危機感を抱いたバスタードは大型補強として凛に大枚をはたいて移籍交渉を成功させたという訳である。
当时效力的正是勒沃库森俱乐部。这支曾创下德甲历史首个不败夺冠奇迹的球队,在洁以王牌射手身份加盟的赛季同样势如破竹,连老东家巴斯塔德都未能从其手中夺走胜利。危机感骤增的巴斯塔德这才不惜重金将凛招致麾下,成就了那桩轰动足坛的转会。
正直フランスにいても良かったのだが、あと何年、両者ともに全盛を保ったままぶつかり合えるかわからないとブンデスリーガに戦いの舞台を移すことにした。少しでも近くでプロ生活を送りたいというちょっとした私情があったのも事実だ。
其实留在法国也不错,但考虑到双方都不确定还能保持巅峰状态对决几年,最终决定将战场转移到德甲联赛。说实话,确实也存着点想离他更近些的私心。
きっと昔ならば何を生温い感情なのだ、捨ててしまえと己を叱咤しただろうが、恋慕や執着があっても相対する試合は熾烈を極めるし、それすらも戦略を組み立てる上での駆け引き材料になるのだということを若いころの自分に教えてやりたい。
若换作从前,定会痛斥自己这种优柔寡断的感情应当舍弃。但如今真想告诉年轻时的自己:即便怀着恋慕与执念,照样能打出最激烈的对决,甚至能将这份情感化作战术博弈的筹码。
リーグに強い敵がいるだけで試合の面白さは段違いであるし、長きにわたる現役生活において最も重要なのはモチベーションとパフォーマンスの均衡を保つことだと気が付いた中堅の頃からは燃え尽きないように心がけるようにもなった。
自从在职业生涯中期领悟到"联赛存在强敌能让比赛精彩程度天差地别"以及"保持竞技状态与求胜心的平衡才是长久之道"后,就格外注意避免过早燃尽热情。
そのような意味ではモチベーションがリーグにあるのは喜ばしいことなのだ。
从这个意义上来说,能在联赛中找到斗志源泉实在是件值得庆幸的事。
最高峰で潔と競っていたから凛は至高ではあったが孤独ではなかった。フットボールを通した高次元のやりとりは双方の間で横たわる愛を色濃くさせ、お互いの存在を結びつける情の糸をきつくさせた。二人の仲が引き裂かれないように繋ぐための蝶番を留めるビスは深く杭打たれる。
凛在巅峰时期与洁竞争,虽至高却并不孤独。通过足球进行的高维度交流,让横亘在两人之间的爱意愈发浓烈,将彼此命运相连的情丝也愈发紧密。为了不让两人的关系被撕裂,那连接彼此的铰链螺丝被深深钉入骨髓。
気が付けば交際して十年以上。お互いに活動の主軸にしている国は異なれども欧州は飛行機で二時間や三時間でたどり着くことができるからこそ、長続きしたのかもしれない。
不知不觉已交往十年有余。虽然各自活跃的主场国度不同,但欧洲这片大陆只需两三个小时的航程便能抵达,或许正是这份便利让爱情得以长久延续。
凛は潔が所属先を転々としている間も気が気ではなかった。ずっと彼からの優しさと気遣いを恣にしているが、恋のライバルはフットボーラーの数だけいると、まことしやかに囁かれている男が運命である。その隣を死守し維持していくのは並大抵のことではない。
即便洁辗转于各个俱乐部期间,凛也始终悬着一颗心。虽然一直恣意享受着他的温柔体贴,但这位被传"情敌数量堪比职业球员"的命定之人,要死守他身旁绝非易事。
どんなに彼がその戦場を変えて自身を磨き上げられそうな強敵を探そうとも、お前には糸師凛以外の最難関はいないのだとわからせるために強さを証明し続けたのは正解だったようで、見事に恋人の座を守り通した。
无论他如何转换战场寻找能磨砺自己的强敌,凛持续用实力证明"对你而言最难的关卡永远只有糸师凛"的做法显然是正确的,最终完美捍卫了恋人的宝座。
潔を自由に泳がすことを許しても絶対に逃がさずにその心を惹きつけ、囲い続けること積年。
让洁自由游动却绝不放手,持续吸引并禁锢那颗心,经年累月。
そのご褒美をそろそろ貰ってもいい頃だろう。 差不多该领取这份奖赏了吧。
「凛はモテるからさ、俺だって意外と不安なんだぜ」 "因为凛很受欢迎啊,连我都意外地感到不安呢"
軋む身体は投げ出されて惜しげもなく添い伏したまま述べた。
被随意抛下的酸痛身躯仍毫不吝惜地紧贴着陈述道。
頬杖をついた男は柔らかな表情を湛えたまま足を絡めて凛を見つめる。鍛えられて引き締まった筋肉は一般人と比べれば分厚いのだろうが、体格に恵まれている自身のそれよりかは華奢。特に事後の気配をまだ残した芳体などは目に毒で、毛布を引っ張って背中まであげてやるとくすぐったそうに身体を寄せるから、反射で引き寄せてしまうのだ。もう手癖である。
撑着下巴的男人带着柔和的表情,一边交叠双腿一边凝视着凛。那经过锻炼的紧实肌肉虽比普通人要厚实些,但比起天生体格优越的自己还是显得纤细。特别是那具仍残留着事后余韵的芬芳躯体简直令人目眩,当拉过毛毯盖到他后背时,对方就会发痒似地靠过来——这种条件反射般的亲近,早已成了习惯动作。
どさくさに紛れて天使の輪が輝く射干玉に鼻梁をうずめれば自宅で使うシャンプーで洗われている筈なのにどこか甘さを帯びる香り。
趁乱将鼻梁埋进天使光环笼罩的射干玉般肌肤里,明明是用家用洗发水清洗的,却莫名带着甜美的香气。
「お前も大概だろ。ほいほい虫けらをひっつかせやがって」
"你也够夸张的。随随便便就把蝼蚁之辈勾引过来"
この魔性な誘蛾灯め。芳香をまき散らす魅惑の仇花め。
这魔性的诱蛾灯。肆意散发芬芳的魅惑毒花。
「そんな俺に誘惑されてる凛はなんなのさ」 "这样诱惑我的凛到底算什么啊"
「知るか。お前を毟りちぎる……なんか、風とかだろ」
"谁知道呢。想把你撕碎...大概是风之类的吧"
「テキトー野郎め、この色男~~‼」と、おどけたように屈託なく笑う。幾度も夜を共に過ごしたせいで恥じらいは放り出してしまったのか。情痕がくっきり残っていることも忘れて柔肌を晒している。潔の花紺青の眼差しにたまらず深く丹念に口づけを交わしても誰にも責められることはない権利を得ていることは心地よい。
"你这随便的家伙,这个美男子~~‼"他戏谑地笑着,毫无顾虑。或许是因为共度了太多夜晚,早已抛却了羞怯。全然忘记情欲痕迹还鲜明残留着,就这样展露着柔嫩肌肤。在洁那花绀青目光的注视下纵情深吻也不会被任何人责备的权利,令人心旷神怡。
「今年は一緒に年越ししたい」 "今年想和你一起跨年"
そうやってクリスマスを過ごして、熱も冷めない褥で囁かれた我がまま。まるでそれは為政者が寵姫に閨で褒美をねだられる行為に似ている。
就这样度过了圣诞节,在尚未冷却的被褥里被轻声提出的任性要求。简直就像是当权者在闺房中向宠妃讨要奖赏的行为。
芝生の上では独裁者。ベッドの上では女王陛下。ただし、それ以外では他人を尊重して距離を詰める際にも決定的な一線は越えないように殊勝な心掛けをする彼が珍しく甘えたのである。凛はそれを叶えられない甲斐性なしではない。
在草坪上是独裁者。在床上则是女王陛下。但除此之外,他始终保持着令人钦佩的克制,即便在拉近与他人距离时也绝不跨越决定性界限——这样罕见的撒娇举动,凛自然不会没有能力满足。
とはいえ実は凛は日本で年末にちょっとした仕事があり、ずっといられたわけではない。クリスマスが終わった後、二十八日には日本に到着、数日過ごして三十日の夜にはドイツに降り立っていた。
不过实际上凛年底在日本有些工作要处理,并不能一直停留。圣诞节结束后,28 日抵达日本,待了几天后 30 日晚上就降落在了德国。
日本で乾麺の蕎麦などを手に入れて、ドイツでは簡単には手に入らない日本茶や地元の鎌倉で人気のかぼちゃを使ったきんつばを土産の筆頭に、その他にもあれこれと荷物をいっぱい引っ提げて、レバークーゼンの潔の自宅へ。
将在日本买到的干制荞麦面等食材,以及德国难以入手的日本茶、当地镰仓流行的南瓜馅金锷烧等特产塞满行李,直奔勒沃库森洁的住所。
雑煮のつゆの準備をして、年越しに蕎麦を啜り、中継のベルリンフィルのジルヴェスターコンサートを見ながら年を越した。
准备好杂煮的汤汁,吃着跨年荞麦面,看着柏林爱乐乐团的新年音乐会直播迎来了新年。
午前一時過ぎにはお互いに眠りに就いて、普段にしては遅めの朝を迎える。
凌晨一点多两人相拥入眠,迎来了比平时稍晚的清晨。
「明けましておめでとうございます」 "新年快乐"
身だしなみを整えて居住まいを正した二人はソファに横並び。潔の方から軽く会釈。
整理好仪容端坐在沙发上的两人并肩而坐。阿洁率先微微颔首致意。
「明けましておめでとうございます」 "新年快乐"
凛も新年の挨拶を恭しく返した。 凛也恭敬地回以新年问候。
――数年前くらいから敬語で返しはじめたら「凛って敬語使えるんだ」と口元をおさえて目をまん丸くさせていたので小突いた覚えがある。
——记得几年前开始用敬语回礼时,对方曾捂着嘴瞪圆眼睛说"原来凛也会用敬语啊",气得我戳了他一下。
若い頃にはぶっきらぼうに返すか、挨拶であるので渋々といった風体で返答していたのが懐かしい。一年の始まりを祝う辞儀。凛もいい大人であるのでこの時ばかりは素直に頭を軽く前のめりにするのだ。頭を下げているのではない、挨拶で前に傾けているだけだ。
年轻时总是粗鲁地回应,或是带着不情不愿的态度勉强回礼的日子令人怀念。庆祝新年伊始的鞠躬礼。凛如今已是成熟的大人,唯有此刻会坦率地将头微微前倾。这不是低头,只是问候时向前倾身而已。
「……なんか慣れない」 "……总觉得不太习惯"
「テメェ……」 "你这混蛋……"
腹の底から思わず突いて出たのは唸るような低く重厚な恨み言。盛大な舌打ちを供にして、顳顬に浮き出た青筋がひくつかせた。
从心底不由自主迸发出的,是如同低吼般沉重浑厚的怨言。伴随着一声响亮的咂舌,太阳穴上暴起的青筋抽搐着。
「それが正月一緒に過ごす恋人への言い草か?」 "这就是你对一起过新年的恋人该说的话?"
新年一発目の怒りを、ひねくれたようなことを呟いた恋人にぶつけてやる。
把新年第一把怒火发泄在说了别扭话的恋人身上。
「お前が泣き言ぬかすから会いにきてやったんだろうがクソ潔」
"还不是因为你哭哭啼啼的我才来见你的 洁癖混蛋"
歳を重ねて丸くなったと思ったら大間違い。 要是以为他年纪大了就变得圆滑 那可就大错特错了。
若いころにこれでもかと研いだ鋭く光る鉛色の抜き身は健在だ。鞘に入っているだけである。尖っていた頃に血気盛んに刃を振り回していた凛だが、やたらめったらと傷をつけるよりも鞘に収めてここぞという時にだけ抜いてなで斬りにした方が効果的だと気が付いたのはいつの頃だったか。もう覚えてはいない。
年轻时打磨得锃亮的铅色刀刃依然锋利如初。只不过收在鞘中罢了。那个曾经血气方刚挥舞利刃的凛,究竟是从何时起意识到与其胡乱砍出伤痕,不如收刀入鞘,只在关键时刻出鞘横扫更为有效?他自己也早已记不清了。
頭に血が上って身体を抑えられていた自分が逆に若者の荒れ狂う衝動を鎮める役回りを担うようになってもう数年だ。潔はもっと前からやっていたようだが、他人が怒り狂っている姿で逆に冷静になるとはよく言ったもので、まさしくその通りだった。
头脑发热时本该被压制的自己,反而成了平息年轻人狂暴冲动的角色,至今已有数年。洁似乎更早就开始这么做了——人们常说看到他人暴怒的模样反而会异常冷静,这话说得一点不假。
殺傷能力が高い武器を易く振り回して見せつけるのは二流・三流。よく切れる刃であるからこそ簡単には抜かないものである。
轻易挥舞高杀伤力武器炫耀的不过是二三流货色。正因为是锋利的名刃,才更不会轻易出鞘。
能ある鷹は爪を隠す。凛は今や、黙したままその重厚さを帯びる威圧だけで人を刺し穿てるような得物と成り果てた。
真鹰不露爪。如今的凛已化作无需言语,仅凭厚重威压就能洞穿他人的凶器。
とはいえ、それはフットボールでだけだ。 不过,这种状态仅限于踢足球时。
「泣き言って、別に泣いてなかっただろ⁉」 "说什么哭不哭的,你明明就没哭吧⁉"
「涙の痕がくっきり残ってた」 "泪痕都还清清楚楚留在脸上呢"
「なッ! そ、それは凛がいつまでも焦らすから……!」
"什、什么!那、那还不是因为凛一直吊着我胃口……!"
「なんか言いたそうにしてる癖に隠し事してた潔の自業自得だろ」
"明明一副欲言又止的样子却藏着掖着,洁你这是自作自受"
「、凛が年末に日本で仕事あるって知っちゃったから遠慮してたんだっつーの」
"因为知道凛年末在日本有工作,所以才特意避开的啊"
「そういうことしてる時なんだから仕方ねぇだろ」と、眉尻を下げて弁明する潔はおそらく最も凛の罵詈を浴びてきた人間。凛のナイフのような態度と言葉は、それはもうすさまじい辛辣さでもって更には殺意と鋭さを帯びているので慣れている。
"这种时候做这种事也是没办法的吧"——皱着眉梢辩解的洁,恐怕是承受凛最多谩骂的人。凛那如刀般锋利的态度与言辞,带着令人战栗的辛辣,甚至裹挟着杀意与锐气,对此他早已习以为常。
傷つけられて殺されては何度も蘇ってきた男は、触れれば忽ち切れてしまってもかまいやしないのだ。抜き身であった頃でさえもすり寄っていた命知らず。
这个被伤害被杀死又无数次复活的男人,即便触碰就会立刻碎裂也毫不在意。早在还是刀身时就敢贴近的亡命之徒。
何度壊れても斃れない運命は凛に与えられた天恵である。だから掴んだまま手放さずこうやって、わざわざ年末に日本から戻ってきて共に年を明かしたのだ。
无论被摧毁多少次都不会真正消亡的命运,是凛获得的天赐恩典。所以才会像这样紧握不放,特意在年末从日本赶回来共度新年。
「……お前、年々さ、なんか格好良くなるから」 "……你这家伙啊,一年比一年更有型了呢"
狡い、と口を尖らせた言葉にはとろりと混ざる蜂蜜のような甘さ。いじけてみせるその可憐さ。大きな掌で生まれて良かったと思う、だってこうして片手で両頬を挟んでひょっとこのように吻を突き出させることができるからだ。馬鹿めと密かに詰ると男心を擽るいじらしい花唇を啄んだ。
"太狡猾了"——撅着嘴嘟囔的话语里,混着蜂蜜般黏稠的甜腻。佯装闹别扭的可爱模样。那双能单手捧住他脸颊的大手,让人由衷庆幸自己降生于世。因为这样就能把对方的脸挤成鸭子嘴亲吻了。暗自骂着"笨蛋",却忍不住啄上那撩拨男人心弦的可怜花唇。
「慣れねぇと困るのはお前だろうがよ」 "要是习惯不了的话,困扰的可是你自己啊"
「それもそうなんだけどさぁ……」 "话是这么说啦......"
引退したらずっと二人で暮らすのだ。一緒に越せなかった年と同じくらいの数か、或いはそれ以上に共に年始を迎えることができるかもしれない。
退休后就能一直两个人生活了。或许能一起度过的新年数量,会多到和那些没能一起跨过的年份相当,甚至更多。
「おい」 “喂”
「なぁに」 “干嘛”
雑煮を食べ終えて潔が洗い物をしている隙に客間とは別に宛がわれている凛の部屋から小さな箱を持って来ると、ずいっと押し付けるように出す。
趁着洁吃完年糕汤去洗碗的空档,我从分配给凛的客房拿来小盒子,像要推给他似地递了过去。
「? なにこれ」 "? 这是什么"
「年賀」 "年礼"
「へ?」 "啊?"
年賀とは、新年の挨拶で他人の家に伺う際に持っていく贈り物だ。
所谓年礼,就是新年拜访他人时携带的贺礼。
「開けていい?」 "可以打开吗?"
凛は頷かなかったがそんなことは茶飯事。否定する時は一も二もなく言葉が飛ぶので、無言ということは肯定・同意の証。それを熟知している潔は視線を一瞥した後、同意を得られたとばかりに包み紙を剥がして小さなその箱を開けた。
凛虽然没有点头,但这已是家常便饭。当他想要拒绝时,总会不假思索地脱口而出,所以沉默就意味着肯定与同意。深知这一点的洁瞥了一眼后,便当机立断地撕开包装纸,打开了那个小盒子。
「――わぁ! どら焼き!」 "——哇!是铜锣烧!"
糖質の塊なので、小さめである。 因为是高糖分点心,所以尺寸做得比较小巧。
「そういうの好きだろ」 "你不是就喜欢这种吗"
「うん。ありがとう、凛」 "嗯。谢谢你,凛"
何故どら焼きなのかという問いは置いておいて、潔は「一緒に食べよう」と緑茶を淹れるための準備に取り掛かる。その間に凛は個包装のフィルムからどら焼きを取り出して平らな器に乗せる。
至于为什么选择铜锣烧这个问题暂且不提,洁说着"一起吃吧"便开始准备泡绿茶。期间凛把铜锣烧从独立包装里取出,放在浅盘上。
二人ともどちらかというと和菓子を好む性質だ。餡子の甘さが恋しかった……。
两人都算是偏好和果子的类型。果然还是想念豆沙馅的甜味……。
「、んま……」 「嗯嘛……」
「……ん」 「……嗯」
目を輝かせる潔と、瞳を閉じて堪能する凛。豆と砂糖のバランスがいい甘さがおいしい。生地のふわりとした触感が途轍もなく落ち着く。
眼睛闪闪发亮的洁,与闭目享受的凛。豆沙与砂糖调配得恰到好处的甘甜令人沉醉,面皮那蓬松绵软的口感带来无与伦比的安心感。
どら焼きは二枚の生地で餡を包み込む形をしていることから夫婦円満などの縁起の良いお菓子とされている。二枚の生地を夫婦でなく単に「人と人」だと見做せば、友人関係やビジネス相手への縁深い付き合いを願うための験担ぎや暗喩としても持ってこいだ。
铜锣烧因用两片面皮包裹馅料的造型,被视为象征夫妻和睦的吉祥点心。若将这两片面皮不看作夫妇而单纯视为"人与人的关系",它同样适合作为祈愿友情长存或生意兴隆的吉利彩头与隐喻。
縁起がいいお菓子だと潔が知っているかは置いておいて、十年前にガレット・デ・ロワでやられたお菓子の贈り物の、ちょっとした意趣返しの意味合いも込めていた。
暂且不论洁是否知道这是寓意吉祥的糕点,这份点心礼物还暗含着对十年前被国王饼捉弄的小小报复意味。
「やっぱおいしいな」 "果然很好吃呢"
「……悪くない」 "......还不错"
「素直に上手いって言えばいいのに」 "坦率地说句'真好吃'不就好了"
もっとも、凛の場合はあの頃の潔ほどは作為的でもなければ、好戦的でもなく「一緒に食べたかったから」という至極単純で明快な動機ではあるのだが。
不过凛的情况和当年的洁不同,既没有那么刻意,也不带攻击性,动机极其单纯明了——"只是想和你一起吃"。
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